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特発性側彎症治療

治療の歴史

長い歴史のある疾患ですので、ありとあらゆる治療法が試されてきました。体操、ぶら下がりなどの運動、電気治療、特殊な刺激療法、整体と呼ばれている矯正、各種コルセットによる矯正などです。このなかで唯一有効であることが科学的に証明されたのは、装具による矯正法です。しかしながら、装具療法も現在ある彎曲を改善する効果はなく、進行を止める役割しかありません。また、すべての患者さんの側彎に有効とは限らないことも判っていますし、50-60度を超える彎曲の装具装具療法は困難です。

1960年代から、脊椎に金属の器械を挿入して矯正固定する手術的治療法が盛んに行われるようになりました。この時代までは側方への変形をどう矯正するか、ということが課題となっていましたが、1990年代に入ると、脊柱変形を3次元的にとらえ、側方だけでなく、脊柱回旋ならびに前後方向の変形をどのように矯正するか、ということが論議されることになりました。最近ではイリザロフ法によって矯正を試みることもなされてきました。今日の治療法は、複雑な器械を使って、変形を3次元的に矯正する、というのが主流になっています。私達も手術療法を行う場合には、この流れのなかで治療をおこなっています。

昔とちがって、側彎の手術治療学は驚く程に進歩しています。手術器械の進歩だけでなく、手術中にはモニターで脊髄の安全を監視したりして昔とは比較にならないぐらい安全にできるようになりまた。また麻酔学が進歩したことにより術後の痛みのコントロールも容易になりましたし、以前のように術後のギブス固定は通常不必要となっており、患者さんにとっては昔と比べればはるかに苦痛は軽減しています。本センターでは1988年から2003年までに特発性側彎症248例を治療してきました。このうち手術療法をおこなったのは39例ですが、この数年間に手術症例は増加しています。手術による神経系の合併症は経験しておりません。

こうした手術的治療法は、側彎の矯正、進行の防止という点では現在では最も確実な方法です。しかし、本来可動性をもつ脊柱を動かなくしてしまう、という問題点が残されています。もちろん、手術によって脊椎の固定された部分は動かなくなっても日常生活に不自由をもたらすことはありませんが、将来は、先天性股関節脱臼や内反足の治療と同じように、可動性を保ったまま確実に治療が行える時代がくることを信じています。また、私達もそのようになることをめざして研究しています。

現在の治療方針

例えば15歳の女子に30度のカーブが見つかったとします。他に特に原因のない(特発性側弯)であれば、女子ではほとんど15歳以前に成長が止まり(背がもう殆ど伸びない)、また生理が始まってすでに2年以上経過している事が多く、側彎はこのような場合一般には進行しません。この場合バランスが悪いなどの問題がない限り通常は治療は行いません。

10歳の女子で彎曲が20-24度以下の軽い彎曲が見つかったとします。このように軽度の彎曲では進行するものとしないものが含まれていますが、最初の段階では進行するかどうか判断が難しいものです。したがって、しばらくは経過を観察します。

一方10歳の女子でまだ生理の訪れがなく今後成長期に移行すると思われる時にすでに25-30度カーブがあるのなら、カーブが強くなる可能性が高く、コルセットなどで進行の予防をした方がよいと思われます。ただし、かならずしもすべてのカーブの進行ををコルセットで阻止することはできません。コルセットにより肋骨を介して脊柱の彎曲を矯正しようとしても、彎曲する力が強大なため肋骨が潰れてくる場合もあるくらいです。そのくらい曲がろうとする力が強いことも稀ではありません。このような場合には可能な限りコルセットを装着しますが、最終的には手術療法が必要となるでしょう。

3才までに30度以上カーブがある場合には高度な側彎になる可能性は高くなります。もし早い時期に進行するようであれば脊椎骨を固定しない手術(乳・幼児高度側彎症の治療を参照してください)が必要となります。私達の施設ではすでに6例おこなっており、現在のところ成績は良好です。

カーブが進行していくと背骨が曲がるだけでなく、捻じれも増加しますので、深く礼をしたときや馬跳び遊びをした時などに背中が一方だけでっぱってみえるようになります。このように肩の高さやウエストの輪郭が非対称になるなど見かけの問題で患者さんや家族が側彎に気付かれることが多いようです。(:学校検診も大切ですが最近必ずしも以前程徹底されて行われていないのが実状です。是非小学校高学年で一度は御自分のお子さんの背中を良く観察して下さい。特にお辞儀をするような姿勢で肩甲骨や背中にの出っ張りが無いかを調べると良いと思います)その後次第にカーブが強くなると立った時など、全体のバランスが不良になってくることもあります。また中高年になると背骨に変形(骨の間隔が狭くなったり、骨に棘のようないびつな変化が出てくる)を生じ、背中や腰の痛みが出やすいともいわれています。ではどのくらいの痛みが出てくるかというと一般に日常生活や仕事に支障が出るほど強くはないようです。ただし、50-60度を越えると成人になったのちもカーブが少しずつ増強していくとも言われており、80度を越えると心臓や呼吸にも影響が出やすいとも言われています。したがって現在一般に支持されている治療方針は、

  1. 進行しそうなカーブに対しては装具(コルセット)でなるべく進行に歯止めをかけ、最終的に50度できれば40度以下のカーブにとどめることをまずめざします。
  2. 装具によっても、また装具がどうしてもつけられなかった、あるいは初診時にすでにカーブが進行しており、50-60度を越えている場合で、バランスが悪くなったり、見かけが悪く、本人が治療を希望された場合に外科的に矯正を行います。手術は通常背中の方から下の図のように固定器具を挿入して矯正固定を行います。もし、脊柱が硬く、矯正困難であれば内視鏡によって胸腔から脊椎椎間板を摘出して柔らかくします。本センターでも高度彎曲を有する胸椎側彎3例にこの方法によって手術をおこないましたが、成績良好です。また、腰椎側彎の場合には前方(腹側)から侵入して脊柱の前方に器具を挿入し矯正固定を行います。
  3. 低年齢の側彎(幼児性、若年性)の場合:カーブが進行してくるようであれば装具による進行の予防を行います。あまり進行しない例もあります。稀ではありますが装具を用いても進行し、5,6歳で50-60度を超えてくる例もあります。この場合何らかの問題(脊髄、筋肉の異常)が潜在することがあり、これが無いのかを確認する必要があります。装具治療での限界と思われる時は手術的に背骨についたてを立てるよう後方から、骨を移植せずにカーブを矯正する方法や(最近当院で行っています。乳・幼児高度側彎症の治療を参照)、曲がっている凸側半分を骨で固定し、経年的に曲がりを抑えていく方法などがあります。脊椎の成長に応じて半年~1年内に器具を延長する方針をとります。10才を超えた時点で最終的な脊椎固定術を行います。

手術療法の目的の一つは、本人がこの疾患にまつわる精神的悩みを解決することでもあります。50-60度を超える彎曲がある場合、側彎の悩みから解放され本来の勉学に打ち込むことができるようにするのも重要なことです。

術前の写真
術前
術後の写真
術後
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病院事業庁 小児保健医療センター
電話番号:077-582-6200
FAX番号:077-582-6304
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