• ホーム
  • センター紹介
  • センターご利用案内
  • 診療科案内
  • 採用情報
  • 地域医療連携~医療機関の皆様~

二分脊椎症

二分脊椎とは脊椎椎弓が先天的に開いている状態を指します。原因はまだよくわかってないのですが、欧米での研究によれば妊娠中に葉酸の不足が関係しているという報告があります(先日厚生省からもこのことに関する通達がありました)。問題となるのは先天性椎弓欠損部から髄膜・脊髄が体外に脱出し神経麻痺が生じている場合です。脊椎の形態異常に伴う脊柱変形だけでなく、水頭症、係留による麻痺、ラテックスアレルギー、脊髄神経麻痺による排便排尿障害、下肢変形・運動麻痺・知覚麻痺の発生など、症状は多彩であり、治療は脳外科、泌尿器科、腹部外科、小児科等の専門家と連係をとりながら進めなければなりません。

この10年間における二分脊椎の学問の進歩にはめざましいものがあり、整形外科学的治療法はほぼ確立したといってよいと思います。正しく治療を行えば多くの場合著しい機能向上が望めます。ただし、治療学が確立したといっても我が国における整形外科学の現場で正しく治療が行われているかと言えば答えはノーです。それはこの治療が我が国においては、極めて閉鎖的に行われてきたことも原因しています。たとえばこの疾患が整形外科学会で取り上げられる機会も少なかったし、小児整形外科を土台にして語られることも稀であったからです。脳外科、泌尿器科、腹部外科はこの数十年の間に飛躍的進歩をしましたが、整形外科においてはすでに確立している治療法でさえいまだに個々の患者様に行き渡っていないのが現状です。我が国においては、この疾患を経験したことの無い整形外科医師が大多数であることは間違いなく、その大多数の先生方は多くの場合、どこに紹介したらよいかさえもわからないのが現実と推測されます。

整形外科における治療の目標は、脊椎、四肢の残された機能を最大限に発揮できる状態にして、日常生活における姿勢や移動をより快適に出来るようにすることです。脊椎・四肢の機能は、脊髄麻痺のレベルがどこにあるかで大きく異なります。このため治療方法は一様ということはありません。実際の治療にあたっては、目標を定めます。坐位の安定をめざすのか、歩行を可能にするのかなど、麻痺の状態を詳しく分析し、患者さんひとりひとりの目標に応じた細かい治療計画をたてなくてはなりません。

歩行が可能であるためには、体幹と下肢のバランス、股関節、膝関節、足関節の可動性、そして自身を前方へ移動するための駆動力がなくてはなりません。そのために、まず脊椎変形や下肢の拘縮を除去する必要があります。とくに腰仙部、股関節の動きは重要です。膝関節が動かなくても歩行は可能ですがぎこちないものとなります。足関節や足の変形も歩行を不安定にします。その時は装具が必要ですが、変形が固定して装具装着が不可能な場合は手術的に矯正して装具が装着できるようにしなければなりません。

麻痺レベルが胸椎の場合は、股関節を動かすことができないので、実用歩行は不可能です。両松葉杖を使って体全体を前後に振りながら移動が可能ですが、小学校高学年になって体重が増加するとそれも難しくなって車椅子中心の生活になります。

腰椎上部の麻痺の場合は、股関節屈曲筋と内転筋のみが働きます。外転は伸転が不可能なため歩行は両松葉杖に頼らざるを得ません。また、股関節部で屈曲内転拘縮がおこり、体幹装具を使用しても実用歩行はむずかしくなります。

中、下位腰椎レベル麻痺の場合は股関節屈曲内転だけでなく、大腿4頭筋、膝屈筋が働くので、膝関節の運動が可能です。しかし、股関節伸展力が弱いので結果的に膝関節の拘縮がおこります。また、股関節外転筋が働かないため股関節脱臼が発生します。したがって、膝関節の拘縮を除去し、腹部筋もしくは股屈筋を移行して股関節の安定化をはかり実用歩行をめざします。

仙骨レベルの麻痺では、股、膝は安定していますので実用歩行が可能となります。足関節屈曲力がない場合には腱移行をおこなって屈曲力を獲得しなければなりません。足の変形は多彩ですがそれぞれの病態に応じて矯正を行い、形良好で装具装着可能な足にする必要があります。

部位別変形とその治療法

1)脊椎変形

脊柱変形は脊髄麻痺のレベルによって様々な形態をとります。胸椎、胸腰椎移行部の二分脊椎では、重度の後彎変形(背部が凸になる変形)が発生することがあります。また、胸椎レベルでは全例に、下位腰椎レベルでは約半数に側彎が発生すると言われています。脊柱変形の原因は、1)高位麻痺レベルによる体幹筋力低下、2)水頭症による痙性片麻痺、3)脊柱の成長により癒着した脊髄が牽引を受けることによる麻痺、4)二分脊椎に伴う脊椎奇形、などが原因と考えらています。

後彎変形は、坐位の不安定や、内臓圧迫の原因となるので進行すれば手術的に治療が必要です。後彎頂椎部より数カ所上位椎体を切除して矯正しますが、矯正位の保持がむずかしいことが問題となっています。

側彎は骨盤の傾きを伴うことが多く、体幹バランスが崩れ坐位不安定の原因となります。また知覚麻痺がある両側の座骨部に均等に体重が加わらない為、同部に難治性の褥創ができやすくなっています。さらに、側彎を生じる症例では通常股関節脱臼、膝関節拘縮、足部変形が合併するため、患者さんの日常生活は著しく制限されるようになります。側弯の治療では、脊柱・骨盤の三次元的矯正が必要です。まず、骨盤の傾きを矯正しなければなりませんが、脊柱の可動性が減少している場合には骨盤傾斜の矯正が不十分に終わることもあります。この時は骨盤骨きりをおこなって坐骨を水平にすることも必要です。矢状方向の矯正では様々な配慮が注意が必要です。下位腰椎の前彎を強くすると、女子の場合自己導尿が困難となり、弱めの後彎では股関節屈曲拘縮のため立位が不可能となることがあるからです。術前には股関節を評価をし、場合によっては前もって股関節手術を行っておかねばなりません。脊柱後方の骨組織が欠損しているため、矯正後の固定力が弱く、繰り返し手術を要する場合もまれではありません。

私達はこれまで4名の患者さんに脊柱矯正手術をおこないましたが、今後解決すべき問題がたくさんあると思っております。

2)股関節脱臼

麻痺レベルによって、股関節脱臼に対する治療法は大きく異なります。胸椎レベルの麻痺では、股関節周囲の筋肉の働きが無いため歩行は困難となります。小さい頃は体重も軽いため、下肢を安定させる装具を装着することにより立位歩行が可能なこともありますが、小学校3-4年生までには生活の中心は車椅子になるのが普通です。したがって、治療は坐位を快適にするために股関節以下の拘縮の除去に向けられます。

上位腰椎(第4-2腰椎)レベルの麻痺では股関節屈曲力と内転力が存在しますが、大腿四頭筋が働かない為、実用的歩行は困難となります。その為、治療は坐位の安定をめざすものとなります。

中、下位腰椎(第3-5腰椎)レベルの麻痺では、大腿四頭筋力が存在し、さらに膝屈筋や足関節の筋肉も部分的に働くようになります。股関節脱臼が起こりますが、これを正しく整復し、さらに腱移行をおこなって股関節の外転力をつければ実用歩行が可能になってきます。本センターでも8人の患者さんがこうした手術を受けられ、実用歩行が可能となっております。

3)膝関節

麻痺の為に、膝関節を曲げる筋肉と伸ばす筋肉の働きのバランスが崩れると、膝の変形が起こります。一番多い変形は、膝の屈曲拘縮です。膝が強く曲がったままですと姿勢が悪くなって、歩きづらくなります。この場合は、手術的に膝屈筋の延長そして関節包の切開、場合によっては後十字靱帯を切離して膝をのばします。大腿4頭筋筋力低下が著しい場合には術後長下肢装具を装着して膝を伸展位に固定すると実用的とはゆかないまでも歩行が可能になるかもしれません。

4)足

どのレベルの麻痺でも足の変形が発生します。変形は内反足、踵足、外反足、凹足など多彩です。足の変形の為に、足底が完全に地に付かないと、歩行が不安定になります。また、たとえ患者さんが歩けなくても、正しい足の形は坐位を安定させる為に必要です。坐位というのは、臀部だけでおこなっているものではありません。足底が疾患ついていることも大切なことなのです。

治療は、特別な場合を除いて手術療法が必要です。足の変形を治療する場合、変形の原因となっている筋肉のバランスを回復する処置も必要です。単に変形を矯正するだけでは再発してしまうので腱移行術を行います。たとえば、足関節で蹴る力がなければ、足関節を背屈する筋肉の腱を、蹴る力に変えるように腱を移行します。その後短下肢装具を装着した歩行します。内反足変形が固定している場合は先天性内反足と同様の手術をおこない腱移行を追加します。術後は装具をはずすことができるかもしれません。外反足が固定している場合には踵骨の延長を行い腱移行をおこないます。腱移行術はポリオに対する外科的治療法が基礎となって発展してきたものですが、腱移行術についての基礎的知識を蓄積した施設が少なくなっています。整形外科の基本がいつのまにかおろそかになっているのは憂うべきことです。

お問い合わせ

病院事業庁 小児保健医療センター
電話番号:077-582-6200
FAX番号:077-582-6304
ページの先頭へ戻る