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開排位持続牽引整復法

この方法は本センターで開発され、1993年より実施している方法です。詳しく知りたい方は日本整形外科雑誌(我が国の整形外科の公式雑誌)をお読み下さい。2000年まで完全脱臼82人、87関節(タイプB,C)の治療を行いました。整復率は97.7%(87関節中85関節)であり、治療による合併症は1例(1.2%)でした。これは、1993年までに行っていたリーメンビューゲルの成績と比べると有意に優れています。治療は以下の5つの段階を順に進みます。

第1段階

水平牽引。下肢を伸展位とし、そのまま下に牽引します。この段階ではだっこも自由ですし、母乳、ミルク、離乳食の際にはだっこして可能です。また御家族の方には面会時間に下肢を他動的に引き下げる運動(バネ計りで4-5kgの力)を1日数回(4回以上)おこなっていただきます。このようにして固くなっている股関節を柔らかくし、動きやすくし、牽引効果を高めます。このようにして大腿骨頭が下がってくれば第2段階に移ります。第1段階は2-4週間ですが、年齢が高かったり、脱臼の程度が強ければ2-3ヶ月要する場合もあります。特にタイプCの場合は長期間必要です。1才以上のお子さんの場合は、全身麻酔下に内転筋の延長を行い、大腿骨に鋼線を刺入し、鋼線による直接の牽引を行います。

第2段階

開排牽引。膝を曲げ、さらに股関節を曲げた状態で開き、この姿勢で牽引を行なって下に落ち込んでいる大腿骨頭を外方にひっぱります。牽引は赤ちゃんの最大開排角度で始め、最終的には75度まで開くように徐徐に開く角度を大きくしてゆきます。第2段階でもだっこも自由ですし、母乳、ミルク、離乳食の際にはだっこして可能です。第2段階は骨頭が簡単な操作で臼蓋と正面に向かうあうことができるまで続けます。この段階は約1週間ですが、これまでリーメンビューゲルの治療を行ている場合には骨頭は臼蓋の下方に深く落ち込んでいるため、この第2段階が長くなり場合によっては1-2ヶ月かかる場合があります。

第3段階

まず、超音波断層像を見ながら、第2段階で引き離された骨頭を臼蓋の正面に位置するようにします。このようにして、骨頭が臼蓋の中に入ってゆく準備を整えます。リ-メンビュ-ゲルを装着した後、重垂をすこしずつ減らして骨頭をゆっくりと臼蓋底へ移動させます。この第3段階が開排位持続牽引整復法の根幹をなすものです。第3段階は約1週間ですが、この間はこれまでと異なり、だっこはできません。

第4段階

ギブス固定を1ヵ月続け股関節を安定させます。ギブスを巻く時は通常赤ちゃんは静かにしていてくれます。また、ギブスで固定されていても赤ちゃんはいやがることもありません。ギブス固定期間は1ヶ月ですが、年齢が1才前後の場合には1.5ヶ月、2才前後あるいはそれ以上であれば2ヶ月となります。

ギブス固定中に改良したバギーに乗っているところ

第5段階

リーメンビューゲルを装着し、自動運動を促して関節の発育を促します。リーメンビューゲル装着は約2ヵ月行います。この時点で整復良好で股関節が安定していれば1週ごとに除去時間を増やし、1ヶ月で完全除去します。また、第5段階で生後7-8ヶ月を超えていてリーメンビューゲル装着が難しい場合にはリーメンビューゲルのかわりに装具装着をおこないます。装具装着は、年齢が1才前後の場合には3ヶ月程、2才前後あるいはそれ以上であれば4ヶ月程となりますが、状況によって装着期間は多少変動があります。また、股関節が安定してくれば装具を一時的にはずして入浴も許可されます。装具除去は1-2週ごとに除去時間を増やし、1-2ヶ月で完全除去しますが、不安定性が残っている場合には夜間のみ装着が続けられるかもしれません。

リ-メンビュ-ゲル装着中

装具装着中

装具装着下でのだっこ(母親と向かい合う)年長児の場合、すでにリ-メンビュ-ゲルなどの治療歴がある場合、赤ちゃんの緊張の強い場合などには第1段階が長くなって3ヶ月以上も牽引が必要な場合があります。またタイプC脱臼では、途中で(たとえば第4や第5段階)で再脱臼がおこる場合もあります。再脱臼の場合にはその原因が必ずあるはずですので、それを確かめた上でもう一度開排位持続牽引整復法を途中の段階から繰り返します。

ギブスまでの治療期間は、タイプBでおよそ1-2ヶ月、タイプCで2-3ヶ月ですが、2000年から御家族の方による下肢他動的に引き下げる運動おこなうようになってから短縮しつつあります。

骨頭が整復され、安定した後には、経過観察期間となります。再脱臼の傾向は無いか、あるいは臼蓋は順調に発育しているかなどをチェックします。最初は数カ月おきに通院となりますが、その後順調であれば、15歳ぐらいまで1年ごとの診察になります。
タイプB,Cの脱臼で、治療開始年令が1才を超えていたり、遺伝的素因が強い場合には、脱臼は整復されてもその後の股関節の発達がはかばかしくない場合があります。こうした場合には追加手術(手術的に臼蓋の被覆を行うもので、手術的な整復ではありません)が必要な場合があります。この手術はSalter手術と呼ばれ、安全で確立した手術法で、専門医がおこなえば骨頭壊死などの合併症はおこりえません。

1才を過ぎてからの開排位持続牽引整復法

先天性股関節脱臼を1歳過ぎから治療を始める場合には、長期の脱臼により股関節周囲の筋肉や靱帯なども変化しているため簡単ではありません。また、脱臼の程度も強く、ほとんどがタイプC、すなわち骨頭と臼蓋が完全にはずれている状態です。従って乳児期の治療とは異なり、骨折治療で用いられるような鋼線牽引の後で開排位持続牽引整復法を行います。開排位持続牽引整復法は本センターで開発され、1993年より実施しているもので、整復率は極めて高く、大腿骨頭壊死などの重大な合併症も稀です。

治療は以下の5つの段階を順に進みます。

第1段階

水平牽引。まず手術室において、全身麻酔下に内転筋の延長を行います。次に、両側の大腿骨に鋼線を刺入します。その後病棟で伸展位での大腿骨の直接牽引を行います。抱っこ、防水してのシャワーは許可されます。この段階は2-6週間です。

第2段階

開排牽引。膝を曲げ、さらに股関節を曲げた状態で開き、この姿勢で牽引を行います。臼蓋からはずれ下に落ち込んでいる大腿骨頭を外方に一旦ひっぱります。この段階は約1週間ですが、治療歴がある場合には1ヶ月以上かかる場合があります。

第3段階

まず、超音波断層像を見ながら、第2段階で引き離された骨頭を臼蓋の正面に位置するようにします。このようにして、骨頭が臼蓋の中に入ってゆく準備を整えます。その後、重垂をすこしずつ減らして骨頭をゆっくりと臼蓋底へ移動させます。この第3段階が開排位持続牽引整復法の根幹をなすものです。第3段階は約1週間です。

第4段階

ギブス固定を4-5週間続け股関節を安定させます。ギブスを巻く時は通常赤ちゃんはにこやかで静かにしていてくれます。また、ギブスで固定されていても赤ちゃんはいやがることもありません。

第5段階

開排装具を2-3ヵ月装着します。装具装着後1ヶ月くらいで、入浴を許可します。

合併症。ピン刺入部の傷痕が残ります。また刺入部が感染することがあります。

開排位持続牽引整復法でこれまでこれまでに3歳9ヶ月の完全脱臼の治療に成功しています。途中で(たとえば第4や第5段階)で再脱臼がおこる場合もあります。再脱臼の場合にはその原因が必ずあるはずですので、それを確かめた上でもう一度開排位持続牽引整復法を途中の段階から繰り返します。もしそれでも整復が困難な場合には、一旦退院していただき数カ月後に開排位持続牽引整復法を行います。
このようにしてもどうしても症例で整復が困難と判断された場合は1才過ぎに手術的に整復をおこなうこともあります。
骨頭が整復され、安定した後には、経過観察期間となります。再脱臼の傾向は無いか、あるいは臼蓋は順調に発育しているかなどをチェックします。最初は数カ月おきに通院となりますが、その後順調であれば、15歳ぐらいまで1年ごとの診察になります。
1歳過ぎに治療を開始した場合には、脱臼は整復されてもその後の股関節の発達がはかばかしくありませんので、追加手術(手術的に臼蓋の被覆を行う)が必要となります

お問い合わせ
病院事業庁 小児保健医療センター
電話番号:077-582-6200
FAX番号:077-582-6304
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