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ペルテス病にたいする手術療法

手術的療法はその治療方針から大きく二つに分けられます。一つは骨頭を臼蓋に深く包み込んで骨頭の球形を積極的に取り戻そうというものであり、他の一つは、骨頭の変形していない部分をあらたに関節として機能せせよう、というものです。後者(大腿骨頚部外反骨切り術、大腿骨頭回転骨切り術等)の場合は主として変形が完成しこれ以上修復を期待することが出来ないと判断されたときに行うことが多いので、ここではとりあげません。

手術療法をおこなった場合には自然の状態でも骨頭は臼蓋に深く覆われているので特別な肢位をとる必要がありません。ここが装具療法と大きく異なります。しばらく松葉杖歩行が必要ですが、保存療法の場合よりも早く普通の生活に復帰することができます。もちろん訓練は毎日行います。

骨頭を臼蓋に包み込む為には大腿骨頚部内反骨切り術、骨盤骨切り術の2つの方法があります。年齢、骨頭壊死の範囲等を考慮していずれかの方法もしくは両者を組み合わせておこないます。

1)大腿骨頚部内反切り術

大腿骨の股関節に近いところで人工的な骨折を作り大腿骨頭の向きを変え臼蓋の奥深くに入れることを目的としています。包み込む効果は大きいのですが、問題点は、向きを大きく変えた場合下肢短縮がおこることです。短縮を防ぐ為の様々な工夫をしますが、それでも2cm以上の脚長差が出ることが予想される場合(30度以上の内反をおこなうと可能性がある)には、本センターでは骨盤骨切り術を組み合わせておこなっています。ただし、多くの場合(特に9歳未満)、手術した側の大腿骨は過成長してやがて脚長差は目立たなくなる傾向があります。
内反骨きり術は骨の修復(ターンオーバー)を早める作用(バイパス効果)があるといわれています。ペルテス病では骨の内部の血流に滞りがあり、大腿骨内の血流がうっ血状態にあるという研究結果があり、大腿骨の骨きり術で血流改善、うっ血の改善を招き骨の修復をスピードアップしているという考えがあります。

上図は手術前です。骨頭の外側の1部が臼蓋からはみだしています。下図のように骨切りをおこなって、骨頭の向きを変え、はみだした部分までも完全に臼蓋の奥深くに包み込みます。この手術は術前に骨の正確な計測を行い、手術ではその計画を厳密に実行します。皮膚切開の後には、筋肉の剥離、骨の展開、関節包の温存、金属の打ち込む方向、注意深い骨切り、下肢短縮を最小限に押さえる工夫、など、いずれをとっても慣れた術者が行わないと(少なくとも50例の経験は必要)重篤な合併症をおこすことがあります。
ペルテス病にたいするこの手術の所要時間は平均1時間48分です。

2)骨盤骨切り術1(Salter 手術)

骨盤骨の一つである腸骨を人工的に骨折させ臼蓋の向きを変えて骨頭を包み込む手術です。下肢短縮はおこりませんが、大腿骨切り術とくらべるとやや複雑な手技が必要です。

下図のように、骨盤の骨切りをおこなって十分骨頭を包み込みます。この手術のコツは、骨盤骨を広範に剥離すること、臼蓋を回転させるときに細かい技を駆使することです。この手術も慣れた術者がしなければなりません。経験上、100例くらい経験すると洗練された手術ができるようになると思います。本センターでは2001年までに、(他疾患も含めて)311人の患者さんに骨盤骨切り術を行ってきました。ペルテス病にたいするこの手術の平均時間1時間57分です(6才未満であれば1時間30分以内に終ります)。
Salterと内反骨きり術との比較はなかなか難しく、同等であるとの意見も多いのが実情です。内反骨きりの良さは病期の短縮と修復後の骨頭があまり大きくならないこと、Salterと比較して手技がシンプルであることなどです。逆にデメリットは脚長差や大転子の変形(大転子高位)などが残りうることです。
Salterの良いところは脚長差、大転子高位が出にくいことですが、逆に骨頭がやや大きくなる、手技が内反骨きりに比べやや煩雑であることなどです。名古屋大学整形外科の研究では成績が同様かややSalterが優るとの結論であり、優る理由として脚長不等、大転子高位の点でSalterの方が有利であるとされていました。

3)大腿骨骨切り術と骨盤骨切り術を組み合わせた場合

骨頭の変形の程度と範囲が広い場合におこないます。

上図は骨頭変形著しい10才の男子です。このような場合には大腿骨骨切り術と骨盤骨切り術を組み合わせます。3年後には下図のように球形の骨頭ができました。こうなれば一生問題はおこりません。

4)骨盤骨切り術2(modified triple osteotomy)

本センターで開発され1993年からおこなっている手術です。腸骨だけでなく、坐骨、恥骨の骨切りも同時に行います。したがって、臼蓋の向きを大きく変えることができるので包み込み効果が大きくなります。ただし、手術手技は難しいのでどこででもできる手術ではありません。くわしくは次の機会に説明します。3)のSalterと内反骨きりを組み合わせた治療と手術の大きさ、効果はほぼ同等だと思われますが、9歳以上に内反骨きり術を行うとどうしても最終的に大転子高位(大転子という部分に変形が残り、歩容に影響が出る場合あり)という変形や脚長不等が残りがちです。トリプルオステオトミーにはこの問題が起こらない分有利であると思っています。

お問い合わせ
病院事業庁 小児保健医療センター
電話番号:077-582-6200
FAX番号:077-582-6304
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