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脳性麻痺の方では、筋肉の緊張が強く(痙縮:けいしゅく)、姿勢異常や呼吸障害など、生活に様々な問題が起こることがあります。バクロフェン髄腔内投与療法は、痙縮を和らげる治療です。脊髄神経の近くに手術でカテーテルを挿入して、24時間持続的に、痙縮に効果のある薬(バクロフェン)を注入します。腹部には、薬のポンプを埋め込みます。この治療はどの医療機関でも可能な治療ではなく、承認を受けた施設で、専門医が行います。
筋の過剰な緊張ため、姿勢や関節や呼吸に負担がかかります。
当院では、このような方にバクロフェン髄腔内投与療法をおすすめしています
年齢の制限はありませんが、体格が小さい方では手術が物理的に難しい場合があります。
バクロフェンは30年以上前から痙縮に対して使われている、臨床経験の長い薬です。以前は飲み薬として使われていましたが、飲み薬では脊髄神経まで十分に作用が届かないため、脊髄腔に直接注入する本治療法が開発されました。バクロフェンは脊髄に作用して、脊髄神経の興奮を抑えるお薬です。筋弛緩薬やてんかんの薬とは違います。
バクロフェン髄腔内投与療法は痙縮を来す脊髄・脳が原因のすべての病気に適応があります。大人では脊髄損傷や脳梗塞の患者さんの痙縮の治療に多く用いられています。
ポンプを埋め込むことによる日常生活の制限はありません。入浴・旅行・飛行機に乗る・携帯電話の使用などは問題ありません。ポンプの入っている場所を皮膚の上から強く押すと、皮膚のトラブルが起こることがありますので、コルセットなどは調整が必要です。
心臓のペースメーカーと違って、MRI(核磁気共鳴画像)は問題がありません。ただし、MRI検査後にポンプの動作チェックが必要です。MRIを撮影する場合は担当医に連絡してください。
薬は約3か月ごとに腹部のポンプに補充しないといけません。一日の使用量が多い方では、3か月より早く薬がなくなることがあります。ポンプが空になって急にお薬が脊髄に届かなくなると、強い痙縮が起こる可能性があります(リバウンド)。薬の補充は必ず必要です。薬の補充は、皮膚の上から針を刺して、ポンプに新しいお薬を注入します。普通の注射と同じで麻酔の必要はありません。
外来受診時には、症状にあわせて、薬の一日量の調整も行います。量の調整は皮膚の上からリモコンのような機械をあてるだけで可能です。
薬の副作用としては、量が多いと眠くなったり、体が脱力してしまうことがあります。薬の投与量を減らすことで改善します。意識が戻らなかったり、息がとまってしまうような事例はこれまでありません。
カテーテルの場所がずれてしまったりポンプの歯車の調子が悪くなるなどの機械の不具合の頻度は、かつて約18%と報告されていました。しかし近年、カテーテルの改良により、不具合は減少し、当院で行った19例では不具合を認めていません。
感染の頻度は0.7%程度と言われています。感染を起こした場合は、抗菌薬治療を行いますが、重篤な場合は、一度カテーテルやポンプを抜いて、感染がおさまってから再度入れなおす手術が必要な場合があります。
バクロフェン髄腔内投与療法は保険診療の範囲内です。