文字サイズ
先天性股関節脱臼が合併症なく整復されてからは、股関節の発育が順調に進んでいるか最低でも14才頃までは定期的に観察しなければなりません。途中で発育が思うようにいかない場合には早めに対処が必要です。放置すると将来変形性股関節症となって痛みが生じてくるからです。遅れる事なく正しく外科的処置を行えばまず問題となることはありません。
脱臼整復直後の状態からは、将来どのように股関節が発育していくかはわかりません。しかし、5ー6歳頃の股関節の状態がわかると、最終的にどのような股関節になっていくのかおよそ推測することができます。
1988年から1993年の間に本センターで脱臼の治療を受けられたお子様で、現在成人の骨年令(およそ12才ー16才以上)に達した51人の方の調査をおこないました。この時代には本センターにおいても全てのお子様にリ-メンビュ-ゲルを使用していました。リ-メンビュ-ゲルで整復できなかった時にはオーバーヘッドトラクションや全身麻酔下に徒手整復をおこなっています。
上のグラフは、5ー6歳時の臼蓋角とCE角と計測し、将来どうなったかを示したものです。○は秀、●は良、■は不可です(秀とは一生問題がないことが確実で、良とは一生問題がないと推測される例、不可とはすでに手術をしているか、もしくは放置すれば将来痛みを生じる可能性が大きい例と考えてください)。
臼蓋角、CE角の計測方法
グラフからわかることは、5-6歳時にCE角が15度を超えていれば成績は概ね良好である、ということです。一方、5ー6歳時に、CE角が15度以下で、臼蓋角が28度以上の例は12例ありましたが、その内7例(58%)の成績は不良でした。
初診時のタイプ別に最終成績を調べたものが下の図です。
タイプAでは87%が秀または良、タイプBでは77%が秀または良、タイプCでは71%が秀または良でした。タイプCでも決して最終結果が悪いわけではなく、逆にタイプAでも油断は出来ない例があることを示しています。
さて、次に最終的に正常となった例を検討してみましょう。正常となった例の特徴は、2-5歳の間と、8-12歳の間にCE角が増大していることです。下の図はその代表例です。
最終的に成績の思わしくなかった例では、8-12歳の間のCE角の発達があまり見られません。この時期の発達には、5-6歳時にCE角が16度以上あることが必要です。また、その他にもまだわかっていない原因があるかもしれません。