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保存的療法には牽引療法、免荷療法、装具療法などがありますが、牽引療法、免荷療法は古典的な方法となっており、今日では装具療法が保存的治療の代表です。装具療法では骨関節の動きが改善した後に、装具をもちいて股関節を特別な位置に保持し、骨頭を臼蓋に深く包み込みます。毎日一定時間装具をはずして股関節可動域訓練を行います。この訓練が極めて重要です。股関節をあらゆる方向に動かす事によって変形した骨頭を球形に矯正するわけです。治療期間は約1-2年です。
装具療法は、御両親の熱意、学校側の理解そして本人の受け入れが不可欠です。小学校低学年であれば比較的本人の受け入れも比較的スムーズですが、小学校高学年になると難しくなってきます。
意外に思われるかもしれませんが、実は装具療法は手術療法に比べてはるかに難しいものです。優れた成績を得るにはこの疾患を多数扱ってきた施設で行なわねばなりません。
装具は様々な種類があり、それぞれ特徴があります。
SPOC(Shiga Pediatric Orthopededics Center 滋賀県立小児保健医療センターの前身)で開発された装具。股関節30度屈曲30度外転30度外旋位を保ち、坐骨で体重を支え患肢を免荷する。歩行など移動が容易に行えるのが特徴です。ただし、骨頭を包み込むのには限界があって、骨頭の著しい変形がある場合には完全に包み込む事は不可能です。また、年令が高い場合にはさまざまな理由から装具をうけいることが困難となります。。
装着する場合に、よくある誤りは、坐骨にただしく体重がのっていないことと、ジョイントの位置が正しくない場合です。この2点を医師がしっかりとチェックしなければいけません。施設によっては装具メーカーにまかせきりであった、という話しを聞きますがこれはとんでもないことです。この装具の原理をしっかりと理解した上で装着をすることが重要です。
装具治療中は訓練が重要です。日中定期的に装具をはずし、股関節をあらゆる方向に動かす訓練を行います。治療開始時にすでに骨頭の変形がある場合にはこの訓練が特に重要です。股関節をあらゆる方向に動かすことによって変形した骨頭を球形に矯正しなければならないからです。また、比較的活動が活発にできるため、装具が破損しやすいので絶えず装具をチェックして修理することが必要となります。
神戸市立中央市民病院で開発された装具。骨頭を充分包み込めるのが特徴で優れた成績が報告されています。しかし、両方の下肢に同じ肢位をとらせるので移動機能には限界があります。このため、装具治療期間(約1-1年半)は入院生活が必要となる場合がおおくなります。日中は定期的にまん中にあるバーをはずして訓練を行います。
両股関節を外転位に保つ装具。骨頭を包み込む機能は優れていますが、移動は不便です。
歩行に便利であり移動機能は優れていますが、骨頭の包み込み機能は充分ではありません。1側の外転制限がある時はまったく治療の意味をなさないことがあるので注意が必要です。
患側の坐骨で体重を支えるので移動機能は比較的良好ですが、外転位を保つのには限界があります。