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先天性股関節脱臼の原因

この疾患は整形外科学の歴史といっても過言ではありません。したがって、発生原因については昔からさまざま今日、先天性股関節脱臼の原因として以下のことが考えられています。

1) 子宮内の姿勢異常

骨盤位分娩児に脱臼が多いのですが、厳密には骨盤位分娩の1種である単殿位(子宮内で膝を伸ばしている姿勢をとっているのが特徴)分娩児に多いことが明らかになっています。単殿位分娩児の脱臼発生率は約30%で、頭位分娩児の100倍の発生率です。また、たとえ帝王切開で生まれた場合でも、お母さんのおなかの中で単殿位の姿勢をしていた場合には脱臼発生率は極めて高いので注意してください。また、単臀位分娩では斜頸の発生率も高いことが明らかになっています。したがって、お子さんが単臀位で生まれた場合には専門的な検診を受ける必要があります。

胎内での単臀位姿勢
単殿位で生まれたばかりの赤ちゃん

単臀位で生まれた赤ちゃんには上の表のような頻度で運動器に異常が生じうるとの報告があります。

2) 出生後の下肢の姿勢

出生後に下肢を持続的に伸展すると脱臼しやすくなります。下肢をのばした状態で赤ちゃんのおしめをあてる習慣のある民族ではこの疾患の発生率が高く、逆に赤ちゃんにおしめを使用しない習慣のある民族では発生率が低いことはよく知られています。たとえば脱臼の発生率が極端に高いモンゴル民族やスウェーデンのラップ族は移動に都合の良いように赤ちゃんの下肢をのばした状態にして育児をおこなう習慣があります。

赤ちゃんの下肢を伸ばした状態にしておくと、やがて赤ちゃんは一所懸命に股関節や膝関節を曲げようとします。このとき、下肢が伸ばした状態を強制的に続けると、股関節を曲げる力が、股関節脱臼を引き起こす力に変換してしまいます。巻きおしめをしたり、厚着、横抱きなどをおこなうと、股関節は強制的に伸展位に保持されます。我が国ではかって脱臼の発生率が高かったのですが、巻おしめがその最も大きな原因の一つと考えられています。

スエーデンのラップ族

アメリカインデアン

モンゴル系の1民族一方、脱臼発生率の低いあるアフリカ民族では赤ちゃんを裸のまま育てる習慣があります。脱臼予防のところで述べますが、赤ちゃんが自由に下肢の運動ができる状態にしておくと脱臼が起りにくいことを示唆しています。このように先天性股関節脱臼は後天的にも発生する場合があります。先天性という名称はふさわしくないということで発育性股関節脱臼、あるいは発育性股関節形成不全とうすrべきかについて学会でも現在名称を検討中です。

3) 遺伝因子

先天性股関節脱臼の患者さんと血縁関係にある女性(脱臼のお子さんの姉妹、お母さん、お祖母さん、叔母さん、従姉妹)に発生率が高いことが明らかになっています。本センターの調査によれば、先天性股関節脱臼のお子さんの実に37.4%が家族歴を有していることがわかりました。したがって、先天性股関節脱臼の患者さんと血縁関係にある女性の方は年齢を問わず一度は股関節検査を受けられることをお勧めします。

4) 性別と性ホルモン

女子に発生率が高いことや、動物にホルモンを投与する実験などの結果から性ホルモンが発生に関与していることが知られています。

5) 出生時期

かつてから言われていることですが、寒い時期に生まれた方の方が暖かい時期に生まれた方より脱臼の頻度が多いという事実があります。下のグラフは私どもが健診を行っている滋賀県内3地区での最近5年間の出生月別での脱臼の頻度を示しています。滋賀県は比較的四季の移り変わりがはっきりしていて、1年間を通して温暖の差も明確な地域です。気温による出生後、特に3~4ヵ月の生活様式への影響なども股関節脱臼の発生に関連があるようです。

お問い合わせ
病院事業庁 小児保健医療センター
電話番号:077-582-6200
FAX番号:077-582-6304
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