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ペルテス病の治療概略

1.ペルテス病の治療目的

ペルテス病の治療の目的は成人になっても痛みが生じない、つまり変形性股関節症に進行せず日常生活が送れることにあります。

2.ペルテス病の治療は何故必要か

ペルテス病は男に多く、ペルテス病による後遺障害、すなわち骨頭が丸くならずに歩行時、立位などで痛みが生じ始めるのは主に40代以降といわれています。社会的に仕事に責任ある役割を担う世代でありこの時期は子どもの養育費や教育費などでとても家計のやりくりがたいへんになってきますので(筆者には3人の子どもがおります。現在まさにこの状況です)、身体的な理由での仕事の内容の変更や手術にともなう長期間の休職は通常かなり困難ないわば働き盛りの時期に相当します。

「ペルテス病はそこそこ治る。多少の骨頭変形があってもしばらくは症状は無いので遊びたい盛りの子どもに、やれ牽引、装具、手術といじくりまわすのはいかがなものか。成人になってから遺残変形にともなう症状に対しては関節形成術(人工関節)などで対応すればよいのではないか。」という考えもあります。現に学会でこういった発言が出たとき、ご自分がかつてペルテス病であり、遺残変形のために40代から歩行すると痛みが生じて困っているという小児整形外科の先生が質問のために立たれました。ご自身のこれまでの体験と現在の疼痛による日常生活での支障、そしてそれに基づく小児整形外科医としての見解についてお話され、ペルテスは放置でよいという発言に反対する意見を述べられました。放置でよいとした学会の重鎮でもある先生もこれにはさすがに反駁する言葉はありませんでした。

日本にはペルテス病の長期にわたる追跡調査の研究はまだ小数であり、40、50歳以降の患者さんの状況について詳細な研究はまだありません。一方、古くから研究されていた欧米にはそのことに関連したいくつかの有名な研究があります。代表的な研究であるWeinstein(アメリカ2000)、Lecuire(フランス2002)らが報告した結論に共通している点は以下の2点です。

1)ペルテス病はいったん治ったあと、疼痛などの症状が出る場合、主に40~50歳以降が多く、50歳以降に人工関節などの手術症例が年齢とともに増加する。
2)症状(変形による疼痛)が出る出ないをもっとも左右するのは骨頭が球面か非球面であるかによる。

したがって、ペルテス病の治療は血行障害による壊死の結果、形を変えた骨頭に対し、いかに球面性を再獲得し、長期にわたり痛みが出ず、通常の生活が送れるような環境にすることが最終目標となると思います。

3.最終的にどのような関節になればよいか

骨の成長が終了する時期を骨成熟期といい、小児の骨には成長をする部分(成長軟骨)がありますが、これが活動を停止する時期に相当します。通常男子で15~17歳、女子で14~16歳ですので、ペルテス病では最低でも15歳以降(できれば18歳ごろ)の股関節のレントゲンを基に最終的に治療成績を決定します。このときに用いられる分類法はStulbergの分類で、下の図のように1ないし2型であれば通常予後(将来の状態)は良好であると判断されます。

4.治療成績を左右するもの

ペルテス病にも軽症であるもの、重症であるもの、治療が必要なもの、不要なものなど様々なものがあります。治療をしなくても将来骨頭が丸くなる可能性が高い場合には治療はもちろん不要です。治療の要る・要らない、治療の選択には1)病気本来の重症度、2)関節の動きなどの症状、3)発症年齢などが重要です。

1)病気の重症度 いろいろな分類法がありますが、世界的に繁用されているものとしては以下の二つが有名です

Catterall(1971英キャタレル、nativeはキャトーと発音)分類

血行障害による壊死の範囲の大小で決定する方法です。壊死範囲が骨頭全体の約25%=group1、約50%=group2、約75%=group3、約100%=group4(Wenger,Guilleらによる簡単な目安)の4つに分類し、グループ1,2は治療を不要とすることも多い軽症例を意味します。レントゲンで壊死の範囲が確定するのに発症から6ヵ月以上を要することなどの問題点があり、正確なグループ分けの前に治療を開始してしまうことも少なくありません。ただし、MRIなどを用いればこの問題をある程度補える可能性があります。


Herring(1992米ヘリング)分類

ペルテス病は血行障害により壊死を生じ、骨頭が潰れていくことがよくあります。発症から6ヵ月から1年ぐらいでもっとも骨頭が潰れ、その後回復していくことが多いのですが、骨頭の潰れ具合をもとに(正確には骨頭外側部の支持部の潰れ具合)、ほとんど潰れていない:groupA、50%以下の潰れ:groupB、50%以上の潰れ:groupCの3つに分類する方法です。当然A,B,Cと進むにつれ予後は不良です。

2)関節の動きや歩き方などの症状

関節の動きはは行とともに極めて重要です。特に脚を伸ばしてそのまま外へひろげる(股関節外転)が不良であるときは注意が必要であり、動きを良くする治療を考慮しなくてはいけません。年齢が5歳以下であっても動きが悪い場合、牽引や理学療法などで入院していただき改善へ持っていくことがしばしば必要になります。もし外転が不能に近くなると骨頭が強く潰れていて股関節とのかみ合いが不良となっている場合もあります(hinged abductionヒンジドアブダクション)。

3)発症年齢

もちろん例外もありますがペルテス病は一般に発症年齢によりおおよその成績良否の傾向が存在しているといわれています。主に6歳未満、6~8歳、9歳以後の三つの年齢層に分けられることが多く、この年齢グループにより治療の有無や方法を選択していくことが多いのが実情です。

5.治療方法と選択

治療には様々な方法があり、コンセプトも異なったものが施設により行われているのが実情です。最大の問題点として、

1) 骨頭を骨盤の受け皿である臼蓋に包み込ませるようにすべきかどうか(containment:コンテインメント=封じ込め→包み込み治療の是非)
2) 体重をかけるかorかけないようにすべきか(免荷が必要か否か)などが論点になっています。

世界的な趨勢としては1)についてはcontainmentが基本とされ、2)については十分なcontainmentがなされていれば荷重は認めるという考え方が支持されているようですが、明確な指針は未だ確立されていません。

当センターでは年齢5歳未満での発症は経過をみていくのみが多く、それ以後の発症ではcontainmentを重視し、骨頭の圧潰を防ぐために荷重のコントロールを行うことにしています。

経過観察以外の治療法としては代表的なものとして、免荷・牽引療法、装具治療(経過観察を含めこれらを保存的治療とよびます)、手術治療があります。装具治療と手術的治療は原理に関してはまったく同じです。まず牽引により拘縮を除去し、その後骨頭を健常な臼蓋に包み込んで訓練によって関節可動性を維持し変形矯正・予防をおこないます。1)臼蓋による包み込み、2)可動域を広げそれを維持するための訓練、この2つは車の両輪のようなものでどちらも欠くことはできません。装具療法の場合には特に訓練が重要となります。

年齢、壊死の程度、初診時の変形の程度、病気の時期(初期、修復されつつある時期など)、さらに治療の環境も重要で、本人の性格、家族と本人との関係(関わり具合)、最低でも2ヶ月以上の入院が必要ですから病院から通える学校が有るか否か、また、年齢が高くなれば友達関係も考慮しながら治療法を選択します。

筆者は当センターで治療を行ってきた方の発症年齢とHerring分類、それと最終成績との関連から治療の選択はだいたい下の表のように考えています。

― ; 経過観察
C; containment therapy(一般的な保存的または手術治療。6歳未満は通常保存的治療)
C; 厳格な containment therapy(厳格な保存的治療=A-castなど、あるいは手術治療)
S; 手術治療(手術によるより厳格なcontainment therapy。12~3歳以上では骨頭回転骨切り術なども考慮)

5~6歳では一般に装具療法が適応となりますが、関節をどのような位置にしても骨頭が臼蓋に覆われない場合や、肥満の為に装具装着が困難だったり、性格的に装具装着がうまく行かない時は手術療法を考慮します。

7~8歳では充分理解をしていただいた上で患者・家族の皆さんに治療法を選択していただいていますが、同様に装具装着が困難な場合には手術が適応となります。

患者さんが9歳以上であったり、発見が遅れて骨頭の変形が著しかったりする場合には手術療法を勧めています。

以上のように治療の選択は、病気の重症度、発症年齢、患者さんの受け入れ・キャラクター、居住されている所(病院から近いか遠いか)などの事項より最も適切な治療法を決めていくことになりますが、患者さんご本人、ご両親のお考え方希望などを基本として、十分に相談して決めています。

以下は近年当センターで勧めている治療法選択の概要です。

6.低年齢発症はすべて良い結果となるのか

最終的に骨頭が球面もしくは治療は発症年令・病期・骨頭変形の状態などによって異なります。たとえば5歳未満発症の場合は体重が軽い事、骨再生能力が強いことなどから、多くの例では訓練をしっかりおこなうだけで良好な成績が得られます。

しかしながら小数ですが低年齢での発症例(5歳未満)にも確かに成績不良となる場合があります。当センターでは通常良くなるだろうと思われている低年齢発症例について、どの時点で将来の成績の良し悪しを正しく見極めれるかを調べてみました。その結果として、ペルテスになって3年経過した時点で以下の2点が重要でした(片岡2006)

1)骨頭の球面性が良いかどうか(2mm以下の誤差で球面であれば良い結果となる)
2)どれだけ骨頭が股関節の受け皿である臼蓋によって覆われているか(70%以上が覆われていると良い結果となる)

今後はこれらのデータをもとになるべく最終成績が良好となるように対処していきたいと考えています。

7.装具治療vs手術治療

発症年令が5歳を超えているとリハビリだけではなかなかよい成績が得られません。5歳以上の場合ではたとえ診断時に変形がなくても、やがて骨頭に負荷がかかって骨頭変形が生じることが多いからです。そのため、まだ変形がない状態であってもすみやかに治療をおこない、骨頭の変形を防ぐことが重要となります。ひとたび骨頭変形が生じるとこれを球形にしてゆくことは容易でありません。装具もしくは手術なりで骨頭を臼蓋で充分包み込み、その後しっかりと訓練をして骨頭を球形にしてゆかなくてはなりません。また、したがって、ペルテス病においては早期診断が極めて重要となります。

保存的療法では骨関節の動きが改善した後に、装具をもちいて股関節屈曲・外転もしくは外転・内旋位によって骨頭を臼蓋に深く包み込み、毎日一定時間の可動域訓練を行います。治療期間は約1-2年です。手術的療法では、骨頭を臼蓋に深く包み込むために骨手術をおこないます。骨切り部が安定したら訓練を開始します。手術は血管や神経を触る事もありませんので比較的安全に行えます。手術療法の場合には特別な肢位をとる必要がないので、保存療法の場合よりも早く普通の生活を送ることができます。もちろん御家庭で訓練を続け、ときどき外来でチェックします。

どちらを選択するにせよ治療技術にはいくつものコツがあって奥深く、この疾患に精通した小児整形外科専門医師のもとでおこなわねばなりません。一般に9歳以後の発症や、骨頭の変形がすでに著しい場合には装具によって骨頭を積極的に丸い形にもっていくことはむずかしい場合が多くなるため、手術的治療が適応となることが多いようです。しかし、ペルテス病の治療は正しい適応と情熱を持ってとりくみ、子どもの旺盛な修復能力をうまく引き出すことに成功すれば驚くほどの回復を経験することも少なくありません。

8.ペルテスが反対側にもなることはあるのか

さて、この疾患は両側に発症することがあります。両側例の多くは2年以内に反対側に発症します(約10~15%)。興味深いことに、健側を自由について歩ける装具の場合には、その装具治療中に反対側にも発症した確率が有意に高いことがわかっています。この事実は、ペルテス病の発症原因として骨頭に体重が加わることが無関係ではない、ことを示しています。詳細は、世界でもっとも権威のある整形外科雑誌に報告されています(Journal of Bone and Joint Surgery 79-B:979-982, 1997)。

このことが判明してから、本センターでは、健側を自由について歩ける装具を使用する場合には走ったり、階段を何回も行き来するなど、無理な運動を禁止しています。両側性であることが判明した場合にはmodified A cast法などが適応となりますが、これを1年以上装着するのはなかなか大変です。手術療法の場合には病状によって計画をたてなくてはなりません。

ペルテス病の治療は難しく、療養期間は長期にわたります。この疾患を多数経験し、なおかつ教育施設の整っている小児整形外科専門病院で治療する必要があります。

お問い合わせ
病院事業庁 小児保健医療センター
電話番号:077-582-6200
FAX番号:077-582-6304
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