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脊柱側彎症

側彎症とは、脊柱の側方への曲がり、捻れそして前後方向の正常の彎曲が失われた状態ということができます。外見の美しさが失われるだけでなく、本来の安定しバランスのとれた姿勢が崩れ、体幹の容積が減少して内臓が圧迫される状態がうまれるわけです。特に胸椎に変形が著しく出ると肺活量の減少を招き、若い時期には症状は出にくいのですが40代以降に肺活量減少より肺高血圧症(心臓に負担がかかる状況)を招くリスクが上昇するといわれています。

側彎症)大きく3つに分けられます。特に原因の明らかで無い側弯症(特発性側弯症)、生まれつきの奇型による側弯(先天性側弯症)、そして他の病気により生じた側弯(症候性側彎症)です。特発性側彎症は発生原因がいまだにはっきりしていませんが、過去数十年の治療学の発展はすばらしく、乳幼児の高度な側彎を除けばほぼ治療方法は確立したといってよいと思います。一方先天性側弯や症候性側弯症の治療は特発性側彎と比べるとその考え方も要求される治療技術も格段と難しく解決すべき問題が山積しています。

脊柱側彎の治療学は、欧米では小児整形外科学を土台として発展してきた外科学です。ところが、わが国では欧米から医学を導入する際に、側彎症に対する外科学を小児整形外科学と切り離し、独立したものとして輸入してきました。このことは脊椎外科学の急速な普及と発展には都合良かったのですが、一方で深刻な問題も同時に孕むことになりました。症候性側彎にたいする外科学が遅れたことなどはその代表的例です。症候性側彎は、他の小児整形外科疾患と合併することが多いのですが、この場合に小児整形外科学を基本に据えなければ進めようがないからです。たとえば、軟骨無形成症に脊柱変形が合併したとします。この時、脊椎外科という範囲だけで治療学を考えると、患者さんにとって大変に都合の悪いことがおこる場合があります。最近学会でもでもこうした例がいくつか報告されてきました。

脊椎の変形の矯正は現在のところ固定術が基本です。変形を治す替わりにある程度背骨の可動性が失われます。その為脊椎全体を固定することは通常ありませんが、下位腰椎を固定せざるを得ない時には股関節の動きなどが十分であることが前提となります。したがって脊椎だけでなく股関節など他の運動器の状態をよく考慮に入れた適切な治療のタクティクスが重要となるわけです。小児整形外科医は通常小児股関節疾患に精通しておりこの点では有利であり、事実欧米の小児整形外科医は側彎症を専門領域に入れていることが多いのが実情です。(Texas Scottish Rite Hospital, Alfred I. Dupont Hospital, Sandiego Children Hospital, Toronto Children Hospital他多数)したがって私達は脊椎側彎症を小児整形外科学の中で位置付けています。このようにしてはじめて側彎症治療学のバランスのとれた発展があると考えるからです。

脊柱側彎の手術療法は10年前と比べて、その安全性、確実性において格段の進歩がありました。麻酔学の進歩、技術の改良、材料の改善、脊髄モニターの性能向上、などにより脊椎手術は経験ある施設で行われる限り安全な手術となっています。

1988年から2004年2月までに本センターにおいて115人の患者さんが側彎手術をうけられましたが、これまで手術による永続的な麻痺は1例もありません。図は、ここ数年の手術症例です。特発性側彎39例、先天性側彎6例、症候性側彎70例の手術をおこなております。特発性側彎症だけでなく、様々な疾患に伴って発生する症候性側彎症(筋ジストロフィー、骨形成不全、脳性麻痺、二分脊椎、骨系統疾患その他)が増加していることに注目してください。

子供の腰痛は要注意!

最後に背骨の病気、障害に関し、子供の腰痛について触れます。腰痛は2足で立つ人間のある意味で宿命かもしれません。事実整形外科の外来へ来られる大人の方の中で、最も多い理由は腰痛です。しかし子供(15歳以下)の腰痛は大人程頻度は高くなく、むしろ稀ですが、腰痛のある場合にはなんらかの深刻な病気が潜んでいることが稀ではありません。子供の腰痛を調べると、腰椎辷り症・分離症:33%、ショイエルマン氏病(白人に多い病的な猫背):33%、腫瘍・感染症:18%、不明:16%であったという報告があります(ミシガン大1985年)。大人のいわゆる「こしいた」の場合、加齢によるものが多い点に対して、子供が腰を痛がるのはこのように何か原因がある場合が多く、それも放置しておくと後で困る事にもなり兼ねないものが結構混じる点で大きく異なっています。したがって子供が腰をはっきり痛がる時は専門医への受診をおすすめします。特に腰痛とともに歩き方がおかしい時、熱発を伴っている時、背中が硬く背骨を伸ばしたまま床の物を拾うなどの症状が出ている時は早目に受診するほうがよいでしょう。

お問い合わせ
病院事業庁 小児保健医療センター
電話番号:077-582-6200
FAX番号:077-582-6304
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