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ペルテス病の診断は早期の治療に直結します。治療の開始が遅れると最終的な治療成績に影響することはよく知られた事実なので、早期診断は極めて重要です。
ペルテス病は股関節より膝や太ももを痛がる場合が多い。また徐々に緩やかに痛みが増すこともおおい。
痛みと跛行です。重要な事は、痛みは股関節に限らず、大腿部あるいは膝関節痛を訴える場合もあることです。このため、非専門医により膝関節疾患と誤診されることが多く、発見された時には骨頭が完全に潰れて著しい変形を呈している、というこが稀ではありません。小児の跛行を見つけたらまずペルテス病を疑え!、ということは憶えていて下さい。
膝や大腿部を痛がる子に対して、股関節の動きを左右で比較することはペルテスの可能性を考え、それを調べる上で最初のステップであると同時に極めて重要な見きわめの方法です。
痛みは極めて軽い場合もあり、また早期に消失することもありますが、この疾患においては痛みが消失しても跛行が持続することが普通ですが、痛みと跛行が消失したり発現したりと、繰り返す場合もあるので注意が必要です。通常症状発現後、3~4週間もするとX線検査で診断できることがありますが、稀に2ヶ月くらいX線画像上所見のないことがあります。
鑑別すべき疾患は、単純性股関節炎、リウマチ熱、溶連菌感染後の反応性股関節炎、化膿性股関節炎、若年性慢性関節リウマチなどの膠原病、心因性関節炎などです。
単純性股関節炎は同じように股関節痛と跛行が見られますが、自然治癒し、後遺症も残る事がないとされています。実際に本センターの経験でも問題になったことはありません。超音波断層像では濁りのない関節液が関節包内に貯留していることが多いのですが、関節液貯留のない場合も少数ですが存在します。
リウマチ熱・溶連菌感染後の反応性股関節炎の場合にもしばしば股関節痛みが初発の場合があります。疑わしいときには血液検査(ASLO)をおこなうと判明します。実際に股関節痛からリウマチ熱が発見され、そこから心臓の異常が診断されたことがあります。溶連菌感染後の反応性股関節炎は比較的症状が強く、初期は化膿性股関節炎のような強い臨床症状(発熱・疼痛)を示すことがあります。その後症状は軽減しますが、長期にわたって症状(動きの制限・疼痛)が残存し、抗生物質の内服が必要になります。
化膿性股関節はいつでも疑わなくてはなりません。股関節痛だけでなく熱発などの感染症症状を呈することが多いのですが、全身所見がなく、また痛みも軽度で血液検査で所見の出ない例もありますので注意が必要です。超音波断層像では濁った水腫の像が見られるのが普通です。MRIが病巣の確定などに極めて有用です。診断の過程で疑いがあればただちに関節鏡をおこないます。感染が激烈な場合には切開による排膿と持続的な洗浄が必要になる場合もあります。
若年性慢性関節リウマチなどの膠原病においては、股関節以外にも多彩な症状が出てきます。心因性関節炎では他人が見ていない所で跛行が消失しますので鑑別できます。
股関節のある方向への動きが制限されることもこの疾患に特徴的です。上向きに寝かせ、膝を曲げ股関節を曲げてゆきます。そして90度曲がったところから膝がおへそに向かうように股関節をさらに曲げてゆくと痛みが発現します。この所見はこれまで例外を経験したことがないほど特徴的です。また、骨頭を圧迫すると痛みを訴えます。骨頭は、ももの付け根の内側の部分で大腿動脈と交差する部分の下にあるので、両側のこの部分を同時に軽く圧迫すると患側に痛みを訴えます。
ペルテス病の場合には骨頭の変形が軽微な内に治療を開始するのが理想的です。変形がわずかであれば、治療は変形を予防することが要点になります。診断が遅れ、骨頭の変形が著しくなってしまった場合には変形を矯正することからはじめなくてはなりません。変形矯正には時間がかかりますし、年長児であれば矯正にも限界があります。したがって、早期診断が極めて重要です。とにかく小児で跛行が見られる場合はペルテス病を疑う必要があります。
発症直後のレントゲン診断は難しい場合があります。骨頭の変化がまだ明確になっていない事が多いからです。しかし、注意して画像を見れば、大腿骨頭がわずかに外方にずれ、骨端(骨頭の骨の部分)の高さが反対側と比べわずかに低くなっていることが多いものです。発症後3~4週もすると骨変化がはっきりしてくるので診断は容易になってきます。診断をより正しいものにするにはレントゲンは正面像でなく、側面を含む2方向でみるべきです。ただし、発症後2ヶ月くらい骨変化の無かった例を経験していますので、注意が必要です。X線写真においてペルテス病と良く似た画像を呈するのがマイヤー病です。これは害のない疾患(骨化障害)です。ペルテス病のように壊死、吸収、再生といった一連の病理的変化がない、両側に同じような状況にある変化があることで鑑別は容易です。
マイヤー病と似てはいますがことなるものとして多発性骨端異形成症(MED)という疾患があります。家族性に関節が早く老化したり、痛みが出ている場合にはこれを疑うことがあります。両側がほぼ同じ状態でしかも壊死、修復の過程がペルテスのように進まず変化がたいへんゆっくりしている場合、(マイヤーは低年齢のうちに正常化します)この疾患を疑います。
超音波診断は参考になります。単純性股関節炎と異なり、多くの場合、水腫は濁っています。ただし、発症の超早期では清澄な場合があるので注意が必要です。清澄な場合でも穿刺すると粘稠度が高いのが特徴です。
MRI診断は確定的です。血流が途絶え、骨の壊死した部分があれば信号がなくなり診断は容易です。また、この検査方法によればどの範囲までが壊死になっているのかわかりますので、治療方法を決定する場合に有力な情報を与えてくれます。なくてはならない検査と言えます。以前は骨シンチグラフィーにより壊死を早く察知していましたが、MRIがほぼこれにとって変わった状況です。
ペルテス病と他の小児有痛性股関節疾患(股関節が痛い病気)との鑑別は重要です。以下は概要です
(注)患者さんの特徴:それぞれの疾患に比較的見られる特徴であり、もちろん例外はあります。