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先天性股関節脱臼の診断

我が国では保健所を中心として、乳児健診(3-4ヶ月健診)が行われていますが、この時に先天性股関節脱臼の検査も同時に行われています。検診では下肢長差や運動の様子、股の開きの具合、などを診察します。最近、健診での見逃し例=1歳以上で発覚する例が増加しており、全国から患者さんが当センターにお越しになっています(下図)。見逃し例が増加している原因は、健診の質の問題です。健診制度は保たれているのですが、様々な事情で質的に低下しているのです。これは今後大問題に発展してゆくと考えられます。健診はまず視診・触診によって行われます。見逃し例をなくすために全赤ちゃんにレントゲン診断や超音波診断をすべきである、というような意見もありますが、被爆の問題、人的パワーの問題から困難といわざるをえません。重要なのは視診・触診です。これが注意深くおこなわれれば見逃しはまず考えられません。私達小児センターでは、彦根・甲賀・八日市において20年以上健診を続けていますが、これまで1例の見逃し例はありませんでした。

診断

診断において重要なことは視診・触診です。患者さんをしっかり診察するという、この一番大切なことがいつもまにか忘れられ、レントゲンや超音波画像だけで診断するという傾向が特に若い先生方に見られます。一方で、新しい超音波診断やMRIなどを無視し、従来の診断法にのみ頼るという傾向もまだ依然として存在します。私達が最も重視するのは視診・触診です。そして超音波診断やMRIなどは視診・触診を確認するために行っています。とにかく赤ちゃんをしっかり診察することが大切です。

先天性股関節脱臼の診断において重要なことは、脱臼の重症度を正しく評価することです。高血圧症にせよ、糖尿病にせよ、あらゆる疾患が重症度により分類され、それに応じたふさわしい治療が選択されています。先天性股関節脱臼も例外ではありません。1人1人脱臼の程度は異なっているのでそれに応じた適切な治療法を選択しなければなりません。そのために、まず脱臼の重症度を正しく評価することがすべての基本になります。

さて、診断の実際ですが、すでに脱臼位にある場合は、股関節は軽度屈曲・外旋位という特徴的な姿勢をとります。脱臼している側の股関節の動きは健側と比べれば少ないことが多く(よく動く場合もあります)、顔は脱臼側と反対側を向いています。両側例ではより重度脱臼側と反対方向を向いているのが普通です。

赤ちゃん

上の赤ちゃんは右股関節脱臼で、右下肢は典型的な形をとっています。
下の赤ちゃんは左股関節脱臼で、おなじく特徴的な姿勢をしています。

健側と比較すると脱臼側は内転位にあるため、大腿内側の皮膚が弛んで大腿内側皮膚の皺の数が多くなり(逆に皺の非対象性があるからといって脱臼とはかぎりません)ます。

赤ちゃん

左股関節脱臼における大腿皮膚の皺の非対称。

皺の位置にも注目してください。股関節に一番近い部分にはっきりとした皺があります。

両方の下肢を持ち上げてみると脱臼側の臀部が健側よりも出っ張って(膨らんで)いることがわかります。この所見は私が2002年から注目していますが、大変敏感なサインと考えています。

赤ちゃん

左股関節脱臼。
左の臀部が右と比較して膨らんでいることに注目してください。

骨盤が傾くために脱臼側の下肢は短縮して見えます。脱臼が高度であれば、実際に脚長差が出現してきます。

赤ちゃん

左股関節脱臼

このため両膝を立てると、高さが異なる事に気づきます(Allis’ sign)。ただし、下肢長差は他の疾患でも出現しますので注意が必要です。

赤ちゃん

左股関節脱臼におけるAllis’ sign。
できるだけ両方の大腿骨を同じ角度で立てます。膝の高さが異なることに注目してください。

触診を行う場合、月齢によって得られる所見が異なることに注意が必要です。2-3ヶ月の乳児の脱臼の場合はすでに股関節の拘縮が出現していることが多いので、股関節の開排制限が重要な所見となります。下図のように赤ちゃんの股を開いて検査しますが、通常、左右に開きの差がある場合に開きの悪い方を開排制限がある、としています。それでは左右が同じように開く場合、どの程度の開きを開排制限と言うかについては明確な定義はありません。性別によっても差があります(女児はよく開き、男児はやや硬い傾向がある)。日本小児股関節研究会では目安として70度以上開かない場合を一応開排制限がある、としています。

新生児で、すでに脱臼している場合は股関節を屈曲位からすこしづつ開排位にしていくとある角度で骨頭が臼蓋の中に瞬間的に入り込むのを触知することがあります(オルトラーニテスト)。脱臼はしていなくても股関節が不安定で脱臼しやすい場合には、逆に開排位から股関節を閉じてゆくとある時点骨頭が臼蓋からはずれるのを触知する場合があります(バーローテスト)。ただし、こうした臨床所見はわかりにくい場合も多く、しばしば経験を要します。

注意深く診察すれば、脱臼がある場合、上にのべた異常所見をいくつかは見つけられるはずです。特に、臀部の非対称、Allis’ sign,開排制限の3つは重要で、私達のこれまでの経験で亜脱臼・脱臼ではこの3つのどれかは陽性になっています。

1歳過ぎて、すでに歩行している場合には跛行が顕著であり、両側脱臼の場合では跛行よりも腰椎の前弯が目立ってきます。歩行時腰椎前弯が増強している場合には、神経筋疾患や骨系統疾患とともに、両側の先天股脱も疑うべきです。

視診、触診を正しく行えば脱臼を見逃す事は通常ありませんし、専門医であればこれだけで脱臼の重症度が診断出来るはずです。たとえば両方の立て膝で、膝の高さに差があったり、触診で本来あるべきところに骨頭が触れなければ高度な脱臼を疑わなくてはなりません。逆に様々な脱臼のサインがあってもこうした所見が陰性であれば軽度な脱臼を考えます。とにかく赤ちゃんをしっかりと診察することが大切で、視診、触診をおろそかにしてしてやたらとレントゲンや超音波診断などに頼るのは正しい方法ではありません。

当院では確定診断は超音波断層像によっておこないます。超音波断層像による診断法が登場するまでは、X線診断が確定診断法として最も信頼性が高く、今日でも奇形を伴った脱臼の診断や、1歳以後の脱臼の診断には欠かせない診断法であります。しかし、被爆ということを考えると、乳児検査ではなるべくX線診断は避けるようにしたいものです。超音波診断は害がないばかりか、しばしばX線診断よりも正確です。

お問い合わせ
病院事業庁 小児保健医療センター
電話番号:077-582-6200
FAX番号:077-582-6304
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