ダムの放流設備を表現する言い方で、常用洪水吐きに可動ゲート(水門)を装備せず開口穴があるだけのダムを「穴あきダム」、非常用洪水吐きに可動ゲートを装備せずコンクリート製越流部(クレスト)のみのダムを「ぼうずダム」、両方とも可動ゲートのないダムを「穴あきぼうずダム」と日本の河川ダム実務技術者の世界で長年、用いられてきました。(参照:中村靖治著『ダムのできるまで』山海堂)
平成14年 3月に完成した姉川ダム(下の写真図)は、非常用洪水吐きにクレスト自由越流頂 4門、常用洪水吐きにオリフィス 1門の自然調節方式であるため、「穴あきぼうずダム」と表現したり、更に簡略化して「穴あきダム」と表現することがあります。
近年、通常時貯水のない治水専用ダムを穴あきダムという表現で報道されることがありますが、この場合は穴の位置が最下部(現在の河床部付近)にある必要があります。国土交通省の治水専用ダムでは「流水型ダム」と呼ばれています。
ダムに水を貯めるのは、洪水を調節するために一時的に水をためるときと、農業用水・水道用水・河川維持用水(維持流量)などの利水のために水をためるときです。
洪水調節のときは、下流で大雨による被害が出ないように流す水の量を減らして水をためますが、洪水調節を行う治水ダムでは洪水のときにダムに入ってくる水を全部ためることはなく、下流の川で流すことのできる流量までは、なるべくダムに貯めずそのまま通過させますので、水がなくなることはありません。
また、利水については現在のダムでは本来、水道用水などの利水のために貯めるときは、一般的には、本来下流に必要な量の水(許可された取水量や河川環境に必要な量:その川の正常流量)を流して、その余り分を貯めることとしていますので、この場合もダムに水を貯めることによって川の水が全くなくなることはありません。
余呉湖、日野川、石田川、宇曽川、青土、姉川ダムや北川、芹谷ダムは「県庁土木交通部流域政策局水源地域対策室077-528-4173」か直接、それぞれのダム所管部署の下記へお問い合わせください。
[滋賀県土木交通部所管ダム連絡先]
また農業用水の供給を主目的とする県管理の永源寺ダムは永源寺ダム管理支所0748-27-0058にお問い合わせください。
近代におけるダムは大規模で重要な構造物ですから、所管の個別のダムごとに地形・地質等に配慮した綿密な調査を行い、耐震性も含め、安全性に十分配慮した設計、入念な施工を実施しています。したがって、地震に対しても十分な安全性を確保しています。
兵庫県南部地震(1995年M7.2)、長野県西部地震(1984年M6.8)、新潟県中越地震(2004年M6.8)、能登半島地震(2007年M6.9)、新潟県中越沖地震(2007年M6.8)や岩手・宮城内陸地震(2008年M7.2)の際、震源地や被災地近く の河川にある近代的なダムでは、ダム本体の安全性に関わるような問題は発生していません。
治水ダムは、洪水の一部を一時的に貯めて、河川下流部の流量を低減させ、下流域の洪水被害を軽減します。このため、洪水時に貯めるべき容量を空にして待ち受けます。治水専用ダムでは水不足には役に立ちませんが、農業用水や水道用水などの利水ダムについては、目的に応じた水を確保して、不足の時に補給します。したがって、ダムの使用方法が逆となります。
また、構造的には洪水流を放流するための洪水吐きの位置が大きく違い、治水ダムでは比較的低い位置に洪水吐きがあり、利水ダムでは比較的高い位置に洪水吐きがあります。
大きな洪水のときは、治水ダムと利水ダムの状況は大きくちがいます。→ ダムの使い方(アニメーション有)、「ダムのいろいろ」
水利権とは、河川法の規定によって、特定の目的のために河川の流水を排他・独占的に利用する権利で、河川管理者( 国土交通大臣や知事)の許可によって成立する権利です。
水資源開発とは、ダム等により河川の余剰流量を貯めることにより、新たな目的(水道用水・農業用水等)のための安定な水を確保し有効に利用できるようにすることをいい、この量を開発水量と言います。これにより、新たな水利権が生じることとなります。
なお水利権があってもたとえば長期的な気象変化により降雨が減少し河川を流れる水量も減少すれば実際に取水することができなくなりますので、絶対的に確保されている権利ではなく、法的に取水する権利を有しているということになります。このような場合は、関係者が協議して一定の取水制限に対応していくことになります。
河川の流域に必要な安全性の確保を考えた洪水調節容量とその他の目的に必要な容量を算出し、必要なダムの大きさを決めます。その後、ダムの適地を現地調査を行い選定しますが、ダムは土木構造物の中でも大規模のものであり、設置できる場所(ダムサイトといいます)は、地形や地質条件から限定されます。その中で、ダムの型式・規模に必要な地質条件、総貯水容量がより有効に確保できる場所(小さなダムで大きな容量)、活動性がみられる断層が近くにない場所など必要な条件を満たす場所から選定されることとなります。
ダムの大きさや型式、ダムの状況(貯水予定地や道路状況)によって一概には言えません。各所管ダムの説明のデータ表最下段に当時の総事業費を掲載していますので、ご参照ください。
●余呉湖
●日野川ダム
●石田川ダム
●宇曽川ダム
●青土ダム
●姉川ダム
治水と利水を併せ持ったダムの場合、一般的に洪水調節は洪水時に下流の河川の流量を少なくし水位を下げ、洪水被害を軽減させます。渇水時には、そのダムの目的に合わせた利水(たとえば農業用水・工業用水・水道用水など)のための補給が行われ、社会経済活動や市民生活を支えています。
[洪水調節実績例]
琵琶湖は滋賀県の中央にあり、野洲川や日野川、宇曽川、姉川、余呉川、石田川、安曇川など多くの川は琵琶湖に流入しています。この流入する川の上流の治水ダムの場合は、その下流の川沿いに対して洪水調節による治水効果を発揮させます。その川の最下流の琵琶湖がその治水面の役割は果たせませんが、農業用水や水道用水といった水利用の利水面では、琵琶湖沿岸各所に作られたポンプ場により琵琶湖の水がくみ上げられています。
なお琵琶湖はその下流域(瀬田川下流、京阪神地域)に対しては治水・利水両面で大きな役割を果たしています。(ダムと同様の機能)
たとえば滋賀県の湖南・信楽地域では、昔、流域の山地が荒廃し森林の消失した山となり、流出した土砂で「天井川」となった河川が多く見られます。このことからも、森林が持つ土砂流出の防止や水源かん養機能は極めて重要と考えられます。この森林の機能に注目して、人工のダムが有する機能は、森林の本来持つ機能で代替が可能であるという考え方に基づき、「人工のダム」に対して河川流域の森林を「緑のダム」と呼ばれることがあります。
森林は、中小洪水に対して当然<治水効果はありますが、川の治水計画の対象となるような猛烈な大雨の際には、既に森林土壌が一杯に水を含んで飽和状態となっており、これ以上しみこむことはできなく、森林域の降雨はほとんど流出するということが観測結果からもうかがえます。従って、必要な治水機能の確保を、森林の機能のみで対応することは困難です。なお、川やダムの治水計画ではこの森林等の現在の保水機能が維持されることを前提にしてその不足する機能をカバーする計画を作成しています。
関連するHP:( 国土交通省:https://www.mlit.go.jp/river/dam/main/opinion/midori_dam/midori_dam_index.html)
森林の水源涵養機能については学説が定まっておらず、森林整備による効果の定量的な評価は困難ですが、必要な時に必要な量を補給出来る人工のダムに対して森林にはその機能はありません。また 渇水期には、森林は樹林からの蒸発散量(樹木等の表面からの蒸発量と根から吸い上げた水を樹木等が消費する蒸散量)を増加させ、むしろ河川への流出量を減少させることが観測されています。従って、ダムの利水機能の代替を全面的に森林の機能のみに求めることは困難と考えられています。
関連するHP:(国土交通省:https://www.mlit.go.jp/river/dam/main/opinion/midori_dam/midori_dam_index.html)
例えば、平成16年は観測史上最大の10個の台風が上陸するなど洪水被害が多い年でした。
そのなかで、国土交通省・水資源機構・都道府県が管理で治水機能を有する全国463ダムにおいて、延べ933回の洪水調節を実施し、下流河川の水位を低下させ、氾濫の防止や氾濫被害の軽減を図りました。滋賀県では、平成16年 9月29日の台風21号で石田川ダムが、10月20日の台風23号では石田川ダムと宇曽川ダムにおいて洪水調節を行い、下流河川の水位を下げることで洪水被害の防止ができました。また、これらの台風時に姉川ダムをはじめその他のダムにおいても洪水量には達していませんが、ダムへの流入量より下流への放流量を少なくして下流の水量を軽減しています。
滋賀県下で初めて大雨特別警報が発令された平成25年9月には国土交通省・水資源機構・都道府県が管理する治水機能を有する全国463ダムにおいて延べ890回の洪水調節を実施し、下流河川の水位を低下させ、氾濫の防止や氾濫被害の軽減を図りました。滋賀県でも高島市の鴨川や栗東市の金勝川などでも河川の氾濫があり大きい被害が発生しました。そのときの各ダムの状況は[洪水調節実績例]をご覧ください。
治水ダムでは各ダム毎に操作規則を定めていますがその中で、洪水調節に関して洪水の調節を開始するときのダムへの流入する洪水の流量が洪水量です(=洪水調節開始ダム流入量)。
一般的な水門ゲートを備えたダムでは、洪水量以下の水量はそのまま下流へ通過させ、洪水量を超える水量がダムの貯水池に入ってきた時から、各ダム毎に定められた操作に従って洪水の調節を開始します。滋賀県が管理する各治水ダムにおける洪水量は下のとおりに定めています。
なお、洪水調節方式が一定量方式のダムでは洪水量=最大放流量となりますが、自然調節方式や一定率一定量方式などのダムでは最大放流量は洪水量より大きな値となります。詳しくは各ダムの紹介ページをご覧下さい。
日野川ダム/一定量方式/洪水量毎秒160トン(一定量方式の説明図)
石田川ダム/一定量方式(暫定)/洪水量(暫定)毎秒約40トン
青土ダム/一定率一定量方式/洪水量毎秒300トン(最大放流量780トン)
宇曽川ダム/自然調節方式/洪水量毎秒25トン(最大放流量29トン)
姉川ダム/自然調節方式/洪水量毎秒100トン(最大放流量230トン)
(石田川ダムの暫定とは、ダム下流の河川が狭いため、ダム計画上の一定率一定量の最大毎秒85トンを流すことができず、河川改修工事が進むまでの間、当面、最大放流量は毎秒40トン程度としています。)
治水を目的にもつダムは、大雨の時、流水の一部を貯水池に貯めることで下流河川の水位を低下させ、はんらんの防止や被害を軽減しています。この場合、ダムは、上流から貯水池へ流入してくる水量より少ない量をダム下流へ放流していますが、想定を上回る降雨が長時間続き、これ以上流水をダム貯水池に貯めることができない時は、徐々に放流を増加させ最終的には上流から貯水池へ流入してくる水量と等しい水量をダム下流へ放流することなります。異常な洪水の時でも、避難までの時間をかせぎつつ、ダム貯水池に流入する最大の水量よりさらに多い量をダム下流へ放流することはないため、ダムの無い場合よりさらに洪水被害が大きくなることはありません。(絵付きダム用語解説集:異常洪水時防災操作(緊急放流))
川の堤防やダムの洪水調節機能は万全ではありませんし、各地では今までの想定を上回る雨が降っていますので、「洪水は必ず起こる。」と言う気持ちで備えをしておく必要があります。
平成16年10月23日17時56分頃、新潟県北魚沼郡川口町を震源とするマグニチュード6.8の地震が発生し、震度 6強から 5弱の揺れが18回、体に感じる余震は 2ヶ月間で約850回を数えています。この新潟県中越地震では、本震では延べ114ダム、その後の余震に対しては延べ154ダムで点検が実施されました。その結果、新潟県が管理する 3箇所の利水ダムにおいて、修復が可能な範囲内の損傷が認められましたが、その他のダムにおいては何ら異常がありませんでした。40名の方が亡くなられ2,800棟以上の住家が全壊するなど大きな被害をもたらしたこの地震におけるダムの被害状況から、「ダムは地震に対して充分な安全性を確保している。」と言えます。
滋賀県では、気象庁震度階(震度)が 5弱以上の地震が発生した場合、土木交通部地震初動活動体制に入りますが、ダムについては、定められた観測所での気象庁震度階が 4以上またはダム基礎部地震計が25cm/s2(gal)以上の最大加速度を記録した場合に点検を実施しています。点検は地震発生 3時間以内に一次点検を、震度5以上または80cm/s2(gal)以上では引き続き24時間以内に二次点検を実施し、被害の有無を確認しています。突然発生する地震に対して、速やかに点検を実施し、県民のみなさんに安全・安心情報や被害状況を発信出来る体制をとっています。
滋賀県では、地震発生 3時間以内に実施する一次点検で、職員によりダム施設の外観の目視による点検を、また必要な場合、24時間以内に実施する二次点検では、ダム施設の詳細な点検および計測による点検を実施しています。
日本ダム協会の「ダム便覧」ではF:洪水調節、農地防災の記述がありますが、この意味するところは国土交通省や独立行政法人水資源機構や都道府県の建設土木部局などの河川管理者のダムは「洪水調節」のみの表現となり、一方、農林水産省や都道府県の農業部局が主として農地の防災対策としてつくられたダムでは「農地防災」という表現になります。いずれも治水目的ではあるので記号としてはFとされています。一般的には「洪水調節と農地防災」の両方を目的として掲げているダムはないと思われます。
「ダム」とは治水、利水、砂防(さぼう)などのために、河川・谷川などをせき止めるものと辞書などにはあります。このうち砂防とは山地・谷川から下流への土砂・岩石の危険な流下を防止することで、日本では一般的に砂防ダムとか砂防堰堤(さぼうえんてい)といい、水をためる目的の「ダム」とは区別していますので、砂防ダムはのぞきます。
また水をためるためのダムの場合でも、日本では高さ15メートル以上をダムといい、それより低いものはダムと呼ばす堰(せき)などといいます。なおアメリカではdamには高さの違いで呼び名を変えることはなく、高さ2メートルの堰でもdamといいます。ビーバーが枝でつくったものもdamです。
以上のようなことから、砂防ダム以外で高さ15メートル以上の水をためるための構造物を「ダム」としますと下記のように約19箇所になりますが、いわゆるため池で築造年代の古いものについては高さ(堤高)の確認がむずかしいことがあり、正確には箇所数はわかりません。なお高さ15メートル未満の農業用のため池は県内には2000箇所以上あります。
なお、一級河川に接しているダムとしては、19のうちの10ダムとなります。
天川ダム(2006年完成)の通常の運用管理は県土木交通部にて下流の一級河川天川と一元的に行っています。
天川ダムの目的/洪水調節/ダム地点の計画高水流量毎秒90トン(集水面積5.18平方キロ)を30トンに低減/自然調節方式
天川ダムの容量/総貯水容量1,404,000立方メートル/洪水調節容量1,323,000立方メートル
天川ダムの型式/重力式コンクリートダム/堤高35.3m/堤頂長105m/堤体積37,000立方メートル
所管していますダムでは、日野川ダム・宇曽川ダム・青土ダム・姉川ダム・石田川ダムと余呉湖がダムカードを配布しております。
ご不便をおかけしますが、在庫切れのダムやお配りできる期間や曜日に制限もございますので、くわしくは ダムカードの配布方法(お知らせ)ページをご覧下さい。
所管外の農業用の永源寺ダムでも配布されていますので、くわしくは永源寺ダムのページをご覧下さい。
全国のダムカード情報は国土交通省HPでご覧ください。https://www.mlit.go.jp/river/kankyo/campaign/shunnkan/damcard.html
管理中のダムの貯水位とダムへの流入量とダムからの放流量などのデータやカメラ画像も、インターネットで公開しています。
下記のHPでダム情報や県内の雨量や河川水位のほか、洪水や土砂災害に関する情報を見ることが出来ます。
PC用の滋賀県土木防災情報システム(ダム観測情報)
カメラ画像は下記です。
PC用の滋賀県河川防災カメラ(河川、ダムの5分毎静止画)
携帯電話用は下記のコードですが、観測局個別データなど画面によっては通信量が大きくなるのでご注意下さい。
http://shiga-bousai.jp/mobile/
http://c.shiga-bousai.jp/shigapref/m/
県の管理ではない農業用水の野洲川ダムと蔵王ダムはデータは国土交通省「川の防災情報」でご覧ください。
野洲川ダム(川の防災情報)(外部サイト,別ウィンドウで開く)
蔵王ダム(川の防災情報)(外部サイト,別ウィンドウで開く)
所管ダムでは、下記のページにて桜情報を掲載しています。
お花見の際は、危険な場所に近づかないようにお願いします。また、ごみはお持ち帰りいただきますようお願いします。