ダムの用途には、洪水調節(F)、上水道(W)、工業用水(I)、農業用水(A)、発電(P)、流水の正常な機能の維持(N:既得取水の安定化・河川環境の保全)、消雪用水(S)などが考えられますが、これらの中から 2つ以上の目的用途を兼ね備えたダムを一般に多目的ダムといいます。
なお狭い意味で、治水とそれ以外の目的を併せ持つ国土交通省関係ダム(国土交通省・水資源機構・道府県土木関係部局のダム)を多目的ダムと呼ぶ場合もあります。(右図のようなダム)
ダムの用途には、洪水調節(F)、上水道(W)、工業用水(I)、農業用水(A)、発電(P)、流水の正常な機能の維持(N:既得取水の安定化・河川環境の保全)、消雪用水(S)などが考えられますが、これらの中で洪水調節と流水の正常な機能の維持以外の目的用途のダムを一般に利水ダムといいます。
農業用水と発電のための本県の永源寺ダムや犬上(川)ダム、農業用水のための野洲川ダム、蔵王ダムなどは利水ダムです。
治水目的(洪水調節)のみのダムです。ダムから放流するための設備(または穴)を川床付近に設けた場合は、洪水時以外はほとんど貯水池のないダムとなり、このようなダムは流水(型)ダム、河床部穴あきダム、河道内遊水池などと呼ばれることもあります。
単に穴あきダムといった場合、長年、河川実務技術者の間では常時貯水のあるダムで機械式水門のない放流口(穴)のみのダムを穴あきダム(ゲートレスダム)と慣用的に使われている関係で混乱の生じることもあります。
河床部穴あきダムとは滋賀県での用語ですが、ダムから放流するための設備(または穴)を川床付近に設けた治水専用ダムで、洪水時以外は貯水のほとんどないダムを指します。全国的には流水型ダムともいわれています。
完成しているダムとしては益田川ダム(島根県)や最上小国川流水型ダム(山形県)や1960年代頃に各地で作られた農地防災ダムの中のいくつかで、建設中のダムでは立野ダム(国交省九州地方整備局)や足羽川ダム(国交省近畿地方整備局)、三笠ぽんべつダム(国交省北海道開発局)などがこの方式を採用される予定です。所管ダムでは、建設を「一旦中止」していますが、北川ダムがこの方式を予定していました。
アメリカのオハイオ州のGreat Miami川流域には1920年頃より100年近くにわたって運用されている治水専用ダム(dry dam)群があります。のべ洪水貯留回数は1600回を超えています。(Taylorsville damほか4ダム)これらの情報は「Miami Conservancy District」のHPにて入手できます。
ダムは渇水対策にきまっていると思われるかもしれませんが、ここでいう渇水とは通常のダム利水計画を上回る異常渇水を指します。
水使用が高度化している現代では、通常の渇水では多目的ダムや利水ダムなどで供給されるものの、それを超える異常渇水が発生した場合、社会全般に与える影響は非常に大きくなります。このようなときでも安全な社会を維持するために必要な最小限の生活用水、都市活動用水などを供給するための容量を有するダムの計画がされることがあります。これを渇水対策ダムといいます。このためにダムに確保する容量を渇水対策容量、略して渇対容量といわれています。この異常渇水対策容量に必要な費用は河川管理者の負担と考えられる場合が多いようです。
今後、温暖化が進行すれば気象変動が大きくなり、豪雨はさらに激しく渇水も頻発するようになっていくといわれており、渇水対策もさらに必要になるかもしれません。
河川管理施設または河川法第二十六条第一項の許可を受けて設置される工作物のうち、ダム、堤防その他の主要なものの構造について河川管理上必要とされる一般的技術的基準を定めた法令。
ダムについては、主に安全上の観点から、構造の基本やダムの高さ、設計荷重、洪水吐き、減勢工、水門(ゲート)および荷重、計測装置、低水放流設備、地滑り防止、漏水防止、樹林帯などについて規定されています。
「法令データ提供システム/総務省行政管理局」(外部サイトへリンク)
ダムなどのパンフレットやHPには、「EL」表示が盛んにでてきます。読み方はイーエルとかエレベーション(ELevation)ですが、日本語表示すると「(海抜)標高」の意味です。
山地地形を立体的に利用するダムでは、たとえばダムのてっぺん(天端:てんば)を表す場合に、EL.450.5mなどと表記しますが、これは地図にある等高線を想像していただき「標高450.5mの高さ位置ですよ」といっていることになります。
ダムの集水面積とは、ダム上流で降った雨が最終的にはダムに流れてくると想定される範囲の面積をさし、流域面積(ダムの上流域)ともいいます。記号ではC.A.となりCatch Areaの略です。
なお、流域とはある河川への雨水の供給源となる地形的区域をいいます。
一般に流域面積とは、ある河川の全体をさすなど広範囲な場合に用いることが多いようです。
ダムの直接流域面積と間接流域面積について
・直接流域とは、右の写真のように降った雨が自然にダムに集まる地形区域の面積を指し、どんなダムも持っています。
・間接流域とは、人工的に築造した水路やトンネル導水などで本来ならダムに流れてこない流域の水をダムに導くようにした場合に、その増加した流域面積分を指します。
当県の余呉湖ダムは間接流域を持っています。
となりあう河川などの流域の境界。山地部では通常、山の尾根部ですが、分水界、流域界は物理的には地表水だけでなく地下水脈も含めた水の流動の境界であるため、厳密には地形上の尾根とは一致しないかもしれませんが、洪水を扱う治水計画では一般に地形的に設定します。
前記「集水面積」の説明の写真の黄色線部分です。
淀川水系とは、大阪湾に流れ込む淀川と、淀川につながる上流域すべての河川湖沼全体を意味します。
流域面積は8240平方キロで、そのうち47%の3848平方キロが琵琶湖流域です。
××年に1回起こるとかいう想定の洪水のこと。正確には対象流域においてある発生(生起)確率を有する規模の洪水で、この確率はその洪水の規模を超える確率(年超過確率)で表現されます。
例えば、ある規模を越える洪水の発生する確率が50年に一度相当あれば、その洪水は50分の1の確率と呼ばれます。
治水計画で必要な規模の洪水を算定するために用いた複数の降雨波形。対象降雨は降雨量の年超過確率、降雨の時間分布および地域分布について雨量観測資料に基づいて選定します。
前図の例で9019とあるのは、1990年の90と台風19号の19をとったものです。県下に被害をもたらせた平成2年の台風19号の雨量をもとに作成されたある流域内の推定の平均雨量となります。
短時間の降雨の強さを表すために単位時間当たりの降雨量で表したもの。一般には 1時間あたりの降雨量(mm/hr)を単位として用いられますが、よく聞く「 1時間雨量」は毎時0分から60分間の降雨強度平均値となります。
河川の洪水による災害防止または軽減のため、その河川で必要な確率で想定された洪水の最大流量およびその波形でダムなどによる調節がないとした場合のものです。治水ダムなどによる調節後の流量は計画高水流量といいます。
前図の例では青字が基本高水流量です。
(「きほんたかみずりゅうりょう」と読むことがあります)
河川の洪水による災害防止または軽減のため、その河川で必要な確率で想定された洪水の最大流量およびその波形(基本高水流量)を、治水ダムなどにより調節した場合の流量です。なお治水ダムなどの調節施設のない河川の場合は、基本高水流量と計画高水流量は等しくなります。
法令上は「河川整備基本方針に従つて、過去の主要な洪水及びこれらによる災害の発生の状況並びに流域及び災害の発生を防止すべき地域の気象、地形、地質、開発の状況等を総合的に考慮して、河川管理者が定めた高水流量をいう。」とされています。
(「けいかくたかみずりゅうりょう」と読むことがあります)
河川の堤防やダムなどは想定された洪水で計画・整備されますが、その想定を超える洪水をいいます。大きく想定を超えたときは、堤防の場合は水があふれたり堤防が破壊したりし、ダムでは最終的にダムへの流入量とダムからの放流量が同じになります。想定を超える程度が小さければ、堤防は持ちこたえ、ダムでは放流量がダムへの流入量より小さく洪水調節効果が継続することも期待できます。
治水関連ダムの調節量は、洪水時にダムに入る水量とダムから出て行く水量の差でダム地点での洪水の低減量を表します。
一般にはダムへの流入が最大となるときの流入量とその時刻の放流量との差で表示されます。
ダムなどで洪水を貯めて下流の川の水量を減らすこと。ダム放流量を制御しながらダム貯水池に洪水の一部をためることで、ダム下流での洪水被害を軽減することになります。
洪水調節の放流量コントロール方式で分類すると、「自然調節方式」、「一定量放流方式」、「一定率一定量方式」などがあり、河川の状況や地域の水文的特性、貯水池の大きさ、放流設備構成、操作の確実性、維持管理面など総合的に勘案して選定しますが、近年の小規模のダムなどでは多くが自然調節方式を採用します。
ダム放流量を人が制御していく機械式水門を装備していないダムの洪水調節方式です。流入した洪水の一部はダムに設けられた常用洪水吐き(穴)から放流され、放流量は穴の大きさとダムの水位(水圧)によって自然に(自動的に)変化していきます。ダムによっては機械式水門を備えているものの、洪水調節中には水門を開閉調節せず、一定の開度で固定する定開度調節方式も広義では自然調節方式です。
小さな流域で水の出が早く、人による操作が困難な場合などに用い、一般に貯水容量は機械式水門のあるダムに比べ大きめになりますが、近年の小流域ダムでは標準的な方式です。
所管ダムでは宇曽川ダム、姉川ダムなどがこの方式です。
一定の流量(ダムごとに決めた洪水量)以上をダムに貯め、その流量以上の放流を行わない方式です。
洪水調節での基本的なピークカット方式で、逆に言うとその流量以下の洪水の場合は、ダム流入量をダムに貯めないでそのまま放流します。下流の川に流せない量だけをダムが部分的に貯水していきます。
所管ダムでは日野川ダムや余呉湖ダムがこの方式です。
ある流量から計画の最大流量まではダムへの流入量に一定の率をかけた量を放流し、最大の流入量に達した後はそのときの放流量で一定量放流する方式です。
下流の川の流下能力が相当低いときに用いる方式で、所管ダムでは、青土ダムや石田川ダムがこの方式です。
機械式水門などを持っているダムで、洪水調節中には水門を一定の位置(開度)にとどめておき、開度変更を行わない方式で、洪水調節中は自然調節方式と同じ状態となります。
下流での洪水の時間変化のうち、もっとも最大となる時間帯のみをねらって効率的にダムに貯留していく方式ですが、洪水の変化を精度よく予測できなければならないため水の出の早い小さな流域の河川では採用がきわめて困難です。
鍋底カットとかバケットカットとも呼ばれています。
ダムが計画規模を上回る洪水を受けて満水になってもダム自体が損傷しないようにするダムの放流設備などの構造設計上の想定流量。
ダムの設計においては、洪水調節計画の対象洪水よりも大規模な洪水が発生した際にも、ダムが損傷を受けないように対策を講じ、ダム下流に被害を及ぼさないようにすることが必要となります。この場合の洪水は、ダム地点で工学上発生すると考えられる最大規模の洪水を考えなくてはなりません。この対象となる流量を設計洪水流量と呼びます。(治水計画上は設計洪水流量より小さい計画高水流量を使用します)
なお、設計洪水流量がダムの洪水吐きを流下するものとしたときの貯水池水位を設計最高水位(設計洪水位)と呼びます。
コンクリートダムの設計洪水流量は、
1.ダム直上流地点において超過確率200年につき1回の割合で発生すると予想される洪水流量
2.ダム直上流地点で発生した過去最大流量
3.ダム直上流地点の流域と水象もしくは気象が類似する流域のそれぞれで発生した過去最大洪水の水象もしくは気象の観測資料より、ダム地点に発生すると認められる洪水流量
1,2,3のいずれか最大の流量を用いることとされています。また、フィルダムの場合には、堤体からの越流が堤体の損傷に結びつく可能性が高いことから、コンクリートダムの場合の1.2倍の流量を採用します。
川もしくは川と洪水調節施設を示した略図上で、主要地点での治水計画上の洪水時流量を表したものです。ダムなどの洪水調節施設があるときは各流量は2段書きとなり、ダムなし流量とダムあり流量を比較できるように書かれています。略して「流配」ともいわれています。
前図は、日野川ダムの流量配分図ですが、基準点増田橋より下流は流量記載がないのはこのダムの治水計画では出雲川流域や他の流域が加わっていくことで、ダムの集水面積にくらべダムで制御できない下流域の流域面積が増大し、洪水調節効果を見込むことが困難になるためです。
川の右岸・左岸とは、川上(上流)から川下(下流)を見た場合で右手側が右岸で、左手側が左岸となります。
なお国土交通省の「洪水等に関する防災用語改善検討会」にて、この用語はわかりにくいため使用するときは「○○市側」などの提言がなされました。
国土交通省HP「洪水等に関する防災用語改善検討会」:
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha06/05/050622_2_.html