ダムには、見た目の違いだけでなく、ダムの目的や構造などによっていろんな種類のものがあります。
ここでは、目的別、材料型式別の分類を簡単に紹介しています。
目的による分類(洪水調節(治水)ダム、発電ダム、上水道ダム、工業用水ダム、農業用水ダム)
*目的が一つだけのものを「専用ダム」、二つ以上のものを「多目的ダム」といいます。
コンクリートダム(重力式ダム、アーチ式ダム、また中空重力式ダム、バットレスダム)
フィルダム(ゾーン型ダム、表面しゃ水壁型ダム、均一型ダム(アースダム))
複合ダム(例コンクリートダム+フィルダム)
台形CSGダム
わが国では、梅雨時期や台風の季節に集中豪雨により短時間に川の水が増水することが多いことから、上流で一時的にダムで水を貯めて下流の水を抑制することが有効な場合があります。このような場合に、河川管理者(国土交通省や都道府県河川部局など)により洪水調節ダムが計画されます。
一般には、下流の川の改修との組み合わせで、必要に応じて上流に洪水調節ダムが計画されます。
高度経済成長期(1960〜1975年頃)には、主に電力会社により大型の水力発電ダムが造られました。日本一の高さを誇る黒部ダム(高さ186m)も発電ダムです。事業を実施するのは電力会社のほか、地方自治体公営企業部局や製紙・化学・金属・鉄道会社などがあります。
水力発電は、自然に循環する川の水の流れ落ちる力を利用して、水車を回し電気を起こすので、燃料がいらず、大気環境上きれいで有効な資源の活用方法の一つです。現在では火力や原子力による発電が主流ですが、天然化石資源を消費しないクリーンな発電方法として、今後も大切な役割を担っていくものと考えられます。
人々の生活水準の向上と産業の発展により、上水道用水や工業用水の需要は増加しました。このため、渇水時においても安定した生活用水、工業用水を供給できるように水を貯めておくのが上水道ダム、工業用水ダムです。事業者は地方自治体水道部局が単独で実施する場合と、国や都道府県が実施するダムに相乗りする場合がありますが後者の例が多いと思われます。
ダムで水を貯めるといっても限界がありますから、まずは節水を心がけることが重要です。
なお、上水道・工業用水を併せて、ダムでは都市用水とも呼んでいます。
私たちの主食である米は、春の田植えから秋の収穫に至るまで、たくさんの水を必要とします。このため、古来より水田に安定した水を供給するため、たくさんの農業用ため池が造られてきました。このため池が農業用水ダムのルーツです。今日では、これが川の上流に造られ、安定した水を供給することにより、安定した収穫に役立っています。事業者は農水省や都道府県農業部局、土地改良団体なとがあります。
コンクリートを材料として造られるダムで、貯めた水の圧力を支える構造の違いによって、重力式ダム、アーチダム、中空重力式ダム、バットレスダム等の型式に分けられます。
●重力式コンクリートダム(多い)
ダム本体の重さで水圧を支えるダムで、横から見ると(断面図では)直角三角形に近い形をしています。
上から見た形が半円形や放物線のようにアーチ状になったコンクリートダムです。アーチ作用によって、水圧のかなりの部分を両岸の岩盤に伝えて支えます。
●中空重力式ダム(少ない)
内部を空洞にした重力式ダムの変形で、重力式ダムよりコンクリートが少なくてすみますが、構造が複雑で工事に手間がかかるため、あまり造られていません。
●バットレスダム(少ない)
水をせき止めるためのコンクリートの壁(しゃ水壁)と、これを支えるバットレスというコンクリートの擁壁(ようへき)からなるダムです。構造が複雑なため、あまり造られていません。
フィルダムは、土や岩石を比較的緩い勾配で盛り上げて造られるダムです。ダム基礎の面積が広く、水圧やダムの重さが分散されるので、比較的地質の悪いところでも造ることができます。フィルダムは、水を止めるしゃ水壁の構造によって、ゾーン型ダム、表面しゃ水型ダム、均一型ダムに分けられます。
●表面しゃ水壁型ダム
土質しゃ水壁(コア)の代わりにアスファルトコンクリートやセメントコンクリート等で表面をしゃ水するダムです。
河床砂礫などの岩石質の母材を、基本的に分級等の調整を行わずに水とセメントを加えて混合したものを「CSG(Cemented Sand and Gravel)」(工法)といいます。
ダム本体の形状を台形とすることによりCSGをダム本体の材料として使用することが可能となります。
台形ダムとCSG工法を組合せたものが台形CSGダムであり、従来の直角三角形断面のダム(重力式コンクリートダム)に比べて堤体積は大きくなるものの、材料・設計・施工の 3つの合理化が図れることによりコスト縮減ならびに掘削量が軽減するなど環境負荷軽減の効果が期待できる新しい型式のダムです。