コンクリートを堤体材料として、貯水池の水圧荷重を基礎岩盤に伝達することにより荷重に耐える構造物であり、その型式は「重力式」、「アーチ式」、「中空重力式」、「バットレス式」コンクリートダム等に分類されます。
なお一般にコンクリート構造物は寿命がありますが、建物や橋などと違いバットレス式以外の普通のコンクリートダムは主構造に腐食の可能性がある鉄筋を用いていない為、適切な補修により数百年の耐久性があるものと推測されます。
貯水池の水圧荷重やその他の荷重に堤体の重さによって対抗し、これをダム基礎の岩盤に伝えるコンクリート製のダム。
このため、必要な堤体重量を確保した堤体断面(三角形)を有する構造物となります。コンクリートダムとしては最も一般的なものです。
著名な奥只見ダム、浦山ダム、宮ヶ瀬ダム、佐久間ダムなどがこのタイプで、所管ダムでは姉川ダムです。
上から見た形が弓なりのアーチ型なのでこう呼ばれます。アーチ(arch)の持つ力学的特性によって、水圧の大部分を両岸の岩盤に伝えることにより、重力式コンクリートダムと比べ堤体を薄くすることができ、経済的ですが、ダムの両岸の岩盤に伝わる力が大きくなりますので、両岸に良好な岩盤が必要です。
黒部ダム、温井ダム、奈川渡ダムなどが代表的なアーチダムです。滋賀県で最も近くにあるアーチ式ダムは、京都府宇治市にある天ヶ瀬ダムです。前の写真は水資源機構の青蓮寺ダムです。
重力式コンクリートダムの一種で、ダム堤体内部に空洞を設けコンクリートの節約をしたダム型式。
基本的には重力式コンクリートダムと同様な構造を持ったダムですが、中空で自重が少ないので、水重、泥重を期待し、上流面にも勾配(1対0.5程度)をつけます。
コンクリート単価が高く、なおかつ型枠労務費が安い時代に堤体積の節約による経済性の追求を図ったダム型式ですが、現在では施工は、はん雑になりすぎることなどのため、今日我が国では採用されなくなっています。
畑薙第 1ダム、井川ダム、横山ダム、河本ダム、木地山ダムなど昭和30年代から40年代にかけて造られたものが10数例あるのみです。
写真は中空重力式ダムの内部空洞で、底部監査廊から上部を眺めたものです。上部に横切っているコンクリート部は歩くことのできる中段監査廊部分です。
重力式コンクリートダムの一種で、版構造によって水圧荷重を受け、バットレス(buttress:扶壁)によって基礎岩盤へ荷重を伝達するダム型式で扶壁式ダムとも言われます。
中空重力ダムとともに、コンクリート単価が高く、なおかつ型枠労務費が安い時代に堤体積の節約による経済性の追求を図ったダム型式ですが、現在では構造と施工は複雑になりすぎること等のため、今日我が国では採用されなくなっています。
笹流ダム(北海道)、丸沼ダム(群馬)、恩原ダム(岡山)、真立ダム(富山)、三滝ダム(鳥取)など大正から昭和初期にかけて造られたものが数例あるのみです。
バットレスダムの一種で、しゃ水壁に平らなコンクリートスラブを用いるかわりに複数(multiple)の弓なりのアーチ(arch)形を用いて、鉄筋がなくても大きな荷重負担力を持つようにしたもの。
型枠などの施工上の困難性も増加するため、近年では我が国では採用されていません。
日本で考案された新しい型式のダムで、断面の形は台形のダムです。CSGとは Cement(セメント) Sand(砂) Gravel(砂利)を示します。ダム本体の体積は増加しますが、材料(母材)採取の効率がよいことやダム設置場所の掘削量が軽減するなど、環境負荷の低減に寄与します。
写真は台形CSGダムの模型です。
堤体の大部分が土や岩で盛り立て(fill)られているダム(dam)で、その材料により「ロックフィルダム」、「アース(フィル)ダム」などがあります。フィルダムにおいては、基礎地盤に要求される強度は同じ高さのコンクリートダムに比較して小さくてすみます。
堤体のうち、荷重に対する堤体の安定性を受け持つ部分が、主として大きな岩石(概ね最大粒径が10cm〜1m程度:rock)によって盛立て(fill)られているダム(dam)をいいます。遮水部分は、土質材料を用いて堤体内部にコア部として配置されたり、アスファルトやコンクリートを用いて堤体の上流側表面に配置されたりします。
ロックフィルダムは「ゾーン型ダム」と「表面遮水型ダム」に大別され、ゾーン型ダムには中央コア型と傾斜コア型があります。
高瀬ダム、奈良俣ダム、手取川ダム、徳山ダムなどがロックフィルダムです。
所管ダムでは、石田川ダム、宇曽川ダム、青土ダムなどがこのタイプ(中央コア型)です。
土質材料で造られ貯水池の水を止める役目を果たすコア(core:芯、遮水ゾーン)を、ダムの中央に配置したゾーン型のロックフィルダムをいいます。
通常、コア材の上下流側には、コア部を浸透してくる水を安全に排水するとともに、コア材が水によって流し出されるのを防ぐため、フィルターゾーン(半透水ゾーン)が配置され、更に、その外側に水圧や堤体の安定等を受け持つロックゾーン(透水ゾーン)が配置されるのが一般的です。
前の写真は中央コア型の青土ダムの建設中のものです。
土質材料で造られる遮水ゾーンを、ダムの中央部から上流側にかけて傾けて配置したゾーン型ロックフィルダムをいいます。コアの両側にはフィルターゾーン、次いでロックゾーンが配置されます。
グラベル(gravel)とは砂利のことで、ロックフィルダムのように比較的大きな岩塊を使わず、川で採取された砂利を用いて盛立て(fill)たダム(dam)です。
所管の堤高25mの日野川ダムが中央コア型グラベルフィルダムです。一般的な分類上はロックフィルダムの仲間となります。
堤体の大部分が土質材料(earth)で盛立て(fill)られているダム(dam)をアースフィルダムといい、略してアースダムといいます。
アースダムは多くが土質基礎の上に造られ、ダム数も最も多いのですが、堤体の大部分が土質材料で強度上の安定性が低いこと、土質材料の施工は天候の影響を受けやすく、過剰な間隙水圧の発生なども予想されることなどから、高いダムには適さず、多くのダムが堤高30m程度までの比較的低いダムとなっています。
古くからあるかんがい用ため池などはこれに該当し、最近でも作られていますので最も数の多いタイプのダムです。一般に土堰堤(どえんてい)ともいわれていますが、ロックフィルダムとともにフィルダムの一つです。堤高の高いものとしては、清願寺ダム、長柄ダム、中里ダムなどがあります。所管ダムでは日野川ダムの脇ダム部(堤高19m)に用いています。
堤体の大部分が土質材料で盛立てられているダムでゾーニングされたものをいいます。
ゾーン型ダムでは、ダム堤体をいくつかのゾーン(zone:区域)に分け、安全に貯水池に水を貯めるために必要な諸機能を分担させます。このため、堤体の外側ほど強度がありかつ透水性の大きい材料が使われます。
ダム堤体をいくつかのゾーン(zone:区域)に分け、堤体に必要な安全に貯水池に水を貯めるための諸機能を各々のゾーンに一つまたは複数受け持たせるようにして堤体を構成したダムをいいます。ゾーン型アースダム、ロックフィルダム等がこのタイプに属します。
フィルダムの遮水ゾーンをいいます。(core:芯)
一般に土質材料が用いられ、所要の遮水性を有し(通常透水係数で0.00001cm/sec)、浸透破壊に対する抵抗性が大きくかつ施工性の良いものでなければなりません。
写真の中央部分、茶色のところがコアです。
ロックフィルダムなどで、堤体表面の保護や景観を考慮し表面に張り詰められた比較的大きなサイズの岩のことです。(riprap:捨石、粗石で固めたもの)
写真は青土ダムでの工事中のものです。
ダム建設のとき貯水池の周囲にへこんだ箇所があり、必要な貯水容量を確保するためには、河川以外の箇所も締め切る必要がある場合、その部分に建設したダム(締切り堤)を脇堤または脇ダムといいます。
このようなケースでは、区分のため本来の河川を締め切るダムを本堤または本ダムといいます。
所管の日野川ダムには脇堤があります。
日野川ダムでは、昔、日野川が脇堤部分を流下していたようですが、16世紀頃、現在の脇堤あたりを築堤により締め切り、開削により本堤位置を流れるようにしたようです。
ダム貯水池の水面の面積をいいます。治水関連ダムでは、そのダムが洪水時最高水位(サーチャージ水位)の場合の最大湛水面積を示します。
縦軸に標高を、横軸に貯水容量をとり、貯水池の水位と貯水容量の関係を示したグラフをいいます。通称HVカーブです。
前図は宇曽川ダムのものです。このダムは容量の大半が洪水調節容量(治水容量)です。
一般に100年間に流入すると予想される堆砂量に相当する容量としています。
100年たつとダムが埋まるという言い方を聞くことがありますが、正しくありません。正しくは、100年たてばこの堆砂容量だけが満杯になることになりますが、利水容量や洪水調節容量は100年経過後から数百年かけて徐々に減っていきます。
しかし治水を目的に持つダムは比較的大きな洪水用放流設備(穴)があることから、その位置より上に土砂は堆積しにくく、そのようなダムは現実にはダム全体が埋まることはないと考えられます。
ちなみに平成14年より運用開始した姉川ダムでは堆砂容量110万立方メートル、利水容量180万立方メートル、洪水調節容量470万立方メートルで総貯水容量はそれらの合計値の760万立方メートルです。
堆砂容量と最低水位との間に容量がある場合には、この容量を死水容量と呼びますが、多くのダムではこの設定はありません。
発電を目的に含むダムで、水車タービンの特性上、運転のためには一定以上の落差を必要とし、この最小落差を満足させるために設定したダム水位での容量相当となります。
最低水位から平常時最高貯水位(常時満水位)までの容量のことで、利水目的に用いられます。
利水容量の中にはダムの目的に合わせ、機能維持容量、都市用水容量、発電容量、かんがい容量などの組み合わせがでてきます。
正確には「流水の正常な機能の維持」のための容量で、既得取水の安定化と河川環境の保全のため必要な容量です。記号はNです。
近年のダムの場合、過去から取水していた(=既得取水)農業用水や水道の安定化(たとえば10年に1回発生している渇水には耐えられるように)を図った上で、その河川に最低必要な流れを確保する(正常流量)ためにダムに確保する容量です。
古いダムの中ではダム規模の制約から既得取水の農業用水などの安定化のみとしている場合もあります。この場合は「不特定かんがい容量」ともいいます。
水力発電の出力調整のための容量です。記号はPです。
小規模な水力発電では発電コスト軽減のためダム貯水の一部を使用する発電容量を持たず、他の目的で放流される流水の水力エネルギー(流量×落差)を使って発電する従属発電方式のものもあります。この場合、発電出力は発電事業者がコントロールできず、あなたまかせになります。
農業用水のための容量で、特定の新規の取水などに伴う場合は「特定かんがい」記号Aとなります。
一方、既得の農業用水取水の場合など不特定多数を対象とする場合は「不特定かんがい」扱いとなり、分類上は機能維持容量Nに含まれることになります。
平常時最高貯水位(常時満水位)から洪水時最高水位(サーチャージ水位)までの容量のことで、洪水調節に用いられます。
治水容量ともいいます。記号はFです。