人権施策推進課では、人権に関する特集記事「じんけん通信」を毎月、ホームページ上で発信しています。
特集記事にあわせて、ジンケンダーラジオの放送予定と、「わたSHIGA輝く国スポ・障スポ」で実施される競技種目についても掲載しています。
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令和7年(2025年)7月(第207号)
近年、ビジネスと人権の関係が注目されています。
企業が行う事業活動には、ハラスメントや差別、長時間労働など、様々な人権侵害が発生するリスクがあります。人権侵害を防止・軽減するために、企業に対して人権尊重を求める動きが国際的に加速しています。
今回は、「ビジネスと人権」についてわかりやすく解説します。
企業が行う事業活動は、従業員や消費者、地域住民など様々な人との関わりがあり、人権と密接に結びついています。
企業は、事業活動にかかわるすべての人の人権を尊重する必要があります。
企業の経済活動のグローバル化に伴い、途上国における強制労働や児童労働、環境破壊等の状況を背景に、2011年に国連の人権理事会で「ビジネスと人権に関する指導原則」(以下「指導原則」という。)が全会一致で支持されました。
この指導原則に法的拘束力はありませんが、すべての企業に、人権を尊重した行動をとるよう求めています。
国内においても、2020年に「『ビジネスと人権』に関する行動計画」、2022年に「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」が策定されました。
近年、企業による人権尊重の取組が重視されています。
「ビジネスと人権」に関する国内外の状況を踏まえ、滋賀県においても、2024年に改定した滋賀県人権施策推進計画に項目を追加しました。
県は事業者に対して、人権尊重の視点に立った企業活動を推進するよう、啓発を行うこととしています。
どのような企業にも、事業活動に伴って様々な人権侵害が発生するリスクがあります。具体的な例を見て考えていきましょう。
A社では、従業員がパワハラやセクハラ被害を訴えていましたが、社内で適切に対応されることなく、放置されていました。
ある日、その問題がメディアで取り上げられると、A社には多くの批判が寄せられ、企業のイメージダウンを招きました。
B社は、C社に業務を委託しています。C社では、B社から指示された納期に間に合わせるため、長時間労働が常態化していました。
この問題がSNSに投稿され、拡散されました。
B社は、メディアの取材に対して「これはC社の問題であり、B社には関係ない」と答えたところ、批判が相次ぎました。
D社は、海外のE社から原材料を仕入れ、部品を製造しています。
このE社では、従業員を極端な低賃金で無理やり働かせていました。
D社はこのことを把握していましたが、原材料を安価で仕入れることができることから、E社との取引を続けていました。
この問題がメディアで取り上げられると、E社だけでなく、D社に対する批判も相次ぎました。
F社は新商品のPRのため、動画広告を制作・配信しました。
しかし、その動画には人種差別を助長するような表現が含まれており、視聴者からの批判が殺到し、炎上しました。
SNSでは、F社製品の不買運動や、F社との取引中止を求める署名運動が呼びかけられました。
F社の新商品は、販売中止に追い込まれました。
企業には、自社の従業員はもちろんのこと、取引先の従業員や顧客、地域住民、消費者などの人権も尊重し、人権侵害を防止・救済する責任があります。
また、国連の指導原則では、企業自らが直接的に引き起こしている人権侵害だけでなく、間接的に関与している人権侵害についても対応する必要がある、としています。
先ほどの例2、3のような場合には、「取引先の人権侵害を助長した」として、責任が問われることがあります。
先ほどの4つの例に共通しているのは、人権侵害のリスク(実際に発生している人権侵害・発生する可能性のある人権侵害)に対して不十分な対応をしたことにより、企業が対応に追われたという点です。
情報が急速に広まりやすい現代において、人権侵害のリスクへの不十分な対応は
・企業のイメージダウン
・不買運動、炎上
・人材流出
・売上の減少、株価の下落
・訴訟
など、企業の経営リスクにもつながるおそれがあります。
ここまで、人権侵害のリスクが企業に及ぼすマイナスの影響についてご説明しましたが、逆の観点から考えると、人権を尊重した取組・対応をすることで、企業のイメージアップにつながります。
企業は、どのようなことに取り組むべきなのでしょうか。
人権方針とは、自社が人権を尊重する責任を果たすことを約束する文書です。
この方針は、策定・公表したら終わりではなく、従業員への周知や研修の実施等により、企業全体に定着させる必要があります。
「人権デュー・ディリジェンス」とは、企業が人権侵害のリスクを把握し、対応や予防策を講じる仕組みのことをいいます。
具体的なステップは、次のとおりです。
自社の事業活動やサプライチェーン※において、どのような人権侵害が発生しやすいのかを調査・確認します。
※サプライチェーン…原材料の調達から消費までの一連の流れ
人権侵害リスクを特定したら、重大なものから状況や原因、自社との関わりを確認し、優先順位を検討します。
【取組の例】
・従業員の勤務状況の把握
・従業員に対するアンケート・ヒアリングの実施
・取引先への質問票の送付
・自社や取引先の工場等への訪問
自社が人権侵害のリスクを引き起こしている・助長している場合は、リスクの防止・軽減措置を講じます。
また、取引先が人権侵害のリスクを引き起こしている・助長している場合は、その企業に働きかけ、リスクの防止・軽減に努めます。
【取組の例】
・製品設計の変更
・生産・納品の期間の見直し
・従業員向けの制度の見直し
・人権研修の実施
1で特定した人権侵害リスクが軽減したかや、2でとった対応策に効果があったかを確認・検討します。
【取組の例】
・従業員や取引先へのヒアリングの実施
・取引先への質問票の送付
・自社や取引先の工場等への訪問
・内部監査や第三者による調査の実施
特定した人権侵害のリスクや、それに対してどのように対応したかなどを、企業のホームページ等で公表します。
「人権デュー・ディリジェンス」に関する情報を公表することで、透明性の高い企業として評価されることが期待できます。
★万博でも、「人権デュー・ディリジェンス」が実施されています!
現在開催されている大阪・関西万博では、万博に関わるすべての人の人権を尊重するため、万博史上初となる人権デュー・ディリジェンスが実施されています。
(具体的な取組)
・人権方針の策定と遵守
・人権に関する負の影響(人権リスク)評価の実施
・人権への負の影響を防止、軽減する方策(研修の実施等)
・人権に関する通報受付窓口の設置(救済へのアクセス)
企業は、自社が人権侵害を引き起こしたり、助長していることが明らかになった場合は、救済を実施します。
また、取引先が人権侵害を引き起こしたり、助長している場合は、その企業に働きかけ、人権侵害の防止・軽減に努めます。
【取組の例】
・謝罪
・原状回復
・補償
・再発防止策の構築・表明
どのような企業でも、人権侵害のリスクを完全に避けることは難しいですが、それを踏まえて、企業がどのような取組・行動をするかが重要です。
人権を尊重した企業を目指す第一歩として、まずは自社や取引先などにどのような人権侵害のリスクがあるかを調べてみませんか。
また、企業だけではなく、顧客や消費者も重要な役割を担っています。商品を買う時やサービスを受ける時、就職先、投資先に、人権を尊重した企業を選んでみませんか。
社会全体で「ビジネスと人権」を意識して、人権が尊重される社会をつくっていきましょう。
県では、日々の暮らしの中で人権について考え、行動につながるきっかけとなるよう、エフエム滋賀(e-radio FM77.0)で人権啓発ラジオ番組を放送しています。※「style!」の番組内
【今月の放送予定】
毎週火曜日9時30分頃~(5分間)
7月1日・・・「就職と人権」
7月8日・・・「刑を終えた人の人権」
7月15日・・・「夜間学校」
7月22日・・・「ハンセン病」
7月29日・・・「インターネット上の人権侵害1 加害者にならないために」
番組には、エフエム滋賀のパーソナリティー林智美さんと、滋賀県人権啓発キャラクター「ジンケンダー」が出演しています。ちょっと難しい人権課題を、毎週わかりやすく解説しています。
放送から1週間以内であれば、「radiko」(アプリ)で聴くこともできます。ぜひお聴きください!
じんけん通信では、本年開催の「わたSHIGA輝く国スポ・障スポ」に合わせて、「障スポ」で実施される競技種目を毎月紹介しています。
今回は、正式競技の1つ、「サッカー」の概要について、ご紹介します。
◆サッカー
知的障害のある選手が出場する競技です。
ルールは一般のサッカーと同じで、前後半各30分(決勝戦は前後半各35分)で競技を行います
詳細は、大会公式ホームページをご覧ください♪
https://shiga-sports2025.jp/shospo
●“社会を明るくする運動”強調月間
~犯罪や非行を防止し、立ち直りを支える地域のチカラ~ 強調月間
“社会を明るくする運動”は、すべての国民が、犯罪や非行の防止と罪を犯した人たちの更生について理解を深め、それぞれの立場において力を合わせ、犯罪や非行のない安全で安心な明るい地域社会を築こうとする、法務省が提唱する全国的な運動です。強調月間である7月を中心に、1年を通じてSNSを活用した広報活動等に力を入れて取り組まれています。
●再犯防止啓発月間
法務省では、7月を「再犯防止啓発月間」と定めています。県では、関係機関が一丸となって、生きづらさのある人に寄り添いながら、犯罪が選択肢とならないような社会環境をつくるとともに、それがひいては被害者を生み出さない社会となることを目指して、令和6年に第二次滋賀県再犯防止推進計画を策定しました。
●青少年の非行・被害防止滋賀県強調月間
内閣府では、7月を「青少年の非行・被害防止全国強調月間」と定めています。本県においても、同月を「青少年の非行・被害防止滋賀県強調月間」とし、関係機関・団体、地域住民等が青少年の非行と犯罪被害に対する共通の理解と認識を深め、青少年はもとより、社会全体が規範意識を高め、社会環境の浄化を図るための諸施策・諸活動を集中的に実施し、青少年の非行や被害の防止と保護の徹底を図ります。
●なくそう就職差別 企業内公正採用・人権啓発推進月間
県および市町では、企業の経営者や従業員等が同和問題をはじめとする人権問題に対する正しい理解と認識を深め、差別のない明るい職場づくりを推進するため、企業における就職差別の撤廃と同和問題をはじめとする人権研修がより一層充実・強化されるよう、毎年7月を「なくそう就職差別 企業内公正採用・人権啓発推進月間」とし、各種啓発活動を行っています。
●16日性同一性障害者特例法の公布
平成16年(2004年)のこの日に公布。性同一性障害である場合、家庭裁判所の審判を経て、戸籍上の性別を変えることができるようになりました。
●30日人身取引反対世界デー
国連により、平成26年(2014年)に定められました。労働や性的サービスを強要する人身取引の問題を世界中の人に知ってもらうため、キャンペーンが展開されます。