人権施策推進課では、人権に関する特集記事「じんけん通信」を毎月、ホームページ上で発信しています。
特集記事にあわせて、ジンケンダーラジオの放送予定と、「わたSHIGA輝く国スポ・障スポ」で実施される競技種目についても掲載しています。
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令和7年(2025年)9月(第209号)
滋賀県では、同和問題についての理解と認識を深め、差別の解消をはかるため、毎年9月を「同和問題※啓発強調月間」と定め、集中的に啓発に取り組んでいます。
今回は、部落差別の歴史や実態について学ぶため、大阪府堺市にある舳松(へのまつ)人権歴史館を訪問・見学し、学芸員の方からお話を伺いました。今回はその内容をご紹介します。
※同和問題…同和地区・被差別部落などと呼ばれる地域の出身であることや、そこに住んでいることを理由に、結婚を反対されたり、就職や日常生活のうえで様々な差別を受けたりするという日本固有の人権問題
堺市立人権ふれあいセンター内に、舳松人権歴史館はあります。
館内には、展示コーナーや阪田三𠮷記念室、人権資料・図書室があります。
展示コーナーには、実物の資料や再現模型もあり、部落差別について詳しく学ぶことができます。
かつての村の名前です。現在も、当時の地名が大切にされています。
部落差別の始まりは、江戸時代ごろからと考える人が多いのではないでしょうか。
江戸時代は、武士・町人・百姓といった身分制度がありました。また、「えた身分」や「ひにん身分」などの被差別身分もありました。これらの人々は、住む場所や仕事、結婚などで厳しい差別を受けていましたが、死んだ牛や馬の処理や皮革業、地域の警備など、生活に欠かせない仕事についていました。
しかし、江戸時代が始まる約30年前、堺を訪れたポルトガルの宣教師ルイス・フロイスは、著書『日本史』の中で、「死んだ動物の皮をはいで、その皮を売ることを職とし、村から離れて暮らしている人がいる」(1569年)と記しています。このことから、部落差別は中世から存在していたと考えられています。
村で生産した履物はよく売れ、この当時の、こうした産業のある被差別部落の人々は極端に貧しい生活ではありませんでした。
明治に入ると、「えた・ひにんの名称を廃止し、身分・職業とも平民と同じにする」という「太政官布告(いわゆる解放令)」が発令されました。しかし、これは単に蔑称の廃止を宣言したにとどまり、差別はなくならず、人々の生活が苦しくなりました。
館内には、被差別部落に住む人々がどのような生活を送っていたのかを再現した模型があります。
四畳半の一間に、内職をする母親と娘、雨で仕事ができずに寝転がる父や息子がいます。台所はなく、雨漏りもしています。
下駄の修理を行っている男性の姿があります。他人の家の軒先を借りて仕事をしていたので、雨の日は仕事ができなかったのです。
ほかにも、屑物を集めたり、死牛馬の処理で培った技術を生かした と畜業につく人もいました。不安定な仕事ながら、専門的な技術を磨いていました。
家と家の間の路地「はんらく」も再現されています。語源は諸説ありますが、「傘や体を半分にしたら楽に通れる」からきていると考えられています。それほど幅の狭い路地でした。
便所は共同です。朝は列ができてしまい、長い時間待つ必要があったそうです。
この便所の近くに生活用水として使う井戸がありました。雨が続くと汚水が井戸のほうに流れ、衛生的に問題がありました。トラホームという目の病気にかかる人も多かったといいます。
将棋名人阪田三𠮷
舳松人権歴史館には、「阪田三𠮷記念室」が設置されています。
阪田三𠮷は、明治から昭和初期にかけて活躍した大変有名な将棋の棋士です。
三𠮷は、家が貧しく学校に通えず、文字の読み書きができませんでしたが、はんらくで大人たちがさす将棋を見て、独学で将棋を覚えました。また、生涯師匠にはつかず、実戦で鍛えました。
彼が亡くなった9年後、その功績が認められ、日本将棋連盟から名人位・王将位が送られています。
劣悪な環境にいた被差別部落の人々は、「差別の原因は、差別される側の環境、風紀、生活状態にある。そこから改善しなければならない。」と考えました。
そこで、多くの村の人々がお金を出し合って、共同浴場を作りました。風呂に入って体をきれいにして、差別されないようにしよう、という考えでした。
地元出身の泉野利喜蔵(いずの りきぞう)は、地元の青年たちと「一誠会」を立ち上げ、教養を身につけることにしました。その中で、部落差別は自分たちに原因があるのではなく、社会に原因があることを知ります。
彼は、全国水平社の設立に関わったほか、地元においても水平社を設立し、地域ぐるみで部落差別に立ち向かいました。
部落解放を自らの手で勝ち取ろうとする気運が全国的に高まり、大正11年(1922年)に京都の岡崎公会堂で全国水平社の創立大会が開かれました。
水平社運動により、部落差別がいかに不当であるかを社会に認識させることとなりました。
堺市の調査によると、1960年、この地域の住宅の81%以上が老朽化しており、倒壊寸前のものもあったそうです。
この問題について、地域の人々が団結して、堺市との交渉を行いました。
1960年、全国で初めて、住宅を改良する地区として指定を受けました。その2年後に改良住宅が完成しました。
また、道路や水道、排水なども整備され、暮らしが大きく改善しました。
被差別部落には、文字の読み書きができない人々が多くいました。差別により貧しく、家計を助けるために働かざるをえないなど、学校に通えない事情がありました。
安定した仕事につくためには、文字の読み書きは欠かせません。そこで、小学校の先生を講師とした識字学級が始まりました。
文字を獲得することは、生きる喜び、自信につながりました。
なお、識字学級は現在も続いているそうです。
今年は、同和問題を解決する本格的な取組のきっかけとなった、「同和対策審議会答申」が出されてから60年の節目の年です。
しかし、今もなお、被差別部落にある学校への入学を避けるなど、差別意識が残っています。
また、インターネット上に被差別部落の様子を写した写真や動画が投稿されるなど、悪質な差別も見られます。
舳松人権歴史館を訪問して、差別の歴史が長く続いていることや、差別によって貧しく苦しい暮らしを送らざるをえなかった人々がいたことがわかりました。
インターネットが普及した今、部落差別は、“そっとしておけば、いつかなくなる”というものではありません。歴史を正しく知り、差別をなくしていこうという意識を持つとともに、一人ひとりが具体的に行動していくことが大切です。
展示から感じた、差別をしてはいけない・許してはいけないという思いを、多くの方に知っていただきたいです。ぜひ、みなさんも一度、舳松人権歴史館を訪れてみてはいかがでしょうか。
・所在地
大阪府堺市堺区協和町2丁61-1
・開館時間
9時 30 分~18 時30分
・休館日
月曜日(祝休日の場合は開館)・年末年始
・入館料
無料
・電話番号
072-245-2536
・アクセス
阪堺線「御陵前駅」下車、南海バス「旭ヶ丘北町バス停」「協和町バス停」下車
県では、日々の暮らしの中で人権について考え、行動につながるきっかけとなるよう、エフエム滋賀(e-radio FM77.0)で人権啓発ラジオ番組を放送しています。※「style!」の番組内
【今月の放送予定】
毎週火曜日9時30分頃~(5分間)
9月 2日・・・「同和問題1~同和問題とは~」
9月12日・・・「同和問題2~身元調査とは~」
9月16日・・・「高齢者の人権」
9月23日・・・「同和問題3~差別発言・書き込み~」
9月30日・・・「里親制度」
番組には、エフエム滋賀のパーソナリティー林智美さんと、滋賀県人権啓発キャラクター「ジンケンダー」が出演しています。ちょっと難しい人権課題を、毎週わかりやすく解説しています。
放送から1週間以内であれば、「radiko」(アプリ)で聴くこともできます。ぜひお聴きください!
じんけん通信では、本年開催の「わたSHIGA輝く国スポ・障スポ」に合わせて、「障スポ」で実施される競技種目を毎月紹介しています。
今回は、オープン競技の1つ、「SOバドミントン」の概要について、ご紹介します。
◆SOバドミントン
知的障害のある選手が参加できる競技です。
基本的なルールは一般のバドミントンと同じです。試合は、シングルス21点ゲームで行います。
また、健常者とペアを組むユニファイド競技も実施されます。
詳細は、大会公式ホームページをご覧ください♪
https://shiga-sports2025.jp/shospo
●同和問題啓発強調月間
滋賀県および県内市町では、県民のみなさんが同和問題についての正しい理解と認識を深め、県民一人ひとりが部落差別をはじめとするあらゆる差別の解消に向けて主体的に行動できるよう、毎年9月を「同和問題啓発強調月間」として、さまざまな啓発事業を集中的に実施します。
●発達障害福祉月間
日本発達障害福祉連盟が主催する啓発月間であり、月間中は、発達障害への関心と正しい理解を深めることを目的とした啓発活動が行われます。
●障害者雇用支援月間
事業主のみならず、広く国民の皆様に対して障害者雇用の機運を醸成するとともに、障害者の職業的自立を支援するため、厚生労働省や独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構をはじめとする関係機関が協力して、様々な啓発活動を行っています。
●認知症月間
令和6年(2024年)1月に施行された「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」において、国民の間に広く認知症についての関心と理解を深めるために、9月を認知症月間と定めています。また、21日を認知症の日と定めています。
●8日 国際識字デー
昭和40年(1965年)9月8日からイランで開催された「世界教育相会議(テヘラン会議)」において、当時のパーレビー国王が各国の軍事費1日分を識字基金に拠出することを提案したのがきっかけで、アメリカのジョンソン大統領が米国議会に9月8日を「国際識字デー」に制定するように呼びかけ、UNESCO(国際連合教育科学文化機関)が制定しました。
●10日 世界自殺予防デー、10日~16日 自殺予防週間
10日はWHO(世界保健機関)が定めた「世界自殺予防デー(World Suicide Prevention Day)」です。我が国では10日から16日までを自殺予防週間としています。悩みを抱えた人たちに広く支援の手を差し伸べていくことで、「誰も自殺に追い込まれることのない社会」を目指しましょう。
●15日 老人の日 、15日~21日 老人週間
だれもが健康で安心して生きがいをもった生活を送ることのできる長寿社会を築いていくことが求められています。このため、9月15日を「老人の日」、この日から21日までを「老人週間」とし、この期間を中心に、国民の間に広く高齢者の福祉について関心と理解を深めるとともに、高齢者に対して自らの生活の向上に努める意欲を促すための広報・啓発活動が国や関係団体により行われます。
●21日 国際平和デー
国連が「国際平和デー」を最初に宣言したのは昭和56年(1981年)です。従来、「国際平和デー」は毎年9月の国連総会開会日に制定され、開会式では各国代表がこの日を記念して1分間の黙祷を行うことが慣例となっていました。平成14年(2002年)からは、毎年9月21日を「国際平和デー」に定め、以後、世界の停戦と非暴力の日として、すべての国と人々に、この日一日は敵対行為を停止するよう働きかけています。
●21日 世界アルツハイマーデー(認知症の日)
平成6年(1994年)「国際アルツハイマー病協会」(ADI)は、世界保健機関(WHO)と共同で毎年9月21日を「世界アルツハイマーデー」と制定しています。アルツハイマー病等に関する認識を高め、世界の患者と家族に援助と希望をもたらす事を目的としています。
●23日 手話言語の国際デー
国連は、平成29年(2017年)12月19日の総会において、この日を「手話言語の国際デー(International Day of Sign Languages)」と宣言する決議を採択しました。決議文では、手話言語が音声言語と対等であることを認め、ろう者の人権が完全に保障されるよう、国連加盟国が社会全体で手話言語についての意識を高めるための手段を講じることを促進するとしています。