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人権教育のための国連10年滋賀県行動計画1-(2)

(2)本県における人権問題の現状と課題
本県では、人権意識の高揚を図るため、これまで同和問題をはじめ女性や障害者等の人権問題の解決に向けた種々の取り組みを進めてきました。そして、平成10年7月に「人権教育のための国連10年滋賀県行動計画」を策定し、この計画に基づき、県民一人ひとりが、あらゆる機会において実施される人権教育を通じて、人権の大切さを認識し、日常生活の数多くの場面において実践に結び付け、人権尊重の意識が着実に根づいた社会を実現することを目指して、さまざまな取り組みを進めてきました。その結果、人々の人権問題に対する理解と認識は徐々に深まってきました。
しかし、人権をめぐる課題は、時代とともに変化しており、ドメスティック・バイオレンス(DV)や児童虐待の深刻化など新たな課題も生まれてきました。特に、女性、子ども、高齢者、障害者、同和問題、外国人、患者については、次のような現状と課題があります。

(女性)
男女平等をうたった新憲法施行から50余年、世界的に男女平等の気運を盛り上げたといわれる「国際婦人年」の制定から25年、20世紀後半は女性の自立と地位向上を求める動きが世界各地で起こりました。この間、わが国でも、「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」を締結するとともに、法律や制度面での整備が進められ、平成11年(1999年)6月には「男女共同参画社会基本法」が施行されました。翌年12月には基本法に基づく新たな国の指針として「男女共同参画基本計画」が策定されました。
本県では、平成10年(1998年)8月に、「男女共同参画推進計画−パートナーしが2010プラン」を策定し、男女共同参画を推進する新たな社会システムの創造、男女共同参画による生き生きとした家庭・地域・職場生活の実現、男女が共に安心して暮らせる環境の整備、女性の人権が尊重される社会の形成を基本目標に具体的な取り組みを進めてきました。
しかし、「男は仕事、女は家庭」といった伝統的な固定的性別役割分担意識に基づく慣習や女性の能力・適性に関する偏見などは根強く、女性に対する不平等、不利益な取り扱い等の不合理が生じており、女性の持てる能力と個性を十分に発揮できていない状況は、いまだに少なくありません。今日、男女が共に、精神的、経済的に、また、生活の場においても自立して互いの人格を尊重し、個人の能力が十分発揮できる社会の早期実現が求められています。
このため、社会のあらゆる分野に男女が対等に参画できる社会を目指して、ジェンダー問題への敏感な視点を持ち、さまざまな場に残る性別による固定観念が払拭されるよう、事実上の平等の達成に向けて努力する必要があります。
また、性犯罪、売買春、ドメスティック・バイオレンス(DV)、セクシュアル・ハラスメントなどの女性に対する身体的・精神的な暴力は、女性の人権を著しく侵害するものです。特に、DVについては、女性の人権に対する意識の高まりもあり、問題が顕在化し、平成13年(2001年)10月には、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(DV防止法)が施行されました。そのほか、つきまとい行為に対して、「ストーカー行為等の規制等に関する法律」が平成12年(2000年)11月に施行されるなど法律の整備が急速に進められました。今後も、女性に対するあらゆる暴力を許さない社会づくりに向けての教育啓発をより一層推進する必要があります。
今後は、平成13年(2001年)12月に制定された「滋賀県男女共同参画推進条例」の基本理念に基づき、県、県民、事業者が一体となった取り組みを強化し、男女の人権が尊重される男女共同参画社会の一日も早い実現を目指します。

(子ども)
少子化や核家族化の進行などにより、子どもと家庭を取り巻く環境は大きく変化しています。その結果、家庭や地域の子育て機能の低下が問題となっています。
このため、子育ての中心は家庭としながらも、地域、学校、企業、行政等の社会全体で子育てを支援していく体制を整えるとともに、就労と子育ての両立を支援するための環境づくりや、男女の子育て参画を促す啓発活動などにより、誰もが安心して子どもを生み育てられ、子どもが健やかに成長できる社会づくりが必要です。
また、親の育児不安や社会からの孤立などにより、子どもへの虐待が多くなっています。児童虐待は、子どもに対する人権侵害の最たるものであり、その後の人格形成に著しい影響を及ぼしかねない大変深刻な社会問題となっています。これを受けて「児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)」が平成12年(2000年)11月に施行され、児童に対する虐待の禁止、国および地方公共団体等の責務、虐待を受けた児童の保護等が定められました。
これらを受けて、子どもへの虐待防止については早期発見、早期援助を行うため、民間団体を含めた地域ネットワークの連携強化や相談体制の充実を図る必要があります。また、子ども自身が身を守るための技能を習得する教育を進めるとともに家庭や地域から暴力を排除する気運を高める啓発が必要となります。
また、いじめは子どもを精神的にも肉体的にも深く傷つけ、人格形成に大きな影響を与えます。特に最近のいじめは、陰湿化、粗暴化の傾向にあり深刻な問題となっています。また、不登校については増加傾向が続いており、その原因はますます複雑化、多様化してきています。
このため、いじめや不登校については、児童生徒一人ひとりの悩みにきめ細かく対応できるよう、相談指導体制の充実を図るとともに、家庭、学校、地域の連携による子どもの人権尊重に向けた総合的な取り組みが必要です。
さらに、IT化が進むにつれ、インターネットによる有害情報の氾濫や携帯電話の著しい普及による出会い系サイトを介した事件等、子どもの福祉を害する犯罪が頻繁に起こり、子どもの人権が容易に侵害されやすい環境になっています。
このため、子どもを取り巻く有害な環境の浄化、子どもの福祉を害する犯罪の取締り、被害にあった子どもに対する保護・支援を推進するとともに、さまざまな問題に主体的に対応できる資質と意欲を有し、活力に満ちた子どもの育成を図ることが必要です。
また、わが国において、平成6年(1994年)4月に「児童の権利に関する条約」が締結され、すべての子どもの基本的人権の尊重が求められていますが、十分周知されていない状況にあり、児童生徒や保護者等に対しても条約の趣旨についてさらに周知を図るとともに、意見表明の機会を提供するなどの条約の具体化に向けた取り組みを進めていく必要があります。

(高齢者)
高齢化の急速な進展に伴い、高齢期を心豊かに生き生きと生活できる社会づくりが求められています。本県では、平成8年(1996年)12月に、「レイカディア新指針」を策定し、超高齢社会に向けて、誰もが生き生きと安心して豊かに暮らせる活力ある社会づくりを目指した取り組みを進めています。
高齢になっても、自分の知識や経験をいかした仕事についたり、さまざまな社会活動に参加したいと考える人は多く、また社会への参画は高齢者の生きがいにもつながることから、これを支援する社会が求められています。
このため、高齢者が社会の重要な一員として敬愛されるよう、高齢者に対する理解を深めるための各種の教育や啓発を進めるとともに、高齢者一人ひとりが個性や主体性を持って社会参画できるよう支援が必要です。
一方、寝たきりや痴呆などで介護を要する高齢者が増加しており、平成12年(2000年)4月から、介護を家族だけに任せず、社会全体で支える新しい仕組みとして介護保険制度がスタートしました。
介護が必要になっても、高齢者自身の希望が尊重され、その人らしい自立した質の高い生活が送れるよう支援する仕組みとして、この制度を根づかせていくことが必要です。また、介護保険制度において、介護保険施設等における身体拘束が原則として禁止され、介護施設内での高齢者の人権に対する一層の配慮が求められることから、この趣旨を徹底する取り組みが必要です。
また、痴呆性高齢者等で判断能力の不十分な人については、財産管理、契約等の経済生活をめぐる権利侵害や身体的暴力、世話の放棄・拒否・怠慢など家庭内での虐待等の事例が生じていることから、民法の一部改正等により、平成12年(2000年)4月から、自己決定の尊重の理念と本人の保護との調和を目的に新しい成年後見制度が始まっています。
このため、新しい成年後見制度の活用を視野に、財産管理と身上監護の両面における権利擁護のための相談支援を行う機関として県社会福祉協議会が設置運営する権利擁護センターの事業推進とあわせて、市町村域等身近な地域での財産管理サービス提供体制を充実していくことが必要です。

(障害者)
本県では、これまでノーマライゼーション*の理念の下、障害者等の行動を阻むさまざまな障壁を取り除き、障害者の自立と社会・経済・文化活動への参加を促進する取り組みを進めてきました。
また、障害者の立場に立った障害の早期発見・早期療育、障害者のライフステージの各段階に応じた福祉サービスの支援、雇用や福祉的就労*等の確保など、障害者が身近な地域で安心して生活していくための各種の取り組みを進めてきました。
平成13年(2001年)7月には、これまでの取り組みを踏まえて、「滋賀県障害者施策長期構想2010」を策定し、障害のある人もない人も、誰もが安心して生き生きと生活できる地域社会を目指した取り組みを進めています。
また、国においては、平成12年(2000年)6月に、「社会福祉事業法」等が改正され、利用者の立場に立った社会福祉制度の構築等が進んでいます。
しかし、現状では、ノーマライゼーションの理念は十分浸透しているとは言い難く、障害および障害者についての理解や認識はまだまだ不十分な状況です。特に精神障害者については障害者施策の中でも法に基づく位置づけや取り組みが遅れていたことから、社会的な誤解や偏見が根強く存在しています。
このため、障害のある人もない人も共に社会を構成し、一人ひとりがかけがえのない存在であるとの認識が深められ、人間としての尊厳が重んじられるような地域社会を築いていくための教育や啓発が一層必要です。
また、障害者が働く意思と能力を持っているにもかかわらず、就業機会にめぐまれない状況もあり、このため今後も障害者の職業的な自立を支援する取り組みが必要です。
また、知的障害者、精神障害者等で判断能力が不十分な人については、財産管理、契約等の経済生活をめぐる権利侵害、身体的暴力、世話の放棄・拒否・怠慢など家庭内での虐待等の事例が生じていることから、民法の一部改正等により、平成12年(2000年)4月から、自己決定の尊重の理念と本人の保護との調和を目的に新しい等により、平成12年(2000年)4月から、自己決定の尊重の理念と本人の保護との調和を目的に新しい成年後見制度が始まっています。
このため、新しい成年後見制度の活用を視野に、財産管理と身上監護*の両面における権利擁護のための相談支援を行う機関として県援を行う機関として県社会福祉協議会が設置運営する会が設置運営する権利擁護センターの事業推進とあわせて、市町村域等身近な地域での財産管理サービス提供体制を充実していくことが必要です。
 

(同和問題)
同和問題の早期解決を図るため、同和対策審議会答申を受け、昭和44年(1969年)に「同和対策事業特別措置法」が施行されて以来、平成13年度(2001年)まで30有余年にわたり、特別措置法の下で、特別対策および一般対策を活用し、関係諸施策を総合的かつ計画的に推進してきました。
その結果、生活環境の改善整備を中心とする物的事業は計画事業をすべて完了するなど、相当の成果を収めたところですが、教育、啓発、就労などの分野においてなお課題が残されている状況があります。平成14年度(2002年度)以降は、これらの課題については、一般対策でその解決を図っていくこととなります。
こうした中、県民の同和問題に関する理解と認識については、これまでの教育・啓発の取り組みにより徐々に深まってきていますが、心理的差別は、結婚問題を中心になお解消しきれていない状況があり、いまだに予断と偏見による差別事象が発生しています。また、企業等における身元調査や、同和問題に対する誤った意識に乗じて、何らかの利権を得るため、同和問題を口実にして不当な利益等を求めるえせ同和行為*も発生している状況があります。
今後も、次に述べるような今日までの取り組みの成果と反省を踏まえ、同和教育、啓発活動を展開する必要があります。
学校教育においては、同和問題についての正しい理解・認識を培い、人権尊重の実践的態度を育成することを目指して、同和教育を学校教育の全領域に位置づけた取り組みが定着するとともに、同和問題をはじめとするさまざまな人権問題にも視点を当てた学習が推進されてきましたが、今後は、これまでの同和教育の取り組みに点検と反省を加えながら、人権教育の観点からも一層深める必要があります。また、同時に、同和地区児童生徒の学力の向上と進路の保障を図る取り組みが進められたことによって、同和教育は着実に成果を上げてきましたが、高校・大学への進学率や高校中退率の全県との格差が依然解消しきれていないなど、なお課題を残しており、今後は、すべての児童生徒の学力の向上と進路の保障を図る観点から、課題を抱える個々の児童生徒への指導育成の中で適切に対応していく必要があります。
また、社会教育においては、県民一人ひとりが同和問題の解決を自らの課題として捉え、人権尊重の精神を暮らしに具現化するよう、推進体制の充実や学習機会の拡充等に努めてきました。その結果、社会教育関係団体の中に、同和教育が適切に位置づけられるようになるとともに、地区別懇談会等の取り組みを通して自主的に活動する意欲も高まってきました。しかし、参加者に一部固定化する傾向がみられたり、同和問題を暮らしや地域課題と結び付けた学習に弱さがあるなど、不十分な面もみられることから、地域課題や学習者のニーズの把握に努め、これらに応える効果的な学習内容や学習方法について、さらに検討を加えるとともに、地域住民が同和問題をはじめとするさまざまな人権問題を自分自身の問題として捉え、一人ひとりの人権が尊重されるまちづくりにつなげられるよう、学習機会の拡充に努める必要があります。
同和地区内の教育・文化の向上を目指す取り組みは、地域総合センターを中心に、地区住民の自立意欲と連帯意識を高めることを基本として取り組まれ、住民の教育・文化活動に対する関心や意欲も高まってきましたが、必ずしも住民主体のものとなっていない状況もあります。今後は、すべての地域で、住民のニーズや日常生活に密着した自主的な活動や地域連帯意識に支えられたまちづくりの取り組みの推進を図る必要があります。
啓発活動については、県域啓発、市町村域啓発、企業啓発等を中心に展開するとともに、これらの活動をさらに効果的に進めるため、毎年7月を「企業内同和問題啓発強調月間」に、9月を「同和問題啓発強調月間」に設定し、集中的な啓発活動にも取り組んできました。
県域啓発においては、県民全体を対象にした同和問題に関する基礎的な理解の促進と、人権意識の高揚を図るための気運を醸成するため、広報紙(誌)の発行、新聞・テレビ・ラジオ等のマスメディアや啓発映画・ビデオなどの視聴覚媒体の活用、講演会等のイベントの開催などの啓発活動を実施してきました。その結果、県民意識調査等によると一定の成果はみられるものの、県民一人ひとりが自らの課題として主体的に取り組むまでは至っていない状況にあります。今後、一層、理解と認識を深め、実践的態度を育成するため、マスメディアやインターネットの積極的な活用を図るとともに、広く県民の参画を促す手法の工夫など効果的な啓発活動を推進する必要があります。
市町村域啓発においては、地域社会に今なお根強く残っている不合理な因習や差別意識を解消し、同和問題をはじめとする人権問題を住民一人ひとりのものとするため、住みよいまちづくり活動や同和教育推進協議会等の活動と関連させながら、地域に密着したきめ細かな啓発活動に努めてきました。その結果、地域ぐるみの取り組みが推進されるようになってきましたが、地域によっては計画的継続的な取り組みとなっていなかったり、参加者が役員等の特定の人に限られるなどの状況がみられます。今後は、差別意識の払拭や主体的態度の育成に向けて、一層啓発活動を推進するとともに、指導者の育成に努める必要があります。
企業啓発等においては、企業において公正な採用選考の実施と明るい職場づくりが推進されるよう、企業経営者等を対象とした研修会を実施するとともに、企業訪問等を通じて引き続き啓発、助言に努めてきました。その結果、企業における採用選考システムの確立や計画的、継続的な研修を推進するための窓口担当者の設置など一定の成果を上げてきましたが、一部の企業において採用選考の過程において就職差別につながるおそれのある身元調査や不適正な質問などの事例がみられます。今後は、企業が社会的責任を自覚し、公正な採用選考の実施と人権を尊重した差別のない明るい職場づくりに向けた自主的、計画的、継続的な取り組みが一層展開されるよう、啓発、助言に努める必要があります。さらに、公共的団体等においても、同和問題等の啓発を推進し、差別のない明るい職場づくり等が行われるよう取り組みを促してきました。その結果、研修実施状況や窓口担当者の設置等の面で一定の成果を上げてきましたが、団体等の構成に対する啓発など必ずしも十分とはいえない状況にあります。
今後は、公共的団体としての役割を自覚し、構成員等に対する啓発活動を推進するとともに、事業所の実態に応じた職場研修の計画的実施や地域等で開催される研修会への積極的な参加を促すなどの取り組みを指導していく必要があります。

(外国人)
県内には歴史的経緯から在住を余儀なくされた韓国・朝鮮の人々が多数生活していますが、過去の植民地政策によって生み出された偏見が今も根強く存在しており、さまざまな差別となって表れています。そのため、本名ではなく日本名(通名)を名乗らざるを得ないといった状況もあります。
また、諸外国との人的・物的交流が拡大し、平成2年(1990年)の「出入国管理及び難民認定法」の改正も重なって、県内に在住する外国人は、就労を目的とする南米日系人を中心に急増しました。家族とともに来日し、長期にわたって生活する人も多く、言語や制度、文化の違い等により、労働、教育、保健、医療等のさまざまな分野において問題が生じています。また、日本人に画一的な同質化を求める意識が根強く残っていることによる偏見や差別が見られます。
県では、平成9年(1997年)3月に策定した「滋賀県国際施策推進大綱」の柱の一つに「地域の国際化への対応」を掲げてさまざまな施策に取り組んでいます。特に、最近来日した人々に対しては、円滑な日常生活が送れるよう、外国人向けガイドブック等による情報提供や外国人相談窓口を設置するなどの取り組みを行っています。また、民間団体等により、外国人のための日本語教室や交流事業等も広がりつつあります。
国際化時代といわれて久しい今日、すべての在住外国人に対する差別や偏見の解消に努め、相互理解を促進しながら、互いに異なった文化や価値観を持った人々と共に生きる社会を築くよう、地域における国際化をさらに進めていく必要があります。

(患者)
近年、医療技術の進歩、疾病構造の変化、人口構造の変化、県民の生活水準の向上等により、健康や病気に関する意識や価値観が大きく変わってきており、患者の人権を尊重した質の高い医療の実現や、患者と医療関係者の望ましい関係の構築を求める気運が高まってきました。
その結果、患者一人ひとりのクオリティー・オブ・ライフ*の確保・向上を目指して療養環境の整備を図るとともに、医療関係者には、深い人間理解と患者の人権を尊重した対応が求められています。また、患者の自己決定を尊重するため、医療機関におけるインフォームド・コンセントの一層の徹底が求められています。
このため、医療関係者に対する研修などを推進していく必要があります。また、インフォームド・コンセントの重要性について広く周知を図ることも必要です。
感染症については正しい理解が十分ではないため、エイズ*患者、HIV感染者に対する差別や偏見は根強く、結核等の患者についても偏見を持たれることがあり、平成11年(1999年)4月に施行された「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」では、国民の義務として感染症に関する正しい知識を持ち、感染症の患者等の人権が損なわれることのないようにしなければならない旨明記されています。
ハンセン病については、平成8年(1996年)に「らい予防法」が廃止されましたが、間違った知識や誤解から今なお差別や偏見があり、また、これまで長期間にわたって療養所に入所している人にとっては、高齢であることや後遺症を有していることなどから社会復帰することが困難な状況にあります。そこで、ハンセン病*療養所入所者等がこれまでに被った精神的苦痛を慰謝するとともに、ハンセン病*の患者であった者等の名誉の回復および福祉の増進を図り、あわせて、死没者に対する追悼の意を表するため、平成13年(2001年)6月に「ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律」が施行されました。
また、難病患者についても、多くの患者が長期の療養を必要とするため社会生活の基盤をおびやかされることも少なくありません。
このため、エイズ、ハンセン病等の患者および家族への偏見や差別の解消を図るため、これらの疾病や患者に対する理解を深めるとともに、正しい知識の普及啓発を実施するほか、各種の相談事業の充実を行う必要があります。

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