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じんけん通信

 人権施策推進課では、人権に関する特集記事「じんけん通信」を毎月、ホームページ上で発信しています。

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令和4年(2022年)3月(第167号)

 滋賀県の広報誌「滋賀プラスワン」の令和3年9・10月号でも特集したところですが、中学校の教科書にも取り上げられている『全国水平社創立宣言』(以下、『宣言』という。)が発表されてから本日(令和4年(2022年)3月3日)で100周年となります。

 今回のじんけん通信では、「長い歴史の中で不当な差別を受けてきた人々の痛切な思いがつづられているだけでなく、すべての人があらゆる差別を受けることなく、人間らしく暮らしていける社会の実現を願う気持ちが込められている」この『宣言』について、改めて人権の視点から考えるとともに、この100周年を記念し、本日リニューアルオープンとなる「水平社博物館(奈良県御所市柏原235-2)」について、同館の佐々木健太郎学芸員にお話を伺いました。

 今号の取材内容にもあるように、被差別者からの『宣言』は、日本で初めての人権宣言とも言われていることから、この100周年を契機に、お互いを認め合い、尊重する社会の実現への更なる一歩となれば幸いです。

(図1:「水平社博物館・水平社創立100周年記念事業実行委員会奈良」より)
リニューアルオープン下部

特集「人権のふるさと、水平社博物館」リニューアルオープン

■「水平社博物館」について

 ◆水平社博物館の設立の経緯を教えていただけますか?

 1980年代から全国各地で同和地区の改良事業が展開されていたのですが、水平社博物館のあるこの地においても1980年後半ごろから事業が行われ、その際にこの地の出身である阪本清一郎や西光万吉、駒井喜作など水平社の創立に中心的に関わった方に関係する史料が発掘されたため、それを整理をしていったところ、非常に貴重な史料が数多く残っていることがわかりました。

 こういった貴重な史料を散逸させないように、またこれまで誰の目にも触れないままであった差別と闘ってきた先人たちの想いが含まれた記録を多くの方に見ていただき、「人権ってなんだろう、部落差別ってなんだろう」ということや、さらに差別と闘ったその熱意を感じてもらって、新しいものも含めた今ある様々な差別に対して、いろいろと考える助けになれば、ということや、これに加えて人権に関する情報発信をすることができないだろうかとなり、水平社博物館をこの場所に建てようと、1998年5月1日に開館することとなりました。

(写真1:水平社博物館外観)
写真1水平社博物館外観

 ◆次にリニューアル前の水平社博物館の展示内容について教えていただけますか? 

 リニューアル前の展示内容としては、「なぜこの地から水平社を立ち上げようと思ったのか」というところを中心に紹介し、その次に「水平社の全国への展開」を加え、最後はまたこの奈良県における水平社の活動を紹介するものとなっていました。

 具体的には、「柏原の三青年」と呼ばれる阪本清一郎や西光万吉、駒井喜作たちによって、「水平社を突然作ろう」となったわけではなく、彼らの親の世代にあたる人物達が、どのような差別に対して、どのような闘いを展開していったのか、あるいは、なぜその闘いが可能となったのか、ということを経済的な基盤やこの地域特性から紹介したうえで、実際にどのように水平社ができたのかを紹介していました。

 次に全国に水平社が広がっていった際、全国各地の水平社がそれぞれどのように創立し、活動をしていたのかという紹介を行い、最後は水平社博物館があるこの奈良県の水平社の活動内容を紹介する、という展示内容でした。それらを通して、差別と闘っていった先人たちの想いや考え方まで含めて感じ取っていただけたら、という展示になっていました。

(図2:リニューアル前の水平社博物館パンフレット表面)
パンフレット外面
(図3:リニューアル前の水平社博物館パンフレット中面)
パンフレット中面

■水平社博物館リニューアルについて

 ◆水平社宣言100周年に合わせたリニューアルのコンセプトを教えていただけますか?

 今回の水平社宣言100周年を記念してのリニューアルでは、ファンタビューシアター(図3のE:全国水平社創立大会の様子を映像で再現したもの)以外のすべてがその対象となります。壁や内装もです。

 概要を説明しますと、まず水平社設立の理念や思想がどのように、日本国内、そして世界に広がっていったか、次に、部落差別はもとより人権ってどういうことかということをより深く考えてもらえるように、たとえ理解が難しかったとしても感じ取ってもらえるような展示にしていきたいと考え、今準備を進めているところです。

 最初に「人権とは何か」ということを考えてもらい、次にどうして人権を尊重する必要があるのか、これからどのように守っていくべきなのかということを考えていただきたいと思っています。

 具体的には、先人達が闘って獲得してきた人権の経緯、それをどのように受け継いできたか、さらに今拡大している内容について、「人権とは何か」という切り口から考えています。

 言い換えると、水平社がどのように闘って創立できたかということを、これまでは地域に根差した形で展示・紹介していましたが、リニューアル後にはよりもっと大きな視点、世界的な流れも含めた視点から、展示していきたいと考えています。水平社というものが、どのような活動をしてきたか、についてはこれまでからの展示を継承していきますが、水平社の活動が終わってから今に至るまで、どのような人権問題があり、それぞれに対して闘っていった人達がいたということ、そこには100年前の『宣言』にあるその思想、理念が受け継がれており、今もなお様々な闘いに受け継がれている、ということを展示で紹介していきたいと考えています。

(図4:水平社博物館リニューアルのイメージ図)
リニューアルオープン

 ◆視点も大きく変わるということですね?

 どちらかというとこれまでの展示では、ちょっとミクロ的な視点の当て方をしていましたが、リニューアル後には、グローバルな今の時代の非常に大きな視点から見た、いわゆる俯瞰的っていうとちょっと大げさになるかもしれないですが、より大きな視点から、色々な物事を感じ取っていってもらえるように、と考えています。

 ◆ターゲット層や展示後の学びについてはどのようにお考えですか?

 これまでから学校の学習とかでお越しいただく機会がありました。特に中学生ですが、県外からの修学旅行や社会見学でお越しいただく機会が非常に多かったので、リニューアル後には中学生にとって、より理解しやすくなるように、また、より深く知りたいなと思ってもらえるような展示に変換をしていこうと考えています。

 展示を見て終わりではなく、見て学習した生徒の皆さんが自発的にもっと知りたい、と思ってもらえるのが一番です。また引率された先生方が、さらに深めて教えていただけたるように、そういう広がりを持った展示を目指して今製作しているところです。

 ◆中学生が100年前のことを身近に感じることは難しく思いますが、どのような工夫をお考えですか?

 年数の桁が大きくなればなるほど、過去の話、歴史の話となり自分とは関係がない、となってしまうところがあるので、『宣言』にある言葉に共感や感銘を受けた人たちが、自分たちの活動に置き換えてきた結果、様々な物事が今現在に展開していることを伝えたいと思います。

 また、この100年前に出された『宣言』、その思想や理念っていうものが、今メディアもよく取り上げられている国連が提唱するSDGsにも繋がっている、ということも知ってほしいと思います。

 身近な事例としては、履歴書の問題があります。過去には各会社がそれぞれに様式を作成し、両親の職業や本籍地まで聞いていましたが、水平社の理念を展開した部落解放同盟や学校の先生達が闘った結果、今はエントリーシートやネットの履歴書でさえもそういう部分を書く必要がなくなってきました。今、当たり前として享受していることにも、そういった歴史があったっていうことを知ってほしいと思います。

(写真2:佐々木学芸員、リニューアル中の工事現場で)
佐々木学芸員

  また、子どもたちに向けて講演したときに、結婚差別にまつわる話の際に目の色が変わる子が今でも 多くいます。自分が部落出身じゃないからというので最初はピンとこない子が多いけど、でもあなたの好きな人とかがそうだったらどうするのって言ったときに、身近に思い、気付く子が多いと思います。

 つまり100年前の考え方も今の考え方も、変わっているけど変わってないものがあるということ。守らなきゃいけないことを守るために闘っていかなきゃいけないこと、その中で、勝ち得たものによって今の自分たちが守られている、というところまで、展示を最後まで見ていただいたときに、何となくわかって、また2回目見てこういうことかな、3回見てなるほど、と何度も足を運んでいただいて、理解をどんどん深めていってもらえるような工夫を今考えています。

 そのためにも、新しい仕掛けや新たな展示の手法を取り入れたり、パーッと展示を見るだけで終わってしまわないように、パネルモニターを自分で触って感じてもらえるようにしたり、学習を深めていただきやすいものにしたいと考えています。

 ◆ほかにはどのような展示の工夫をお考えですか?

 エピローグのコーナーですけれども、ことばの「美術館」というコーナーを作ります。著名な方々の言葉のパネルが多く埋め込みである一方で、モニターを設置し、30秒から1分ぐらいの間隔で、言葉が変わっていくように考えています。

 このモニターに映す言葉は、当館で毎年募集していた「あなたの中にある『熱』と『光』を、家族や友達など大切な人へ向けた『おもいやり』『希望・夢』にかえた」ショートレターでの言葉や、このリニューアルに合わせて様々な方から募集した言葉やフレーズを含める予定です。この言葉好きだなあ、とかそういったものが何か1個でも最後に持ち帰ってもらえたら、と思います。

 そのエピローグのコーナーにはソファーも配置し、座りながら、その言葉をジーとみる、時間が許す限り眺めてもらい、ほっこりして帰ってもらおうと、そういうふうな形で今何とか必死になって作っています。

■水平社博物館からのメッセージ

◆最後に水平社宣言100周年という節目にあたって、メッセージをお願いします。

 先ほどの繰り返しともなりますが、私が特に子どもたち対して講演をする際に、いつも伝えていることは、部落差別だけではなく、ほかの様々な差別も含めて、人権がどれだけ身近な存在なのか、自分にとってどれだけ大事かということを感じ取って欲しい、ということです。

 また、先生など大人に対しては、自分たちの周りにいる子どもたちにそれをしっかりと伝えていって欲しい、ということです。

 100年前に水平社ができる以前にも差別をなくす運動はあったのですが、水平社の思想がどうして今の人間の胸に響くのか、『宣言』が持つ熱量や力強さをどうして今も感じ取れるのか、というのは、やはり100年前に闘ったその闘いというものが終わったものではなく、今も継続している、ということを改めて感じてほしいと思います。

 水平社の思想、理念っていうのは、今も息づいているからこそ『宣言』が熱く、力強い。

 これを100周年の節目の年に改めて人権や差別、そういったものと一緒に考えていってもらえたらな、と思います。

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■「水平社博物館」への行き方など

 おすすめルート

 JR大津駅~京都駅[乗り換え]→近鉄京都駅~橿原神宮前駅

[乗り換え]→奈良交通バス橿原神宮前駅西口~近鉄御所駅行き郡界橋下車徒歩0,5km約5分

 ※バスの本数が少ないので、ご留意ください。

 そのほかのルート

 JR大津駅~JR和歌山線掖上(わきがみ)駅下車徒歩1,2km約15分

(写真3:郡界橋バス停、水平社博物館への案内図。写真4:水平社博物館近隣の人権関連施設マップ)
バス停案内図と人権マップ

人権カレンダー3月

自殺対策強化月間

政府では、悩みを抱えた人たちに広く支援の手を差し伸べていくことにより「誰も自殺に追い込まれることのない社会」の実現を目指し、毎年3月を「自殺対策強化月間」に設定しています。月間中は、自殺対策を集中的に展開するものとし、啓発活動と併せて相談事業等の支援策を重点的に実施することとしています。

<滋賀県自殺対策推進センター 自殺予防電話相談>

 TEL 077-566-4326 / 9 時00 分~21 時00 分(年末年始を除く)

1日 エイズ差別ゼロの日

平成25 年(2013 年)12月1日にオーストラリアのメルボルンで開かれた世界エイズデーの式典で、国連合同エイズ計画(UNAIDS)により定められました。

3日 全国水平社創立

大正11年(1922年)のこの日に全国から被差別部落の人々が京都に集まり、創立大会が開かれました。そして、「人の世に熱あれ、人間に光あれ」の言葉で結ばれる全国水平社創立宣言が採択されました。

8日 国際女性デー

昭和50年(1975年)の「国際婦人年」に国連により定められました。女性たちが、平和と安全、開発における役割の拡大、組織やコミュニティーにおける地位向上等によって、どこまでその可能性を広げてきたかを確認すると同時に、今後のさらなる前進に向けて話し合う機会として設けられた記念日です。

●21日 国際人種差別撤廃デー / 21 日~27 日 人種差別と闘う人々との連帯週間

昭和35 年(1960 年)3 月21 日に人種隔離政策(アパルトヘイト)に反対する平和的なデモ行進に対して警官隊が発砲し、69 人が殺害されました。昭和41 年(1966 年)にこの国際デーを宣言するにあたり、国連総会は国際社会に対し、いかなる人種差別も根絶するよう一層の努力をしていくよう求めました。また、3 月21 日からの1 週間は、世界中で人種差別の撤廃を求める運動が展開されています。

●21日 世界ダウン症の日

平成16 年(2004 年)に世界ダウン症連合が制定し、平成24 年(2012 年)からは国連が国際デーの1つとして制定しました。ダウン症のある人たちとその家族、支援者への理解がより一層深まり、ダウン症のある人たちがその人らしく安心して暮らしていけるように、さまざまな啓発イベントを通して世界中の人々に訴えていくための日です。

 

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お問い合わせ
滋賀県総合企画部人権施策推進課
電話番号:077-528-3533
FAX番号:077-528-4852
メールアドレス:[email protected]
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