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令和4年(2022年)2月(第166号)
皆さんは、日常生活の中で意識することなく性別を問われることはありませんか。例えば、スマホアプリの登録、アンケート、会員の加入申込、公的書類など、さまざまな手続きで性別欄をよく見かけます。
今回のじんけん通信では、「性別欄をきっかけに人権について考える」という観点から、多くの人があたり前のように思っている性別欄について考えてみましょう。
最近、スマホやタブレットなどでの各種申し込みやアンケートで性別を回答する時に、今までの「男」「女」の二択から、例えば「男」「女」「その他」「回答しない」「自由記述」など、選択肢が増えていることにお気付きですか?
実は、アメリカ版フェイスブックの性別欄は、平成26年(2014年)頃にはすでに58通りの選択肢がありました。トランスジェンダーの人や男女という性別に当てはまらない人が、フェイスブックというプラットフォームで自分のありのままのアイデンティティを表現することを応援するということから、その性別欄には、Female to Male(身体は女性で性自認は男性)、Gender Variant(既存の性分類に当てはまらない)など58通りの選択肢が記載されています(日本版フェイスブックでは「カスタム」を選び自由に記入)。
このように選択肢が多くなっているのはなぜでしょうか。
~性について考える前に、性の基本を知りましょう~
性について考えてみるとき、単純に「男」「女」だけではなく、いくつかの切り口に分けて考えることができます。まず、以下の4つの切り口に分けて考えてみましょう。
生まれた時の性器の形や、性腺、染色体などの身体的特徴から、お医者さん等に「女の子ですね」「男の子ですね」と言われ、役所に「出生届」を届けますね。それによって法律上「女」か「男」に割り当てられる性別のことです。これを「法律上の性別」といいます。
自分の性別を自分はどんな性だと思っているか。男性だと思う人、女性だと思う人、中性だと思う人、決めたくない人など、さまざまです。
心の性とは、「自分をどんな性別だと思うか」ということです。トランスジェンダーの人のように、身体の性と心の性の不一致を感じている人や、男女のどちらでもないと思う人もいます。これを「性自認」といいます。
好きになるかならないか、なるとしたらどんな性の人を好きになるかという、好きになる対象の性のことです。 異性を好きになる、同性を好きになる、どちらの性も好きになる、性別で好きになる人を決めたくない、特定の誰かを好きにならないなど、さまざまです。
例えば、異性を好きになる人はストレート、同性を好きになる人で、女性として女性が好きな人はレズビアン、男性として男性が好きな人はゲイ、どちらの性も好きになる人はバイセクシュアル、性別で好きになる人を決めたくない人はパンセクシュアル、特定の誰かを好きにならない人はアセクシュアルといいます。これを「性的指向」といいます。
社会的にどのように性別を表現するか、振舞うかということです。 俺・僕・私といった一人称や、服装(スカート、パンツスタイル)、しぐさ、言葉づかいなどがこれにあたります。やわらかな物腰の男性や、ユニセックス(※)なファッションのスタイルなど、人によってそれぞれ違います。心の性と表現する性が一致するとは限りません。これを「ジェンダー表現」といいます。
※ユニセックス男女区別ないという意味。ファッションでは男女どちらでも着ることができる衣服やスタイルのことをいう。
これらのうち、「好きになる性」、「心の性」、「表現する性」の頭文字をとってSOGIE(ソジー)と呼ぶこともあります。
SOGIEは、誰もが持っている性のあり方をしめす言葉です。日本では、「性」とひと言で言い表しますが、性は多面的なものなのです。
~よく聞くLGBTとは何でしょう?~
●LはLesbian(レズビアン)のL
レズビアンは女性として女性が好きな人のことです。「心の性」が女性で「好きになる性」も女性です。
●GはGay(ゲイ)のG
ゲイは男性として男性が好きな人のことです。「心の性」が男性で「好きになる性」も男性です。
●BはBisexual(バイセクシュアル)のB
バイセクシュアルは、男性も女性も好きになる人のことです。
●TはTransgender(トランスジェンダー)のT
多くの人は身体の性と、自分のことを男性と思うか女性と思うかの心の性が一致していますが、そうでない人もいます。
トランスジェンダーは、身体の性と心の性が一致していないため身体の性に違和感を持ったり、心の性と一致する性別で生きたいと望む人のことです。生まれた時の「身体の性」が男性で「心の性」が女性の人を「Trans woman(トランスウーマン)MTF(male to Female)」、生まれた時の「身体の性」が女性で「心の性」が男性の人を「Trans man(トランスマン)FTM(Female to male)」といいます。
~以下のような多様な性の人もいます~
●QはQuestioning(クエスチョニング)のQ
自身の性のあり方について、探している人、迷っている人、または、決められない人のこと。
●XはXgender(エックスジェンダー)のX
「心の性」が男性、女性のいずれかとは認識できない、しない人たちのこと。後述するパスポートの例における性別欄の「X」です。
●AはAsexual(アセクシュアル)のA
「好きになる性」を持たない人のこと。
●NはNonsexual(ノンセクシュアル)のN
恋愛感情を持っても性的欲求を抱かない人のこと。
●PはPansexual(パンセクシュアル)のP
好きになる性が性別にとらわれない人のこと。男性でも女性でもない人を含めあらゆる性の人を好きになる人のこと。
このように、性のあり方はさまざまなのです。
このような性の多様性に対応している例として、アメリカのパスポートの発給があります。
令和3年(2021年)10月、米国務省はパスポートに「M(男)」と「F(女)」以外の選択肢として、第三の性別としての「X(不特定)」欄を設けました。
これまでのパスポートの性別欄では、「男」と「女」しか選ぶことができませんでしたが、自分の性をどちらにも位置づけない人たち、「男でも女でもない」という「性自認」を持っている人たちに配慮して、新たに「X」という選択肢を設けたということです。
また、これまで性別欄に出生時と違う性を選ぶ際に義務づけられていた、医療機関の証明書の提示を不要とする手続きを進め、性別を自由に選べるようにするということです。
すでに、ドイツやカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、デンマーク、バングラディシュ、インド、ネパール、パキスタン、マルタなどでも、男女以外の第三の選択肢を選べるようになっているところもあります。
ところが、このアメリカのパスポートの性別欄「X」の表記について日本国内でも大きく報道されたことで、さまざまな意見が出ているのをご存じですか。
性別欄の「X」は、トランスジェンダーの人や男女という性別に当てはまらない人のためのものですが、そうではないDSDs(※)の人が性別欄の「X」の人と同じとみなされることに悩んでいるという意見があります。
※詳細は下記のとおりです。厚生労働省難治性疾患克服研究事業によると、DSDsの発生頻度は諸外国の文献上のデータから、約4,500人に1人と推定されていますが、正確な人数は不明です。
~DSDs(ディーエスディーズ)とは~
では、DSDsとはなんでしょうか。
「性分化疾患」という言葉を聞かれたことはありますか。人の性が決定される過程を性分化と呼びます。最初に染色体の性が決定し、次に性腺の性、最後に内性器・外性器の性が決定します。その過程の中で、一般的とされる男性・女性の体とは少し違った体の発達のプロセスを踏む赤ちゃんもいます。他の人とは少し違った性に関する体の発達のプロセスをたどった状態は、性分化疾患、もしくは Differences of Sex Development :性に関するさまざまな体の発達状態 (DSD) と呼ばれています。
DSD とは、外性器の形状や大きさ、内性器・染色体など、生まれつきの身体の状態が、一般的とされる男性・女性の身体とは一部異なる状態をいいます。身体の性の胎児期のさまざまで複雑な発達プロセスのうち、個人それぞれにあくまで一部だけが、他の人とは少し違った経路をたどった状態のことです。
DSDsにはさまざまな体の状態があります。現在のところ、疾患数は約 40 種類以上あり、症状も多様です。染色体は体の設計図である遺伝子を含む集合体で、多くの人は46本持っていて、そのうちの2本が性染色体で、多くの男性でXY、多くの女性でXXです。DSDでは<45,X、>、<47XXY>、<45X/46,XY>の方がおられます。
このように、DSDs は体の状態をしめす概念なので、DSDsは、LGBTとは切り離して論じられています。社会医学的には、DSDsは疾患ではなく、体質ととらえる考え方が広まってきています。
~性別欄とDSDs~
DSDsは、性自認・性的指向といった精神的な現象のことではなく、身体の発達状態のことです。
DSDsは身体の状態であるので、DSDsの多くの方の性別はあくまでも「男」か「女」であり、「男でも女でもない」とは思っていません。
それなのに、第三の性別としての「X(不特定)」欄への理解不足により、DSDsの人は性別欄に「X」を記入すればいいという考えが広まることで、DSDsの人はみな「X(不特定)」と思われるのではと危惧されています。
性別欄は、「男」「女」の二択から、例えば「男」「女」「その他」「回答しない」「自由記述」など、選択肢が増えていますが、「男」か「女」であるにもかかわらず「男」「女」以外とみなされ悩んでいる人もおられるのです。
性別欄に関して最近はさまざまな動きがあります。
令和3年(2021年)4月、就職活動などで使う履歴書についての様式例を、国(厚生労働省)が初めて発表しました。これまで国は一般財団法人日本規格協会のJIS規格の様式例の使用を推奨していましたが、厚生労働省において新たな様式例を作成しました。従来の履歴書は、性別欄に「男・女」と書かれており、いずれかに丸をするのが一般的でした。今回の様式例では、身体の性と心の性が一致しないトランスジェンダーの人たちの要望を踏まえて性別欄は空欄になっており、注意書きとして、「記載は任意です。未記載とすることも可能です。」と書かれています。
また、トランスジェンダーの人たちへの配慮などから、公立高校の入学願書の性別欄をなくす動きが急速に広がっています。
まず、大阪府と福岡県が令和元年度(2019年度)の公立高校入試の際に入学願書を見直しました。滋賀県はその翌年の入試で性別欄を削除しました。令和4年度(2022年度)の入試では、東京都を除く全国の46道府県が性別欄をなくす予定となっています。トランスジェンダーの生徒たちへの配慮から始まった性別欄削除の動きが全国に浸透してきたと考えられます。
滋賀県庁での取組としては、平成29年(2017年)に申請書等の性別欄の見直しをしました。当時、性別欄のある255の申請書のうち196の申請書等について性別欄を廃止または自由記述に変更しています。今後も引き続き、性別欄の必要性や記載方法について、人権尊重の視点から検討することとしています。
データ収集や統計の観点から、どうしても性別を知りたいということもあるでしょう。ただし、性別欄が必要な場合は、基本的に「自由記述」での記載が望ましいのではないかと考えられます。また、その性別欄そのものが必要なのかをよく考えてみる必要がありますね。
● 2 月 1 日~3 月 18 日 サイバーセキュリティ月間
昨今、サイバー空間において国民の個人情報や財産をはじめ、実生活に悪影響を及ぼすサイバー
攻撃による被害が深刻化しています。安全・安心な社会の実現のために、サイバー空間の利用者
である国民一人ひとりが、意識・理解を醸成し、対策を進めていく必要があります。期間中、政府機関が各種啓発主体と連携し、サイバーセキュリティに関する普及啓発活動を集中的に実施します。
● 4 日~10 日 滋賀県がんと向き合う週間
2 月 4 日の世界がんデーに世界各国でがんに関する啓発行事が行われることから、滋賀県は、2 月
4 日から 10 日を滋賀県がん対策の推進に関する条例で「滋賀県がんと向き合う週間」と定め、「県
民および事業者の間に広くがんに関する理解と関心を深めるとともに、がんの予防、早期発見等に
関する自主的な取組への意欲を高める」こととしています。期間中、がんに関心を持っていただけるよう広報等を行います。
● 20 日 世界社会正義の日
国際連合は平成 19 年(2007 年)の決議で、この日を制定しました。平成 7 年(1995 年)の「世界社会開発サミット」で採択された宣言の内容である貧困の撲滅や、男女同権、労働者の権利について目標達成に向けた取組の促進を加盟国に働きかけるもので、啓発活動等が行われます。
● 21 日 国際母語デー
言語と文化の多様性、多言語の使用、そしてあらゆる母語の尊重の推進を目的とし、国際連合教
育科学文化機関(ユネスコ)が平成 11 年(1999 年)に制定しました。
現在この趣旨にご賛同いただける事業所、学校等を募集しています。皆様のご協力をお願いします。
詳しくはこちらをご覧ください。
http://www.pref.shiga.lg.jp/ippan/kurashi/zinken/312226.html