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じんけん通信

 人権施策推進課では、人権に関する特集記事「じんけん通信」を毎月、ホームページ上で発信しています。

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令和3年(2021年)3月(第155号)

 今年の3月11日で、東日本大震災の発生からちょうど10年が経過します。

 この震災で亡くなられた方のうち、60歳以上の高齢者の割合が65%以上であったといわれています。

 災害発生時に、情報把握、避難、生活手段の確保等において取りのこされてしまう可能性の高い高齢者、障害者など、防災施策において特に配慮が必要な方のことを「要配慮者」といいます。

 防災について考えるうえで節目となる今月は、令和3年2月10日(水)に滋賀県危機管理センターで行われた「防災カフェ(※1)」の様子をお届けし、いざというときでも一人ひとりが尊重され、「誰ひとり取りのこさない防災」を実現するために何が必要かを考えてみたいと思います。

※1 地震や風水害等県民の皆さんの関心の高い災害について、専門家をゲストとして迎え、司会者(ファシリテーター)との会話を通して解説する、滋賀県防災危機管理局主催で毎月開催されているイベントです。

特集 「誰ひとり取りのこさない防災」を実現するために 防災カフェ【第55回】レポート

防災カフェ【第55回】は下記のとおり実施されました。

【テーマ】「オーダーメイドの避難計画~要配慮者の個別支援計画について~」

【ゲスト】上田 洋行 さん(高島市障がい者相談支援センター コンパス) 辻岡 綾 さん(同志社大学 特定任用助教)

【ファシリテーター】立木 茂雄 さん(同志社大学 社会学部 社会学科 教授)

【日時】令和3年2月10日(水)18:30~20:30

第1部ではゲストの方の取組報告、第2部では質疑応答が行われましたが、じんけん通信では、取組報告の概要をお届けします。

※以下、敬称略

ビワエン君
滋賀県防災マスコットキャラクター ビワエン君

はじめに

立木)もう十数年来の課題となっていることですが、災害が起こる度に、その被害は特定の方々に集中しています。どのような方々かというと、年齢の高い方々、あるいは障害のある方々です。それはなぜか。

 高齢であっても障害があっても、できるだけ施設に入所せずに在宅で暮らせる福祉の制度を、日本社会は整備してきました。しかし、そのような制度は福祉の枠組の中で閉じられており、災害が発生した時には、要配慮者の名簿(※2)を地域の自治会長等に渡し、地域の中で何とか対策を取ってもらうようにしていました。

 ここで問題なのは、本来関わっていただくべき福祉の専門職の方々が、領域が違うために防災対策になかなか関わってこなかったことです。

会場
※新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、Zoomで開催されました。

 そのような中、国では、令和元年台風第19号を踏まえて高齢者等の避難のあり方を検討し、本格的に根本的な対策を考えるということになりました。方向性としては、いざという時の防災と平時の福祉を連結させ、平時に福祉の専門職の方々が作っているケアプランの延長線上で、災害時のケアプランを作ろう、というものです。

 今回の防災カフェは「オーダーメイドの避難計画」というテーマにしていただきましたが、それを作るのに誰が一番ふさわしいかというと、平時にオーダーメイドのケアプランを作っている方々だということで、来年度に災害対策基本法を改正したうえで個別支援計画の策定を市町村に努力義務化し、福祉専門職の方々と一緒になって、個別支援計画、いわば災害時のケアプランを作っていく、これが今後作り方の王道となっていきます。

 高島市では、10年も前から、まさにこれから努力義務化していこうという個別支援計画の策定を、既に率先して行っていました。本日は、地元高島において、福祉専門職の立場から携わってこられた上田さんにこれまでの取組についてご紹介いただき、他県の取組について辻岡さんの方からお話をしていただきます。このような取組について、滋賀は1つの中心地となり始めているということを踏まえて、話していただければと思います。

※2 平成25年6月の災害対策基本法の一部改正により、高齢者、障害者、乳幼児等の防災施策において特に配慮を要する方(要配慮者)のうち、災害発生時の避難等に特に支援を要する方の名簿(避難行動要支援者名簿)の作成を市町に義務付けること等が規定されました。

高島市の取組

○個別支援計画の作成手順

上田)高島市では、2012年頃から準備段階に入り、2016年頃から実際に個別支援計画を作り始めています。この対象となるのは、市で作成している避難行動要支援者名簿に載っている方のうち障害のある方で、その中でも優先度が高い方をピックアップして取り組んでいます。

(1)避難判断フローチャートの作成

上田)主に作成するのは、「避難判断フローチャート」という書類です。これは、自宅から避難先までの間に、どのような行動をしていくかを分かりやすくまとめたものです。この中には、自宅や避難先の場所が分かる地図や対象者の基本情報、ケアのマニュアル等を添付します。

 フローチャートをどのように作成するかというと、パターンとしては2つあり、1つ目は台風等の風水害の時のもの、2つ目は地震の時のものです。台風は、天気予報により発生が事前に分かっているため、1 事前に逃げる場合、2 当日に避難所へ逃げる場合、3 実際に浸水が迫ってきたときや近くの川が決壊した場合、の3段階に分けて避難行動を決めていきます。地震はいきなり発生するため、1 自宅にいる場合、2 通所先にいる場合、に分けて避難行動を決めていきます。
 また、自治会によっては、避難訓練の際にはどこかに集合してから全員で指定避難所へ歩いて行くというところもあるため、そのような地域の中で既に決まっているルールや防災組織についても確認します。

 (2)避難判断フローチャート作成の流れ

上田)作成にあたっては、当事者の方を訪問する前の準備段階がありますが、準備段階には次のような順番で情報を集めていきます。

説明

以上の準備段階を経て、本人およびその家族へ次のような内容の聞き取りを行います。

説明2

 当事者およびその家族への聞き取りの後は、自治会の区長、民生委員の方への聞き取りに移ります。彼らには、その地域にお住まいの方の一人として、当該地域の災害時のリスクがどの程度か、どこが危険箇所かといった災害時の体験談を聞き取り、当事者の自宅近くがどの程度危険になるかを、ハザードマップ以外の観点から想定します。

 ここまでを実施したら、当事者およびその家族、自治会の区長や民生委員、相談支援専門員、場合によっては訪問看護の方や福祉サービス事業者が集まって会議を行い、集約したフローチャートの内容に問題ないか確認していきます。特に、災害時にどの程度危ないか、実際に避難すべきかどうかは誰かの一存でアドバイスすることは難しいため、地域の方と意見を出し合う会議の重要性を感じています。

 会議が終わったら、その内容を避難判断フローチャートへ落とし込みます。

○関係者のつながりを作る方法

上田)実は、私たち障がい者相談支援センターの職員は、避難行動要支援者名簿に載っている当事者の方とは接点がないことが多いです。普段かかわりを持っている相談支援専門員の方の協力がないと個人情報はもらえませんし、つながりも作りにくいので、相談支援専門員と連携し、基本情報をもらったり、自宅を訪問する際に同行してもらったりしています。そうしてやっと、当事者とのつながりができます。

 自治会の区長、民生委員の方とも普段からつながりがある訳ではないので、各地域の社協(社会福祉協議会)の職員の方に相談し、連絡を取ってもらったり、日程調整をしてもらったりしています。中には、どこの自治会に所属しているか、そもそも自治会に所属しているのか、区長が誰なのか実態が分からない場合もあるため、その際も社協の方に相談します。

○取組のきっかけと今後の課題

上田)避難行動要支援者名簿の作成が義務付けられる前の2010年に、障害のある方およびその家族を含めた、防災に関する懇談会が高島市内で開かれました。そこで、障害者のとある方が、「もし川が決壊したら、私たちは行くところもないし、死ぬしかない」と切実に訴えられたことをきっかけに、個別支援計画の作成が動き出しました。

 その後、東日本大震災を経て、2012年より個別支援計画をどのように作成していくかという研究を始め、準備段階を経て、この計画を具体的に作成していく方法や作成するにあたっての構成メンバーが決まり、2016年から作成を開始しています。

 これまでに個別支援計画を40件程作成していますが、対象者は高島市内に200名程いるため、早く皆さんに行き届くよう、作成のスピードを上げることが課題です。また、前提として避難行動の個別支援計画であるため、避難先に行ったら終了となってしまうことも課題です。避難生活に移行した時のサポートが最も大事であるため、それに関する議論もしていかないといけないと考えています。

別府市・丹波篠山市の取組

○別府市の個別支援計画作成の6つのステップ

辻岡)別府市で始まった、災害時における個別支援計画作成にあたってのステップをご説明します。具体的な手続きが、6つのステップになっています。

 まず1つ目のステップとして、個人の防災力を向上するため「当事者アセスメント」を実施します。起こりうる災害やそれによって受ける被害、自分の生活がどう変わってしまうのかを理解してもらい、必要な備えを自覚するところから始まります。

 2つ目のステップとして、地域が持つ資源を確認するため「地域力アセスメント」を実施します。

作成フロー
個別支援計画の6つのステップ

 地域住民同士のつながりや、いざという時に使える地域の資源等を確認し、地域で起こりうる災害被害に対し、どういった人が集まり、対応できるのか等を確認します。

 3つ目のステップとして、当事者の方や福祉専門職の方、地域住民、行政の防災や福祉分野の職員等が集まり、災害時ケアプランの調整会議を行います。

 4つ目のステップとして、調整会議の場で話し合った内容をケアプランの案としてまとめていきます。

 5つ目のステップとして、当事者や家族に、ケアプランの確認や個人情報共有の同意を取ります。

 6つ目のステップとして、作成したプランが本当に実効性のあるものなのかを確認するために避難訓練を実施し、実施結果を検証したうえでケアプランの改善や追加をします。

○個別支援計画を踏まえた避難訓練と振り返り

(1)別府市の事例

 ※以下の動画により、個別支援計画を踏まえた避難訓練の様子が紹介されました。

 https://youtu.be/UxDOvmS5V9c

辻岡)ご覧いただいた動画は、別府市における調整会議や避難訓練の様子です。

 調整会議を実施する前は、地域の方からいい意見が出るかどうか不安でしたが、実施してみると自治会の方から活発にご意見がもらえたりして、最初は緊張した表情で来られていた当事者も、会議が終わるころには笑顔で帰って行かれました。

 調整会議や避難訓練を行うことにより、当事者と地域の方とが顔の見える関係になっていくことが大切ではないかと感じています。

(2)丹波篠山市の事例

辻岡)丹波篠山市でも防災と福祉の連携は進められており、令和元年10月に、震度6強の大規模地震が発生したという想定のもと、4名の当事者、地域住民、福祉専門職、市職員等合計150名程が参加する、災害時ケアプランを踏まえた避難訓練が実施されました。

 丹波篠山市では、避難訓練自体は1時間程でその後に振り返りの時間を設けましたが、この振り返りの時間が訓練と同じくらい、もしくはそれ以上に大切だと感じました。振り返りでは、まずは自治会の組ごとに話し合いをし、その後参加者全体で共有します。組によって当事者の障害の状況や自宅から避難所までの環境が異なるため、違う視点での気づきを共有することで、学び合いになりました。

 訓練に参加されたケアマネージャーの方は、「避難に支援が必要な方には、これまで『自分の生活を地域の人に知られるのが嫌だ』という思いが根底にあったと思う。でも避難訓練を機会に、地域の方とつながりができて、歩み寄れたことがとてもプラスになった。その橋渡しが自分たちにできたことが嬉しかった。」と仰っていました。

 また、当事者の中には、訓練に参加するまでは避難することをあきらめているような方もいらっしゃいましたが、訓練に参加することで「地域の方がここまで協力してくれるんだ」ということを実感し、「自分からも積極的に周囲へ声をかけよう」というように、当事者側の意識の変化も引き出せました。

 「今後も継続して取り組むとともに、他の地区の取組にも結び付けていきたい」という自治会の方もいて、このような方が増えていくと、近隣同士の学び合いや共有が活発になることが期待されます。

 参加された皆さんは、個別のケアプランを作ることや避難訓練を行うこと自体よりも、そのプロセスを経て、当事者や地域住民をはじめとする関係者が集まり、お互いに知ってもらうということにこそ意味があると感じていたのではないかと思います。

 調整会議や訓練を実施するには、組織の内外を超えてつないでいくキーパーソン(=インクルージョン・マネージャー)の存在が不可欠です。取組が上手くいっている地域というのは、必ずこのインクルージョン・マネージャーにあたる方がいます。滋賀県の中でも、きっとそのような方がどこかにいると思うので、良い事例を共有しながら、お互いに学び合っていけるのではないかと期待しています。

※当日は、ゲストによる取組報告の後に質疑応答の時間もありましたが、編集の都合上割愛します。

編集後記

 平時においても災害時においても、一人ひとりが尊重され、命が守られるということはとても大切なことです。そのためにも、災害時の避難において、配慮が必要な方に個別支援計画を作成していくことが重要です。

 災害時における個別支援計画作成にあたっては、当事者の方はもとより、地域の方、福祉専門職の方、行政の防災分野の職員等、様々な人が個々の組織を超えてつながり、話し合うことが必要であるということが分かりました。平時から顔の見える関係性を構築しておくことで、「誰ひとり取りのこさない防災」を実現できる可能性が高まります。

 ゲストの方2名の取組報告をお聴きし、防災分野に限らず人権施策の推進にあたっても、個々の組織にとらわれず、分野を超えて連携し、新たな視点や考え方を積極的に取り入れていくことが、一人ひとりが尊重される社会の実現につながるのではないかと感じました。

人権カレンダー3月

・自殺対策強化月間
 政府では、悩みを抱えた人たちに広く支援の手を差し伸べていくことにより「誰も自殺に追い込まれることのない社会」の実現を目指し、毎年3月を「自殺対策強化月間」に設定しています。月間中は、自殺対策を集中的に展開するものとし、啓発活動と併せて相談事業等の支援策を重点的に実施することとしています。

<滋賀県自殺対策推進センター 専用相談窓口>

TEL 077-566-4326 / 9 時00 分~21 時00 分(年末年始を除く)

・1日 エイズ差別ゼロの日
 平成25 年(2013 年)12月1日にオーストラリアのメルボルンで開かれた世界エイズデーの式典で、国連合同エイズ計画(UNAIDS)により定められました。

・3日 全国水平社創立
 大正11年(1922年)のこの日に全国から被差別部落の人々が京都に集まり、創立大会が開かれました。そして、「人の世に熱あれ、人間に光あれ」の言葉で結ばれる水平社宣言が採択されました。

・8日 国際女性デー
 昭和50年(1975年)の「国際婦人年」に国連により定められました。女性たちが、平和と安全、開発における役割の拡大、組織やコミュニティーにおける地位向上等によって、どこまでその可能性を広げてきたかを確認すると同時に、今後のさらなる前進に向けて話し合う機会として設けられた記念日です。

21日 国際人種差別撤廃デー / 21 日~27 日 人種差別と闘う人々との連帯週間
 昭和35 年(1960 年)3 月21 日に人種隔離政策(アパルトヘイト)に反対する平和的なデモ行進に対して警官隊が発砲し、69 人が殺害されました。昭和41 年(1966 年)にこの国際デーを宣言するにあたり、国連総会は国際社会に対し、いかなる人種差別も根絶するよう一層の努力をしていくよう求めました。また、3 月21 日からの1 週間は、世界中で人種差別の撤廃を求める運動が展開されています。

21日 世界ダウン症の日
 平成16 年(2004 年)に世界ダウン症連合が制定し、平成24 年(2012 年)からは国連が国際デーの1つとして制定しました。ダウン症のある人たちとその家族、支援者への理解がより一層深まり、ダウン症のある人たちがその人らしく安心して暮らしていけるように、さまざまな啓発イベントを通して世界中の人々に訴えていくための日です。

ジンケンダーのちょっと一言

ジンケンダー
白



分野のちがう人とつながることで、

より良い取組ができることもあるのだー!

お問い合わせ
滋賀県総合企画部人権施策推進課
電話番号:077-528-3533
FAX番号:077-528-4852
メールアドレス:[email protected]
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