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じんけん通信

 人権施策推進課では、人権に関する特集記事「じんけん通信」を毎月、ホームページ上で発信しています。

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令和2年(2020年)8月(第148号)

 今年の8月15日で、終戦75年を迎えます。

 二度の世界大戦中には、多くの人の尊い命が失われるとともに、特定の人種の迫害や虐殺など、重大な人権侵害が横行しました。その後、国際社会では、人権の保障が平和の基礎であり、戦争は最大の人権侵害であるとの考え方が主流になり、今日に至ります。

 しかし、戦後75年が経過し、戦争を実際に体験した人は少なくなり、戦後に生まれた私たちが実体験を耳にする機会も次第に減り、戦争の記憶が風化していくと言われています。

 そこでじんけん通信8月号では、滋賀県平和祈念館の専門員である北原治さんに、戦争体験や平和の大切さ、そして命や人権の大切さを後世に伝えていくための取組や工夫について伺いました。

特集 戦後75年~平和と人権について考えてみませんか~

Q.平和祈念館で実施されている事業の概要について教えてください。

A.当館の事業は大きく分けて5つあります。

 1つ目は戦争に関係する県民の方々の体験談や資料の収集と保存です。

 戦争を体験された方々の体験談やその想い、そして平和への願いを受けつぎ、後世に伝えていくために、戦争を体験された方々の証言を寄せていただいています。体験証言や想いをより深く伝えるため、体験にまつわるモノや戦争にまつわる滋賀県の資料などもご寄贈いただき、資料として収集・保管をしています。

 2つ目は展示事業で、県民の方の体験証言をもとに展示を作成しています。

 3つ目は普及啓発事業で、ワークショップや語り部による講演会などを実施します。

 4つ目は一般県民の方、お子さんたちに対する平和学習の支援です。

 5つ目は当館の活動に参加してくださるボランティアの方々への支援です。

 このうち、私が主に携わっているのは、資料収集の統括と展示の作成です。

紙幣








←血に染まった外国紙幣。

県民の方からの寄贈物が、戦争の様子を
生々しく伝えます。










 

Q.ご自身が携わっておられる展示の作成にあたっては、どのような工夫をされていますか。

A.当館の常設展示(基本展示)を今年の4月にリニューアルし、面積を1.5倍にし、展示内容も一新しました。

 リニューアルした理由は、家族や地域の高齢者など、身近な方々から当時の戦争について聞く機会が少なくなってきているからです。悲惨な戦争の記憶を風化させないためにも、寄贈を受けた体験談や戦争の悲惨さを物語る当時の資料を紹介する場を拡充することにしたのです。

 これまでは、スペースの関係からトピック的な展示となっていましたが、県民の方々がどういう経緯で戦争に行かれたのか、戦地ではどのような体験をされたのか、また、当時の滋賀県はどのような状態だったのかというように、滋賀県での戦争全体を俯瞰できるような展示としました。

 例えば徴兵検査に関する展示については、徴兵検査の写真や召集令状の実物を展示している博物館はたくさんあると思いますが、当館では、写真やモノと併せて、実際に徴兵検査を受けた人がどのような体験をされ、どのような気持ちになったのかなども紹介しています。

徴兵検査
持ち物






←大津公会堂で行われた徴兵検査の様子

写真の右側にある解説には、県民の方が徴兵検査を受けた時の様子とその時に沸き起こった気持ちが、観覧者に語りかけるように書かれています。















←入隊した兵士の持ち物

たとえ戦争に行きたくない、戦争に行ってほしくないと心の中で感じていても、その気持ちを表に出すことができなかったのではないでしょうか。




 

・写真などでは勇ましく出征していく様子しか分かりませんが、体験談と併せて見ると、当時の人々の内なる想いが伝わってきますね。

 それと同時に、国を守ることを大義名分として、個人の自由や権利が制限されていた当時の社会の状況が伺えます。

Q.戦後75年が経過し、戦争体験の継承がますます困難になっています。次世代に伝えるための取組、工夫がありましたら教えてください。

A.毎年、戦争体験者の証言を映像として記録し、多くの方にご覧いただける映像ソフトを制作しています。戦争を体験された方々のお話を聞く機会が減りつつある今、学校の授業や、地域での平和学習などで活用いただいております。

 戦争について後世に伝えていくためには、実際に体験された方の映像がとても重要になります。映像だと、体験された方に出会っていない人でも、文字よりももっと体験者の想いが伝わるのではないかと思っています。

 他には、「平和塾・つなぎ人」があります。名前のとおり、実際の戦争の体験者ではない方が、戦争の悲惨さや平和の尊さについて自ら学び、他の方々に伝えていくボランティアです。

 当初は、「つなぎ人」の方々が実際に戦争を体験した方の話を聴き、それをそのまま伝えていくことを考えていました。しかし、自分自身が体験していないこと、しかも自分の祖父母でもないような人の話をその人に成り代わって伝えていくことは、なかなかできませんでした。

 そこで、先ほどお話した展示のリニューアルが関わってきます。当館の展示を「つなぎ人」の方々に見ていただき、自分自身で戦争について主体的に考え、自分自身の言葉で戦争を語っていただくようにしています。

 当館に入ってすぐの床は滋賀県の航空写真になっているのですが、まず皆さんはこの航空写真から、自分の家がどの辺りにあるのかを探します。そして、例えば軍需工場など、自分の家の近くにどのような施設があったのか、そこで何が起こったのかということから学びを深めていただきます。

 ゆくゆくは、「つなぎ人」の方々に、展示の解説や地元での情報発信をお願いしたいと考えています。

ジンケンダーポーズ

つなぎ人の人たちは、どうやって学ぶの?

余白

 例えば、平和祈念館の一角で・・・

1.床に滋賀県の航空写真があり、各地に番号が振られています。

 ※自分の家はどこ?

 ※自分の家の近くに何があったのかな?

祈念館の一角
矢印

2.番号が振られた場所にどのような施設があったのかを解説するパネルがあります。

 *家の近くに軍需工場があったのか!

 *子どもも働いていたんだ!

 *工場の事故で亡くなった人もいたのか…

・ 人から聴いたことをそのまま別の人に伝えるのではなく、自分の事として受け止め、主体的に考えるということは、戦争体験の当事者ではない私たちにとって大変重要ですね。

Q.来館者の感想にはどのようなものがありますか。

A.例えば当館では、守山の空襲や八日市の飛行場など、県内の地域に特化した展示を年に1回程度企画しています。

(※訪問時は「守山空襲」展を実施中でしたが終了しています。現在の企画展示については後半を参照。)

 今回の「守山空襲」展には守山在住の方がたくさん来られ、様々な感想をいただきました。

 「守山で空襲があったことを知らなかった」という方、「実際に守山空襲を体験した」という方、「守山で空襲があったことを祖父から聴いた」という方、「断片的に空襲があったことを伝え聴いて知ってはいたが、全体としてどういう話なのだろうと思って来た」という方などです。中には、近所の方から「ぜひ見ておいた方がいい」という口コミを聞いて来られた方もいらっしゃいます。

  地域に特化した展示を行うと、展示で取り上げた地元の方が興味を持って来られることが結構多いです。

・ 確かに、自分がよく知っている地域の出来事だと興味が湧きますし、学びのきっかけとして身近な題材を提供するということは、私たちが担う人権啓発においても大切なことだと感じます。

Q.最後に、じんけん通信の読者の方へメッセージをお願いいたします。

A.戦争について忘れてもらいたくないです。平和の大切さは皆さんご存知だとは思いますが、より身近に考えていただきたいです。そのような機会が提供できれば私たちとしても幸いです。

・北原さん、ありがとうございました。

◆ 滋賀県平和祈念館の施設概要

所在地 東近江市下中野町431番地

開館時間 9時30分~17時

休館日 月曜日・火曜日(祝日にあたる場合は開館)

年末年始(12月28日~1月4日)

その他、業務の都合により休館する場合があります。

入館料 無料

電話番号 0749-46-0300

FAX 番号 0749-46-0350

E-mail [email protected]

アクセス ●名神高速道路「八日市IC」から車で約10分

 ●JR琵琶湖線彦根駅または近江八幡駅乗り換え、近江鉄道八日市駅からバスで約20分「愛東支所・診療所前」下車すぐ

施設サイト https://www.pref.shiga.lg.jp/site/heiwa/heiwamuseum/index.html

平和祈念館

*第26回企画展示「兵士を襲った感染症と飢餓-インパール作戦とビルマ-」を開催中です。

  インパール作戦やその後のビルマ(現在のミャンマー)での戦争を中心に、戦場で蔓延したマラリアや赤痢などの感染症に苦しめられた兵士たちの姿を体験談やモノ資料で紹介します。

  新型コロナウイルス感染症が蔓延する現在よりも、医療体制も十分でなく、軍の規律のもと感染予防すら満足にできない、当時の兵士たちが置かれた過酷な状況をご覧ください。

開催期間:令和2年(2020年)7月18日(土)~11月1日(日)

チラシ

◆ コロナ禍でもできる平和学習!~「しがけんバーチャル平和祈念館」のご案内~

 「しがけんバーチャル平和祈念館」は、満州事変から太平洋戦争までの滋賀県民一人ひとりの戦争体験および当時の資料等を紹介しているウェブサイトです。

 北原さんにこのサイトの活用法をお伺いしたところ、

 「サイトに県民の方の戦争証言をアップしているので、是非生の声を聴いてもらいたい」とのことでした。

 コロナ禍で外出は不安でも、自宅のパソコンから、いつでも平和学習をすることができますので、是非ご利用ください。

 詳しくは以下のURLをクリックしてご覧ください。

 https://www.pref.shiga.lg.jp/site/heiwa/index.html

■ 編集後記

 平和祈念館を訪ね、展示の解説も交えてお話を聴く中で、県民の方が体験された悲惨な戦争の状況と、平和の尊さを後世に伝えていきたいという思いがとても強く伝わりました。

 展示を観覧すると、戦争中は、多くの人の命が脅かされたことは言うまでもなく、学生が勤労動員されて十分に勉強ができなかったり、また無理な労働により過労で亡くなる人がいたり、生活する上で必要となる様々な物資の供出を求められたりと、人が人らしく暮らすためのあらゆる権利が制限されていたことが分かります。

 戦争という最大の人権侵害を二度と引き起こさないために、実際に体験をしていない後世の私たち一人ひとりが、戦争体験や平和、そして人権について学ぶ機会を持ち、社会全体として記憶を継承していくことが大切なのではないかと感じました。

 じんけん通信の読者の皆さんも是非、今夏は平和の尊さと人権を守ることの大切さについて学び、自分自身で考えてみてください。

人権カレンダー8月

・6日 広島原爆の日 /9日 長崎原爆の日
 昭和20年(1945年)8月6日に広島へ、9日には長崎に原爆が投下され、広島では約14万人が、長崎では約7万人の方が亡くなったとされています。

・7日 ホームレス自立支援法の公布・施行
 平成14年(2002年)のこの日に公布・施行。ホームレスの自立の支援や、ホームレスとなることを防止するための生活上の支援等に関して、国、地方公共団体の責務を明らかにしました。 平成30年6月14日の改正により、自立支援の有効期限が2027年まで10年間延長となりました。

・12日 国際青少年デー
 8月12日を「国際青少年デー」とすべきだとする青少年に関する世界閣僚会議の提案が、平成11年(1999年)12月17日、国連総会に認められました。 この日は政府やその他の人々の注意を世界の青少年問題へ向ける機会とされており、毎年異なるテーマが設定されています。

・15日 戦没者を追悼し、平和を祈念する日
 昭和20年(1945年)8月15日に第二次世界大戦が終結したことを受け、昭和57年(1982年)に、この日を「戦没者を追悼し、平和を祈念する日」とすることが閣議決定されました。

・28日 解放令の公布 
 明治4年(1871年)のこの日、明治政府は、それまで賤民とされていた人々の身分や職業を平民と同様とする内容の「太政官布告(解放令)」を公布しました。

・28日~9月3日 全国一斉「子どもの人権110番」強化週間
 全国の法務局では、子どもの人権に関する専門相談電話「子どもの人権110番」(フリーダイヤル0120-007-110)を設置しています。週間中は平日の電話相談受付時間を延長するとともに、土曜日・日曜日も電話相談に応じますので、気軽にお電話ください。相談は無料、秘密は厳守します。

・30日 強制失踪の被害者のための国際デー
 世界のいたるところに存在する何万人という強制失踪の被害者への関心を高める日となっています。わが国は拉致問題を含む強制失踪の問題への国際的な関心を高める上でも重要であることから、「強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約」に平成19年(2007年)に署名、平成21年(2009年)7月23日に締結しました。

ジンケンダーのちょっと一言

ジンケンダー
白



平和と人権の大切さを、これからも

伝え続けていくのだー!

お問い合わせ
滋賀県総合企画部人権施策推進課
電話番号:077-528-3533
FAX番号:077-528-4852
メールアドレス:[email protected]
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