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じんけん通信

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令和3年(2021年)12月(第164号)

 ひきこもり状態の子ども・若者や、近年は高齢の親と中高年の子どもの同居世帯が生活に行き詰まる“8050問題”が顕在化してきています。

 今回のじんけん通信では、滋賀県人権相談ネットワーク協議会の講座(2021年10月15日開催)において、県立精神保健福祉センター 辻本哲士 所長より、「ひきこもりの現状と県の取組について」をテーマに講義いただいた内容を12月号と1月号の前後編2回に分けて紹介します。

 参考:「滋賀県人権相談ネットワーク協議会」について

 県では、さまざまな人権に関する悩みに対して解決のお手伝いができるよう、国、県、市町などの53の関係機関で滋賀県人権相談ネットワーク協議会を組織し、連携を図っています。

特集 ひきこもりの現状と県の取組について(前編)

 社会問題としてのひきこもりは心に傷を負い、対人交流を避け、身を守っている状態です。ひきこもりそれ自体より、ひきこもりによって生じる生活困難が課題になります。

 ひきこもり支援は、公的制度によって衣食住を保障し、当事者が動き出せる環境を整備することです。多機関・多職種による多様性・継続性のある地域体制が必要になります。

 ひきこもりからの回復は就学・就労ではなく、社会と接触しながら孤立せずに生活することです。「ひとり生活も楽しい、社会生活も楽しい」を目指したいと考えています。

■ひきこもりの基礎理解

(1)ひきこもりについて

 「ひきこもり」とは、仕事をしていない、学校に行っていない、自宅にこもっている、人とのつながりがない、という状況が、長期(数か月)にわたり、続いている状態です。

 「ニート」という言葉もありますが、「ニート」は、もともとイギリス発祥の概念で、働いていない、学校にも通っていない、訓練も受けていない、という人々です。そこに、自宅にひきこもって、親密な対人関係が無いところを含めて、「ひきこもり」と呼んでいます。

 対人関係にトラブルがあって孤立しているという人が、「ひきこもり」と認識いただければと思います。

図1

ひきこもりの分類

 ひきこもりは病名ではありませんが、タイプ(群)によって対応が異なることがあるため、3つに分類されています。必ずしも明確に鑑別できないことが多く、見立ても大事ですが診断にこだわる必要はありません。どれに分けるかよりも大事なのは、まずは信頼関係を持つことです。どの群でも、基本は信頼関係がないと始められません。

図2

 ひきこもりの分類は、ひきこもりの状態像を理解するうえで知っておくことは重要ですが、急いで診断や病院受診を勧める必要は少なく、もちろん本人が望めば受診の方向で検討しますが、そういったアプローチが本人や家族の拒否を生むことがあります。

 むしろ、本人、家族との信頼関係をつくって、継続的な相談関係ができることを目標にします。しかし、現場では、時に「本当に本人を急いで医療機関につなげる必要はないのか」と判断に悩むことがあり、日頃から、相談・助言を受けることのできる保健医療機関との連携をつくっておきたいと考えます。

ひきこもり3群の違い

 3つの群は、S群統合失調症群、A群発達障害群、N群神経症群に分けられています。

図3

 S群の統合失調症群は、もともと対人関係も持てる、集団にも適応できている方が、中学校や高校の頃に、脳神経、脳細胞に病変が起こって発症し、幻覚妄想などの精神症状があって、注意、集中力が落ちるといった陰性症状を持ち、薬物療法中心で対応します。ときに、ある程度障害が残ることがあります。

 A群の発達障害群は、もともと対人関係は苦手で、集団生活が難しい方で、生まれ持っての特性です。知的障害の方々と同じように、生まれながらに脳機能がアンバランスな方です。

 幼稚園や小学校の時から1人遊びをしていたり、こだわりが強いという方が、思春期になって、自分と他人の違いが分かってきて、いじめの問題、恋愛の問題、友情の問題などから2次障害、要するに対人的な失敗体験をするようになることがあります。

 もともと発達障害そのものに大きな社会的課題はないのですが、対人関係の失敗があると自信を無くして、ひきこもることにつながり、そういう対人関係障害が、障害として残っていくことがあります。

 もう一つのN群、神経症群は、もともと対人関係を持てて、集団にも適応できているのですが、事件や事故に遭うことで、学校に行けなくなり、友達とうまくいかなくなるといった抑うつ的な状態になり、精神症状として発症し、具合が悪くなることがあります。カウンセリングや、ゆっくり休むことで回復していきます。

(2)ひきこもりの回復過程

 ひきこもりになるきっかけは、様々です。不登校から、ひきこもりになった人もいれば、仕事が続かずにひきこもりになった人もいます。きっかけが何だったか、よく分からないこともあります。

 ひきこもりの相談では、「外に連れ出すには、どうしたらいいでしょうか?」とか、「ひきこもりの人の行き場所はないでしょうか?」と、よく聞かれますが、なかなかすぐには上手くいきません。

 なぜなら、ひきこもりの背景には、さまざまな学校や会社、あるいは日常の生活場面で見られる身体的疲労、精神的疲労が、長期に続いた結果、心身のエネルギーの低下が見られるからです。

 このエネルギーの低下というのは、ストレスが身体的にも精神的にも溜まり切って動けなくなってしまうというような状態です。

ひきこもりからの回復過程

 実際のエネルギーはストレスが溜まって減っていくと、すぐに動けなくなるのではなく、表面的には、学校にも行って、仕事にも行ったりする前駆状態にあるのですが、そういう気力、体力がなくなった後に、動けなくなり、ひきこもりの状態になるのです。

 その後の適切な対応、実際はエネルギーの回復というのは、ストレスをうまく発散していって、安心、安全な環境で心身ともに疲れを取っていく、それを安心できる、理解してくれる人の存在のもとでエネルギーをためていくと回復していける ― が全般的な支援の方針になります。

図4

 もう少し具体的に見ていくと、最初は頑張って体力がないのを気力でごまかしているのですが、ストレスが溜まりに溜まって、多くの場合はエネルギーがかなり低下してから、ある時から急に動けなくなり、ひきこもります。

 その後、エネルギーを回復して、かなりエネルギー回復してから初めて動けるようになります。疲労はなくなっても、しばらくは、ひきこもった状態が続き、ある時から急に良くなったというようになります。

 エネルギーの低下した疲労困憊というのは、職場や日常の生活の中での、さまざまな身体的疲労、精神的疲労(人間関係等)が蓄積した状態で、十分な休養がなされないと少しずつエネルギーが落ちてきます。もともとひきこもる人というのは周囲に合わせるのに、人一倍強いエネルギーを使っています。

図5

 私たちも、対人交流で、いい意味でも悪い意味でも疲れを感じます。一緒にいて楽しいこともありますが、嫌な人といると疲れて相手に合わすのに気を使います。見かけ上はそれほど気を使ってないようでも、家へ帰ったら、へとへとになるという経験もあると思います。そのような気の使い方が非常に強い人が、ひきこもりやすい方になります。

 ストレスが溜まってエネルギーが低下してくると、気分が落ち込んだり、元気がなくなったり、疲れやすかったり、体の不調(頭痛、めまい、下痢など)等、日常でも様々な症状が出てきます。どういう時にそうなっているのか、これはその時にはわかりませんが後になって、あの時そうだったと家族や職場で気づきます。

 エネルギー低下のサインは、職場や学校から帰宅したとき元気が無い、ぐったりしている、イライラしている、ボーッとしているというような状態が見られます。日常の生活でも、人と会うことを避け、何事にも関心がわかない、外に出たがらない、今まで好きだったことにも興味が持てなくなってきます。

 それが限界にきて、不登校やひきこもりになって、はじめて周囲の人は気づきます。ひきこもりの回復には、エネルギーを取り戻す、ストレス、疲労困憊を解消していくことが必要です。

ひきこもりの回復には

 ひきこもりの回復のためには、安心、安全な環境と、理解してくれる人の存在が重要になります。また、一定の期間が必要です。焦らずに、その間「待つ」、「見守る」ということも重要です。

 安心、安全な環境とは、本人がそう感じられることが大事です。よく「自宅の居心地が良すぎると、ひきこもりが長引く」と言われる方がいますが、そういうことはありません。

 なぜなら、当事者にとって安心、安全と感じられる場所、居場所があるということが重要であって、本人の居心地を悪くすることによって、本人の安心、安全と感じられる場所を奪うことは、決してひきこもり状態の改善につながりません。

 多くのひきこもり者が外に出ることができないのは、自宅の居心地が良いからではなくて、外の社会やそこで出会う人に対する対人不安、対人恐怖によるものが多いからです。自宅の居心地よりも本人が社会において強い対人不安、対人恐怖に苦しんでいるということを理解することが大切です。

 このことを理解してくれる存在、多くの場合、本人にとって一番身近な家族に知っていてもらえると回復につながりやすくなります。そのためにも、家族支援が重要になってきます。

家族の不安を和らげる

 「一度不登校になると、ますます学校に行けなくなる」とか、「一度ひきこもると長期化するから、ひきこもらせたらダメ」と言われることがありますが、決してそのようなことはありません。

 家族も不安であり、「将来が不安だから、もっと厳しくするほうが良いのではないか」という思いと、逆に、これだけつらそうで笑顔もなければ「今は、ゆっくりと休ませる方が良いのではないか」というような気持ちの両方を持っています。

 病院にまず来るのは本人ではなく家族であることが多いことから、「ゆっくり休ませてあげたい」と思う家族を支援機関が応援することが大事になります。家族が支援を受けながら、生活が安定できるようにしていくことが必要です。

図6

ひきこもりの回復段階

 ひきこもりの回復は、最初は充電期になります。自宅でも1人でいることが多くてイライラしていますが、しばらくゆっくり家で過ごしていると安定期に移行していきます。自宅では落ち着いていますが、人と出会ったり、外出するとひどく疲れる段階です。その後には、少しずつ人と出会ったり、外出しても疲れなくなっていく活動期と、このような順番で回復してきます。

 家族に対しては、まずはエネルギーの回復を目指す時期には、自分のペースでゆっくり過ごしてくださいと伝えます。声かけ程度で、ただ本人がいろいろと話をしてきたときにはじっくり聞きましょうと、その時期が過ぎると家の中でできることを少しずつ行ってもらい、少しずつ外に目を向けていきましょうと、徐々に回復していくことを伝えます。

図7

回復の第1段階:充電期

 家でゆっくりするということが保障されると、充電期に入ります。自宅にこもることが多く、家族とも顔を合わせないようにして、食事も一緒には取らず、イライラして、怒りっぽかったり、落ち込んだりします。

 時には、昼夜逆転してゲームやスマホばかりしていたり、ずっと寝ていたりしています。精神的な疲労困憊の回復段階として、少しゲームでもやってみよう、スマホでもやってみようというもので、他にクリエイティブにすることができるまで回復していないため、そればかりしているように見えます。

 多くの人は、ひきこもりに至るまでは周囲のペースに無理にでも合わせて疲れてきたのです。今はひきこもっている当事者のペースでのんびりと過ごさせてあげます。本人を問い詰めても、ますますひきこもっていくことになります。

 生活の場面では、日常の声かけ程度に努めます。声かけするときは、穏やかに、丁寧に、一度だけにして ― 返事がなくても本人には十分に通じています。叱責や説教、説得は何の効果もないばかりか、ますますひきこもり状態を悪化させます。

 少し会話できるようになったら、話題は何気ない日常の出来事にし、学校や仕事、将来の話題は避けます。本人も、このままではいけないと十分に自覚していて、今の自分にはできないことも分かっています。

 社会から孤立して、不安を抱いている場合もあれば、社会から距離を開けることによって、自分自身の安心、安全を保っている場合もあり、不用意に本人の領域に入ると混乱を生じることがありますので。ずかずかと踏み込んで行ってはいけません。

 自宅に第三者が入ることによってイライラや混乱が起き、それが長期におよぶと余計に不安定になり、攻撃性が出てくることもあります。

 家族などは、専門機関に来てもらって家で会ってもらおうと思ってしまうのですが、それを本人がまだ予期していないときにすると、早急な本人への刺激が再びエネルギーの低下を招いたり、攻撃性が出てくることもあります。

 不適切な関わりをしなくても、時々、家庭内暴力が起きることがありますが、多くの場合は本人なりの理由があります。精神疾患の場合や不快なことだとか、自己防衛だとか、必ず何らかの理由があるので、そのことは理解しておくことが大事です。

 本人の話を聞いていると、回復の途中で時に過去の自分の苦しさや、それに対してなされた周囲の対応への不満を話されることもあります。昔の苦しさを話す時の多くは、今の生活にも苦しんでいるときです。その時は、じっくりと話を聞いてあげてください。

 エネルギーが回復し、疲労困憊度が軽減してくると、家の中では以前に近い状態になって行きます。少しずつ家族と生活リズムも合わせたり、普通に話せるようになって、安心できる人と一緒なら少しずつ外出もできるようになり、安定期に移行していきます。

回復の第2段階:安定期

 安定期になると、自宅では自分のペースで生活ができ、安心できる家族となら会話や外出もできます。しかし、それ以外の人とは、まだまだ対人緊張が強く、人と出会うことにまだ強い不安感、疲労感を感じます。

 外に出る不安が高ければ、まず家の中でできることをしていきます。対人恐怖が残っており、こだわりが強いことも多いので、人と会うことが少ない、自分のペースでできる掃除や後片付けなどから始めていきます。

 家の手伝いを頼むときも、「家で何もしないのだから、何々くらいはしなさい」という言い方ではなくて、「何々してくれるとお母さんが助かる」というように。本人も役に立ちたいと思っているので、「助かるわ」とか「またしてくれるとありがたいわ」ということを伝えていくことが大事になります。

 外に連れ出そうと思ったときでも、家族の外出につき合ってもらうという感覚で出ていってもらうようなスタイルがいいかと思います。最初の頃は、家族以外の人と短時間、話をしただけでもイライラとか対人疲労が出てくるのですが、少しずつ回復するにしたがって軽減していきます。

 ある程度エネルギーが回復して対人疲労や対人恐怖・集団恐怖が軽減してくると、1人でも外出できるようになり、少しずつ活動期に入っていきます。

回復の第3段階:活動期

 活動期になると、自分でも周囲のことに関心を持ち始め、一方で将来への不安を話し始めることもあります。いろいろな支援や社会資源の情報を本人に伝え始めますが、あくまで情報は伝えるだけで、決定は本人に任せます。「何々があるから、行ってみない」ではなくて、「何々というのがあるから、もし行ってみようと思うなら、一緒に行きましょう」ということです。

 ただ、表面的に意欲は早く回復してきても、まだまだ思考力、集中力の回復には時間のかかることもあります。

図8

 そのため、当面のゴールは、生活上の支援、経済上の支援、就労への支援と、本人が何を望んでいるかによりますが、働きたいというのなら、働くほうがよいでしょうし、家でゆっくりするとか、経済的に両親が年老いて動けないとしたら、生活保護をどうするか、生活困窮者支援をどうするかといったことを一緒に考えていくことになります。

(3)ひきこもりの長期化

 家でゆっくり過ごしてエネルギーが溜まってきたけれど、ひきこもりから脱せない、エネルギーがあっても、家から出られない、社会に戻れないという人々がいます。

 エネルギーが回復し家の中では普通なのに、家族以外の人とは会いたくない、外に出ることは極力避けるなど、ひきこもりの状態がなかなか改善しないことがあります。この場合、多くは強い対人恐怖、集団恐怖が残っています。対人不安・緊張が高くても、短時間なら家族以外の人でも普通に接することができる場合があり、この場合もその後に強い対人疲労が残ります。

 これは何故かというと、ひきこもりの背景には、疲労困憊、ストレスがいっぱいになったエネルギーの低下と、対人恐怖、集団恐怖の2つの要素があります。エネルギーの低下した人は、ゆっくり休めば回復していけるのですが、他に対人恐怖があるという人は、なかなかそのようにはいかないということがあります。

 対人恐怖、集団恐怖が残っているのは、過去に強いダメージを受けた場合と、もともと対人不安が高かった場合の両方があります。強いダメージというのは、心的外傷、トラウマとまでいかなくても、外にでるよう説教を繰り返されたり、中途半端な支援を受けることなどによって、失敗体験を繰り返し、もう社会に出るのが嫌になったというような場合もあります。

 これは本人の問題ではなく社会の問題であり、そこまで社会が傷つけたのであれば社会が支援していく必要があります。背景に発達障害があり対人交流が苦手なところに、無理やり対人交流を求められて傷つき、ますます対人不安が強くなるという場合もあります。

 そういう方々は、ずっと苦しい不安だとか、恐怖体験が残っていて、やはり基本は安全・安心な環境が必要になってきます。発達障害がある場合には、障害特性を知った上で、本人にどういう支援をしていくのかが大事になります。

 恐怖、酷い目に遭った人々は、家族との安心・安全の関係に加えて、家族以外の安心できる人(支援者など)との出会い体験の積み重ねにより、少しずつ軽減していきます。

 ひきこもりが長期に続くとき、その背景に、著しい対人恐怖やイライラ、強いこだわりの症状などの精神症状が見られることがあり、日常生活に影響してきます。そういうときには、外に出ることを目標にするのではなくて、外に出られない、これらの原因の軽減に努めることになります。

症状の影響

■保健所・市町村によるひきこもり相談の対応と支援

 相談の多くは、最初から本人が来ることは珍しく、多くの場合は、家族、特に母親の相談から始まります。まずは家族をねぎらい、じっくりと話を聞きます。

 家族は、本人に、いつかは「外に出て欲しい」、「仕事をして欲しい」、「自立してほしい」と思っていますが、今、とりあえずは「行き場所はないか」、「仕事がないか」、「本人が病気でないか」、「精神科に連れていかなくていいか」、「家で声を出して暴れたり、こだわりが強くて困っている」、それ以外にも経済的な問題などの話を聞いてほしいという方がおられます。

 一方で、本人は、「将来が不安」、「働きたい」などの思いもありますが、「過干渉の父母、周囲の人々を何とかしてほしい」、「もう今までへとへとになっているのだから、そっとしておいて」、「今が幸せだから」という方も多いので、必ずしも家族や支援者と本人の思いが一致しません。

 そのときには、まずは相談に来られた本人や家族と良い関係を結び、次もまた相談しようという安心・安全感を持ってもらえるように、「自分の大変さを、少しでも理解してもらえた」と思ってもらえるように、まずは、じっくりと話を聞くことが大切です。

 時には、意見が食い違うこともありますが、支援者が「したいこと」よりも、家族の思いや本人が「して欲しい」ことから話を進めていきます。主人公はあくまでも本人です、その次が家族です。支援者は脇役ですから、脇役が主人公を超えてはいけません。主人公が、光るような、きらめくような、幸せになるようなことを周りが作っていくということです。

今後のひきこもりの課題

 今後は、中高年のひきこもりの問題になってきます。中高年層の課題は、親亡き後とは限りません。ひきこもりが長期にわたってくると、介護が必要な高齢者と同居するひきこもり者の両方、要するに家族全体への支援が必要となってきます。ひきこもり支援と介護サービスと連携をして見ていくことになります。

 80歳の親に50歳の子どもがいるような「8050問題」が事例化するまでの支援を考えます。親が小中学校生などのひきこもり当事者の生活面、経済面での援助を行い、ひきこもり支援者は、当事者への介入が困難な場合は家族支援を中心に行われています。

 これが基本的な今までの支援ですが、中高年の場合は、本人および家族からの相談以外に、親自身の本人支援の力がなくなってきて多くは別居している親戚、兄弟や、高齢になった家族を支援している地域包括支援センター、介護支援機関からの相談がもたらされることがあります。

図9

 親戚、兄弟からは「今すぐにでも何とかしてほしい」、「親は大事でも働かない奴はけしからん」など、ひきこもり者を否定的に見ることが多く、親は自分たちに責任があり、他の人に迷惑をかけたくないと板挟みになっていることもあります。

 ひきこもり支援者は、強く求めてくる兄弟のペースに巻き込まれがちになりますが、やはり、ひきこもり当事者が何をしてほしいのか、親がどうしてほしいのかということを考えて支援する必要があります。

 地域包括支援センター等からの相談でも、ひきこもり者により親への高齢者虐待がされているのではないかというようなことも最近多くなっており、8050問題として表れてきている状況です。

 介護支援では、親に対しての生活面の支援をしながら、ひきこもり支援では、ひきこもり地域支援センターや民間支援団体等が連携して、当事者の生活面、経済面を支援しながら家族支援との両方を連携して行っていくことが大事になります。

8050問題での支援

 時に、親への介護支援を、ひきこもりの子らが嫌がるという場合があります。この場合、本人への介入は避けて、本人へは、本人の生活に迷惑をかけない、脅かさないことを保障した上で、親の介護だけをしていくということを、親を通して伝えます。

 親への介護支援を通して、ひきこもり者が、支援者を信用でき、安心・安全が保障されると思えるようになると、少しずつ関係性も持てるようになります。

 ただ、親への介護支援をしながら、ひきこもり当事者へ働きかけをしようとすると嫌がられることになります。親からの支援が困難となってきた経済面、対人関係を必要とする交流など、ひきこもり当事者が困っている部分への支援を行っていきます。本人を変化させるための働きかけではなくて、本人の生活にメリットがあることを提案していきます。親への介護支援に乗じて、ひきこもり当事者も外に出そうとすると、却って困難になっていきます。

 しかし、家族自体が、「ひきこもっている子がいることを隠したい」、「介入しても状況は変わらない」、「介入して精神状態が不安定になるのでは」と思っていることもあります。

 また、ひきこもっている子が若い時は、どこかへ就労をと考えていたものが、自分たちの介護を何とか手伝ってくれないかとか、自分が亡くなった後に、生活支援や経済支援はどうしていくのか、地域で子どもだけでどう生きていくのかが、親の悩み事になってきます。

 長期にひきこもっている人の中には、精神症状の把握も必要です。知的障害や統合失調症の人も多いので、最初にお話した、ひきこもりの定義とは異なってくることもあります。専門機関と相談して見立てていくことも必要です。

 早急な解決が難しいことも少なくなく、家族との関係を維持すること、周囲には今まで通り接してもらうこと、本人や家族が支援を望んだ時に、的確な介入・連携ができるような関係性をつくっていくことが大事になります。

今後の中高年層ひきこもり者の課題

 今後の中高年層ひきこもり者については、高齢化や長期化、発達障害を持っているのかということ、支援拒否の問題がキーワードになってきます。

 これらは、1機関だけでの対応は困難ですので、日本全体で考えていかないといけないことであり、多くの機関が関係しながら相談対応していく必要があります。

図10

 今月号(12月)はここまでです。次号(令和4年1月)の後編では、滋賀県でのひきこもり対策についてお伝えします。

人権カレンダー12月

・1日 世界エイズデー
世界エイズデーは、世界レベルでのエイズのまん延防止と患者・感染者に対する差別・偏見の解消を目的に、WHO(世界保健機関)が昭和63年(1988年)に制定したもので、毎年この日を中心に、世界各国でエイズに関する啓発活動が行われます。

・2日 奴隷制度廃止国際デー
昭和24年(1949年)のこの日、「人身売買及び他人の売春からの搾取の禁止に関する条約」が採択されたことにちなみ制定されました。

・3日 国際障害者デー
平成4年(1992年)、「国連障害者の10年」(昭和58年(1983年)~平成4年(1992年))の終結にあたり、国連総会は12月3日を「国際障害者デー」と宣言しました。総会では加盟国に対し、障害のある人々の社会参加をいっそう促進させるため、この国際デーに重点を置くよう呼びかけました。

・3日~9日 障害者週間
毎年12月3日から9日は「障害者週間」です。期間中は、障害や障害のある人に対する国民の関心と理解を深めることを目的として、障害のある人が社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加することを促進するため、全国で啓発行事が行われます。

・4日~10日 人権週間/10日 人権デー
国際連合は、昭和23年(1948年)第3回総会で世界人権宣言が採択されたのを記念し、昭和25年(1950年)第5回総会において、世界人権宣言が採択された12月10日を人権デーと定めるとともに、すべての加盟国に記念行事を実施するよう呼びかけています。法務省と全国人権擁護委員連合会は、毎年12月10日の人権デーを最終日とする1週間を「人権週間」と定め、全国的に啓発活動が展開されます。
法務省 人権週間HP(外部サイトへリンク)

・10日~16日 北朝鮮人権侵害問題啓発週間
北朝鮮当局による人権侵害問題に関する国民の皆さんの認識を深めるとともに、国際社会と連携しつつ北朝鮮当局による人権侵害問題の実態を解明し、その抑止を図ることを目的として、平成18年6月「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律」が施行されました。同法では、国および地方公共団体の責務などが定められるとともに、毎年12月10日から同月16日までを「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」とすることとされています。週間中は、国民の皆さんの認識を深めるようなシンポジウムなどの様々な啓発活動が予定されています。

ジンケンダーのちょっと一言

滋賀県人権啓発キャラクター「ジンケンダー」



ひきこもりについて、みんなで考えてほしいのだー!!

お問い合わせ
滋賀県総合企画部人権施策推進課
電話番号:077-528-3533
FAX番号:077-528-4852
メールアドレス:cf00@pref.shiga.lg.jp
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