●三日月知事:今日は、こういう機会をいただき、ありがとうございます。3点申し上げます。
1点目、「グリーン」というテーマで活動を広げることには、使命も可能性も感じています。物を買ったり使ったりする行動から、生産や流通の見直し、社会の変革につながる。エシカル消費のような価値などを、皆さんと一緒に追求していきたいと思っています。
2点目、情報の非対称性です。知っている人(デジタル技術の恩恵を享受している人)とそうでない人の間に格差があり、だまされたり、“グリーンに見せかけた商品”が流通することもあります。そうした課題も共有し、考えていけたらと思います。
3点目、滋賀県としてグリーンやハートフルな調達をもう一段上げていきたい。「どこからどこまでがグリーンか」「他と比べてどれだけグリーンか」。その物差しづくりや比較することで、高みを目指していきたいと考えています。
皆さんからも率直なご意見をお願いします。
○参加者:このような機会をいただき、ありがとうございます。会員の皆さんも「ぜひ、知事と意見交換をしたい」と希望していたので良い機会だと思います。
私たちは、グリーン購入とエシカル消費をベースに、事業者や県民の意識と行動を変えていくことを目的に活動しています。
先日新聞に、滋賀県がトップということで積極的な取組の記事が大きく掲載されました。新聞にも県がプランと目標を立て、県民・事業者と地道に取り組んできた結果だと紹介されています。
「三方よし」の精神や、ボランティアやコミュニティ活動の活発さが相乗効果を生んでいるとも書かれており、私たちの取組と重なる部分も多いです。今後は県とも情報共有しながら、相乗効果も高めていきたいと考えています。
○団体は1999年に242名で設立されました。その原点は1994年、滋賀県庁が全国で初めて「環境に優しい物品購入」の指針をつくったことにあります。
当時は「グリーン購入」という言葉もなく、50品目を優先的に購入することで、グリーンな市場マーケットをつくり、県が率先して購入し市場を変えることで、一般の消費者までまでつながろうとし、その5年後の団体の設立につながりました。上流のつくる側・売る側を変え、消費行動につなげる。精神論ではなく、実践で積み上げてきた取組です。
○この団体には430を超える企業・会員がいらっしゃいます。CO2ネットゼロなど、県の施策が届かない部分を会員が補完する形で貢献しています。
○25年前に滋賀県に来た当時は「環境熱心県」と言われていましたが、今もそう言えるのかは疑問です。この団体の組織率は高いですが、過去の遺産に頼っている面もあるのではないかと感じています。また、県立大学も当時は「美しいキャンパス」でしたが、他の私立大学と比較すると客観的に見直す必要があるのではと感じています。
●今週末に伺う予定ですので、そうした目で見てみます。
「環境熱心県」といえるのか、というのは、具体的にどのあたりが気になりますか?
○企業のエコ活動に疑問を持っています。市民活動は伝統的に盛んで、湖上保全の関係だと琵琶湖もあるので日本一だと思いますが、企業活動では、滋賀県が先頭を切ってやるという形にはなっていない、というのが私の肌感覚です。
●なるほど。そのあたり、企業のことを言及されましたけど、「いや、そんなことないぞ」といったご意見もあるかもしれませんね。
○私たち企業が滋賀県で活動する根本には、事業活動をとおして暮らしを豊かにするという目的があります。その中で環境を守るということがないといけない。法規制遵守がメインではありますが、それ以上の環境を良くしていく取組については、見えにくいのだと思います。ネットワークを通じて、他の企業の取組を知ることで、新たな価値が生まれる可能性も感じています。やっていないことはないです。
●そういうことで悩まれている業者さんは多いんでしょうね。どうですか。
○私はずっと工場にいて、10年前から環境の仕事をしていますが、製造業では、生産性や安全、品質というのは頭の中に染みついているが、その中に「環境」という考えをどう入れていくかが大事だと思います。
私はISOの審査員資格も取得していて、内部監査の仕組みを広げ、集め、共有することで会社のリスクを抑えるよう努めています。
内側にはいろんな動きがあるんですが、外から見ると、企業が環境活動をしていないように見えるかもしれません。反省もしなければいけないですね。
○中小企業の立場から言うとかつては「みんなで頑張ろう」という雰囲気がありましたが、ここ10年は社会システムとして循環性のあるものにしないといけない流れになってきています。
一方で、中小企業は余裕がなくなってきていて、「環境どころじゃない、食べていくのにどうしたらいいか」となっています。私は大手の逆張りでマーケットをつくってきましたが、なかなかできない。そういう取組をどう落とし込めるか、戸惑いもあると思います。付加価値をどう高めるか循環型社会への移行をできれば政策的に提供していただきたい。
●重要なご指摘ですね。
○大手コンビニが「滋賀の子どもが環境に配慮した商品を選んでいる率が少し高い」と知り、廃油でトラックを走らせたいと相談に来て、おもしろいなと思った。教育が根付いてきていると思う。企業はサポートしていきますが、行政にも「めっちゃおもろい、やろう」と応援してもらえる雰囲気がほしいです。最近それが感じにくいなと。
●大手コンビニが着目された話は知りませんでした。そうした「一緒にやろう」という雰囲気は県の方ではあまり感じられないでしょうか。
▲循環社会推進課長:個人的には、確かに30年前の「環境熱心県」と言っていた時代から比べると、トーンダウンしてきているように感じます。社会の変化に合わせ、先を見据えた取組も大事だと思います。循環社会推進課では今後はサーキュラーエコノミーを重点的に取組み、始めたばかりではありますが、動脈・静脈産業をつなぐ仕組みづくりを考えながら進めていきたいと思います。
○今日はせっかくなので、長く取り組んできた牛乳パックリサイクルを通じて感じていることを一つ共有したいと思います。
この活動に参加して感じるのは、「グリーン経済って何だろう」ということです。環境負荷が下がるだけでなく、社会関係資本の豊かさを実感しています。牛乳パックリサイクルは資源循環であると同時に、子どもの環境教育や福祉の人たちの関わりも含んでおり、さまざまな人の関わりに価値があると思っています。
ただ、最近はその価値が「資源がどれだけ回っているか」「CO2をどれだけ減らしたか」といった単一の数字に集約されすぎているように感じます。「再エネを増やせばいい」という発想で森林破壊が起こるような矛盾に対して、すごく危惧しています。
たとえば、最近アルミ付きのパック(豆乳など)のリサイクルを進める動きがありますが、出口がわからないところがあります。
アルミ付きのパックが牛乳パックに混ざると分別が非常に手間で、スーパーや行政もよく分からないまま「いいですよね」と受け入れているケースがあります。
大阪や京都では仲間が対応に苦慮しているので、全国のネットワークの関係者と共に国(経済産業省、農林水産省、環境省)へ話をしに行っています。
こうした制度や取組が安易に進んでいるというところを、行政には現場に来て、実際に何が起こっているのかを見ていただきたいと思っています。
この団体の価値は、成果だけでなく、企業や団体の中でのつながりそのものにもあります。その価値を環境以外の部署にも知っていただけたらと思います。
また、私たちは子ども・若者の支援にも関わっており、引きこもりや働きづらさを抱える若者の居場所を提供している団体や企業もこの団体にいらっしゃいます。こうした取り組みの中に、滋賀の社会環境資本としての可能性があると考えています。
●現場というところではどうでしょう?
〇私は木の家をつくる建築の仕事をしていますが、新築やリフォームの場面で「環境」と言っても、正直あまり響いていません。むしろ「経済」や「健康」の方が関心を持たれます。
自然素材を使えば空気環境が明らかに違いますし、断熱をしっかりすればエネルギーが少なくて済み、ヒートショックも防げます。実際に、洗面所の温度を2度上げると健康寿命が5年延びるというエビデンスもあります。お客様には結果的に環境にも良いという話の仕方をしています。
滋賀県版ZEH住宅の補助金は素晴らしい取組ですが、予算はすでに半分以上なくなっています。健康に良い、そして結果的に環境にも良いというPRをすれば、グリーン経済が広がる可能性があると思います。
〇東近江市で「菜の花エコプロジェクト」に20年取り組んでいます。廃食油から石けんやBDF(バイオディーゼル燃料)をつくり、また菜の花を育てて油を搾り、それが再び廃食油になるという循環です。最近は若い世代の参加も増えており、特に石けんの見学会(石けん作成)には30〜40代の親世代が、70〜80代の活動を継承するというようなことも行っています。
また、農業面目線で1つ、東近江では果樹の新規就農のマッチングが進んでいますが、有機栽培の野菜や米は少なく、オーガニック商品購入のハードルや出口(販売先)が課題です。地域で育てた有機農産物を学校給食で取り扱ってもらえると、農業分野の出口となり、グリーン経済の中で弱いと感じている農業者を後押しできると思います。そういったところを、グリーン購入と絡めていけると「滋賀らしいグリーン経済」がさらに発展していくのではないかと思っています。
●エネルギーの話も多く出ましたが、大阪ガスさんにはいろいろお世話になっています。
○こちらこそありがとうございます。
万博のガスパビリオンでは、小学校高学年を対象に、10年・20年後を見据えた「e-メタン(合成メタン)」についてコマーシャルしています。これが実現すれば、今のコンロや給湯器をそのまま使えます。
また、コジェネレーションやエネファームという商品を通じて低炭素化を進め、2050年にはCO2排出実質ゼロを目指しています。滋賀県内の企業も燃料転換など進めておられ、そうした動きもぜひ知っていただきたいです。
●そうした取組を県内で広める役割として、びわこ放送さんにもっと取材してもらっても…。
○個人的に、コロナ禍で人と人との関係がより「無関心」になったと感じています。ハラスメントの問題でも、言いたいことを飲み込んでしまうような空気があります。
温暖化や低炭素のことも、以前よりも「誰かがやってくれるのでは」という雰囲気になっているように思います。
びわこ放送では、無料で一方的に情報を届けていますが、ネット社会では関心のある情報しか取りに行かれない。だからこそ「オールドメディア」と言われるテレビ・新聞・ラジオが、今こそ頑張らないといけないと思います。
環境配慮の製品を直接出せるわけではありませんが、プッシュ型の情報発信で貢献できる部分があるのではないかと思っています。
●なるほど。では、県庁の率先購入について、調達側からいかがですか?
▲会計管理局次長:ありがとうございます。グリーン購入に早くから取り組んできた実績が今につながっていると思います。これを継続するだけでなく、新しい社会の価値を創造する、もう一段高みを目指すことができないかと思います。皆さんと一緒に、継続プラス発展を考えていきたいです。
●本当に多岐にわたる話で、1回では終わらない気がしてきました。いろんなキーワードが出てきましたね。
○北の方にいると、県庁の職員さんと話す機会はほとんどないんですよ。市役所の職員さんとはよく話すんですけど、県の方とは個人名で呼び合うような関係も少なくなってきたと感じます。立場ではなく、個人として関われる関係が薄れている気がします。
現場に出ない、書類だけで終わってしまう職員も増えた印象です。恐る恐る聞きにくる方もいて、昔のようないろいろな話をできる関係が薄くなっています。そうした関係性を取り戻してほしいです。
●日常業務の中で、ちょっとした会話から始めることが大切ですね。アイデアやつながりは、そういう場から生まれると思います。
○私は妻が働き出してから家事を手伝うようになりました。洗い物やごみ捨てをする中で、分別の大切さに気づきました。ISOの審査員としても廃棄物やリサイクルも見ていますが、異物混入が大きな課題です。
企業も同じで、細かく分別して異物が混じらないようされています。そうした取組を生活現場や中小企業にもつなげていけるといいと思います。
あと、息子が帰ってくると料理の量が増えて、ごみが増えます。生産性が上がるとごみもCO2も倍増する。それを減らすには考え方や意識が変える必要があると実感しています。
●そうですね。個包装が多いからゴミが多いなど、日々の暮らしの中でわかることもありますよね。
○いろいろと切り口はあると思いますけど、先ほどお話があったように、市町村の職員とは福祉等で日常で接点があるが、県職員とはあまりないという話がありました。
○昔は県に「エコライフ推進課」があって、県民の生活と接点を持つような課で、この団体ともつながりがありました。あのような課があると、県の職員が現場へ出ることも増えるし、企業が県と接点を持ちたいときにもつなぎになるといいなと思います。
●なるほど。エコライフ推進課って何年までありましたっけ。
○私がいた平成18年(2006年)頃までです。団体設立(平成11〜12年)当時はありました。
当時は行政が直接介入せず、ボランティアの世話人会などでワンクッション置いて支援していました。小売店環境保全連絡会を立ち上げ、ポイント制レジ袋などの取組もしていました。商売敵同士も、「環境」というキーワードの中では、みんなが歩み寄るんです。
その連帯感がネットワーク設立にもつながりました。行政は少し距離を取りつつも後ろから支える、つかず離れずのウィンウィンの関係です。当時の関係は、離れてもつながっているんです。
●そういう関係性が、いまは薄いんですか?
○そうですね。薄いと感じている方もいます。
●例えば、グリーン活動ネットワークと県、市町の関わりはどうでしょう。
○ネットワーク主催で自治体の連絡会議をやっており、環境省も含めて、県、市町と一緒に勉強会をしています。
○聞いていて思ったことですが、少し抽象的になりますが、活動スタイルや関係性についての感覚は、何となく分かるような分からないような感じがしました。ただ、それとは別に、何かやる価値のあるチャレンジングな高みのようなものを目指す中で、インフォーマルなつながりをつくっていく方が、考えやすい気がしました。
いきなり関係をよくして、それから何をするか考えるというのは順番が逆な気がします。そこがハードルになっている部分もあるかと思いますが、目指す高みがあれば「一緒にやろうやないか」となると思います。ただ、その高みを見つけるのが難しいのでしょうけれど、そう思いました。
○僕もエコライフ推進課のことを思い出していました。環境生協を立ち上げていた頃など、「こんなライフスタイルがあるんじゃないか」「こういう暮らし方があるんじゃないか」と、みんながクリエーティブに考えていた時期だったと思います。
○ 最近は、上からいろんなものが下りてくるから、それに応じないといけないという受け身的な感じになっていて、クリエーティビティが失われているように感じます。
CO2の問題を突き詰めれば、遠くのものを運ぶのではなく、もっと地元で暮らしたり働いたりしないと、通勤に使うエネルギーは減らないし、地域や経済のあり方そのものを変えないといけないところまで来ている。
しかし、今の部局単位では、それぞれの話になり、そこまでの議論はできていないと思います。
滋賀から新しい暮らし方や地域のあり方などのクリエーティブなことをしていく必要があると思いますし、現場に行っている皆さんの気づきを拾い上げ、つなぐことを面白がってできる職員さんが必要だと思います。
以前、琵琶湖研究所が、「こんな暮らしがあるんじゃないか」という冊子を作っておられました。脱炭素という言葉が使われていなかった時代ですが、そういう絵は描かれていた。ただ、それを実行する動きにはなかなかつながっていなかったように思います。
県としても、「こういう暮らし方、地域のあり方を一緒につくっていきましょう」という次のステップへ向けた動きが必要だと思いました。
細かい規制やルールではなく、「生き方」や「暮らし方」といった観点から考えるのがいいのかもしれません。
●グリーン活動でつながるネットワークとして、「どうやってものをつくるか」「どうやって生きていくか」「どうやって暮らすか」、あるいは「誰とやるか」といったことを語り合えるのがいいですね。立場や規制ではなく、つながりや関係性の中で「それなら、こうしたらいいんじゃないか」と相談できる。企業だから、中小だからというのではなく、こういうネットワークがあるからこそ、「どうやったらいいんでしょう」と気軽に話し合える。
私たちもこのネットワークに加わって、まずは一緒にいろいろと話し合うことから始めれば、新しい解決策ややり方が見えてくるのではと感じました。
久しぶりにグリーン活動ネットワークの皆さんと語れて、今日は少し硬い場でしたが、私自身ももっと参加して、新しいつながりやネットワークを一緒につくっていけたらと思います。
今日いただいた意見をメンバーとそしゃくし、県や知事として「こんなことができるんじゃないか」という案をつくって、また皆さんに投げかけ、キャッチボールしながら進めていけたらと思います。
サーキュラーエコノミーのことや率先した調達・購入の取組、木の家やZEH、補助金などもありますが、まだ十分に行き渡っていない部分があれば、どうすればよいのか考えたいです。
リサイクルの現場の実態も確かめながら、よりよい形をつくっていきたいと思います。ぜひ、またやりましょう。今日はありがとうございました。