●本日はこうした機会をいただき、ありがとうございます。
●愛知川の環境保全活動をはじめ、内水面漁業の維持、子どもたちへの体験学習の場の提供など、多岐にわたる活動に取り組まれていることに、心から感謝申し上げます。
●鈴鹿の山から流れる、愛知川の水は肥沃な土地を育み琵琶湖へと注ぐ貴重な恵みですが、ダムや土砂、上流の山の問題など課題があろうかと思います。
●本日はしっかりお話を伺い、今後の政策づくりに反映させていきたいと思います。
Aさん
○愛知川清流会会長です。本日はよろしくお願いします。
○愛知川清流会は、平成25年から水産庁の「水産多面的機能発揮対策」に参画し、今年で12年目になります。
○主な活動として、年間10回の草木の伐採作業を行っています。かつて、護岸道路は川の瀬や淵がまったく見えない状態でした。草木で覆われ、不法投棄も多かったのですが、昔の美しい愛知川を取り戻したいという思いで愛知川清流会を結成し、現在も定期的な草刈りや環境整備を続けています。
○また、河川護岸に「清流を守ろう」などの啓発看板を設置したり、子どもたちのアユ放流などの体験学習の実施、さらに年末にはアユの煮付けを作り、高齢者への配布なども実施しています。
●そんなことまでされているんですね。すごいです。
○地域の祭りにもアユの煮付けを提供し、昔ながらの味が好評です。
○愛知川のアユが美味しく人気がある理由は、1.石の品質が良い 2.鉄分やミネラルが豊富で水質が良い 3.アユの餌となる藻の生育が良好 4.水質階級が一級 5.瀬の方が透明度が高い 6.水温が8℃になると遡上が始まる、ため。これらは大学教授らと7年かけて調査し確認されたものです。
●ありがとうございます。
Bさん
○私からは愛知川清流会について3点ご紹介します。
○1つ目に、愛知川清流会は全国の水産多面的機能発揮対策の中で模範的な組織とされており、内水面・川の代表として選ばれ、水産庁や他の活動団体から注目されています。
○2つ目に、東京で開催された「全国水産多面的機能発揮対策活動報告会」において「内水面と川」をテーマに2度発表し、また、鹿児島での内水面講習会では講演者として招かれるなど、高い評価を受けています。
○3つ目に、近隣の他府県からも研修のために多くの漁業関係者や水産多面の活動参加組織が多くお越しいただき、勉強されています。
Cさん
○作業安全や方針等、活動の姿勢についてお話しします。
○私たちは、安全第一を徹底して活動しています。例えば、クズの根に枯渇剤を注入し、草刈り機の巻き込み事故を防いでいます。また、作業員の間隔を10メートル以上確保し、事前講習や作業前の確認を徹底することで、これまで4000日の作業を事故ゼロで続けています。
○また、作業は30分ごとに20分の休憩を取り、参加者同士の交流の場にもなっています。特に高齢者にとっては、認知症予防や地域のつながりを深める機会になっており、楽しみにしている方も多いです。
○さらに、10年前には滋賀県レイカディア大学米原校の園芸学科の27 名が、地域学習の一環として清掃作業に参加されました。
Dさん
○過疎化と高齢化に対応した地域づくりについてお話しします。
○旧永源寺町が東近江市と合併して20年、人口は約3割減少し、高齢化が進んでいます。愛知川清流会は、世代をつなぐコミュニケーションの場としての役割も担っていきたいと考えています。
○作業の休憩時間には、「現役を引退した後に戻りたくなる永源寺地域の地域づくりが大切だ」という話もよく出ます。レジャースポーツで人と接することも大事ですが、清流会の活動のように環境改善等に携わりながら交流できる場をつくる方法を、今後も皆で考えていきたいと思います。
Eさん
○昔の愛知川のアユ釣りは人気があり、全国的にも最高級と評価されていました。昨年も京都の料理店主から愛知川のアユを求める声がありました。
○しかし現在は、胃に微粒な砂が多く塩焼きに適さず、高知県の「清流めぐり利きアユ会」への出品も断りました。全国アユの味比べ大会やアユ釣り大会でも滋賀の川が選ばれず、「アユといえば滋賀県」という印象が薄れているのが残念です。
○他府県では人工産卵や遡上アユの「お助け放流」が進んでいますが、滋賀の漁協ではほとんど対策が取られておらず、非常に残念な思いがあります。
Fさん
○鈴鹿10座エコツアーガイドクラブを結成し、山を活用したツアーを実施しています。
○しかし、近年シカの食害で植生が減り、山の保水力が低下し、荒廃が進んでいます。これにより、愛知川の源流域では濁水や崖崩れ、水位上昇が発生し、特に茶屋川流域は深刻です。このままでは伊吹山の崩落事故のような事態も懸念されます。
○県には、「マザーレイク」だけでなく、「マザーフォレスト」にも目を向けていただきたいと思います。
Gさん
○愛知川清流会副会長です。
○私たちは、愛知川を取り戻し、大人から子どもまで楽しく川に入れる環境づくりや、小学校の校外学習、地域の歴史・文化の共有に取り組んでいます。
○他県からも相谷熊原遺跡について研修に来られた。そこで出土したのが1万3000年前の「縄文ビーナス」といわれるもので、それがこちらになります。
●それ、本物ですか?
○と言いたいんですが、レプリカです。
●びっくりしました。
○相谷熊原遺跡の出土品から、当時ここに約20人が暮らしていたことが分かっています。縄文時代は、山や川の自然の恵みを活かし、1000年以上生活が続いていました。
○私たちは、かつての人々が見た美しい愛知川を取り戻すため活動しています。また、河川清掃中に発見した化石樹を漁業組合の横に設置し、子どもたちの学習や観光にも役立っています。
Hさん
○初代の会長です。
○本日はありがとうございます。先ほどの話にもありましたが、愛知川のアユの腹には約60%のシルト(粘土質の土)が含まれています。昔から滋賀県では川魚の内臓を取って食べる習慣がありますが、特に最近の愛知川は濁水の影響でシルトが増えています。
○10年以上前から増えており、それ以前は問題なくアユは全部食べられました。
●シルトを減らすには?
○シルトが流れないような川にするということ。濁水をなくすことです。
○子どもの頃は、台風後も1週間で水が澄みましたが、今では1カ月以上濁りが続き、漁業ができません。ダムに堆積したヘドロが攪拌されることや、源流の山の荒廃が原因の一つだと思う。
●今日のお話から、愛知川がアユの産地として優れていることや、その環境を守るための清掃・学習活動などが、事故なく安全に進められ、地域の多世代交流や社会的なつながりにも貢献していることがよく分かりました。
●一方で、山の荒廃やダムの影響による川の濁りといった課題もあり、これらの改善について、またぜひ具体的なアイデアやポイントを教えていただきたいと思います。
○愛知川には三つの課題があります。一つ目は濁水の長期化です。以前は台風後でも1~2週間で澄んでいましたが、最近は1か月半も濁りが続いています。二つ目は河床低下とアーマーコート化です。
●アーマーコート化とは?
▲耕地課長:ダムによって上流から砂が供給されなくなり、小さい砂利が流され、大きい石ばかりが残ってしまう現象です。
▲流域政策局職員:さらに、愛知川では濁水の泥がその大きな石の表面を覆ってしまっています。
○そのためにアユの餌となる藻が生えなくなり、産卵環境も悪化しています。また、水生生物の数も減っています。種類は変わらなくても、以前50匹いた虫が現在10匹程度しかいないなど、環境が悪化しています。
○三つ目の課題は、瀬切れです。これは琵琶湖まで水が届かないことです。春、アユが水温8℃以上になると琵琶湖から上ってきますが、水が途中で切れてしまうため、遡上できなくなっています。これらについて協議会で話しています。
●こうした課題に対して取り組んでることは何ですか?
▲耕地課長:昨年度からダムの上層のきれいな水を放流する試みを始めました。今年はさらに「置き砂」を始めました。上流の砂利をダム下流に運び、河床低下や泥の堆積に効果があるか実験しています。
○置き砂の量はまだ少ないと思うし、今年の分だけでは効果は確認できません。来年以降も継続してほしい。
●瀬切れの対策は?
○アユが遡上する春先、水温8℃以上になったらダムからの放水量を一定期間増やし、琵琶湖まで水を届けるという実験をしました。ただ、農業用水との調整が難しい状況です。
○協議会を立ち上げて県や関係部署と対策を話し合っています。また、排砂バイパスを建設されるので、すでに他地域の視察を行っています。
●課題解決のためには、やはり協議会で皆さんのお話を聞いていくことが大切ですね。
●現役を引退した人が帰りたいと思える地域づくりって、いい言葉だなと思います。
○昔は婦人会や青年会がありましたけど、今はほとんどなくなってますね。それとともに、地域のつながりが薄くなってる気がします。
●清流会のメンバーは何人ですか?
○83人で、平均年齢は70超えています。
○8月の最終の日曜日に、「清流の日」と称しまして、様々な役職の方に参加していただいています。
○初年度は2・7トンのゴミの量でしたけど、近年は1割ぐらいに減っています。
○地元住民の方の、少しでも自分のところの河川をきれいにしようという思いと、私たち愛知川清流会の日頃の活動成果だと思います。
●鈴鹿10座、一緒に登ろうと言ってたけど、雨で中止になって登れなかったんですよ。シカの食害は進んでますか?
○すごいですよ。竜ヶ岳なんか、頂上に何百頭もいます。
○前は御池川が結構多かったんですけど、いまは茶屋川が多いです。
●何か重点地区を決めて、ちょっと山に手を入れてみるっていうのも。
○昔は橋がありましたが、砂利が堆積して今はほとんど埋まっているところがあります。
○そうです。鳥居もどんどん埋まっています。
●これらはどうしたらいいかな。でも、本当に山への手入れが大事だと思います。
1.愛知川内水面の漁業振興協議会を今まで7回実施しており、来月に8回目が実施されています。現状把握について力を入れているようなので、課題解決に向けた取り組みを進められるような協議会の内容に変えてほしい。全国のダムを抱える漁協の多くが赤字であり、愛知川清流会はそれを改善する手本となる活動を目指しています。
2.愛知川清流会は水産多面的機能発揮対策の活動に対し、国から7割、県から3割の交付金を受けていますが、国からの交付金が毎年5〜10%ずつ減額され、現在は当初より3割減少しています。清流会では5年、10年計画を立て、活動範囲を広げながら継続的に取り組んでいるが、交付金が減少すれば、十分な作業ができない。そこで、県に対し、減額分を補助してもらい、計画の維持・拡充を図れるよう支援を求めています。
▲耕地課長:いつもありがとうございます。置き砂を始めましたので、また一緒に考えながら、全国のモデルになるように頑張っていきたいと思います。よろしくお願いします。
▲水産課長:水産多面の交付金に関しましては、来年度、水産庁が予算を増額されるという情報も得ております。それに伴って、できましたら県の補助も上積みできればなと考えているところです。
●「今年の清流の日」は8月31日ですか?
〇そうですね。
●国スポ前でなかなか詳細なスケジュールがわかりませんが、皆さんと活動して、勉強したい。
●今日は、皆様とお話しして、いろんな可能性というか、気付きをいただきました。また県の方でも、しっかりといただいた意見に応えられるように頑張っていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
●もちろん愛知川清流会は、全国のモデルであり、全県のモデルにもなろうかと思います。またいろんなところでPRしていきたいと思いますし、皆さんの活動がより継続して、充実してできるように、われわれも頑張って対応していきます。今後ともよろしくお願いします。
(一同)
ありがとうございました。