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第37回 「こんにちは!三日月です」

  • 対話相手大津・南部地域木材供給協議会の皆さん

大津・南部地域木材供給協議会の皆さん

今回は、大津・南部地域木材供給協議会の皆さんと対話を行いました。

大津・南部地域木材供給協議会は地域の木材を、地域の木造建築物に供給することを目的として、大津および南部地域(草津・守山・栗東・野洲)の製材業者を中心として、平成28年3月に設立されました。

平成22年の「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」施行以降の、大型公共建築物への木材利用の気運の高まりを背景として、大型の木造公共建築物の計画が増加する中、一社単独では困難な大規模受注を同業者間の協力で実現することにより、県産材を大型木造公共建築物に供給することを目指して活動されています。

全会員が、滋賀県産と認証された木材「びわ湖材」の認定業者であり、「びわ湖材」の魅力についても積極的に発信するなど、県産材の利用拡大にも積極的に取り組んでおられます。

今回は、製材業界で県産材の利用拡大に取り組む皆さんと木の地産地消について語り合いました。

知事から

今回の対話について

  • 今年になってから琵琶湖新時代を創ろうという新たな表明をし、いろんな施策を充実させていきたいと思っている。山に人の力と心が入り、育った木をもっと活かし、林業を成長産業化させたいと思っている。そのために現場で御苦労いただいている皆さんとお話をして課題や可能性を探りたい。
  • 平成22年に「公共建築物木材利用促進法」の制定に関わった。この法律に基づき、公共建築物に地元材、びわ湖材を使っていきたいと思うので、皆様のお知恵、お力をお授けいただきたい。

大津・南部地域木材供給協議会の皆さんから

大津・南部地域木材供給協議会の取組および製材業界の現状について

  • 大津・南部地域で大型・中規模の公共施設を建設するに伴い、地域の製材所へびわ湖材の見積依頼が来たが、県内の製材所は規模が小さく、木材量の多さと納期の短さから対応ができなかった。そこで、地域の木材を地域の公共物件に使ってもらいたいという思いを持った製材所、材木店、木材市場が集まり、平成27年4月から設立準備を始め、平成28年3月に「大津・南部地域木材供給協議会」を設立した。
  • 活動を始めて1年目だが、毎月例会を開き、公共物件に協議会として木材を供給する仕組みなどを話し合っている。また、各社が共同でやっていくために、共通の単価表づくりや製材乾燥方法などのマニュアルづくり等も行っている。びわ湖材をより価値あるものとして使っていただくためには地場の製材所、木材店、木材市場がそれぞれの特徴を生かし、その経験と技術を持ち寄って連携することが大切だと考えている。滋賀県で育った山の木を県内で加工し、県内で使うことで山と琵琶湖を守ることができると思っている。
  • 昔の家は地元のヒノキで柱や土台が作られているものが多く、シロアリの被害を受けず長持ちしている。しかし、築20年程度でも輸入材が使われている物件では、早く傷んで建て替えが必要になるケースをたくさん見てきた。現在は、土台や柱に県産のヒノキを使うよう設計するようにしている。まだまだ予算等の兼ね合いで普及できていない部分もあるが、公共建物で滋賀県の木をどんどん使っていただき、滋賀県で建てる建物は県産の木でなければならないと皆さんに思っていただけるようにしたい。
  • 「木工房まつや」ではヒノキの箸づくり体験を開催している。過去5年間で約2500人に体験していただいた。滋賀県の木に触れていただき、木の良さ、ヒノキの丈夫さ、カビの生えにくさ、軽さ、仕上げた時のきれいさを体験していただいている。
  • 木材業を営むと同時に山林も所有している。一個人・一民間企業での山林の維持管理、この産業の行く末に限界を感じていたが、大津・南部地域木材供給協議会をきっかけに行政の人などとも話す機会ができた。今までは、日々の苦労を誰に訴えたらいいのか、業界が難しい岐路に立たされている中、どうしていけばいいのかという悩みを一人で抱えていたが、今はみんなで集まって協力している。
  • 現状は輸入材がほとんどであり、たくさんある滋賀県の木が使えておらずもったいないと思う。琵琶湖や山を守るには滋賀県の木を使うことがすごく大事だが、1社だけではなかなか出来ない。協議会メンバーは同じ志、方向性を持って集まっている。今後も力を合わせて取り組んでいきたい。
  • 認定子ども園を建てるのに約250~300立方メートルの大量の木材を使う。公共事業の工期は1年しかなく、規模が小さい1社では対応できない。協議会の力を合わせてようやく何とかなるかどうかというところなので、自ずと協働しながらやっていくことになる。
  • 今の価格を見ていると、輸入の木材と比べて国産材の価格が高いとは一概には言えないが、滋賀県の現状では、びわ湖材を明日すぐに大量に用意するのはほとんど不可能。かなりの工期や準備期間が必要になる。中小企業も多いので量産ができない。
  • 最近注目されているCLT(木材を木目に直交するように重ね合わせ接着した積層材)のラミナ(集成材を構成する挽き板あるいは小角材のピース)をびわ湖材で作るという取組もできるが、まずは、自分達ができる範囲で協力しあえる取組から始めていきたい。
  • 協議会としては、保育園や老人ホームなど公共建築の方面に力を入れたい。
  • 国産材だと若干高くなるので、国産材を輸入材に変える人もいる。梁や桁に使うような長くて材背の厚みと幅のあるものなら値段が大きく変わってくる。日本には6メートルより長いものは少なく割高になってしまう。
  • 林業に携わる、山に入る方が間違いなく減ってきている。例えば、今年10人採用されても、3年先には間違いなく3分の1になる。3分の2の方は退職して他所に行ってしまうのが現状。3Kの代表のような作業でもあるので、なかなか続かない。かなり機械化されて変わって来ているが、個人の方は減る一方で、森林組合の方や専門の林業の方に山に入っていただいて何とか手入れしているというのが現状。
  • 今までなら地主が木を切り出して売るということがあったと思うが、最近は価値が低くなってきて採算が合わないので、山を放置する人が多い。また所有者の代替わりによって放置されることも多い。

びわ湖材の備蓄について

  • 文化財の修繕解体、建替の工期はだいたい3年。入札の後1年かけて納材業者が木材を集め、次の1年で設計し、その間に木材を乾燥させる。その後、建築業者が刻み・加工作業などを行い、だいたい3年周期となる。文化財的な価値あるものはそれぐらいのスパンで考えられている。今は年度ごとに完結させる仕組みになっており、そこがひとつの弊害になっている。
  • 今の仕組みのままではスパンが長い文化財関係のものでしか木造建築ができなくなってしまう。計画、乾燥、施工という時間をいただきたい。分離発注してもらうのでもいい。
  • 確実に使うと分かっていれば、前もって加工してストックすることも出来るが、作ってしまったが売れないという状態が一番困る。使用目的がないとリスクが大きすぎる。
  • どんな建物にも向くだろうという基準材があるので、例えばそれを県で備蓄してもらえれば、びわ湖材をいつでも一定量用意しておける。昔は林野庁の管轄の日本木材備蓄機構が木材の備蓄をしていた。
  • 熊本の災害復旧に関わっており、木造の仮設住宅をつくるため、現地の建築候補などに視察に行った。備蓄はかなり問題となっており、木材の産地である熊本でさえ、被災して材料が入ってこなかった。災害危機に備える面でも備蓄は重要である。木材は通常4~5年は置いておいても何の問題もない。
  • 公的な機関で地元材を備蓄しているところはないと思うが、各店の規模に応じて在庫を持っているところはあると思う。
  • 応急仮設住宅は35角(3寸5分角=105mm×105mmの太さの角材)だけで建てる。材に合わせて設計をする。ストックしておくには規格サイズというのは標準化し、設計事務所にも標準化したサイズを念頭に設計してもらうようにするべきである。
  • 協議会でストックすると急な注文にも対応でき「びわ湖材を使用ください」と宣伝することもできる。
  • 住宅レベルの木材だと、必要な木材がある程度限られてくるので、前もって予測して在庫を持てる。住宅レベルの木材で作れるような公共建築の設計をしてもらえると、必要な木材量を確保することは可能である。

びわ湖材の活用について

  • 山の職人が減っているが、住宅の着工数、大工の数もどんどん減っていく。人口が減っているからなのだが、このままだと木材が使われなくなるので、公共物件などにどんどん木材を使っていただきたい。国でもいろいろ対策をされていると思うが、私たちも地元の木を使ってお手伝いしたい。きれいな木があるので、滋賀県の木はいいと言ってもらえるようにしたい。
  • 10年ほど前に「びわ湖材」という名称を作って、県産材を皆で盛り上げる取組をはじめたが現状ではマンネリ化してきた気がする。
  • 琵琶湖森林づくり県民税で実施している、木の香る淡海の家推進事業では、びわ湖材の使用に対し補助金を出しているが、びわ湖材を御存知ない方が多く、うまく活用されていない。なかなか一業者が宣伝をすることもできないので、行政に旗振り役をお願いしたい。
  • 2年ほど前に国の林野庁が木材利用ポイント事業をやった時には、ある程度木材が消費された。PRにもかなり予算がついていた。利用のハードルがすごく下がったので、よく利用した。この事業を通じて一般の人の間で木に関する知識が広まったのは間違いない。
  • 公共建築物はJAS規格(日本農林規格)を満たすものでつくるという国の方針があるが、JAS認定工場は県内に4社しかなく、構造材を作っている工場は1社しかない。検査を受けるだけでも高額の費用が掛かり、認定工場が増えない。
  • JAS規格とは別に京都には京都木材規格というのがある。小さな業者すべてがJAS認定工場になれないので、府内で規格を作っておられる、基準はJAS規格に準じている。滋賀でもびわ湖材規格を作ってほしい。びわ湖材規格として認証いただければ、私たちでもJAS基準の木材を作ることができる。
  • 作っているものは一緒。JAS認定工場であるか、びわ湖材規格認定工場であるかの違いだけである。びわ湖材認定工場は費用を安く抑えてもらえると我々でも取り組める。

知事から

対話を振り返って

  • 公共建築物木材利用促進法のひとつの課題として、地元材を使うために単年度主義でなく工期を延ばすように国に提起していければ良いと思う。
  • びわ湖材の備蓄をやりましょう。県の方でも色々と調べるので、こういうやり方がある、こうやったらうまくいくというような意見をいただきながら進めていければよい。
  • びわ湖材規格を作ったらいいと思う。京都でもやっているので、滋賀でもできるのではないか。
  • 行政だけはできないので、協議会の皆さんのお知恵や御経験も聞かせていただきたい。琵琶湖守るためには山が大切で、山を良くしようと思ったら木が大切で、木を良くしようと思ったら使わないといけない。そのためには地場で製材、原木切り出し、設計施工などをやっていただいている皆様のお力が大切だと思うので、今後ともよろしくお願いしたい。