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第35回 「こんにちは!三日月です」

  • 対話相手びわこ日本語ネットワークの皆さん

びわこ日本語ネットワークの皆さん

今回は、大津市のびわこ日本語ネットワークの皆さんと対話を行いました。

びわこ日本語ネットワークは滋賀県内の日本語教室運営者のコンソーシアム組織。「びわこ日本語指導者ネット」として1996年に発足し、現在の名称への改称を経て昨年20周年を迎えられました。

県内の日本語教室間の情報交換や相互支援、日本語指導者の養成講座や日本語スピーチ大会の開催などを通じて、日本語および日本社会についての外国人住民への学習機会の提供を支援し、多文化共生から生まれる心豊かな社会の実現を目指して活動されています。

今回は、日本語教室で一生懸命学ぶ外国人住民のこと、またその方々を支えてきたボランティア活動の20年とこれからについて、日本語教室を運営する方々や、教室で学ぶ外国人住民の方々と知事が語り合いました。

知事から

今回の対話について

  • びわこ日本語ネットワークの皆さんが、いろんな国の方々と日本語を通じてつながって、そのつながりを大切にしてくださっていることをうれしく思う。日本語スピーチコンテストに何度か伺ったことがあるが、とても有意義な取り組みをしてくださっていると感謝している。
  • 多様性を尊重し、多文化が共生できる滋賀をつくる、セレブレイティング・ダイバーシティ(Celebrating Diversity)というのが私の人生の一つのテーマである。本日は皆さまと、どうすれば滋賀県が多文化共生、セレブレイティング・ダイバーシティになるのか、一緒に考えたいと思う。

びわこ日本語ネットワークの皆さんから

日本語学習者自己紹介

  • 大津に住んで10年になる。大津には琵琶湖があり、故郷のスイス・ローザンヌに似ている。瀬田漕艇倶楽部のメンバーとして、瀬田川でボートを漕いでいる。また、クラシック音楽もしており、マンションの集会室で毎日クラリネットを練習している。3年前から大津ジャズフェスティバルにも参加している。仕事が忙しく日本語を勉強する時間がないが、日本人の妻のおかげで、今まで困ることがあまりなかった。大津は安全で住みやすいところなので幸せだと思う。
  • 9カ月前にブラジルから来た。日本に来たときは日本語が全く分からず困った。日本の習慣も分からず、日本での生活は難しかった。電車に乗るときもよく間違えたが、疑問があっても誰にも聞くことができなかった。今後も日本で生活したいので、日本語をしっかり勉強しなくてはならないと思っている。
  • 湖南市の教室の開校日は土曜日だけだったので、京都の日本語学校にも入学した。湖南市の先生と京都の先生には日本語だけでなく、日常の生活をするうえでもたくさんのことを教えてもらい、とても感謝している。毎日漢字を勉強しているが、漢字が一番難しいと思っている。将来は空港で働きたいと思っており、日本語を勉強した後は専門学校に入学したいが、授業料が高いので貯金しないといけない。日本の生活は安全で楽しい。日本は素晴らしい国だと思っている。

日本語教室の役割と現状

  • 2008年のリーマンショック以降、外国からの研修生や技能実習生の方々がたくさん日本語教室に来られている。
  • 社会情勢によって、学習者の国籍や学習目的に変化がみられ、現在はベトナム、インドネシアを筆頭に、フィリピン、中国、ブラジル、タイ、ミャンマー出身の方が多い。
  • 本来は生活者としての外国人が日本語を習得するお手伝いをする場であったが、今は多くの教室が年2回行われる日本語能力試験の対応に追われるという状態になっている。学習者のニーズに対応するには、指導者にも力と準備が必要であり、指導者の負担となるため指導ボランティアの希望者が集まりにくくなっている。まだまだ日本語教室の存在そのものが知られていないという現状もある。
  • 日本語教室の果たす役割は、日本語を教えることだけではない。一つは、日本での悩みを相談できる場所であること。例えば、日本語で回ってきた町内会の情報をかみ砕いて説明するなど、生活に必要な情報を伝えてもらえる場であることが必要である。また、地域住民と外国人住民をつなぐパイプとしての役割もある。一番大きな役割としては、受講生相互の交流の場を設けるなど外国籍の人々の居場所づくりがある。
  • 日本語検定試験に合格することが大きな目的の一つになっている。帰国した時に日本語検定の資格があると、企業から出資してもらえるということがあるため、非常に重要視されている。
  • 交代制勤務だと勤務時間がバラバラになり、一つの教室だけで受講するのが難しくなるため、例えば八日市では、三つの教室のどの授業でも受講できるように便宜を図っている。
  • 各教室が受講生の希望に添えるように努力しても、教室があること自体を知らない人がいる。国際交流協会のホームページや外国人向け情報誌「みみタロウ」で周知はしているが、まだ知らない人も多い。県としても、『滋賀プラスワン』に入れていただくなど、協力をお願いしたい。
  • 八日市日本語教室では2009年から小中学校に出向いて出前教室をやっている。評価いただいているが、最近は国籍が多様化し、対応が大変になってきている。ポルトガル語についてはだいぶ対応ができているが、それ以外の言語はまだうまく対応できていない。日本語が話せず、自国語しか分からないという保護者が多くなってきており、両国語を話すスタッフの負担が多くなっている。
  • 日本語教室に来て新しい友人ができたり、同じ国の人と母国語で話すことでストレスが和らいだりすることがある。お仕事をされている方は、一日のほとんどを職場で過ごされることになり、工場だと朝「おはようございます」と言ったきり、黙々と手を動かすだけで一日が終わってしまい、日本語でコミュニケーションをすることが少ない。想像以上に狭い世界にいるようで、近くに同じ国の人がいるのに知らなかったということがよくあるようである。そのような人たちが日本語教室に来て、人とのつながりを持てる。
  • 指導者は、決して上段に構えているわけではなく、時にはよき友人、時には地域のおせっかいやきとして、学習者の日本での生活を温かく見守っている。
  • 学習者と毎週会って話をすると、彼ら、彼女らの社会的問題も全て見えてくる。誰がどんな情報を必要としているのかが分かるので、日本語教室ではピンポイントで情報を届けることができる。
  • 職場や地域での孤立という問題がある。仕事以外では交流する機会がなく、日本人は私の国に興味がないと思うとおっしゃる方もいる。文化の違いや言葉の壁は大きいと思うが、彼らは常に一生懸命前向きに取り組んでおられる。すごく熱心に仕事もされているし、日本語学習も熱心にされている、大変素直で真面目な方たちである。技能実習生の方は、だいたい20代前半なので、元気なパワーを地域に生かせることができないかと、市のイベントに参加・協力をしてもらうよう声掛けをしている。
  • 昨年は、市の国際交流フェスタでお国料理をつくってほしいと声掛けしたところ、「ぜひとも、やります」とインドネシアやベトナムの料理を作ってくれた。日本人のボランティアとも交流できた。またミャンマー人の学習者さんたちには、日本語教室と同じ建物にある日本舞踊教室で3カ月の特訓を受けて、日本舞踊を国際フェスタで発表してもらった。
  • 滋賀県は子ども食堂事業に大変熱心に取り組んでいるが、多文化子ども食堂というかたちで外国の料理を近所の子どもたちに教えるという取組もしている。
  • 地域の行事に参加した方は、その後日本の生活がすごく楽しくなったとおっしゃっている。多文化共生社会を作るための草の根活動の一つが日本語教室だと思う。同じ地域に住む隣人として、彼らと一緒に未来の住みやすい滋賀県を作っていきたいと思っている。

びわこ日本語ネットワークの取組について

  • 1996年2月に滋賀県国際友好親善協会(現在の滋賀県国際協会)の主催で、ボランティア日本語指導者講習会が開催された。講習参加者からネットワークを設立しようという声が上がり、同協会の支援を受けて、同年3月4日にびわこ日本語指導者ネットが設立された。以降、情報交換、異文化総合理解、ボランティア指導者の研修、養成講座に力を入れて活動してきたが、多文化共生社会の早期実現と、学習者・指導者と行政・地域の方々との幅広い連携の必要性から、2004年10月にびわこ日本語ネットワークと改称した。
  • 県内に23か所ある日本語教室のうち、現在17教室が会員になっている。県内の日本語指導者数は300名で2009年の調査結果220名に比べて少し増えてきた。日本語の学習者は550名で2009年の調査結果430名から少し増えた。
  • リーマンショックのときには仕事を失った方たちが甲賀市の日本語教室に150人一気に来られたため、広い部屋に壁とホワイトボードを立てて勉強をした。
  • 指導者は、かなり勉強している。毎年指導者養成講座をやっており、教材づくりや、フラッシュカードというものを使って指導する方法を教わる。
  • 勉強だけでなく、日本文化などを通じた交流などができるよう各種教室も行っている。お花見、うなぎパーティー、夏祭り、書道、クリスマスパーティー、お正月のカルタ取りに福笑い、節分などの行事なども行う。
  • 2005年からは外国人による日本語スピーチ大会が始まった。
  • スピーチ大会と指導者養成講座を活動の柱としているが、今年は20周年の年になるため、昨年7月にシンポジウムを開催し、防災の話をきくという取組も行った。
  • 県内にある日本語教室がお互いに助け合って情報を共有したいということで生まれたのが、びわこ日本語ネットワークであるため、外国の方と地域社会をつなぐのが各日本語教室であり、県内の日本語教室をつなぐのが、びわこ日本語ネットワークであるため、びわこ日本語ネットワークの中で情報共有できたら、その情報は各地の日本語教室を経由して、各地域に住む外国人の方に届く。
  • 県でも外国人を対象とした支援事業等があると思うが、限られた一部の人にしか情報が届いておらず、活用されていないということがあると思う。なので、びわこ日本語ネットワークと県が定期的に情報交換できる場所を設けてほしい。
  • びわこ日本語ネットワークの基本財源は各教室からの会費(年間3千円)と、滋賀県国際協会からの支援金(年間20万円程度)である。
  • 指導者養成講座は1千円~3千円程度の受講料と、講座を共催している滋賀県国際協会からいただく5万円程度の予算で、講師謝礼、会場費などを賄っている。
  • スピーチ大会は、滋賀県国際協会からの協力金と、企業や教室、指導者ボランティア等からの協賛金で賄っている。スピーチ大会は学習者の成果発表の場、日本の生活の体験発表の場、また日本語学習の動機付けにもなっており、貴重な役割を担っていると考えているが、去年から企業の協賛金が極端に減っており、今年は何とか開催するが、来年以降の目途が立っていない。

防災学習テキストについて

  • 今年は防災学習テキストづくりに取り組んでいる。突然、地震などの災害が発生し、聞きなれない災害用語が飛び交う中で、外国人はどうすればいいか分からずに不安でいっぱいになる。「高台に避難してください」と言っても通じない。災害から自分の命を守るために、最低限必要な話す言葉、聞く言葉、読めなくても分かる防災用語を身に付け、安全と思われるところまでたどり着くために防災テキストが求められている。
  • 防災テキストの編集にあたっては、(1)日本語初級者にも分かるように文字は少なくしてイラストを多用する、(2)内容を多く伝えようとせず必要最小限にとどめる、(3)短時間で一通り習えるコンパクトなものにすることに気を付けている。
  • すでに多数の防災ガイドブックが刊行されているが、それらとは取り上げる内容も、展開の仕方も異なっている。日本語力が十分でない外国人にも、何とか分かることを最大の目的としている。日ごろ外国人学習者に直に接しているボランティア指導者だからこそ作れるものだと考えている。
  • テキストに頼らず防災用語が聞き取れるようにCDを作ることも考えている。地域の人の声で様々な防災用語を聞けるCDにする予定である。

知事から

対話を振り返って

  • 作成中の防災ガイドブックについて、県の災害部局ともコミュニケーションを取っていただいて、一緒に共有しあえるようになったらよい。
  • 分かりやすいサインやアナウンスは外国人だけでなく、日本人、例えば高齢者の方や、障害のある方にとっても大切なことだと思う。日本語を習いたての人は、こういう表現が難しいということを我々も学べればと思う。
  • 定期的な情報交換はあった方がいいと思う。国際室を窓口にして、防災、多文化交流、教育など毎回テーマを設け、その担当部署の職員も集めた情報交換会ができたらよい。
  • 教室で得られた情報を定期的な情報交換の場などで、県の国際室とびわこ日本語ネットワークで共有できるとよい。SOSや疑問に応えられるような窓口を持っておくと、なおいいかもしれない。
  • スピーチ大会の協賛金、一緒に頑張って汗をかいていただけるように努力しましょう。例えば経済界に対するお願いを私からもさせてもらう。お願いに行った際に、門前払いはやめてください、前向きに考えてくださいということは私からも申し上げたい。
  • 隣人として、一緒に付き合うことはすごく大事。決してそういうことがあってはならないが、人権がないがしろにされたりすることがないように、環境を整えなくてはならないと思う。
  • 日常の交流は、その国のことを理解する良い機会だと思うので、単に日本語を学ぶだけでなく、例えば料理や衣装などにお互いが触れ合える機会をつくっていければと思うので、今後も皆さんのお力添えをお願いしたい。
  • 『滋賀プラスワン』に何か情報提供することは出来ると思う。
  • 行政はどちらかと言うと、簡単なことを難しく言うのは得意だが、難しいことを簡単に言うことは苦手なので、外国の方には何を言っているのか分からないということがあると反省している。行政の情報で外国の方たちには全然分からないということがあれば教えていただけるとありがたい。
  • 参政権はないが、滋賀県のやっていることに意見を言っていただく県政モニターなら、15歳以上の方は登録できるので、ぜひ外国の方にも登録してほしい。