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第69回 「こんにちは!三日月です」

  • 対話相手「ウォームアップスクール ここから」の皆さんと卒業生および地元住民の皆さん

「ウォームアップスクール ここから」の皆さんと卒業生および地元住民の皆さん

「ウォームアップスクール ここから」では、不登校児童生徒のための寄宿自立施設として、家から離れ、自立心を養い、いろいろな体験活動を通じて子どもたちが元気と自信と生きる勇気を取り戻すことを目的に、

・「生活力」を育む「共同生活」

・自信回復のための「体験活動」

・自ら喜びを感じ取らせるための「手厚い支援」

をスクールの理念とし、不登校児童生徒の自立支援のため、様々な取組を実施されています。

この度、知事が「ここから」の視察を行った後、卒業生が経営されているカフェにおいて、スクールにおける日頃の取組やそれを通じての気づきをお話しいただくとともに、不登校児童生徒への支援の今後の在り方について語り合いました。

知事から

今回の対話にあたって

○今日はこういう機会をいただき、感謝申し上げる。いまウォームアップスクール「ここから」を唐子先生にご案内をいただいた。まず、「ここから」という名前がいいなと。色々と悩んだりすることがあっても、ここから頑張ろうとか、ここから再スタートしようと思えることはとても大事なことだと思う。そういう場所や機会をつくっていただいている唐子先生はじめスタッフの皆さん、また、そのことに深いご理解をいただいている地元の皆さんにも感謝申し上げる。

○また、こういったおしゃれなカフェ「心風流(しんぷる)」を作り、ジビエ料理等にもチャレンジしていただいていると聞いた。手づくりの品もそうであるが、このカフェから色々なつながりができたり、色々な方がここに来られて、余呉ってええとこやな、高時川のこの水の流れは清らかやな、と思っていただけるような、そういう場所になればと思う。

○今日は、限られた時間なのですが、「ここから」を卒業された皆さん、地域の皆さんと、「ここから」のような学校(フリースクール)の在り方とか、地域の見方を一緒に考えられたらなと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

参加者の皆さんから

ウォームアップスクール「ここから」の取組と「カフェ 心風流」について

(ケーキセットを食しながら)

○今見ていただいた「ここから」では、元気を取り戻した子どもたちが自分の進路に向かって飛び出していく、そのお手伝いをしているのであるが、中には進学とかそういう理由でなくても、自分から自立するという方向に向かっていく子がいる。今日も来てくれているカフェスタッフは、この菅並・余呉がすごく好きで、自立の最初の一歩を踏み出していきたい、この地で何とか自立できる場所を、ということでこのカフェを立ち上げ頑張ってくれている。

○この場所は、ずっと空いていた建物で、外から見てはいい建物だなと思っていた。何とか貸してもらえないかということで、5年以上お願いしてきた。昨年、2月ぐらいにやっと貸してもらえることが決まり、地域の方々と相談し、お手伝いいただきながら、手づくりで作り上げた。

○去年の6月に営業許可が下りたが、みんな素人なので、最初は、1週間に1回開けるだけで精いっぱい、注文を取ることすら分からない状態で、右往左往しながら頑張り、いまやっと土日を通して営業できるようになった。もう少し営業日数を増やしたいと思っている。オープンしてからは、地域の方々が足繁く通ってくださっている。

 

地域とスクールとの繋がりつながりについて

○この地域に長年住んでいるが、唐子先生は、上丹生・菅並の地域に新しい風を吹き込んだ方だと思う。封建的なしきたりがどうしても残っており、上丹生にしても、これというものは何もなかった。そこで、先生が陶芸教室をやろうとか、沙織折りをやろうとか、そういう色々な催しをやっていただくことによって、地域の中の交流が活発になった。

○最初は、学校に伺っても隠れてしまう子が多く、あいさつができなかった。まず、人前に出ることができないような状況であったが、皆、ここでの生活を通してすごく自信をつけ、生き生きとしてくれるようになった。

○先生や子どもたちの存在は、地域の住人にとっても、ものすごく刺激になっている。

○対話に参加しているこのスクール生(カフェでのホール担当)2人は私の家に住んでおり、もう一年になる。このカフェの場所にしても、何年も使われておらず、何かうまい活用方法はないかなというのは皆が思案していた。カフェへの改修作業では、自分たちが教えてあげると、このフローリングや家具など何から何まで子どもたちが手作りでつくりあげた。若い子どもたちと一緒に何かをしていると、こちらも楽しい。

○菅並の在住世帯は31戸、そのうち独居世帯が22軒で15軒が75歳以上の高齢者の所帯で、消滅集落に向かっている。元々の地域の子どもは高校生の子が一人いるだけ。一番心配しているのが、何か災害があったときの避難についてである。この子たちのように、いつ連絡しても来てくれる子がいるというだけで心強い。

○この子たちは、先日、地域の総会にも出席してくれた。お年寄りの中で若い子が恥ずかしがりながらもしゃべっている姿は、とてもいいなと思った。

「ここから」卒業生・在校生より

○「ここから」の卒業生で、いまは調理師の免許を取り、調理担当をしている。ウォームアップスクール「ここから」では毎食をみんなでつくる。今日は、カフェで普段からお出ししているケーキセットをご用意したので、知事にも召し上がっていただきたい。お皿も、どうせならこれも手作りでということで自分たちで焼いて作った。

○カフェでの料理について、普段はシカとかイノシシといったジビエ料理もお出ししている。今の時期なら、シカの肉を炒めたり、イノシシ鍋をお出ししたりする。地元の猟師さんから、地元で獲れた肉を捌いてもらい、仕入れさせてもらっている。お米も余呉米を使用している。

○カフェ周辺の草刈りについても、地域の皆さんが手伝ってくださって、地域で盛り上げていただいている。自分たちも、何とか地域に貢献できるようにということで、除雪車の免許も取った。

○自分は在校生であるが、3月にもう卒業することになっている。5年間在籍していたが、すぐそばに信頼でき、寄り添ってくれる方がたくさんおり、少人数だから仲間意識みたいなものがすごくはっきり芽生えて、ここにいていいんだという安心した気持ちになれる。

地域の人たちと顔を合わせ、話をし、一緒に色々なことに取り組んでいると、自分もこんなことができるんだなと思えるようになり、自信がついた。

○ここに来て、ものづくりをするのが楽しいということを知り、それを職業にしたいと思って、いろんなところを見学に行った。デザイナーになりたいなと思い、服飾関係の学校に行くことにした。ここがなかったら、将来のことなんてまったく考えられなかった。

不登校児童生徒に寄り添った取組について

○「ここから」のみんなが温かく、自分を受け入れてくれ、迎え入れてくれた。それがうれしくて、そうやってしてくれたからこそ、後輩にもしたいと思うし、色々な人に優しくしたいと思う。

○現在、家に引きこもっているお子さんがいるお母さんで、このカフェに食べに来られる方が多くおられる。この子たちの姿を見て、こうやって笑って仕事をしてくれるようになってほしい、自分もまた頑張る、と言って帰られる。この子たち達がここで一生懸命働くことが、そういうお母さん達の勇気付けになっている。

○学校を否定するとかそういうことではなく、学校に合わなかったけれど、自分のやりたいことを見つける場所があるのであれば、それもいいと思う。人が本当に成長する時期に色々な人と出会い、見て、体験するということが、どこかでできていたらいいと思う。学校でできなかったら、それが違う場所でもよいと思う。

知事から

対話を振り返って

●以前、この近くの洞寿院にお参りに来て、このあたりを視察した際、にぎやかに若い子がいてくれるなと思って、見ていたことがあったが、こういうカフェになったのかとわかった。

●こうやって、これから頑張ろうという人たちが来て、地域の人たちと一緒に住み、使われていなかったものを活用し、盛り上げる。こういうスクールは、地域活性化の新しいモデルになる可能性がある。本当の意味でのふるさと創生になるかもしれない。

●この素晴らしいカフェのことは、私もどんどん宣伝していきたいと思う。

●みんな自分たちが思っている以上に力を持っているのだと思う。色々なことに悩み、考えた分、そういう力を持っている。今日のこの数十分だけでも、すごくそれを感じる。

●誰もが自信を持っていい。一時期は自信がないこともあったかもしれないが、こうやって楽しく、生き生きと自分たちのことや、がんばってきたことを話せて、自分たちで何かを創り出すことができ、今、悩んでいる人たちにも色々なメッセージを発信できると思う。皆さんの今後のご活躍を期待している。