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第68回 「こんにちは!三日月です」

  • 対話相手滋賀県木材協会伊香支部の皆さん

木材協会伊香支部の皆さん

木材を生産、販売する木材業者および製材業者で組織する団体である木材協会伊香支部の皆さんと、県産材の生産・加工・流通そして山の健康を目指すにあたって滋賀県の森林に必要な取組について意見交換を行いました。

知事から

今回の対話にあたって

○現在県として、やまの健康を保ち、高めていくために、植えていただいて育った木を、伐って、使って、また植えてというこのサイクルをしっかりと動かしてこうと取り組んでいる。

○そのためには、人が必要なのか、道が必要なのか、機械等が必要なのか、様々な取引をもっとする方法があるのか、ないのか。それをぜひ皆さんと一緒に考えられたらなと思っている。

○昨日から今週土曜日の15日まで木之本の杉野にて5日間生活をさせていただいている。知事として、短期居住生活は、これで13回目になるが、おかげさまで昨日山に入ったら、「おかえりなさい」と言っていただいた。一方で、「知事が来られるようになってからも、JAがなくなった。小中学校もなくなる。どうすればよいものか」といったお話もあり、人口減少過疎化の中で、村や山村、自治体を維持していくことの難しさということを感じている。

○今日は朝から長浜養護学校の生徒と一緒に通学をしたり、丹生ダムに関連して今後の地域振興の話し合いをさせていただいたり、特に、ダムの跡地の問題では、事業用地と残存山林があるので、これを何とか県が保有し、その資源をうまく生かせるような仕組みがつくれないかという強いご要望もいただいたところ。

○ぜひ木材協会の皆さまとも一緒に考えていけたらと思っており、どうぞ忌憚なくいろいろなお話を聞かせていただきますよう、お願い申し上げる。

木材協会伊香支部の皆さんから

木材協会伊香支部について

○旧伊香郡で素材業者3社、建築兼業者1社、製材業者2社、販売業者2社の事業者8社の支部であり、木材業務促進に努めている。それぞれの業種によって本来抱える問題が多々違うなか、共通することは、後継者がなかなかおらず、若手、担い手が不足しているということ。

○特に技術伝承ができていないというのが支部として、業界としても問題である。支部としては、例えば県の公共物に県産材を優先して使用いただき、地元業者が受注できるのか分からないなら、協会支部に下りてくるような仕組み・制度づくりをしていただきたい。

○また、こちら側としても納期、品揃えができるかという問題点があるが、地産地消により地域経済を循環させられたらと考えている。

○長浜市には伊香支部と25社で構成される長浜支部がありまして、長浜支部からも今日は9名が参加させていただいている。木の香る淡海の家推進事業の補助金を一番使用しているのが長浜支部である。

○木材業界においては、川上は林業・素材生産、川中はそれを製造・製材し、流通させる者、川下は利用してくれる人という考え方をする。この地域においては、気候的にも非常によい木材が採れると考えている。その中で、木材協会の中に位置する私達と、消費してくれる市民の皆さん、間に立ってくれる皆さんといった体制がうまくいくよう、また、県産材を地元に消費してもらえるよう力を入れていきたい。

参加者の皆さんの日頃の取組、気づきについて

○県がとか、国がとか感じるが、それ以上に自分たちは、地域において何ができるかというところが大切だと考えている。

○滋賀県はもちろん、日本中に言えることだが、皆が木の扱いに困っている。滋賀県はこれだけ森林の豊かな県にあって、木材の質的なレベルは、全般的に素材としては、他県に劣っているというのが正直なところ。

○伐採してきて、それを並べて売ろうと思っても手間賃の方が高く、結果売れない。材木屋さんも必要量だけ「木を伐ってきてください」と言ってくる時代。阪神大震災を機に、耐震関係の法律が変わり、四ツ間の家、いわゆるこの辺で言う田舎普請と言われている家が大変造りにくくなっていった。それと、生活様式も変わってきたというのも一つ。

○また、そういう形の家がなくなってくると、例えば大きな大黒柱、ケヤキの梁、マツの大きな棟木といった、地元の材を使って建てられた家、大工さんが請負されていたものが、どんどん淘汰されて行った。現代風の家が増え、工務店さん等としても、外材を中心にたくさん、簡易的に入ってくるものの方が使い勝手がよくなっている。

○国内で生産された材木についても、値段をどんどん安くする価格競争にあるのが現状。例えば、九州、四国等のものもどんどん滋賀県に入ってくる。スギやヒノキでも、それらの値段に滋賀県は追いつけない。なんでそんな値段でできるの、という価格の木材がどんどん他府県から入ってくる。はっきり言って滋賀県の木は使いづらいのが現状。

◇県補足

製品の価格は、おっしゃるとおりであり、県内と県外で何が違うのかというと、県内の製材の規模等が大変小さく、他府県が非常に大きな規模でつくっておられるものと比べると、1本に対する製材費が全然違ったものになってしまう。

◇逆に値段だけで県産材を使うという考えでいけば、県外の工場に出してでも製品をつくっていただき、それをまた戻していただくという方法になってしまう。

県産材を活用していくために

○そんな中、我が社では、99%滋賀県産の木材を使っている。どうしたらいいのかという話であるが、価格や品質の面というのは、先ほどの話のとおりであり、価格もやはり少し高くなり、品質的に言うとそもそも生産県ではなく(生産県になろうとしている)、長年にわたりきちんと管理ができていなかったため、やはり品質はそんなによくない。一方で、よいところもあり、私たちはそのよいところを生かせるように材料をつくっていけばいい。私達の立場でいくと、コストが少しかかるから、公共建築物に県産材を使用する場合は発注単価を少し上げていただければと思う。

○また、例えば建物を一つ建てるときに、部分的には特別品質がよくない(価格を抑えた)県産材でも使えることがあるので、その気になって使おうと思ったらいくらでも使えると思う。

○先ほどの話にあったが、川上、川中、川下というのが分断され、連携が取れていないのが現状。例えば、県が発注してもらった場合でも、その先がどうなっているのかというのは分からないのが実態。だから、もう少し川上から川下のラインをシステム化し、使えないから使わないのではなくて、使おうとしたらどういうかたちで使えるのかということを考える必要がある。価格を下げれば下げるだけ山に返すお金も減るので、結果的に山が疲弊する形となる。

○県の材料をなんとか利用したいという行政側の意欲はすごく感じており、それに僕らも感化され、なんとか滋賀県産、あるいは長浜産の木で何か商品開発できないかとチャレンジし、加工をしてオリジナルの商品開発をやっています。要するに、これまで駄目だったということを振り返るのではなく、これから新しい道を見つけていくしかないのだと感じる。オリジナルの個性を出した、要するに加工技術なり、あるいは商品の特徴なりを編み出したもので勝負していくしかない。

○木材の品質について、山に生えているものは結局自然物なので、寒いところで育っているものは年輪も密になり、雪にも耐えるものとなる。例えば、岐阜、三重、和歌山といった、いわゆる森林県と滋賀県の材の圧倒的な違いは、品質のむらが少ないか多いかということ。

質の良い県産材を出すことはできるが、いきなり「千本出してほしい」と言われてもそれは難しい。本数に限度があるので、一定量決まった品質のものを揃えるということが実は難しい。

○自分はパルプの関連業だが、木を伐り出してきてチップにする。基本的に、既に話が出ている「質のよくない木」を取り扱うわけであるが、市場に並んでいる丸太を見ても、これをチップにしてしまうのかというぐらい、質のよいものもある。やはり、品質管理ができていないという部分は感じる。

○自分の会社では不燃材をメインに取り扱っている。京都府の例でいうと、川上から川下まで一気通貫で流れるシステムが構築されている。京都府内産材の利用促進協議会というのがあり、建築業者も、中間業者も、素材を取り扱う者、伐採する者が一同に集まって色々なミーティングをしている。その成果として、京都品質という京都独自の規格をつくった。その京都規格の研修会に参加してもらい、認定をもらった業者に関しては、製材のJASを持っていなくても、京都の公共物件の素材を扱えるというシステムづくりをした。

○滋賀県においては、品質管理が十分にできていないというのは痛感する。県内でも、地域によって品質がまちまち。いいヒノキが出ていたりする地域もある。ちなみに、うみのこの甲板は全て県産材のヒノキを活用した。他の部分も合わせ全て県産材である。

○行政としては一生懸命県産材を使おうということで、設計にも入れていくのに、最後に費用の面でゼネコンや、設計士さんの判断で折れてしまうというケースがあるとは聞く。

やまの健康について

○一般のお客さん、特に若い方と話していると、木を伐りだす際、どこまでが自分の山かわからない、山に金を使う気なんてないという方がほとんどである。そんな管理しかされていない所から、チップにしかならないような質の木を伐って出していたら結局赤字となる。もはや、感覚的には切り出し賃をいただきたいくらいというのが現状。

○「山なんて金にならない」というのが一般的な感覚。そこでもう少し山を整備するところに対しての補助金を考えていただきたいとは思う。すでにある補助金にしても、アナウンスをもっと大々的にしていただきたい。大多数の人は全然知らない制度のような気がする。

○現在、県では山の現状把握というか、国有林と民有林、所有者の問題もいろいろと問われている。九州だか、あるドローンの業者に少しお話を聞いていたら、ドローンで森林のいまの状況を調査され、まずは現状を把握しようとされている。いまどんな状態か。それからどういう問題点があるか現場調査をされている。そのような動きもあるが、県ではどうか。

◇県回答

おっしゃられたように県の森林整備事務所にて、ドローンを購入し、今年から調査を始めているところ。すぐに全部をとはいかないので、今後はそれを広げていき、どういう資源があるのか、道がどうだとか、どういう樹種が植わっているかも、ドローンを使って広く調査し、整備に向けて動き始めたところ。

○森林組合でも、境界確定事業に取り組んでいるが、だいたい5ヘクタール、10ヘクタール単位でおさえていかないといけない。一番困っているのは不在地主が大変多いということ。地域の過疎化により、山だけが残り、それ以上追及できない、そういう山がある。流出した人や亡くなった方の親族がとんでもなく遠くにいらっしゃったりする。また、電話連絡だけでは難しく、実際にこちらから会いに行ったうえで、そのような人に現地に足を運んでもらう必要がある。滋賀県の土地、山を地籍調査でもしてもらえると一番よいのだが。

○県産材使用の活性化という部分で考えたときに、滋賀県の中で使っていくという考え方なのか、滋賀県産材を他府県で使ってもらえるようにしていくのか、そのための手段として、材料のすべてをひも付けして滋賀県産材にしなければいけないのか。それとも、例えば他県に大きな工場があるとして、そこには当然他府県の木材も入ってくるが、出荷される材料の一部が滋賀県産材を含むとして流通しているとカウントできるのであれば大きいと思う。

○やはり広域的に、まずは森林資源を伐って使うという、第一目的はそこだと思う。後の方法、製材はどこでやるのか、地元でできればいいけど、できなければ他府県でお願いする、その上で最後は滋賀県で使いましょうというような仕組みを、県だけで考えるのではなくて、やはり広域的に隣県と連携してやるということもこれから必要になると思う。

知事から

対話を振り返って

●初めにおっしゃったことはまったくそのとおりだと思っており、川上から川下、それぞれに役割があって、それぞれが連携し、滋賀の中でうまく回るようにしようとしている。

●私達も公共建築物はできるだけ県産材を使えるよう、使うようにしようと考えているが、いざ使いたいといった時に、なかなか規格や品質が揃わないというのが課題としてあるように思う。

●皆さんそれぞれの分野でそれぞれの課題やら可能性を考えておられると思う。私としては、伐期を迎えた木を、できるだけ伐り出してもらい、それらを県内で使ってもらう、また、使うだけでなく、次を植え、育て、適度な間伐をしてというサイクルを円滑にしていきたい。過去に植林、造林でやり過ぎたところがあったり、場所が山の奥だったりといった課題が現状ある。

●ただ、林務に精通した者が少ないということで、県として研修センターをつくり、人材育成を始めているところ。

●お話をお聞きし、県産材の流通拡大のためには、やはり私達行政と木材業者さんとのコミュニケーションをもっと密にしていく必要があると感じた。

●例えば制約ある中で、予算を増やして県産材を使っていくのか、予算をそのままで県産材の使用を諦めるのか、納期との兼ね合いがあるのか、様々な実態があるとは思う。県産材を使うルールなり、システムなりをもう一度整えていく必要があるかもしれない。

●どこにどれだけ資源量があるか、もしくはここが誰の山なのか、これは基礎であり、県としても地籍調査をやろうと進めているところ。

●滋賀県産材を他府県でも使用いただくことについて、やれるならもっとやったらいいと思う。滋賀県産材を滋賀県の中だけで使えと、僕は言っているわけではない。県内の木がせっかく伐り頃を迎えているのだから、それがきちんと伐られて使われ、そして伐る人、使う人がうまく潤っていく。そういう仕組みをつくりたいと思っている。

今まで生産県でなかったのだから、いまさら無理をしても他府県に勝てないというお話もあったが、決してそのような無理をするつもりはなく、滋賀県らしくやれたらいいと思っている。そこで、うまくルールづくりとか、ブランド化とかそういうことを何か考えないといけないと思っている。

●今日いただいた意見の中にも、できないこと、実際に行うとなると困難なことはあると思うが、それでもおっしゃったような品質管理の部分はやっていかないといけない。そして、やはり地籍整備は急ごう。人海戦術で歩いてやっていたのでは時間がかかるから、ドローンなんかも使いながら。色々な地権者を辿っていくのはなかなか難しいと思うが、難しいな、大変やなぁと言って、いままで来てしまった。この先もっと大変になるので、やはりいまエリアを定めてでも手を打っていこう。例えば長浜の皆さんが協力してくださると言うのだったら、優先的にやればよい。