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第66回 「こんにちは!三日月です」

  • 対話相手一般社団法人滋賀県造園協会の皆さん

滋賀県造園協会の皆さん

滋賀県では、レクリエーションや学び、環境保全、防災といった様々な役割を担う都市公園や、湖岸緑地の再整備等を進めています。

この度、そのような公園が持つ多様な機能を生かしての緑豊かなまちづくりについて、樹木を通じて様々な活動を行っておられる滋賀県造園協会の皆さんと知事が意見交換を行いました。

知事から

今回の対話にあたって

●常日ごろ、とりわけ落葉がある秋から冬場、年末、年度末にかけて、街路樹の剪定や、緑や花があふれるまちづくりのため、様々なお取り組みをいただいていることに心から敬意を表し、感謝を申し上げる。

●とりわけ今年は、2月に、当時でいう豚コレラ、新しい名称でCSFの防疫作業にもご協力いただいた。なかなか大変な作業で、発生直後にいかに迅速に対応できるかというのが、住民の皆さま方の安全、また風評被害防止にも繋がる。皆さんのご協力に改めて感謝申し上げる。

●短い時間であるが、皆さんから、ぜひ忌憚のないご意見を賜りますようお願い申し上げ、冒頭のあいさつとさせていただく。

 

滋賀県造園協会の皆さんから

滋賀県造園協会について

○滋賀県造園協会は、昭和48年9月1日に設立し、今年で46年目を迎えている。当協会は県内を東西南北の四つの地区に分割し、現在の会員数は94名、うち約60名が公共事業に参入している。

○造園業は、建設業の中で唯一生き物を扱う。地球温暖化や低酸素社会を構築するためには、二酸化炭素の排出削減と吸収資源対策が必要とされており、有効な対策として樹木を守り育てていくことが不可欠。ただ、造園協会だけが緑化を行うのではなく、地域住民や子どもたちに緑に対し関心を持ってもらうために、啓発活動や緑化イベントに参加し、また学校行事等にも積極的に協力し、新しい人材を育てていくことも大切な使命と考えている。

○具体的な活動としては、各会員事業所で職業体験をしていただく、農業系県立高等学校のインターンシップや、各地区での緑化活動として、西地区の「おおつ花フェスタ」、南地区の「ロクハ緑化フェスティバル」、東地区の新名所づくり「千本桜事業」、北地区の「グリーンフェアひこね」等が代表的な事業となっている。

○また、造園の技能、技術の伝承が重要であることから、会員および従業員の資格習得のための造園技能士検定試験および造園施工管理技士試験の学科、実技講習会を開催し、多くの合格者を輩出している。

○なお、その他の詳細については、後ほど、各部会長より説明をさせていただく。

 

日頃の活動・気づきについて

○青年部会は、45歳までの若い世代で構成されている。活動事例について、「エクステリア&リフォームフェア」が竜王町のドラゴンハットで5月中頃に開催されているが、八日市南高校の花緑デザイン科の生徒さんからのご要望でお手伝いをさせていただいた。

○その縁があり、八日市南高校で毎年開催されている農業祭に、造園協会としても、地域の盛り上げ役に、(ひとつちょっと)買って出て、緑を好きになってもらえる活動をしようということで、去年、今年と協力をさせていただいた。

○軽トラの上に庭をつくる軽トラガーデンをしたり、生徒さんにミニチュアガーデンといって、20~30センチの器に小さなお庭をつくってもらい、自分たちでものをつくってそれを売るという社会の流れみたいなものを体験していただくといった活動を行った。

○また、農業祭当日に小さなお子さんや、近隣住民の方が多々来られるので、そういう方にも楽しんでもらうように体験ブースを設けたり、展示即売会をしたり。高校の方からも引き続きお声を掛けていただいているので、八日市南高校だけでなくて、いろいろな高校に顔を出して、滋賀県全体を盛り上げられたらと思い、そういう活動を続けていきたいと考えている。

○造園業に携わりたいなと思ってもらう生徒さんの心をつかむためにも、若い世代に魅力を伝える役を青年部会としてはやっているところ。以前は高校も、緑地デザイン科とか造園的な要素が強かったが、現在は、花と造園が一緒になっているケースが多く、女子生徒の方が多くなっている。女性の社会進出という意味でも、また、花も造園の部類に入るので、女性の観点も大切にしていく必要がある。

○青年部会として連携しているのは、県立高校が多いので、造園業への就職斡旋等、県に携わっていただければと思う。

○技術部会では、青年を超えた中堅のメンバーで構成されている。会員企業向けの基礎的な技術講座や講習会を行ったり、長浜で開催された「滋賀ものづくりフェア」などのイベントに参加して、緑のPRを行ったり、小学生に庭づくりの楽しさを体験してもらうといった活動を行っている。

○小さなものは盆栽から、大きなものは公園整備や都市計画というエリアまで、基本的に植物に関わる全てに私たちが関わることができると考えている。

○新たにモノをつくることが減り、維持管理の話が中心になっているが、例えば公園工事にしても、個人の住宅にしても、凝ったモノづくりが減り、技術の継承が難しくなってきていると感じる。例えば、お寺などで見かける土塀は「版築」という伝統技法でつくられ、昔は庭師なども携わっていた。しかし、今日では個人住宅や店舗などで、意匠的なカタチで版築を提案して、お客さんに採用してもらうことは稀にあるが、時間、労力、コストがどうしても高めになるので、現在、そのような伝統技法でモノをつくる機会はほとんどなく、造園業者でも伝統技法の名前を知らないとか、やったことがないということが現実である。庭師が築き上げてきた様々な伝統技法を後世に継承していくために、協会員に伝統技法の実技講習会を開催している。

○一方、公園の遊具では、造るときはしっかりと造られるが、メンテナンス不足で、修繕の時期を迎えているケースが所々ある。そういったところは、何か事故が起こらないと修繕されない傾向にあるが、事前にパトロールし、事故が起こる前に改善していくことも一つの手法だろうと思う。また、公園の樹木は、鬱蒼としてきても手入れをされず、見通しが悪くなると、防犯上問題が生じ、治安が悪くなり、ごみ等も捨てられることになっていく。見通しがよく、花などが咲いていると、そういった悪事を働く気持ちにならないのではないか。公園は、まちの顔でもあるので、公園の樹木や遊具点検は、毎年出来なくても数年に1回程度の定期的に点検するものと、10年に1回くらいリフレッシュ・リニューアルするものとで分けて維持していくのも一つの方法かと思う。
 

街路樹等の剪定・維持管理に関する意見

○造園事業者として県から発注いただく事業には、例えば、びわこ文化ゾーン等、30年、40年前の公園建設業が盛んな時期につくった施設の整備等がある。他には、琵琶湖周辺の緑地帯や各路線の街路樹整備等(新しく何かを造るというものより、維持管理、メンテナンスが多い)。

○指定管理制度について、例えば、西地区は、大津市の公園緑地協会と共同体というかたちで、湖岸緑地や春日山公園等の管理について受注している。予算的にもかなり絞られている印象。同じ予算の範囲内で、民間の知恵やノウハウを活用し、よりよい効果をあげるのが本来の指定管理の目的だと思うが、これだけ予算を絞られると、事業者の裁量でそういったことを行ったり、十分に管理を行ったりするのが難しい。

○湖岸を走ってもらうとわかるが、昔に植えたたくさんのマツの木が、そのままになっており、琵琶湖も見えず、台風が来たら倒れてしまう。寄生虫の影響で枯れてきているマツも多い。下枝を払えば、湖岸からも琵琶湖や比叡山も見え、ビワイチの更なる振興にも繋がる。毎年継続的な手入れが必要なものだけでなく、5年に1回枝を抜くだけでもよいようなケースもある。

○下枝を上げていくこと、人が松の木の側に行けるようにすることで、安藤広重の白砂青松の浮世絵のような景観が出来る。樹木には景観という役割がある。

○県から発注される業務は、工事と維持管理業務の、大きく二つに分かれる。維持管理の中でも街路樹は、大津近辺はきれいなものが多いが、他のところへ行くと、ひどい街路樹がある。日本造園建設業協会では、民間資格ではあるが、街路樹剪定士(※1)という認定制度をつくっており、本協会としても育成に努めている。滋賀にも街路樹剪定士会がある。

※1 樹木の生理・生態や街路樹に関する専門知識と伝統的な職人芸ともいえる技能を併せ持った技能者

○他の自治体においては、維持管理の入札参加資格の中に、街路樹剪定士の配置を要件に入れているところもある。滋賀県は造園技能士(※2)までである。最近は、造園技能士の資格を持っている技能者がより専門的な剪定技術を身に付け、街路樹剪定士を取りに行くケースが増えている。

※2 豊かな経験に培われた知識や樹木に関する高度な技術を駆使して、現場に合った最良の造園を施工できる能力を備えた技能者

○一昨年前、長浜地域の湖岸道路の樹木剪定を県が発注した際に、受注業者が街路樹の枝をほとんど切り落としてしまうという出来事があった。街路樹剪定士を配置要件とし、より専門的な技能を持ったものであればこのようなことは起こらなかったはず。入札の資格要件については、今後も県として検討してほしい。

○私たちは、ただ木を剪定するのでなくて、例えば虫がつく、成長が悪い、じゃあこの土はどうなっている、なぜ、こんなに成長しない、という所まで突き詰めて街路樹に関わっている。緑・生き物に携わる者としては、そこまで追求していかないと、よくわかってこないように感じる。

 

緑豊かなまちづくりのために

○軽井沢では、山を開発しても家を建てた場合は、小さな樹木でもいいから、必ず木を植えるという決まりがある。例えば、県内の商業施設や商店でも、もっと木を植えていこうという機運が高まれば街並みもきれいになり、ほんの少しでも琵琶湖の水もきれいになるのではないかと思う。最近、コンビニの隅にでも公園のように木を植えれば、お昼ご飯を食べる人も多く、商店側としても利点はあると思う。

○緑といっても、大きい高木だけでなく、低木もあり、それでも緑化面積としては、十分取り入れられる方法だと思う。大きい木が植えられないようなところには、小さい低木でもよい。中低木は雑草と同じ扱いをされ、草刈り機で刈り取られたり、伐採されたりというケースも見受けられるが、中低木も高木と同じように、樹木扱いをしてほしい。

○これからは、相乗効果が生まれるようなものづくりをしていかないといけないと思う。木に人がいれば「休む」という字になるが、美しい樹木には人が集まり、そこから琵琶湖が望めれば、また滋賀に来たい、来てみたいという人が増えると思う。

知事から

対話を振り返って

●指定管理者制度のあり方については、今までどおりでいいのか、県として検証していかなければならないと思っている。もう少し予算をかけてより良いものとするのか、今のままで県民の皆さんがよしとするのか、その部分も重要になっている。

●公園、湖岸の緑地整備全部を皆さんに潤沢にお任せできるかというと、それはなかなか難しいと思う。厳しい財政状況のなかで、これまではどうしても最低限の整備をする方に回してしまっていた。

●ただ、それではあかんやろうということで、現在、琵琶湖周域について、水辺と緑のビジョン(「みどりとみずべの将来ビジョン」)を新たにつくっている。周囲230キロについて、「ここは自然のまま残そう」「ここはきちんとした公園にしよう」「民間の皆さんに使ってもらって、例えばカフェとかサイクリングステーションとかをつくって楽しんでもらおう」というゾーン分けを、皆さんのご意見を聞かせていただきながら進めているところ。

●「みどりとみずべの将来ビジョン」も今年度末で完成予定である。ある程度ゾーニングができたときに、造園協会の皆さんと共有していければと思う。

●今後、具体的な計画づくりに入っていくと思うが、皆さんのお力を必要とする場面がくるはずである。

●公園管理について、何か事故があってからというのでなくて、日ごろから、小まめに点検をする必要はあるかもしれない。

●ビワイチについて、いままでは自転車が安全に走れる環境づくりは、知事として言及してきたが、そこから何が見えているか、どうやって琵琶湖が見えるかというところには及んでいなかった。皆さんからの提言や視点といった、僕らに欠けていた部分について、例えば、造園協会の皆さんがお勧めされる、今後手を入れて整備することによって、よりよくなるようなスポットなども、これを機にご教示いただければと思う。

●美しい街路樹というのは、マキノのメタセコイア並木に代表されるように、人を集めることができる。四季折々、安らかな気持ちになるというか、「ああ、来てよかったな。」という気持ちになり、印象にも残る。

●私は、もっと町に木陰をつくりたいと思っている。これから、来年の東京オリパラ。再来年のワールドマスターズゲームズ。そして、2021年の全国植樹祭。2024年には国体もある。来年から5年間は、たくさんの方が滋賀県に来てくださる。そういうときなので、やはり花と緑で、もっと気持ちよくおもてなしできる、そういう滋賀県にしたいという思いがある。

●最近、景観を気にする地区においては、看板等を本来のものよりシックな色にしていたりもする。緑化にしても、ルールさえ決めれば、不可能じゃないと思う。まちづくりもただコンクリート・アスファルトでやるだけでなく、都市緑化とか、植樹とか、そういう段階にきていると思う。海津大崎の桜並木のように、街路がきれいになると人を寄せる場所にもなる。

●本日は、教えていただくことばかりで、本当に勉強になりました。感謝申し上げる。私たちは、ふとしたものにも、そこにどれだけのお力をかけていただいているのか、お心を寄せていただいているのかを見落とし、「そこにあって当たり前」と軽んじてしまいがちなのかもしれない。

●街路とか、公園とか、景観とか。実はそういうものが、人の安らぎとか、人の心を引き付けたりとかにつながるので、もう少し僕らも、そういったところに目を向けたり、心を向けたり、また、いろんな事業をつくったり、いろんな新たなグループをつくるということにも取り組んでいきたいと思いますので、今後ともぜひよろしくお願いします。どうもありがとうございました。