「遊休農地」とは、農地法上の用語であり、「1号遊休農地」と「2号遊休農地」の2種類に分類されます。
(1) 1号遊休農地(農地法第32条第1項第1号の農地)
・現に耕作されておらず、かつ、引き続き耕作されないと見込まれる農地のことをいいます。
(2) 2号遊休農地(農地法第32条第1項第2号の農地)
・1号遊休農地に該当しない農地であって、その農業上の利用の程度が、その周辺の地域における農地の利用の程度に比し著しく劣っていると認められる農地のことをいいます。
「荒廃農地」とは、農林水産省が実施している「遊休農地に関する措置の状況に関する調査」の用語であり、「再生利用が可能な荒廃農地」と「再生利用が困難な荒廃農地」の2種類に分類されます。
(1) 再生利用が可能な荒廃農地
・上記「1号遊休農地」と同じです。
(2) 再生利用が困難な荒廃農地
・森林の様相を呈している場合や周囲の状況からみてその土地を農地として復元しても継続して利用することができない等、農業上の利用の増進を図ることが見込まれない農地のことをいいます。
「耕作放棄地」とは、農林水産省が5年ごとに実施している「農林業センサス」の用語であり、「以前耕作していた土地で、過去1年以上作物を作付け(栽培)せず、この数年間の間に再び作付け(栽培)する意思のない土地」と定義されています。
なお、農林業センサスにおける「耕作放棄地」の調査は、2015年(平成27年)調査を最後に終了しています。
令和4年時点で、1号遊休農地は787.2ha、2号遊休農地は1.0ha、合計788.2haと、平成30年から231.3ha増加しており、年々増加傾向にあります。
令和4年 | 令和3年 | 令和2年 | 令和元年 | 平成30年 | |
---|---|---|---|---|---|
1号遊休農地 | 787.2ha | 753.4ha | 587.0ha | 568.0ha | 556.4ha |
2号遊休農地 | 1.0ha | 0.7ha | 0.5ha | 0.5ha | 0.5ha |
合計 | 788.2ha | 754.1ha | 587.5ha | 568.5ha | 556.9ha |
(参考)全国の遊休農地面積 | 97,370ha | 98,531ha | 96,824ha | 97,749ha | 97,814ha |
【出典】遊休農地に関する措置の状況に関する調査(農林水産省)
令和4年時点で、荒廃農地率3.7%と全国平均よりも低いものの、再生利用が可能な荒廃農地は787.2ha、再生利用が困難な荒廃農地は1,147.7ha、合計1,934.9haと、平成30年から228.3ha増加しています。全国的には減少傾向にあるものの、当県では年々増加傾向にあります。
令和4年 | 令和3年 | 令和2年 | 令和元年 | 平成30年 | |
---|---|---|---|---|---|
再生利用が可能な荒廃農地 | 787.2ha | 753.4ha | 587.0ha | 568.0ha | 556.4ha |
再生利用が困難な荒廃農地 | 1,147.7ha | 1,121.8ha | 1,177.4ha | 1,183.2ha | 1,150.2ha |
合計 | 1,934.9ha | 1,875.2ha | 1,764.4ha | 1,751.2ha | 1,706.6ha |
※荒廃農地率 | 3.7% | 3.5% | 3.3% | 3.3% | 3.2% |
(参考)全国の荒廃農地面積 | 253,000ha | 260,000ha | 282,000ha | 283,000ha | 280,000ha |
(参考)全国の荒廃農地率 | 5.5% | 5.6% | 6.1% | 6.0% | 6.0% |
※荒廃農地率 = 荒廃農地面積/(耕地面積+荒廃農地面積)により算出(「耕地面積」については、「耕地及び作付面積統計」(農林水産省)より引用)
【出典】(平成30年~令和2年) 荒廃農地の発生・解消状況に関する調査(農林水産省)
(令和3年~令和4年)遊休農地に関する措置の状況に関する調査(農林水産省)
遊休農地・荒廃農地は、その農地が適切に維持管理されなくなり、雑草の繁茂、ひいては山林原野化することとなる結果、水路の状況の目視での確認が困難になるなど、用排水施設の管理への支障が生じたり、周辺農地との一体的な利用が困難になることで、担い手(地域農業を支え、中心となって農業を実践する人や組織)への農地集積・集約化の阻害要因となるなど、地域農業にも悪影響を与えるおそれがあります。
また、病害虫発生の温床となったり、鳥獣の住処となって、住み着いた鳥獣が周囲の農作物を荒らしたりするなど、周囲の営農環境に悪影響を与えるのみならず、土砂・ゴミの不法投棄を誘発することになるなど、生活環境にも悪影響を与えるおそれがあります。
令和2年3月31日に閣議決定がなされた「食料・農業・農村基本計画」において、食料の安定供給に必要な農地確保のため、遊休農地・荒廃農地の解消に向けた対策を戦略的に進めることが盛り込まれているところですが、昨今の世界的な食料情勢の変化に伴う食料安全保障上のリスクも高まっており、生産基盤である優良農地の確保の重要性がますます高まっています。
遊休農地・荒廃農地の発生原因は、担い手の高齢化による離農、その後の担い手となり得る農業後継者の不足、中山間地域の小規模な不整形農地、傾斜や獣害で耕作条件が不利なことなど様々ですが、耕作されなくなり、荒れ果ててしまった農地を再び耕作可能な状態に戻すには、多大な時間と労力が必要となるため、まずは、新たな遊休農地・荒廃農地が発生することを防ぐことが重要です。
また、遊休農地・荒廃農地となってしまったとしても、耕作が再開されるまでの期間が短ければ短いほど、農地を再び耕作可能な状態に戻すまでの時間と労力が少なくなるため、遊休農地・荒廃農地の早期発見も農地の再生利用のためには重要なことです。
このようなことを踏まえ、市町農業委員会を中心に、農地法に基づく遊休農地に関する措置等を通じて遊休農地・荒廃農地の発生防止や早期に発見し、農政上の各種施策を用いた再生利用の推進を図っています。
市町農業委員会において、農地法の規定に基づき、毎年1回農地の利用状況を調査し、遊休農地の所有者等に対する意向調査を実施するほか、日常的に農地の利用状況を把握するためのパトロールを実施するなどして、遊休農地・荒廃農地の発生防止、早期発見に努めています。
また、所有者不明となっている遊休農地の農地中間管理機構への利用権設定や、農林水産省が実施する各種施策を活用し、発生した遊休農地・荒廃農地の解消等にも努めています(詳細については、下記リンクよりご参照ください。)。