サルモネラは、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類等に広く分布しており、土壌や河川水などの自然環境から分離されることもあります。サルモネラ属菌は乾燥に強く、土壌や冷凍食品中でも数年間生存すると考えられています。
特に、家きんは他の家畜よりもサルモネラ保有率が高く、わが国では鶏卵および鶏肉が感染源として最も重要な位置を占めています。
近年ではサルモネラ食中毒の60~70%がサルモネラ・エンテリティディス(SE)によるものとなっています。
SEによる食中毒では、特に鶏卵内部のSE汚染が問題になっていますが、鶏卵へのサルモネラ汚染は主に2つの経路があると考えられています。1つは親鶏の卵巣に保菌されていたサルモネラが卵黄に付着したまま排卵され、産卵された時点ですでにサルモネラが卵内に存在する場合で、もう1つは産卵後、親鶏の便に汚染され、卵殻を通じて外部から卵内へサルモネラが侵入する場合です。
このように卵内にSEが存在する可能性を念頭において、購入した卵は冷蔵庫で保存する、卵の割り置きは絶対にしない等、卵の取扱いには十分気をつける必要があります。
なお、わが国で流通している鶏卵のSE陽性率は0.03%との報告があります。
S.Enteritidisの電子顕微鏡写真
(国立感染症研究所ホームページより転載)
本菌の血清型の区別は、菌体抗原(O)および鞭毛抗原(H)によって行われ、現在までに50種類以上のO群と約80種類のH抗原の組み合わせによって2,500種以上の血清型が報告されています。
わが国では、1980~1988年までに分離された人由来菌株の血清型では、S.Typhimuriumが最も多かったのですが、1989年にSEの検出数が第1位となって以来、年々この菌型の検出数が増加し、現在に至っています。
一般にサルモネラの発症菌量は10万個以上といわれています。しかしながら、集団発生事例の原因食品の調査から、100~1,000個でも発症することが明らかにされています。
特に小児や高齢者はサルモネラに対する感受性が高く、数個から十数個の感染でも発症する可能性がありますので、十分な注意が必要です。
室温では比較的短時間で増殖するので、食品は4~5℃以下または冷凍保存が重要であり、鶏卵についてもこれを参考に注意して取り扱う必要がある。
また、本菌は凍結や乾燥にも強く、凍結液卵や乾燥食品中でも長期間生残する。70℃、1分程度の加熱で容易に死滅する。
5~72時間(平均12時間)
腹痛、下痢、発熱(38~40℃)、嘔吐、頭痛。
腹痛は一般に右下腹部または臍周囲に局限する場合が多く、子供や高齢者では症状が重くなりやすい傾向がみられます。
特にSEによる事例では、他の血清型と比較して重症になりやすい傾向が認められています。