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栗東市 平成25年9月台風18号

水害履歴

位置図
位置図
水害写真
金勝川の決壊箇所

場所:金勝川の決壊箇所(目川) 
撮影:滋賀県


栗東市目川 平成25年台風18号

位置図
位置図

水害写真
金勝川決壊箇所
金勝川の決壊箇所(目川) 撮影:滋賀県
金勝川の決壊
金勝川の決壊箇所(目川) 提供:県民
金勝川決壊箇所
金勝川の決壊箇所(目川) 撮影:滋賀県
現在の金勝川
現在の金勝川(目川) 撮影:滋賀県
金勝川から濁水が流れ込む
濁水が流れ込む(目川)撮影:滋賀県
現在の街
現在の街並み(目川)撮影:滋賀県
金勝川の決壊箇所
金勝川の決壊箇所(目川) 撮影:滋賀県
金勝川の護岸欠損箇所(目川) 提供:県民
金勝川の護岸欠損箇所(目川)
金勝川の護岸欠損箇所(目川) 撮影:滋賀県
現在の金勝川
現在の金勝川(目川) 撮影:滋賀県
金勝川から濁水が流れ込む
濁水が流れ込む(目川)撮影:滋賀県
現在の街
現在の街並み(目川)撮影:滋賀県

体験者の語り県民男性(昭和36年生まれ)消防団員62歳

【台風18号による栗東市の被害状況】

・大型台風は9月16日午前8時前、愛知県豊橋市に上陸し関東甲信を通って東北を縦断して太平洋に抜けた。そのため広い範囲で大雨となり気象庁は福井県、滋賀県、京都府に16日午前5時5分に大雨特別警報を発表した。

・栗東市で土砂災害警戒情報が9月15日21時55分に発表された。

・栗東市上砥山で15日~16日で総雨量436mm

・栗東市の被害状況(死者1人、全壊4棟、半壊13棟、一部損壊16棟、床上浸水1棟、床下浸水114棟、公共建物1棟、非住宅12箇所の被害)

【当日の消防団の動き】

・当日は夜の7時過ぎに栗東市から招集がかかっていた。そのときはまだ強い雨は降っていなかった。それまでは雨がずっと続いていたがその時間帯は小康状態で小雨だった。市役所の詰所に行って、待機しているとだんだん雨が強くなってきた。

・大雨特別警報の制度ができて全国で初の発表(16日午前5時5分)であった。その時間帯には、市内の浸水した箇所へ緊急排水に出動していた。15日の21時ぐらいから、そのまま明け方までそこで緊急排水をしていた。

【市内の浸水被害状況】

・栗東市役所周辺は浸水が起きやすい。

・滋賀銀行近くでケーキ屋さんの前が浸水しているので小型ポンプを持って、緊急排水(水汲みだし)をしてくれという指示が出て、駆けつけたら一面が浸水状態で小型ポンプ1台ではどうにも無理で、分団のポンプ車も出てもらって2台ともう1分団のポンプ車も来て3台で、近くの葉山川へ排水した。

・雨が小康状態になってからも、またザーと降ったので栗東駅前でも溢れた。市街地のほとんどが浸水していたと思う。

・日清食品の工場の近辺では、普段からも浸水が多い。日清食品関西工場の横の川が農業用水だが、それが下流の方で水が流入しにくい。特に新幹線をくぐるところの流入が悪くて普段からでも水がたまったような状態だった。新幹線の下流側にも上流側にも農業用の取水の水門があるのが、それが全開になっていても流入しない。農業用水の池もあるが、新幹線の上流側も下流側も、雨水が池に流入していないので雨を一時的には溜められない。

・国道よりの上鈎(かみまがり)の寺内地区も浸水していた。いつもよく溢れるところで、そこは土地の地盤高が低いのと上流側の造成が進んでいて雨が降ったら一気に水が流れて来る。

・私らの分団は緊急排水を朝までずっとしていて、他であちこち浸水してる場所は、地元の自警団にもお願いしていた。どこの分団も浸水した箇所の緊急排水に動いていた。

・水路、側溝の排水箇所が合流する付近は水がうまく流入しなくて溢れる。流入しなかった水が水路、側溝を超えてしまって道まで水が来て一面が冠水した。

・9月は田んぼの刈り取りの時期で刈り取りした藁が流されて、水路をふさぎ水が溢れた。私も緊急排水が終わって地元に帰ってきたら、道路に田んぼの切り藁がいっぱい散乱していた。ちょうどタイミング悪く、秋の刈り取り終わった後の雨だったので、田んぼに侵入した水がその藁を流してしまった。またその藁が水路をふさいで余計に悪い状況であった。

 

 

【金勝(こんぜ)川決壊による目川地区の被害状況】

 ・金勝川の堤防(目川右岸延長約100m)が決壊したため、住宅が損壊し浸水した。住宅1棟が濁水により床下が侵食されて傾くなど4棟が被害を受けた。(川沿いに建つ住宅の際まで削られ、床下が侵食された。)

 ・金勝川は天井川を平地化する工事中で、午前6時25分ごろに決壊が起きた。

【金勝(こんぜ)川の決壊による消防団活動】

・金勝川が決壊したのでそっちを見に行けという指示が出て、目川地区に行ったら金勝川が決壊をしていて、現地確認を行った。

・道路は冠水していて家は傾いている状況だった。

・決壊箇所で浸水している場所へホース20本ぐらい使い排水をした。一晩中エンジンを回していたので、燃料もなくなった。同じ消防隊には燃料車があって、それで燃料を供給してもらった。翌朝まで水の緊急排水をしていたがなかなか水が引かなくて、排水が翌朝までかかった。夜が明けたら、雨も小降りになり浸水した箇所の水も引いた。それから排水ホースを撤収して他の活動をした。

・金勝川は天井川なので警戒をしてたのだが…いつも、台風とか大雨のときは金勝川に注意をして水の流れについて現場確認をしていた。

・川は工事中で平地化の工事が終わった部分と終わってない部分で落差ができてそこから水が流れ落ちた。ちょうどそこが決壊した状態だった。以前からここ危ないねって話をしていた。金勝川の形状が天井川から平地化してもう溢れることはないが、大雨が降ったら越水するくらいに水かさは増えている。

【金勝(こんぜ)川決壊による目川地区の避難活動】

・目川地区700世帯に市が避難勧告を出したのは決壊後であった。

・金勝川が決壊したので目川地区住民に公民館へ避難してくださいと朝の5時頃に各戸を回った。川が決壊して濁水がどんどんと、こちらに来てるので避難してくださいとの呼びかけをした。家のインターホンを押しても出てこない家は裏庭まで行って、声かけをし全戸の世帯に避難してもらった。

・また、住民から土のうがすぐに無くなり土のうがまだかと、市および消防団の電話が鳴りっぱなしであった。

・川沿いの通りは膝下まで水に浸ってびっくりした、住民の方は約60年前にも堤防が切れたと言っていた。

【安養寺山のがけ崩れの思い】

・無線で安養寺山が危険ということで見に行ってくれという指示が出たが、他の場所で一晩中浸水した箇所を緊急排水した。

・消防車両も団員もそんな状態で消防団として安養寺山の災害を大体把握はしたが、私は安養寺山災害現場には行っていない。地元の団員さんに現場状況を見に行ってもらった。

・安養寺山の斜面崩壊の情報が入って来たがまさかあの低い山が崩れるとは誰も思わなかった。特にこの山を中心に雨がきつかったようだ。がけ崩れも結構多く12ヶ所ぐらいあった。山が崩れた地点はそれまでに雨が蓄積されたところに、また多量の雨が降ったので山が持ちこたえられなかったと思う。夜中の雨がようやく朝に雨が止んでレスキュー隊が入っていた。

・金勝川の緊急排水作業が終わって、朝に帰るときに車から安養寺山側を見たら崩壊箇所が見える。夜中に無線が入って聞いたのはこれやったんかなあということがわかった。この場所も私たちの消防団の管轄だが、私らは何をしていたんやとの思いがあった。本当はここの避難誘導の手助けにいかなければとの思いがあった。地元の住民の方はうまく避難してくれて良かったが…

【安養寺山のその後の活動】

・災害後は大雨が降るたびに避難活動の準備をして誘導してる。避難誘導では消防車のマイクを使って放送しながら、個別に1軒1軒インターホン押して避難の呼びかけをしてる。

・現在は山の斜面に地滑り計を設置しているので、警戒数値になれば緊急で各家庭のインターホンを押して避難所へ誘導する。災害後5年ぐらいはその活動をずっと続けていた。私の消防分団はこの山を担当していて、住宅があるところへは必ず避難誘導に行っている。

・今は引っ越しをして家が少なくなったが、一部は神社周辺に新しく建て直した家がある。

 

 

【通常時の消防団活動】

・消防団は地域割りである。金勝は第1分団、葉山川の場所は第2分団の葉山分団、滋賀銀行近くは第3分団と第4分団。

・市役所の危機管理局から各分団への指示で動き、どこどこに行って帰ってという指示が出る。各分団も担当をしている地域の危険なところは把握している。団の担当地域で水が溢れているところのチェックとか、台風だと風で家等の倒壊があるので、そういう場所も引き継がれている。金勝川は私が団に入ってから越水はなかったが、今までに何回か越水があることは消防団で伝わっていた。

・常日頃から危険な箇所は把握してるが、この安養寺山は把握してなかった。この山が崩れるなんて、誰も思わなかった。

・今は災害の現況をスマホのアプリを使って映像を送れるので、映像でのリアルタイムで状況が見え、実態把握がすぐにできるようになった。

・最近は消防団員もサラリーマンが多く、災害時に来れない時もある。団員の95%ぐらいがサラリーマンで実際に出動要請かけても集まらなかったり、平日の昼間だったらまず集まらないし、現場に行くのは私だけというのがよくある。消防車両を運行するのに3名が必要で集まらないと車を出せないので、その時は詰所で待機である。自営業をしている人は自分で意思決定できるからか、自営業の人の出動が多い。

【消防団訓練】

・訓練および講習は、湖南4市の広域支部で年に1回実施している。新任の方には5月ぐらいに講習会を実施していて、水害関係知識の講習もその時に実施している。入団した新人訓練は早朝にやっていて、2ヶ月から2ヶ月半訓練する。その訓練に耐えられて、消防機器が使えるようになる。

・消防団の活動で消火活動はほぼなくなってきて、水害関係の活動が多くなってきた。火災と水害は全然違う。二つ覚えるのも、二つのことをやるのも大変である。

・最近の防災訓練というのは両方ミックスしたような訓練をする。訓練は消火訓練、救出訓練、水害では土のう詰めの訓練および積み方等がある。また、火災消火活動と水害での活動は制服も違う。

・団長とかのリーダーシップ教育は関東の方に消防大学校があるので、そこで団長他が5日間ほど泊りがけで実施している。団長になったら、自分で動くだけではなくてリーダーシップも大事である。他消防団の団長との交流では、新しいことやおもしろい活動の情報をもらっていて、交流会での貴重な活動を取り入れるとか、私の団もこんな活動しているとかを披露して情報交換している。

【消防団心得】

・私達はこの状況であれば警報が発表されると思って心の準備をする。いつでも出られるようにして警報が出たら、すぐに出動できるようにずっと待機している。私は本職があるので消防団の事ばかり気にしていられないが、両立させることが大事である。

・台風が来るときにはお酒は飲まないが、通常時は飲んでいる。台風や大雨の時は、パトロールに出るのでそのときは臨戦態勢の体に自然になっている。台風は前日から状況がわかるので、今回は召集がかかるだろうとの思いで自宅や仕事場で待機して、いつでも出られる態勢にしている。

・出動時の持ち物の準備は常日頃やっていて、個人で管理をしている活動服とか長靴・ヘルメット他、全部持って詰所に行く。

・詰所に待機していても、待機組とは別にパトロール組で車両を出してパトロールに行くこともある。出動要請の連絡はまず分団長へ電話が入り、分団長から団員へ連絡する。

・市の詰所に集合すると防災無線を使う。無線は情報共有がしやすい。どこどこの分団にこういう指令が出ているとかが聞こえるので、詰所に居て情報がリアルタイムで聞こえている。また、隊員全員に無線の内容が聞こえるので、全体が把握しやすい。電話だと電話を取った人間しか内容がわからない。そろそろ行かなあかんなとか、たまに、電波が通じないときがあるので、そのときは電話でもう1回やり直すがまず無線でやって情報共有をする。

・団長はバトンタッチして継続していかなければならない。男性分団の消防団が4分団で、一つの分団が定員20名。男性分団は80名。団三役合わせると、83人の元々の体制だが今は欠員状態である。女性分団もあって、もう一つは山が多いので機能別分団の山林分団がある。最近は集まらない、どうしたら集まるかいろいろと模索しているがなかなか難しい。団活動は手当が付いているが基本的にボランティアである。

・明日、豪雨で雨量が増えるという情報が入ってくると地域に避難の広報にも回ったりするのも任務である。

【地元の水防活動・地域との連携】

・各自治会の消防訓練があるときに、消防団の要請があれば団員に行ってもらって訓練の指導支援に回っている。消火器の使い方とか消火ホースの扱いかたを支援している。最近は火災よりも風および水害が多くなってきたので、小型ポンプの使い方など水害に関する訓練が必要だと感じている。自治会ではまだそのような訓練はない。

・震災で家や工作物などが倒れている場合は、この道を通れば安全に集合場所に行けるとか、そういう訓練はできるが自治会の訓練に顔出していて思うのは、住民さんが、勘違いしてる部分があるということ。震災のときの避難場所と、浸水での避難場所とは全く違う。

・浸水に対する避難というのは、高いところに避難するが、それがなかなか訓練できていない。雨が降って家が浸水して危ないときは、この場所に逃げなさいという訓練ができているので、豪雨で浸水する恐れがある場所がこの辺だねというイメージを持つような訓練があればスムーズに避難できる。高い位置への避難訓練は、近隣にある企業さんの建物を利用しての訓練になる。ただ、地域の訓練は土日祝が多く、訓練の協力をお願いするとなると企業さんが休みで訓練ができていない。

・消防団は水害の時に土のうを用意して対応をするが(市に連絡すれば土のうを用意してくれる)今後は地域の自治会単位で、家の玄関に住民さんが、個々に土のう積をしてもらうことも大事である。土のう袋に砂を詰めるのは時間がかかる、日頃から土のう袋に砂を詰めて置いても駄目である。すぐ袋が劣化して駄目になるので。最近は土のう袋の代わりに、置いてるだけで水を吸い込んでくれる製品もある。いざという時に便利である。その製品を自治会で何本か用意してもらっておけば、高齢者などは助かる。

 

 

【反省・助けあい】

・浸水した時に消防団は水の排水を行っていたが、それは地元の自警団に任せて、我々は住民の避難誘導とか、本当に危ないところにすぐ駆けつけられるような体制にしなければ駄目だという反省をしている。

・逆に山の崩れたところの情報がすぐに入っていて現場に急行していたら、団員の命も危なかったかもしれない。2次災害になっていたかもしれない。特に昼間の雨でなく、夜中の豪雨だったので、山の状況がわからなくて何も見えなかった。

・自治会では子供会・婦人会・老人会等が無くなってきて住民の繋がりが薄くなり住民の避難の呼びかけなどが心配である。

・地域の人々はテレビで全国各地の浸水被害を見るが、こんなことは自分のところでは起きないと思っており、皆さんそんな感じである。以前私もここの被害と同じような映像をテレビのニュースで見たことがあったが、まさかこんなことが自分の地域でおきるとは思っていなかった。

・震災と火災に関しての準備は、ほぼどこの地域も準備はできてるが、水害に関してはどこも十分にできていないと思っている。避難訓練を実施した時も水害時もここに集まったら良いのか、という話をしてる人がいるが、『ここに来ても水害の時は駄目ですよ。ここの土地は低いので浸水して危険です。』と説明をしている。

・これ以降では大きな災害はないが、これからはどんな雨が降るかわからない。私も消防団を30年ほどさせてもらっていて、火災が続く年と、風雨の水害が多い年がある。例えば空気が乾燥している状況だと火災が多くなるし、またいろんな諸条件が重なると豪雨が集中する。

【伝えていく】

・過去にその川が決壊したところだと、経験された方がいるので言い伝えで伝わる。そういうところの人は良くわかっていても、将来の若人にはちゃんと伝えていかなあかんと思う。

・実は水害経験がないところが一番怖い。経験のない人ばかりなので、初めての水害が起きたら住民の方は右往左往するだろうね。ちょっと知ってるのと知らんのでは全然違うと思う。

・台風18号ではこの安養寺山が崩れたこと、金勝川の決壊は伝えて行く必要がある。

・消防団の団員さんでも知らない若い人が出てきた。20代ぐらいの人は当時小学生なのでわかっていない。



栗東市下戸山(安養寺山)平成25年台風18号

位置図
位置図
安養寺山
安養寺山(土砂崩れ)撮影:滋賀県
土砂崩れ箇所
安養寺山の土砂崩れで神社倒壊 提供:県民
安養寺山(土砂崩れ)
安養寺山(土砂崩れ)撮影:滋賀県
安養寺山
安養寺山(土砂崩れ)撮影:滋賀県
土砂崩れ箇所
安養寺山(土砂崩れ) 提供:県民
安養寺山(土砂崩れ)
安養寺山の土砂崩れで家屋倒壊 撮影:滋賀県

体験者の語り県民男性(昭和26年生まれ)元消防団員72歳

【平成25年台風18号による安養寺山の土砂災害】

・大型台風18号が滋賀県下に記録的な大雨を降らし各地で被害が発生した。栗東市の安養寺山で土砂崩れがあった。

・安養寺山では南斜面6箇所、北斜面4箇所、西斜面2箇所の合計12箇所で土砂崩れが発生した。

・安養寺山については住宅3棟が全壊、神社1棟が全壊またゴルフ練習場施設が被災した。(安養寺山は土砂災害警戒区域および土砂災害特別警戒区域に指定されていた。)

・9月16日0時頃下戸山地区の安養寺山南斜面の土砂崩れで、2階建ての木造住宅の1階部分が完全に押しつぶされた形で倒壊し住民1名が亡くなった。(1階のベッドの上で布団を上にかけ、柱などで下半身が圧迫された状態で見つかった。)

【当日の消防団の動き】

・当日は消防団として出動した。9月15日夕方には団長と副団長2人は、市役所に詰めて待機態勢に入った。

・栗東市に土砂災害警戒情報が9月15日21時55分に発表された。9月16日未明には強い降雨が県内全体に広がり、土砂災害の危険性が非常に高まっていたが、現場では応急の対応に全力を注いでいており情報収集は困難を極めた。

・9月16日午前5時5分に大雨特別警報が発表された。特別警報の前後には関係機関、市民等からの問い合わせが殺到した。また同時に被災箇所が多発していて、直ちに全体像の把握が困難であった。夜中(暗闇)かつ悪天候(豪雨)のため現場確認に限界があった。

【安養寺山の土砂崩れの消防団活動

・当時は消防団の団長だった。「山が崩れた!ええ?」と思い、がけ崩れはいつもテレビで見てる他の地域での災害映像の世界だと思っていた。

・豪雨で二次災害の恐れがあり、雨が小康状態にならないと安養寺山の現場には行けない。安全が第一である。雨が小康状態になってから朝8時に現地集合がかかった。

・土砂でつぶされた家の中の人を救出をするのに栗東建設工業会、滋賀県警、湖南広域消防局、市職員他が集まって土砂を退けるユンボ等の重機を持ってきてもらい救出が始まった。組織が多く有り、市長から捜索作業の全体把握を頼まれていたので、それぞれの作業を調整した。私も消防団員になって人が亡くなる災害は初めての経験で、二次災害が起きたら大変なので慎重な作業が必要であった。

・崩れた家をユンボで土砂や流木をどかし始めた時に、ユンボのオペレーター(操縦)の人へ、今までの経験した人の教えがあったので慎重にどかしてくれよと指示をした。と言うのも、東京(皇居)での消防団関係の表彰式の時に一緒になった東北地方の消防団長から土砂災害の話を聞いていて、ユンボで捜索するときは、体の一部があちこちに点在しているおそれがあるので、気を付けてユンボを動かして捜索することが大事と教えて貰っていた。

・その経験談を聞いていたので今回の安養寺山の土砂災害でも、場所を限定せずに慎重に作業をしてもらった。おかげで、要救助者は身体全体が奇麗な姿で発見された。(その後に医師が死亡確認をした。)

・亡くなられた方が住んでいた家が最初に土砂崩れがあった場所であった。近所の家は、その直後に避難されていて人身被害はなかった。この近くの五百井(いおのい)神社も土砂で建物が丸呑みされた。

・この山の裏側(北斜面)はニュータウンで、その当時の自治会長の車庫に土砂が流入したので、自治会長から市に危険であるとの一報があった。ニュータウンの山側には打ち放しゴルフ練習場があり、山から崩れた土砂をそのゴルフ練習場のネットが防いでいて、ニュータウンの中には土砂が流入しなかった。

・この山はハイキングコースになっていて、その道沿いを確認しに行ったら崩れた場所から茶色の泥水がどんどん流れていて、これは何かあったらニュータウンは大変な事になると思い、朝方3時くらいに避難をしてもらうことを決断して、住民に避難の呼びかけをした。その時間帯は暗いので照明車も出してもらった。

・消防団女性分団から自分達も手伝いをとの申し入れがあり、女性団員も入り2~3人でチームを作り避難の呼びかけに行ってもらった。ニュータウンの各戸のインターホンを1軒1軒鳴らして、玄関に出て来るまで押し続け避難をしてもらった。

・この山は個人の山で地権者が多くあり、山の整備をしていなかった。被災後しばらくは、山の斜面にセンサーを取り付けて頂いた。

・その日の16時くらいに自宅に帰ったが、前日から一睡もしてもないのに全然眠くなかった。気分が高揚していたから眠気がなかったと思う。

・日本列島はどこでもこのような可能性があるんやなぁと思う。

【消防団活動・消防団心得】

・消防団の活動を35年やっていて思うのは、一人では何もできず皆さんの手助けが必要なので、団長は常日頃からの行動を大事にする必要がある。

・消防団員でも災害時に招集してもすぐには来れない。(サラリーマンの団員は急な呼び出しは難しい。)全員を集めるのが難しいので、人数が足らない時は消防団の他の分団から増員の融通をしてもらっている。

・以前、火事で招集の連絡があった時に、本業の仕事の打ち合わせしていたが、相手の方が私が消防団員と知っているので、「すぐに現場に行ったれ」と言ってくれた。消防団の活動をしていたら、本業との折り合いが大事である。

・最近は消防団に入る人が減り、自分たちの町を自分たちが守るとの心意気が無くなってきたような気がする。

土砂崩れ箇所
安養寺山の土砂崩れで神社倒壊 提供:県民
安養寺山の土砂崩れ
安養寺山の土砂崩れで家屋が倒壊(1人死亡) 提供:県民
安養寺山の土砂崩れ
安養寺山の土砂崩れで家屋が倒壊 提供:県民
現在の神社
現在の神社(建て替え後) 撮影:滋賀県
現在の安養寺山
現在の安養寺山(倒壊家屋箇所は更地) 撮影:滋賀県
現在の住宅
現在の家屋(建て替え後) 撮影:滋賀県



参考(「滋賀県災害誌」より水害の概要)
【平成25年台風18号 】
 
強風域半径500kmを越える大型の台風18号は、滋賀県で過去に経験したことのない暴風雨をもたらし、滋賀県・京都府・福井県に、初の特別警報(平成25年8月30日から運用)が発令された。
 このため、県内各地で記録的な大雨となり、高島市の鴨川と栗東市の金勝(こんぜ)川の堤防が決壊したのをはじめ、多くの河川が氾濫し、人家や田畑等広い範囲で浸水して甚大な被害をもたらした。
 9月15~16日の総雨量は、大津市葛川(かつらがわ)で635mmを記録している。

伝承・言い伝え