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生態学琵琶湖賞

生態学琵琶湖賞は、水環境に関連する生態学およびその周辺分野における50歳未満の優れた研究者に贈られる賞です。

1991年に滋賀県が創設し、第14回(2007年)まで実施主体として滋賀県が表彰を行ってきましたが、第15回(2009年)からは一般社団法人日本生態学会(以下「日本生態学会」という。)が引き継いでおり、滋賀県はその運営に協力しています。

表彰は2年ごと(西暦の奇数年)に行い、賞の贈呈は、滋賀県知事が行うこととなっています。

過去の受賞者

本ページでは、滋賀県が実施主体として表彰した第1回から第15回までの受賞者を紹介しています(各受賞者の職名は、受賞時)。

日本生態学会が実施主体となった第15回以降の受賞者は、日本生態学会ホームページ(外部サイトへリンク)をご覧ください。

第1回 -1991年-

高橋 正征 氏(理学博士)

  • 東京大学理学部助教授(植物学教室)
  • 湖沼・海洋における植物プランクトンの個体群の生産活動について植物プランクトンと独立栄養バクテリアに焦点をおいた解析を進めるとともに、環境因子との関連において一次生産の変動機構を解明した。

福嶌 義宏 氏(農学博士)

  • 京都大学農学部助教授(林学教室)
  • 山地小集水域における時間単位の降水量、流出量などのデータをもとに、植生被覆および地質と水循環との関連を捉え、水循環の構成成分の動態を定量的に表現できるモデルを構築した。

第2回 -1992年-

岩熊 敏夫 氏(理学博士)

  • 国立環境研究所生物圏環境部生態機構研究室長
  • 霞ヶ浦を中心に湖沼のユスリカの生態、特に個体群変動機構および二次生産を明らかにするとともに、湖沼の物質循環におけるユスリカの役割を定量的に評価し、そのモデル化を行った。

堀 道雄 氏(理学博士)

  • 和歌山県立医科大学助教授
  • タンガニィカ湖のカワスズメ類を材料に、食物を獲得する方法が異なる魚種間において、他種の存在が各々の種にとっての食物獲得をかえって有利にすることを世界で最初に発見した。

第3回 -1993年-

サニット アクソンコー 氏(林学博士)

  • タイ王国、カセツァート大学育林学部教授
  • タイおよびその周辺地域でのマングローブ林について、その生産や物質循環を中心に、生態系の構造と機能を研究するとともにその保全再生の手法を提示し、啓発教育と保全再生の実践活動を精力的に進めた。

高村 典子 氏(学術博士)

  • 国立環境研究所生物圏環境部生態機構研究室長
  • 霞ヶ浦で大発生するミクロキスティスの分布、光合成、栄養塩吸収、沈降と分解、越冬条件を調べ、「水の華」を形成するシアノバクテリアの生理・生態学的特性を解明した。

第4回 -1994年-

尹 澄清 氏(工学博士)

  • 中国科学院生態環境研究センター環境水科学国家重点実験室副主任
  • 中国における浅い湖沼の富栄養化ーアオコ発生ーの特色を明らかにするとともに、湖沼の富栄養化管理において多数の池を散在配置したシステムや、水陸境界エコトーンの環境浄化機能にかかる実証研究など生態工学的な富栄養化防止対策を提示した。

池田 勉 氏(水産学博士)

  • 水産庁西海区水産研究所海洋環境部長
  • 動物プランクトン群集全体の代謝活性の変動が群集を構成する個々の動物プランクトンの体重と生息水温によることを示し、貧栄養海域として知られる黒潮海域での動物プランクトン群集の摂餌の捕食・生産速度、窒素排泄速度などを試算した。

第5回 -1995年-

ミゲル D. フォルテス 氏(理学博士)

  • フィリピン大学海洋科学研究所教授
  • 東南アジア沿岸域は、海草帯がよく発達し、インドー太平洋地域の27カ国が7つの海草区に区分されること、および海草帯が高い生産性を持ち、サンゴ礁やマングローブ湿地に匹敵する重要な生態系であることを明らかにした。

花里 孝幸 氏(理学博士)

  • 信州大学理学部附属諏訪臨湖実験所教授
  • 湖における動物プランクトンの生態に関する研究を進め、富栄養湖においては腐食食物連鎖が中心となっていることを示し、富栄養湖の循環過程を理解するうえで大きく学術的に貢献した。

第6回 -1996年-

オレック A. ティモーシュキン 氏(理学博士)

  • ロシア科学アカデミーシベリア局陸水研究所水生生物室長
  • バイカル湖において、浮遊性の渦虫類の分類・生態・進化、または大型プランクトン動物の生態の研究に優れた業績を挙げ、さらに、バイカル湖のほか琵琶湖やモンゴルのフブスグル湖等、アジアの古い湖沼における生物多様性の成立過程の比較研究に成果をおさめた。

中島 経夫 氏(理学博士)

  • 滋賀県立琵琶湖博物館総括学芸員
  • コイ科魚類の咽頭歯の研究を行い、古琵琶湖から現在の琵琶湖に至る環境と魚類相の変遷を明らかにした。 その中で古琵琶湖は沼沢や湿地的な環境であったこと、現在の環境は琵琶湖の歴史のなかでは特異であることを示し、生物相の由来に関する研究に大きく貢献した。

第7回 -1997年-

陳 鎭東 氏(理学博士)

  • 台湾中山大学海洋地質学・化学研究所教授
  • 海洋や湖沼の水の安定度を密度、温度、圧力の関係式で統合して解析することを可能にした。 さらに、大気中の炭酸ガスが海洋に溶け込んでいることを定量的に証明するとともに、台湾湖沼の湖底の堆積物研究から、人間活動が気候変動に与える影響を解析した。

濱 健夫 氏(理学博士)

  • 名古屋大学大気水圏科学研究所助手
  • 水域における基礎生産測定法および有機物分析法を新しく開発し、基礎生産分野の研究を活性化させ、有機物生産研究を分子レベルにまで進展させた。 また、有機物生産の初期過程と有機物分子の動態を明らかにし、水域生態系での物質循環の理解に貢献した。

第8回 -1998年-

チョンラック・ポンプラサート 氏(理学博士)

  • アジア工科大学環境・資源・開発学部長
  • 熱帯地方の川や湖に増えて水上交通の障害となり、処置に困っている水草ホテイアオイを逆転利用し、資源としての利用を含めた地域に密着した低コストの汚水処置システムを開発するとともに、このような有機的リサイクリング手法の理論化を研究し、アジアにおける生態工学のリーダー的存在として活躍している。

西田 睦 氏(農学博士)

  • 福井県立大学生物資源学部教授
  • DNAを用いた分子生物学的な研究手法を生態学の分野に率先して導入し、たとえば琵琶湖のアユは10万年も前から日本の他の河川のアユとは違っていたこと、その逆に、サンゴ礁を滅ぼしているオニヒトデは遠く離れた海域間でも遺伝的にはよく似ていることなど、集団生態学の上できわめて重要な事実を明らかにし、国際的にもこの分野での指導的役割を果たしている。

第9回 -1999年-

謝 平 氏(理学博士)

  • 中国科学院水生生物研究所教授
  • 実験生態系を用いて、湖内の食物連鎖系の仕組みを明らかにすることによって湖毎あるいは季節毎に特徴的な生物組成がどのようにして成立するかを明らかにした。 これらの結果をもとにして、湖の富栄養化防止に草食魚の導入が有効であることを検証、湖沼生態系管理の方向性を具体的に示した。

吉岡 崇仁氏(理学博士)

  • 名古屋大学大気水圏科学研究所助手
  • 湖沼生態系解析に炭素・窒素安定同位体比測定手法を導入し、この種の研究に新たな質的展開をもたらした。 また、同手法を用いて食物連鎖系について克明な解析を行うと共に過去の湖沼環境変遷の解析にも応用できることを示した。

第10回 -2000年-

デビッド・ダジョン氏(理学博士)

  • 香港大学生態学・生物多様性学科 主任教授
  • 香港大学を研究拠点として、一貫してアジア地域の水生昆虫を中心とする熱帯河川生態系の研究を行ってきた。その成果をもとに、学生への生態学教育を行い、現在は熱帯アジアの生物多様性保全に関しての情報発信を通して社会的にも貢献している。

山室 真澄 氏(理学博士)

  • 通商産業省工業技術院地質調査所海洋地質部 主任研究官
  • 汽水域での物質循環機構を窒素循環の面から解析し、宍道湖でのヤマトシジミ、宍道湖・中海での潜水性カモ類が水質浄化に果たす役割を定量的に明らかにした。また、地球温暖化の機構研究に関連して、サンゴ礁が炭素の吸収源として機能していることを指摘した。

第11回 -2001年-

占部 城太郎 氏(理学博士)

  • 京都大学生態学研究センター 助教授
  • 生態学的化学量論というまったく新しい視点から、湖沼におけるプランクトンの成長・増殖とそれによる物質循環の実態を詳しく解析し、国際的にも大変注目されている。琵琶湖では富栄養化にもかかわらず植物プランクトン体内にリンが少なく、多量のリンを必要とする動物プランクトンは成長に「苦労している」こともわかった。

アヤウディン・ビン・アリ 氏(理学博士)

  • マレーシア科学大学生物科学部 教授
  • マレーシアにおける水田養魚に関する生態学的・実用的研究を展開してきた。水田は浅い沿岸帯のような環境であり、その微妙な生態系は学問的にも興味深いとともに、稲作による人間の影響は複雑である。氏の精力的な研究によって、稲作と養魚を統合するシステムが構築されつつある。

第12回 -2003年-

森 誠一 氏(理学博士)

  • 岐阜経済大学コミュニティ福祉政策学科 教授
  • 野外におけるイトヨとハリヨの形態や生態を比較し、また、配偶実験をおこなうことにより、求愛行動に関する生殖隔離を分析した結果、回遊型から陸封型への進化のプロセスを確認した。また、ハリヨの行動について、多変量解析を用いて、巣の位置関係や個体の優劣などといった、社会関係の中での適応度を比較するという独自の視点を展開した。

ウェンーシオン ワン 氏(理学博士)

  • 香港科学技術大学生物学部 助教授
  • 氏は水域において、生物に必須の微量金属元素の水生生物による同化と排出、そして食物連鎖を介した移行過程を研究し、それによって、これまで詳しくは知られていなかった、水域における金属の動態の生物的側面を明らかにした。氏の研究によって、環境中の金属濃度からそこに生息している水生生物中の重金属蓄積濃度を推定することが可能になった。

第13回 -2005年-

今井 章雄 氏(工学博士)

  • 独立行政法人国立環境研究所 湖沼環境研究室長
  • 近年、多くの湖沼において有機物負荷の抑制や湖内の植物プランクトンの増加が認められないにも拘わらず、溶存有機物質(難分解性溶存有機物質)が増加傾向にあることを背景として、溶存有機物質をその化学的特性により5分画(フミン物質、親水性酸、親水性塩基物質、親水性中性物質、疎水性中性物質)する技術を開発・確立し、生物や水質に与える溶存有機物質の内容・起源を再構築した。

ジュー ギージェー 氏(理学博士)

  • 韓国山大学 教授
  • 韓国で2番目に長い川であり、河口部に河口堰が建設された洛東江において、環境モニタリングを開始し、その長期モニタリングによって得られたデータの総合的な解析から人間活動の河川に与える影響に関して、多くの生態学的知見を得た。この知見の集積は、今後の河口堰建設などの改修にあたっての科学的資料として活かすことができる。

第14回 -2007年-

津田 敦(つだ あつし)氏 (農学博士)

  • 国立大学法人 東京大学海洋研究所海洋生態系動態部門浮遊生物分野准教授

鄭 明修(Ming-Shiou Jeng ミンシュー ティ)氏(理学博士)

  • 中央研究院 生物多様性研究センター研究員
お問い合わせ
滋賀県琵琶湖環境部環境政策課 
電話番号:077-528-3353
FAX番号:077-528-4844
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