腫瘍PET(ペット)検査は代謝の状態を画像としてとらえる診断法で、がんの進行度、治療効果、再発の有無などを判定するために使われています。糖代謝を反映するFDG(エフディージー)という診断用放射性薬剤を用いたFDG-PET検査が一般的です。
PET(ペット)は、陽電子放射断層撮像法という意味で positron emission tomographyの略です。陽電子(ポジトロン=positron)という特殊な放射線を出す放射性物質を用いて、放出される2本の消滅放射線を検出器で計測し、体内の薬剤分布を画像化する診断方法です。がんのPET検査としては、健康保険が適応となるブドウ糖代謝を反映したF-18標識フルオロデオキシグルコース(FDG)を用いたFDG-PET検査が一般的です。当研究所においては糖代謝を見るPET検査と、X線CT検査を同時に撮影するPET/CT装置を備え、多くの腫瘍の病期診断や、治療効果判定、再発診断などを行っております。
2022年10月より新しく半導体PET/CT装置が稼働しています。
新しく導入したGE社製の『DiscoveryMI-25』というPET-CT装置では、従来と同様の検査時間内に、体幹部を中心とした精密な撮影に加え、頭部から足先までの広範囲の撮影の両方が可能となり、多くの情報を一度に得ることが出来るようになりました。また、装置に半導体を用いているため、感度が高く、検査時に投与する放射線量を3割減らしてもPETもCTも従来よりも優れた画像を得ることができます。患者さん自身の被ばく低減にも効果があります。
悪性腫瘍は、正常組織に比べると細胞のブドウ糖(グルコース)の取り込みが盛んであるため、グルコースの類似物質であるFDGは腫瘍細胞内に多く蓄積します。そのため、代謝の分解能のよい画像を得ることが可能です。一度の検査で、全身を広く検査できることも大きな利点です。
また、PETは定量性に優れており、病変のブドウ糖代謝をSUV(standardized uptake value)と呼ばれるような数字の指標で評価し、病変の良悪性鑑別の一助としたり、治療効果判定に利用したりすることが可能です。(SUVは患者の体格、生理的な状況、解析方法などに左右されます)
なお、炎症性疾患やそのほか良性の病変でもFDGの取り込みが高い場合や、悪性腫瘍でも取り込みが低いようなものもあり、ほかの画像検査や、臨床経過など合わせて総合的に診断します。
現在、我が国においては、早期胃がんを除くすべての悪性腫瘍に対して保険適応です。内視鏡的な早期胃がんに対しては、PETでは検出が困難ですので、適応になりません。また、転移病巣が確認された原発不明がんに対しては適応となりますが、腫瘍マーカーが高いだけなどの腫瘍疑いのみでは、保険適応にはなりません。
PETは全身把握が容易であるために治療開始前のステージング(病期分類)に有用で、遠隔転移や、同時多発癌の検出にも優れています。ほかの検査で指摘ができないような播種性病変や骨転移が検出されることも多く、治療方針の決定に大きく影響するため、手術などの大きな治療の前には必須の検査と考えられています。
その他、難治性てんかんの手術を前提とした焦点の評価、心サルコイドーシスの評価、大血管炎症候群などに対する保険診療としてのFDG-PET検査を行っています。
通常4-5時間以上の絶食が必要です(水、お茶は飲んでもかまいません)。
糖尿病の方は注意が必要です。主治医とご相談ください。入院中の方で点滴にブドウ糖が含まれる場合は点滴内容の変更が必要です。
なお、心サルコイドーシスの評価のためのFDG-PET検査の際には、心臓への正常の取り込みを減らし、病変へのFDGの評価を行うために、より厳密な食事の制限が必要です。具体的には検査の18時間前からの絶食が必要です。また、検査前最後の食事においては、糖質制限食をとっていただく必要があります。
FDG-PET検査での食事指示について
検査時の注意事項
糖尿病の患者さん向けの追加の注意点
糖尿病治療中の患者さんへのFDG-PET検査時の指示
検査時の注意事項
FDGを静脈注射後、所定の個室の待機室で、1時間程度お待ちいただいたのちに撮影を開始します。検査ではベッドに仰向けになっていただき、全身を20-30分程度かけて撮影します。撮影の間は、検査ベッドが自動的に動いて撮影していきますので、特別な指示がない限り息を止めたりせずに楽にしておいてください。検査終了後、担当医師が画像を確認し、腫瘍と正常組織の鑑別が難しい時など必要に応じて、もう一度数分間の撮影を追加することがあります。
PETに限らず、核医学検査で用いる薬剤の物質量はわずか(数μg程度)であり、いわゆる薬理作用(身体に対する薬物反応)がなく、アレルギー反応を起こす心配はありません。CT検査やMRI検査で用いられる造影剤のような、注射時の不快感や副作用も心配ありません。
PET/CT検査における被ばく量は1回検査当たり5~7mSv(ミリシーベルト)程度です。これは通常のCT検査による被ばくと同程度です。日本において自然界から受ける年間放射線量は平均2.4mSvです。放射性同位元素を使うため、わずかな放射能はありますが、体への影響を心配するような線量ではないため、ご安心ください。
当研究所ではメチルAIB(エーアイビー)を始めとする、いろいろな研究用の薬剤を開発し、研究用のPETも行っています。詳しくは当研究所画像部門の業績集をご覧ください。
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