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人工膝関節置換術

1.膝の痛みでお悩みの方へ

膝の痛みは、日常生活に大きな影響を及ぼします。

痛みのために、

  • 歩くのがつらい
  • 階段の上り下りが大変
  • 買い物や旅行を諦める
  • 好きな趣味やスポーツができない

このような状態が続いていませんか?

保存療法

もちろん手術には不安やリスクを伴います。しかし、その一方で充実した生活も期待できます。
保存的治療では痛みが取れなかった方は、人工膝関節手術について考えてみてください。

膝の痛みは膝だけの問題ではありません

痛みの悪循環

痛みの悪循環
全身への影響
  • 心肺機能の低下
  • 筋力や骨密度の低下
  • 生活習慣病リスクの増加
  • 気分の落ち込みや孤独感
次の治療

痛みを我慢し続けると、全身の健康が損なわれます。

一度低下した全身の体力を回復させるのは、とても難しいことです。

膝だけでなく全身への影響も考えて、適切なタイミングで次の治療を検討することが大切です。

2.膝関節のしくみ

膝は、主に大腿骨・脛骨・膝蓋骨の3つの骨で構成され、表面は軟骨で覆われています。

変形性膝関節症イメージ図
ポイント

3.人工膝関節の適応となる主な病気

人工関節適応の病気

4.人工膝関節置換術とは

傷んだ関節の表面を人工の部品(インプラント)に置き換えて、痛みを減らし、歩きやすさを取り戻す手術です。

当院の手術計画

当院では、術前CTデータから得られる3次元骨形状を分析し、一人ひとりの患者さんに合わせた手術計画を立てます。

下記どちらの方法でも、目指すのはその人に合った自然な脚のバランスと安定して歩ける膝です。

関連論文(外部サイトにリンク)

(1)人工膝関節部分置換術(UKA)

膝の一部だけが傷んでいる場合に、その部分のみを人工関節に置換します。
大腿骨と脛骨の内側が傷んでいる場合は、内側の表面だけを置き換えます。

人工膝関節部分置換術
UKA特徴

当院では人工膝関節置換術の約3割にこの手法を用いています。

(2)人工膝関節全置換術(TKA)

痛みや損傷が部分的ではない場合に行う方法で、膝関節全体の表面をインプラントで覆います。
膝蓋骨(お皿の骨)の表面が健全な場合は残すこともあります。

人工膝関節全置換術
TKA特徴

当院では人工膝関節置換術の約7割にこの手法を用いています。

当院の早期回復プログラム(ERAS)

  • 膝への負担が少ない術式(個別化手術)

できるだけ患者さんの膝の形状に合わせて人工関節を設置し、膝周辺の負担を減らします。

  • 術後の積極的な鎮痛と早期リハビリ

痛みをできるだけ抑え、歩行練習・自転車・階段練習へと段階的に進めます。

当院ではこうした工夫により、術後10日程度で自宅退院が可能となる人が多いです。

5.人工膝関節置換術による効果と限界

(1)痛みの改善

関節由来の歩行時痛はほとんど無くなります。

(2)動きの改善

人工関節で覆われた部分が滑らかに動くようになります。
膝が伸ばしやすくなります。

(3)変形の改善

手術によって、膝関節の形状が変形前の状態に回復します。

(4)歩行能力・日常生活能力の改善

以上の効果によって、手術前よりも歩きやすくなります。
また、日常生活能力が良くなることが期待できます。

限界

※ 術前の筋力や柔軟性は術後の結果に直結します。
※ 術前に和式の生活能力が高い方は、術後もその能力を維持できる可能性があります。

6.人工膝関節置換術の合併症

(1)細菌感染

人工関節置換術で最も重要な合併症です。予防のため様々な工夫を行いますが、 一般的に感染の確率は1〜2%と言われています。

いったん感染すると、治るまでに複数回の手術や、長期の抗菌薬治療・入院が必要になることがあります。 糖尿病・肥満・喫煙・免疫疾患などがある方は、できるだけ改善した状態で手術を行うことが大切です。

(2)深部静脈血栓症・肺塞栓症(エコノミークラス症候群)

下肢の静脈に血栓ができ、肺の血管に詰まる病気です。対策をしない場合、症状のない深部静脈血栓症が半数以上に起こり得ると言われています。

現在は様々な予防策により「症状がある肺塞栓症」は少なくなっていますが、ゼロではありません。

ご自身でできる対策

(3)膝の前の感覚異常(当院の工夫)

従来の皮膚切開では、膝の前面の知覚神経(伏在神経膝蓋下枝)が影響を受け、 術後に膝の前の感覚が鈍くなることがありました。

知覚神経

従来の皮切では神経に影響することがあります。当院では皮膚切開の位置を工夫し、神経を避けるようにしています。

※従来の方法でも数年かけて感覚が回復する方もおられます。

(4)関節拘縮(膝が曲がりにくい/伸びにくい)

平均としては屈曲可動域は術前と同程度ですが、術前より少し曲がりやすくなる方もいれば、少し曲がりにくくなる方もいます。

術後の痛みが強い・癒着しやすい体質・自発的に動く意欲が少ないことは拘縮のリスクになります。

状況に応じて鎮痛などで対応し、強い拘縮では追加治療を行う場合があります。

(5)術後に関節から音が鳴る

「コツコツ音が鳴る」「擦れるような音がする」と感じることがあります。 できるだけ音が鳴りにくいように工夫していますが、完全にゼロにするのは難しいことがあります。

(6)骨折

特に部分置換術(UKA)では、骨が弱い場合にインプラントが沈み込むことがあります。 術後半年間はジャンプ動作など強い衝撃を避けてください。

全置換術(TKA)では「人工関節を入れたから骨折しやすい」というわけではありませんが、人工関節の周囲で骨折すると複雑な手術が必要になる場合があります。

(7)出血

手術技術の進歩により、手術により輸血が必要になることはほとんどなくなりました。 ただし、術前から貧血が強い方や、心不全や透析など全身の循環維持が必要な方では安全のために輸血を行うことがあります。

(8)人工関節のゆるみ・遅発性の細菌感染/定期検診

人工関節は長年使っていると、部品の摩耗や、人工関節を支える骨の変化によって「ゆるみ」が生じることがあります。
一方で長期成績は改善しており、約9割以上の人工膝関節が20年以上もつことが報告されています。

ただし、術後何年経っても細菌感染には注意が必要です。膝のまわりの皮膚病や 歯槽膿漏がきっかけになり、再手術が必要となることがあります。
気になる症状があるときは、皮膚科や歯科で早めに相談してください。

異常の早期発見のため、人工関節を使って歩いている限りは年1回程度の定期検診をおすすめしています。

7.入院と手術に向けて

手術を安全に行うために、入院前からいくつかの準備をお願いします。

入院までの流れ

  • かかりつけの診療所・病院から、当院地域連携室へ予約をしていただきます
  • 術前検査(血液検査・レントゲン・心電図など)を行います
  • 検査が終了したら、入院受付で入院手続きを行います

手術に向けて(大切なポイント)

  • 中止が必要な薬があるか確認しましょう(服薬してしまった場合は、入院前または入院時にお知らせください)
  • 膝の痛みが耐えられる範囲でよいので、適度な運動で体力を保ちましょう(体調が悪いときは延期を検討することもあります)
  • 長時間座り続けないようにしましょう(術前の静脈血栓が術後に大きくなることがあります)
  • 入院前から禁煙をお願いします(入院中は「完全な禁煙」が必須です)
  • 虫歯や抜歯が必要な歯がある方は、入院前に歯科治療を完了させましょう(口腔内を清潔に保つことが重要です)
  • 糖尿病の方/糖尿病傾向を指摘された方は、規則正しい食生活を心がけましょう(感染予防のため重要です)

お薬について

  • 入院時に内服している薬は、すべて医師・看護師・薬剤師へお伝えください
  • 血液をサラサラにする薬(抗凝固薬・抗血小板薬)は、出血が増える可能性があるため、手術前から手術が終わるまで中止していただく場合があります
  • 入院時はお薬手帳お薬(2週間分)をご持参ください
  • 入院に必要な持ち物は、別紙をご参照ください

入院当日(病棟で行うこと)

  • 入院受付へお越しください。その後、入院病棟へご案内します
  • 病棟内の案内
  • 入院前の生活、既往歴、アレルギーの聞き取り
  • シャワー浴(自宅で入ってきていただいても構いません)
  • サインした手術説明書と手術同意書を担当看護師へお渡しください
  • 麻酔科医の診察・説明(外来で終わっている方は入院当日にはありません)
  • リハビリ診察、リハビリ訓練室での手術前機能評価

8.入院中の経過

手術当日

  • 手術衣に着替えます(当院の術衣をお渡しします)
  • 手術室への入室時間が近づいたら、トイレを済ませてお待ちください
  • 術衣以外のもの(下着・義歯・コンタクトレンズ・アクセサリー類)は外します
  • 貴重品はご家族へお預けください
  • 入室予定時間の5〜10分前に、車いすで手術室へ向かいます

※手術中、ご家族の方は病棟デイコーナーで待機してください。手術終了時には病棟看護師がお知らせします。

手術翌日から

  • 翌朝から理学療法士と一緒に、歩行器での歩行練習を行います
  • 歩行器での移動が安定すれば、尿の管を抜去します
  • 慣れるまでは歩行時に看護師の見守りが必要です。移動するときは必ず看護師を呼んでください
  • シャワーに入れない間は、タオルで体を拭く・髪の毛を洗うことができます

退院の目安・条件(術後10日目前後)

  • 術前程度の歩行能力が獲得できている
  • シャワー浴ができるまでに傷が治っている
  • 膝を90°以上曲げられる(術前から90°曲げられない方は、術前に近い角度まで)

予定より早い時期でも、条件を満たせば退院できます(最短術後5日目)

9.Q&A(よくあるご質問)

10.手術から何年経っても

人工関節を長く安全に使うために、次のことを続けましょう。

長期的に大切なこと

  • 年に1回の人工関節の検査を受けましょう
  • 歯や皮膚を清潔に保ちましょう
  • 糖尿病や関節リウマチなどの持病がある方は、治療を継続しましょう

次の症状があるときは早めに病院へ

外来受診予定日でなくても、病院へご連絡ください。緊急の場合は予約外でも受診できます。
その際は、人工膝関節の手術後であることをお伝えください。

病院へ電話:0570-00-5031(ナビダイヤル)

緊急時(強い痛みで動けない・呼吸が苦しい等):119

(1)細菌感染(以下の2~3個がある時)

  • 膝の痛みが増してきた
  • 膝の前の皮膚が赤く腫れて熱を持つ/膿や血が出る
  • いつもより体温が高い

(2)骨折

  • 転んでから膝が痛くて力が入らない

(3)膝まわりの怪我

  • 深い切り傷・刺し傷
  • 砂や土でひどく汚れた擦り傷
お問い合わせ
病院事業庁 総合病院 整形外科(副部長 前田 勉)
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