カテーテルアブレーションとは

アブレーションとは英語で‘焼ききる’という意味ですが、現在一般的に行われる高周波電流を用いたアブレーションでは心筋を60~70度C前後に加熱しており、日本語の焼灼という言葉は必ずしも最適な訳とは言えません。

イリゲーションカテーテル
  • カテーテルアブレーションによる頻脈性不整脈の治療は、約20年前より始まりました。 当初は4mm長と通常の電極カテーテルと比較し長い電極を用いて心臓内の血流による 電極の冷却効果を増強し、アブレーションに用いていました。しかし心房筋が小刻みに震えて 血流が乏しい心房細動の治療などでは、わずかな高周波電流で電極がすぐに過熱してしまい、 安全かつ充分なアブレーションを行うことができませんでした。そこで登場したのが、 電極先端を強制的に生理食塩水で冷却するイリゲーションカテーテルです。 このアブレーション用カテーテルを用いて、心房細動も安定してアブレーション治療を行うことができるようになりました。
  • アブレーション治療の対象となる不整脈は、主に脈が速くなる不整脈であり、WPW症候群に伴う頻脈発作や心房頻拍、 房室結節回帰頻拍等の上室性頻拍、心房粗動、心房細動、心室頻拍などがあります。
  • 方法としては、局所麻酔(部分的な痛み止め)で股や首の血管から心臓まで数本の電極カテーテルを挿入し、電気刺激を行ない不整脈の 回路や発生場所を詳細に調べ(心臓電気生理検査)、その回路や発生場所を高周波電流により処置し、根治を図ります。カテーテルによる検査、治療は入院 が必要ですが、簡単なタイプでは、数時間で終了し翌日からは歩行も可能になります。心房細動はアブレーション治療の歴史の中でも最後に治療方法が確立されつつある複雑な不整脈です。高齢者の100人に一人は罹患するほど多い不整脈で、心不全を悪化させたり、重症の脳塞栓症の原因となることからその治療が近年注目されています。
  • 心房細動の初期は発作性であり短時間で自然停止する場合が多くあります。 一方、心房細動が生じると心拍数がたいへん上昇し強い動悸を自覚しやすくなります。 発作性心房細動は放置すると、慢性化していくことが多く心房はより拡大してきます。
  • 発作性心房細動の治療はその原因となる4本の肺静脈を電気的に隔離することが中心になります。立体的なアブレーションラインを肺静脈周囲の心房に確実に作成するには、レントゲン透視のみよりコンピューターを用いた3次元のマッピング・カテーテル誘導装置を用いることが有用であり、カルトシステムやエンサイト・ナビックスシステムをこの目的でアブレーション時に使用する時代となっています。アブレーションによる隔離ラインは低率ですが、伝導再開する確率があり、再発した方では、治療の仕上げの意味で2回目のアブレーションが必要となることがあります。ただし、初回治療後の再発例でも約半数は2~3カ月経過する間に自然消失する場合もあり、2回目の治療を要するかの判断は初回治療後3カ月待ってからとなります。
カルトシステム
肺静脈CT

左房のCT情報を取り込んだアブレーション用3次元カルトシステム(左)

  • 持続性・慢性心房細動では、肺静脈隔離は必要なステップではありますが、不整脈の原因となる心筋がより広範囲になっているため、肺静脈以外の部位に対するアブレーションの追加が必要となります。当院では、持続性電位記録部位へのアブレーションや心臓に分布する自律神経のセンターである自律神経節へのアブレーション、線状アブレーション法などを早期から導入し、難治性といわれる慢性心房細動においても約80%の長期成功率を得てきました。
連続性心房電位と同部位通電による心房細動の停止

連続性心房電位と同部位通電による心房細動の停止

通電時

通電時

  • 心房細動アブレーションを施行するには、まず血栓を予防するワーファリン、プラザキサ、イグザレルトなど抗凝固剤と呼ばれる薬剤を1カ月内服し心房内に存在する血栓を溶解することが必要です。経食道エコーと呼ばれる超音波検査で、左心房に血栓がないことを確認してアブレーションが可能になります。
  • 心房細動アブレーションは、治療室への入室後まもなくにお薬の注射で寝ていただき 安楽に受けていただけるようにしています。一方、期外収縮や上室性頻拍・心室頻拍など従来から行われている 一般的な不整脈へのアブレーションは、不整脈を誘発・確認しやすくするため局所麻酔を主体とし、 睡眠剤等の使用は最低限にとどめています。