草津川上流に位置する、「オランダ堰堤(えんてい)」(大津市上田上桐生町)。
川が浅く一定に広がっており、アクセスも便利なため、夏場には小さな子ども連れも多く訪れる この人気水遊びスポットは、実は100年以上前につくられた歴史ある“土木遺産”だということをご存じだろうか。
砂防堰堤とは、山から流れてくる土砂を食い止め、下流の川や人々の暮らしを守るための施設のこと。
「オランダ堰堤」は、明治時代に国内で築かれた石積み砂防堰堤の中でも最も古いもののひとつとされ、100年以上たった今でも現役で人々の暮らしを守り続けている。
その歴史的・技術的な価値が評価され、土木学会選奨“土木遺産”にも認定されている。
オランダ堰堤のすぐ後ろに広がる田上山(たなかみやま)は、もともとはヒノキなど良質な木材に恵まれ、藤原京や平城京、東大寺などの建設にも使われたと伝えられている。
しかしその後も長い年月にわたって木材や燃料として利用され続けたことで、山は次第に緑を失っていき、江戸時代には「田上の禿(たなかみのはげ)」と呼ばれるほど荒れ果てていた。
木々を失った山では、大雨のたびに大量の土砂が流れ出し、下流では洪水や土砂災害が繰り返されるように。そこで始まったのが、山に木を植えて緑を取り戻すこと、そして土砂を食い止める砂防工事だった。
「オランダ堰堤」は、その長い取組を今に伝える象徴の一つだ。
明治時代、砂防事業の指導にあたったとされるのは、オランダ人技師 ヨハニス・デ・レーケ。「オランダ堰堤」という名前もこのことに由来するとされる。
川のほとりにはデ・レーケの銅像が、水遊びを楽しむ子どもたちを静かに見守っている。
滋賀県は、古くから京都への水輸送や日本の交通要衝を担うなど、歴史的な観点からも注目を集める“土木遺産”が数多く存在している。
県内には明治時代以前に造られたものも多く現存しており、今なお活躍している。