1 みずかがみ〔大育1744(滋賀66号)×滋賀64号〕
・高温登熟性に優れ、白未熟粒の発生が少なく外観品質が優れる早生品種。食味は「コシヒカリ」と同等以上の極良食味である。稈は短く耐倒伏性に優れるが、大豆跡等で生育の旺盛なところでは倒伏することもある。千粒重は小さいが、粒に厚みがあり、くず米は少ない。県内の平坦地~中山間地に広く適する。
・5月中旬移植では出穂期は「コシヒカリ」より5日程度早いが、移植時期が早いと出穂期の「コシヒカリ」との差がさらに開くこともある。基肥量が少なく、栽植密度が小さいと茎数が不足し、目標収量が確保できない場合がある。米のタンパク質含有率が高くならないよう、穂肥の多施用は避ける。
・いもち耐病性は葉いもちが“やや強”、穂いもちが“中”程度であり、地理的条件、気象条件によっては多発する可能性もあるので注意する。紋枯病の被害を受けやすいので、例年多発するほ場では防除する。
2 コシヒカリ〔農林22号×農林1号〕
・全国で最も多く作付けされる極良食味品種。稈が長く柔らかいため倒伏しやすく、いもち病に弱い。登熟期間が高温で推移すると白未熟粒が増加し玄米外観品質は劣りやすい。県内の平坦~中山間の地力がやや低~中程度のほ場に適する。
・育苗にあたっては、発芽が遅いので十分に浸種・催芽を行ってから播種をする。
・多肥による穂数確保は倒伏の危険性が大きいほか、肥沃地では過繁茂による籾数過多により玄米外観品質の低下につながりやすいので避ける。穂肥の施用量および時期に注意して完全倒伏を防ぎ、稲体がなびく程度に作り上げるのが良い。
3 レーク65〔ヒノヒカリ×キヌヒカリ〕
・「コシヒカリ」と同等レベルの極良食味である早生品種。稈は短く剛いので耐倒伏性に優れる。地力が低いところや基肥量が少ない等の場合には、初期生育が劣り少収となりやすく、地力が中程度以上のほ場に適する。生育期間全般を通じて「コシヒカリ」、「キヌヒカリ」より葉色がやや濃く推移し、幼穂形成期においても「キヌヒカリ」より濃いが穂肥は籾数確保のため出穂25日前(幼穂長1mm)に施用する。
・短強稈で葉が直立し、株が開張しないため受光態勢に優れるが、紋枯病に罹病すると上位進展しやすい。いもち病抵抗性は「コシヒカリ」、「キヌヒカリ」より強いが、十分ではない。
・「コシヒカリ」や「キヌヒカリ」よりも高温年でも乳白・心白の発生が少ないが、茶米や黒点症状米が発生しやすい。茶米や黒点症状米の発生を減らすため、出穂前後各3週間は常時湛水を保ち、その後も収穫直前まで間断かんがいを行う。また、茶米・黒点症状米の発生が多い場合は、2.0mmの網目を使用したり、色彩選別機を用いて、1等米に調製する。
4 キヌヒカリ〔[収2800×北陸100号]×北陸96号(ナゴユタカ)〕
・「コシヒカリ」と同等レベルの極良食味である早生品種。稈は短く剛いので耐倒伏性に優れる。分げつが少なく穂数を確保しにくいので、地力が低いところや基肥量が少ない場合等では少収になりやすい。地力が中程度以上の乾田に適する。
・乳白・心白が生じやすく、登熟期間が高温になった場合にはその傾向が顕著になる。幼穂形成期前後から受光態勢を乱さないよう肥培管理に留意するとともに、温暖化対策技術を組み合わせて栽培する。ただし、高温年には温暖化対策技術を組み合わせても品質低下が懸念される。
・また、穂発芽しやすいので成熟期が秋雨に遭遇する地帯での栽培や刈遅れは避け、高温多湿時にはやや早めに刈り取りを行う。
5 ゆめおうみ〔越南135号×滋系51号〕
・短強稈であり耐倒伏性、いもち病ほ場抵抗性に優れた中生の早熟期の良食味品種。地力が中程度以上のほ場に適する。「日本晴」より優れた良食味品種であるが、多肥条件で増収効果が高い一方で容易に米のタンパク質含有率が高まり食味が劣りやすい。登熟期間が高温になった場合には外観品質が低下しやすい。早植や多肥栽培で籾数が極端に増加した場合や早期落水をすると腹白、死米が増加する一方で、登熟後半に窒素不足となった場合には背白、基白が多発しやすい。
・いもち病には強く、常発地以外で防除の必要性は少ないが、幼苗では抵抗性が十分でないので、苗や移植直後に発生した場合速やかに防除する。休眠が深いので、育苗にあたっては浸種・催芽を十分に行い播種する。
6 日本晴〔東海7号(ヤマビコ)×幸風〕
・かつては近江米の代表的銘柄であった品種。清酒醸造の掛米としてもよく利用される。県内の平坦~中山間の地力が中程度以上のほ場に広く適する。湿田では、根腐れによって、穂数や一穂籾数が減少し、収量が低下する。秋落ちしやすい水田では、ごま葉枯病や穂枯れが出やすく、品質・収量が低下するので、作付けにあたって有機物を施用するなど土壌改良が必要である。
・極多肥や多肥・密植にすると稈の伸びが大きく草勢が悪化し登熟が劣るので避ける。穂発芽性が十分でないため、極端な早植えや生育期間の高温によって生育が早まり、成熟期が秋雨時期と重なると穂発芽するので注意する。
7 きらみずき〔にこまる×滋賀69号〕
・短強稈であり耐倒伏性に優れた中生の晩熟期の極良食味品種。高温登熟性に優れ、白未熟粒の発生が少なく外観品質が優れる。粒形は大きくやや縦に細長い。
・初期生育が比較的旺盛で分げつを確保しやすい一方で、初期生育が旺盛すぎると穂肥時期までに栄養不足となり葉色が極端に低下し、減収につながりやすい。葉色が低下したら、追肥を施用する。
・いもち病抵抗性は不十分であるため、常発地での栽培は避ける。
8 秋の詩〔滋系54号(吟おうみ)×コシヒカリ〕
・「コシヒカリ」と同等の極良食味の中生の晩品種。稈は剛いがやや長いので、耐倒伏性は“やや弱”である。いもち病には弱い。県内の平坦部に広く適するが、いもち病の常発地、大豆跡や野菜跡に作付けする場合は注意する。
・肥沃地では倒伏の危険性が高まるため、施肥量と施肥時期に十分注意する。地力の低い地帯では、生育中期に栄養凋落を起こすと籾数不足となるので、つなぎ肥を考慮する。
・休眠が深いので、育苗にあたっては浸種・催芽を十分に行い播種する。
・高温登熟性は劣り、胴割れしやすい傾向があるので、出穂前後各3週間の常時湛水に努め、収穫前落水も可能な限り遅らせ、適期収穫に努める。
9 玉栄〔山栄×白菊〕
・中生の晩に属する醸造用品種。主に湖南・湖東平坦部の地力が中程度~やや秋落ち田に適し、強度の秋落田、強湿田には不適。穂数過多になりやすいので、基肥はやや減量し、収量・品質が低下しないよう注意する。穂肥は適期に適量を施用し、それ以降の施肥は酒造適性の低下につながるので避ける。
・また、早期落水は、品質低下の原因になりやすいので避ける。なお、酒米は胴割れの発生を極力防ぐ必要があるので、適期収穫の徹底とともに、乾燥途中(乾燥機の表示水分16%)で乾燥機を止めて、8~10時間のテンパリング後に仕上げ乾燥を行う。
10 吟吹雪〔山田錦×玉栄〕
・晩生に属する酒造適性に優れた醸造用品種。県内中南部の地力が中程度以上のほ場に適し、地力の低いほ場には不適である。また、県内北西部などの秋冷が早い地域では登熟ムラを生じることがある。
・茎数は比較的とりやすいが、最高分げつ期から幼穂形成期までの期間も長いので、この間に栄養凋落を起こすと大きく減収する。生育中期の栄養を維持し、7月上旬の葉色が葉緑素計で40(葉色板で4.5)を下回らないように、必要に応じてつなぎ肥を施用する。穂肥は出穂前25日に適量を施用し、以降の施肥は酒造適性の低下を招くので避ける。
・また、胴割れの発生を極力防ぐため、出穂後の水不足に注意し、早期落水を避けるとともに適期刈り取りに努める。
11 滋賀羽二重糯〔改良羽二重糯の系統分離〕
・食味に優れた晩生のもち米品種。長稈で稈が柔らかいので倒伏しやすく、いもち病に弱い。県内の平坦部に適するが地力の低いほ場には不適である。
・本品種は晩生であるため、移植から幼穂形成期までの栄養生長期間が長い。したがって基肥増施や早期追肥による生育の過繁茂を避けつつ、幼穂形成期前に極度に葉色を落とさないよう稲体の栄養維持に留意する。
・なお、脱粒性が中易であることから、本品種を作付けし、翌年に他品種を作付けする場合は、漏生籾からの裸地(自然)生えが発生するので、抜き取りを行うなど混入防止に努める。
1 農林61号(小麦)〔福岡小麦18号×新中長〕
・平坦部を中心とした広域に適し、作りやすい品種であるが、やや倒伏しやすいので極端な多肥は避ける。
・穂発芽はしにくいが、成熟期が梅雨時期となるので、刈り遅れに注意して晴れ間をぬって適期収穫に努める。
2 シロガネコムギ(小麦)〔シラサギコムギ×西海104号〕
・中・南部の平坦部における地力中庸~肥沃地に適し、分げつ力旺盛で倒伏に強いので、多肥栽培に適する。
・茎立ちが早く、凍霜害が発生しやすいので極端な早播きは避ける。
・雨に当たると穂発芽しやすいので、刈遅れないようにする。
3 ふくさやか(小麦)〔シラサギコムギ×シロガネコムギ〕
・平坦部に適し、短稈で倒伏しにくい品種である。
・穂数が「農林61号」に比べてやや少ないので、排水対策の徹底と穂肥の適正施用により穂数確保を図る。
・雨に当たると穂発芽しやすいので、刈遅れないようにする。
4 びわほなみ(小麦)〔中国153号×きたほなみ〕
・平坦部に適し、分げつ力旺盛で倒伏に強いため、多肥栽培に適する。
・茎立ちが早く、凍霜害が発生しやすいので極端な早播きは避ける。
・赤かび病には弱いので、開花始め~開花期とその7~10日後の計2回防除を行う。
5 ファイバースノウ(六条大麦)〔シュンライ×東山皮86号〕
・耐雪性および耐寒性に優れており湖北・湖西の中雪地にも適する。
・倒伏に比較的強い
・止葉期追肥の時期が遅れたり量が多いと、硝子粒が増加して品質低下を招くので適正施肥に留意する。
・赤かび病には弱いので、多発が予想されるときは追加防除に備える。穂発芽しやすいので適期刈り取りに留意する。
1 オオツル〔東山80号×エンレイ〕
・主に秋冷の早い地域や中山間地で、地力中庸以上の輪換畑に適する。
・主茎長はやや長く倒伏しやすいので、過度の早播、密植、多肥栽培を避け、培土は的確に行う。
・ウイルス病抵抗性は中程度。
・粒が大きく煮豆に使用されることが多いため、開花期以降の管理を徹底して登熟向上に努める。
・特に裁植密度が高くなると粒が小さくなりやすいので、狭条無中耕無培土栽培には適さない。
2 ことゆたかA1号〔ことゆたか////九州136号///あやこがね//タチナガハ/〕
・主に秋冷期の降雨の影響が少ない県南部から東部地域に適する。
・極端な早播、遅播を避け、適期に播種する。
・耐病性は紫斑病にはやや強、ウイルス病抵抗性は中程度。
・主茎長はやや長いが倒伏抵抗性が強く、着莢位置が高いので、機械化栽培に適する。
・難裂莢性を備えているが、長期間の圃場での放置は品質低下をもたらすので適期収穫に留意する。
3 タマホマレ〔Lee×フジミジロ〕
・主に秋冷期の降雨の影響が少ない県南部から東部地域に適する。
・耐倒伏性は強い。
・耐病性は紫斑病には中、ウイルス病抵抗性はやや強である。
4 フクユタカ〔岡大豆×白大豆3号〕
・主に秋冷期の降雨の影響が少ない県南部から東部地域に適する。
・主茎長は長く蔓化・倒伏しやすいので、必ず晩播きし密植、多肥栽培を避け培土は的確に行う。
・年次により子実の裂皮が生じやすい。