流域治水シンポジウム基調講演録

基調講演「地球の温暖化で変わる水害」

京都大学防災研究所河田 惠昭 教授(京都大学防災研究所巨大災害研究センター長)

(河田教授) 皆さんこんにちは。今、紹介にあずかりました河田です。吉岡部長(滋賀県土木交通部)の方から滋賀県が今迎えている災害環境についてお話がありました。戦後60年たっておりますけれども、47都道府県で自然災害による死者が100人を超えていないのは滋賀県だけです。そういう意味では、滋賀県というのは歴史的に大変安全なところだということは間違いないと思います。ですけれども、御存じのように、琵琶湖西岸断層は30年以内の地震発生確率が9%を超えています。近畿地方で一番危ない活断層の一つです。そして、今日お話しします洪水の問題について、特に地球の温暖化によって特性が変わりつつ中で県民の皆さんにいろんな形での基礎的な知識を持っていただきたいと思います。

まず、冒頭に専門用語の使い方の工夫ということをお話しします。地球温暖化、英語でglobal warmingといいますが、これは専門用語であり、学者の怠慢で深刻さが伝わらない表現になっています。京都議定書の批准も含め、地球の温暖化対策は大変遅れています。それからgreenhouse effectは温室効果ガスと呼んでいます。こういったものはもうちょっと社会的に考えなければいけないので、「地球の温暖化」をやめて「地球の過熱化」と訳すべきです。あるいは、「効果」というのはほとんどがいい結果をもたらすという意味がありますから、「温室効果ガス」ではなくて「加熱促進ガス」だというべきです。いわゆる専門用語と私たちの日常の生活の感覚での用語の使い方を別々にしなければいけないと思います。岩波書店の「科学」という雑誌の7月号の巻頭言にこういうことを書きました。この7月号は地球の温暖化特集ですけれども、そういう英語を直訳したような専門語では、「地球の温暖化を防ぐために何とかしなければいけない」というのはなかなか市民レベルに伝わってきません。「大雨が降るのではないか」それぐらいの感覚でこの地球の温暖化の問題をとらえていると大間違いだということを述べさせていただいたわけです。

産業革命以前は炭酸ガスの濃度が空気中で0.028%であったものが、現在は0.038%に増加しています。地球の温暖化というのは、御存じのように、炭酸ガスあるいはメタンガスなどで地球がどんどん暖かくなるということです。温室効果ガスが毎年世界全体で220億tぐらい出ています。これを何とかしなければいけません。実はエネルギーの大量消費あるいは自然火災による森林減少によって発生する温室効果ガスの影響で、地球の温暖化が90%を超える確率で進行するということが、IPCC政府間パネルで今年の2月に認知されました。そして、このまま放置しておきますと、2100年には平均気温が最大6.4℃上がり、海面が最大59cm上昇するという結果が出ています。
こうなって何が困るかというと、特に滋賀県あたりではこれまでに経験している大雨が降るということです。熱帯域の海水温が上昇すると、台風の強度は増加し、最大風速や降水強度が増加する可能性が高くなります。それで、強い降雨現象は頻度が増す可能性が非常に高く、洪水リスクを増加させます。

このグラフは地球シミュレーターというスーパーコンピューターによる予想結果で、100mm以上の雨が日本で6、7、8月のこの夏にどのぐらい降るかということを示しています。2007年のところに赤い棒が入っていますが、日本ではこれから集中豪雨が増えていくということがスーパーコンピューターで予測されています。

我が国では大体全国的におよそ年間1600mmぐらいの雨が降っています。滋賀県は1660mmぐらいの平均が示されています。この地球の温暖化に伴い、少しずつ雨が降らなくなってきています。そしてこの折れ線で挟んであるように幅が広がる、すなわち年々雨が降らなくなりつつあり、そういう傾向の中で極端な現象が出てきています。すなわち、降るときは徹底的に降るが、降らないときは全然降らないということです。例えば、平成18年には20年振りに大雪が降りました。地球の温暖化でなぜ雪が降るのかというのは当然の疑問です。地球の温暖化によって、冬の最低気温の平均値は少しずつ高くなり、全国的に雪が降らなくなる傾向になります。ところが、降るときにはむちゃくちゃ降るというわけです。このような極端現象が地球の温暖化によって出てきやすくなっています。そして、100mm/時以上の集中豪雨の観測回数が、この過去10年で非常に増えています。ちなみに日本記録は昭和57年、1982年の長崎豪雨水害のときに長与という町で187mm/時降りました。およそ20cm降ったわけです。このときには、土砂崩れが中心の災害で299人の方が亡くなられました。

こういう傾向はもちろん全世界で認められており、2002年の夏には西ヨーロッパで大水害がありました。エルベ川の上流のモルダウ川、チェコのプラハを流れている川が氾濫して、地下鉄の3路線が水没するなど、500年に1回の雨が降りました。ダムも機能を果たさなかったということがわかっています。このように、プラハの古い町並みで非常に浸水深の高い洪水が500年ぶりに起こったのです。

我が国でも、1998年に起こった高知の水害では、93mm/時という激しい雨が降っておよそ5万世帯が水没しました。

福岡では、1999年と2003年の2回にわたって水害が起こり、JR博多駅周辺が水没しました。もともとこのあたりは湿地帯でした。明治の初めに鉄道を敷設するときに、駅をつくるために広い土地が要ります。東京駅、横浜駅あるいは大阪駅、博多駅はすべて当時の湿地帯にできています。大阪は今曽根崎新地という地名が残っていますが、江戸時代の市街地は北限が実はそこです。それより北は人がほとんど住んでいませんでした。そういう空き地があるということは、住むのには余り適していないから空き地になっているわけで、そういったところがほとんど大きな駅に変わっています。駅が出来ても、雨が降ればそこに水が集中するという特性は変わりません。そして、このように福岡市内で集中豪雨がありますと駅前を中心に水没するということが起こったわけです。

また、2000年9月11日には東海豪雨水害があって、名古屋市の37%が浸水しました。このときには実は大変危ない状態なっていて、間一髪で大きな被害から免れているということもわかっています。

平成16年には1時間雨量の記録を更新した観測点がおよそ125点あります。この観測点はアメダスという気象庁の無人観測点で、全国に1300カ所あります。1970年から30数年、1300カ所という数字は変わっておりません。その中で、2004年には降雨量の記録更新がありました。

また、1日の雨量では111点で記録を更新しています。2004年というのは台風が10個も上陸した大変特異的な年だと言われており、これほど記録を更新しています。全国各地で水害が起こりました。

この滋賀の近くでも京都府の由良川が台風23号であふれました。兵庫県の円山川、それから7月には福井県の足羽川が氾濫しました。

2004年の風水害の特徴というのは異常な雨と強風とでした。まず、集中豪雨にやられたのは新潟県の五十嵐川、刈谷田川、あるいは福井県の足羽川です。いずれの川も流域面積は200数十km2です。後ほど滋賀県の川の状態をお示ししますが、滋賀県では大きな川といっても流域面積は数百km2しかありません。ですから、集中豪雨が降りますと、まさに洗面器にじょうろで水を注ぐような形で洪水が氾濫します。
それから、流域面積が1500km2ぐらいある一級河川、国土交通省が直轄管理している川ですが、円山川も由良川も実は1時間に40mmぐらいの雨が6時間ぐらい降りました。広域に長時間の雨が降りますと、一級河川でもあふれるということになります。このように、中小河川、大河川の氾濫が2004年に起こったわけです。そして、高齢犠牲者が増加しています。また、川の水があふれるだけではなくて、市街地に降った雨が処理できなくなって浸水を起こす内水氾濫、あるいは外水と内水の同時氾濫が起こってきています。さらに、国道9号線で立ち往生した豊岡市のトマト交通のバスに象徴されるように、土地不案内災害、すなわち地元の自動車は一台も被害を受けていないけれども他府県の車が被害を受けるということが頻発しました。

翌年(2005年)も台風14号により非常に大きな雨が降り、宮崎県の南郷町では1322mmという1年分くらいの雨が降りました。台風というのは反時計方向に渦巻いてまいりますので、必ず東斜面の方に雨が降ります。ここに赤い点が載っておりますが、台風の風が吹きつける九州の東斜面、四国山脈の南側の斜面に大雨が降るという状況になったわけです。

このとき、29名亡くなったうちの20名が高齢者でした。逃げおくれているという問題が出たのです。その年、内閣府は、「避難勧告をいずれ出すということが確実であれば避難準備情報をあらかじめ出すということが適正だ」ということを言っております。けれども、市町村では避難準備情報をいつのタイミングで出せばいいのかよくわかりません。そして、残念ながら市町村で避難勧告を出す、出さないというのはほとんどアマチュアの人が判断しているわけです。決してベテランで防災のことが非常によくわかっている方が避難勧告を出したり、あるいは避難指示を市長あるいは町長に進言したりということにはなっていませんので、必ず出し遅れています。そして、逃げ遅れが起こっているわけです。
ですから、特に高齢犠牲者、ハンディキャップを持っている人、あるいは要援護者に被害が集中しているという状況で、いきなり避難勧告、避難指示を出すのではなく、この避難準備情報をどう活用するかということが大変難しい問題になっています。

それから、これは実は雨が降るメカニズムです。雨が降るのは何も特殊なことではなくて、停滞前線に向かって暖かく湿った空気が吹き込みますと必ず雨が降ります。空気が山に当って上昇すると、冷されて水蒸気でいられなくなり雨になります。前線があって暖かくて湿った空気がそこに流れ込み、山があると必ず雨が降るということなので、滋賀県でもそういう状況が起こらない保証はありません。

雨が1時間に50mm降る場合は大雨警報が出ます。これはなかなか知られていません。滋賀県の全市町村そうですが、雨水の処理能力が基本的には50mm対応になっています。すなわち大雨警報が出るということは、マンホールから逆流する水で道路が浸水して通れなくなる可能性が高いということなのです。ですから、彦根地方気象台が大雨警報出したときに、「大雨警報が出ているなぁ」と、これでは困るわけです。通勤あるいは通学に車を使っている方は早く脱しないと車で実は帰れない、あるいは行くことができないということになります。こういう数字と現実に何が起こるかということがなかなかイメージされていません。ですから、情報がたくさん精度よくタイミングよく出ても、それの活用方法がなかなかよくわからないという問題が出てきています。

では、滋賀県に雨が降ったら琵琶湖はどうなるのでしょうか。例えば滋賀県全県で100mmの雨が降りますとおよそ3.8億tです。これが琵琶湖に流入すると湖面が約60cm上昇します。琵琶湖の総貯水量は280億tですから、全県で7.4mの雨が降ると琵琶湖は満水になるわけです。そして、滋賀県は年平均降水量が1687mmですから、もし地下水にならないと考えると、1年間で琵琶湖の水は0.23回入れかわることになります。こういう粗々の数字というのは絶対頭に入れとかなければいけません。細かい数字はどうでもいいのです。滋賀県に住んでおられる方にとって、こういうざっくりとした数字はとても大事です。10cm降ったら3.8億tぐらいの水が琵琶湖に流入する危険性がある。これからの治水対策あるいは自助、共助、公助をやっていただくときに、数字的なものは何も知らない、感性的なものでしか現象をとらえていないというのは大変問題です。ですから、こういう数字はきちっと理解していただきたいと思います。

これは琵琶湖の衛星写真です。このように非常にいびつな形をしています。安曇川の河口デルタ、高時川、姉川の河口デルタ、そして南の方に土砂の巨大な堆積があります。この土砂は琵琶湖の南の方に入り込んでいて、北湖と南湖で非常にいびつな形になっています。なぜこうなっているのでしょうか。

我が国の森林の荒廃期というのは3つあります。最初は古代の略奪がありました。600年から800年にかけて、この近くでは藤原京、平城京、平安京などの造営、それから宗教建築物の建設です。薬師寺、興福寺、京都でもたくさんの神社・仏閣ができています。そのために木を切ったのです。琵琶湖周辺で、田上の湖南アルプスあるいはこの近くの山から木が切り出されて、それが瀬田川から淀川を通って下流側に運ばれました。

こういったことは世界的にも実は起こっています。古くはギリシャ、あるいは産業革命の前のイギリスがそうです。木を切られてしまったために、今イギリスで鬱蒼(うっそう)たる森を見つけるのは不可能です。ギリシャもそうです。せいぜいオリーブの木が生えている程度です。けれども、もともと鬱蒼(うっそう)たる大木が全国を覆っていました。

実は木を切ってしまった後遺症として、滋賀県のいわゆる天井川という特性となって出てきているわけです。我が国で初めて砂防が進められたのは、この田上の地域です。湖南アルプスです。それだけハゲ山になっていたのです。ですから琵琶湖の南の方では土砂の堆積が異常に広がっているのです。

これからも滋賀県で大雨が降りますと、どんどん土砂が出てきます。古い草津川は廃川になっていますが、天井川がたくさんあります。天井川がたくさんある場合の水害の事例が昭和13年の阪神大水害にあります。このとき死者行方不明が600名を超えました。神戸地区の生田川、都賀川、住吉川、石屋川は全部天井川で、これらがあふれたわけです。総雨量が600mm、最大時間雨量が47mmでした。こんな雨は異常な雨ではなく、この琵琶湖周辺でも降っています。ですが、こういう雨があると天井川は大変危険です。

阪急の住吉川の鉄橋も川にたまった土砂と橋台が接しています。こういう大きな石が出てきています。こういうことが昭和13年に阪神風水害で起こったのです。

ちなみにこれは当時の災害後の復旧事業ですが、当時はその地域の人たちが総出でやっておりました。甲南高等学校の生徒さんあるいは女学校の生徒さんがモッコを担いでいるところです。今は災害といえばすぐにボランティアということになりますが、実は被災地の住民あるいは関係者が復旧事業に当たっていたのです。これは昔からの伝統です。

さて、琵琶湖ですけれども、琵琶湖周辺にはこのように姉川、愛知川、日野川、野洲川、それから安曇川という流域面積が数百km2の川があります。これ以下に、例えば草津川のように流域面積が48km2というようなもっと小さい川があります。集中豪雨が降りますと、これらの川は決して安全ではありません。今、滋賀県庁では、河川整備率をできるだけ上げようとしていますがそれでも50mm/時対応です。1時間に50mm対応、確率的には10年に1回の大雨に耐えられるということです。仮に河川整備率が100%になっても大変危険だということもご理解いただかなければなりません。

現に、明治29年(1896年)には総雨量が1000mmを超える雨が琵琶湖に降っています。これは滋賀県の災異史からとってきたものですが、4時間雨量で大体180mm、大体1時間で40mmぐらい降っています。こういう雨がかつては降っています。もう100年以上前の話です。こんなことを覚えている人は一人もいません。ですから、滋賀県では災害が起こらないのではないか、あるいは起こらないという期待を持っている方がたくさんおられると思いますけれども、そうではありません。やっぱり降るときは降るのです。

2000年9月11日の東海集中豪雨では名古屋市で428mm/日という雨が観測されました。名古屋地方気象台は109年間の記録を持っていました。その中でそれまで最大の雨量は218mm/日でした。その約2倍降ったわけです。確率的には350年に1回の雨が降ったことになります。こういう異常な雨が全国的に降っています。
ですから、淀川流域で琵琶湖も含めていろんな治水事業をやっていますが、こういう異常状態に対処するのは、実は基本的に不可能なのです。今いろんな河川で、流域委員会などで議論されていますが、あれはあくまでも元禄時代のように安定化している条件での治水問題を取り扱っているのです。しかし、計画高水流量の2倍ぐらいの異常な超過洪水が起こっているわけで、そういう場で被害軽減をどうするかということも考えていただかなければいけません。こういう時代に差しかかっているのです。

我が国の最近の災害環境、特に赤く示してありますのは風水害です。超過洪水の頻発、従来の治水対策では限界があって、どうやっても防げません。それを認知しなければなりません。不可能であれば、被害をできるだけ少なくするということに変わらざるを得ません。いわゆる防災から減災に変わらざるを得ないというわけです。台風だって、特性の変化による超過高潮の発生、例えば大阪湾、東京湾では高潮はそのときの満潮位+3mを計画高潮として今整備しているわけですが、台風の勢力が大きくなるともっと大きな高潮が発生するかもしれない、こういうことも実は懸念されています。
しかも、土砂災害は起こらなければ起こらないほどそこは危ないのです。起こらなければ起こらないほど安全だというのが普通ですが、嫌なことに、土砂災害というのは過去に起こらなければ起こらないほど、雨さえ降れば滑るのです。特に田上の砂防指定地に代表されるように、風化花崗岩がたくさん分布しているところでは、雨さえ降れば滑ります。そういうことも全国的な多発傾向になっています。そして、地球の温暖化で極端現象としての豪雪が起こりやすくなっています。こういう気象災害はますます危険になるとご理解いただけると思います。

ですから、我が国の災害対策の現状としては、阪神・淡路大震災以降、被害軽減すなわち減災にシフトせざるを得ないことになっており、被害をゼロにすることはできないのです。異常外力に対してはハード整備だけでは限界があります。財政的、物理的、時間的な制約があるわけで、やはりハードを含めた総合的な被害軽減のマネジメントをやらなければなりません。そこで、主役になるのは公助ではなく、自助、共助という県民の皆さんのご協力、こういったものが中央に座らざるを得ない状況になっているのです。
これからは、ある程度の被害は甘受せざるを得ないため、どの程度まで被害を受容できるのかを考えなければなりません。そして、高齢者などの要援護者の被害を軽減する鍵は「情報」にあります。後ほどお見せしますが、非常にたくさんの高齢者が亡くなっています。この3月に起こった能登半島の地震でも高齢者の方が大けがをされています。高齢化社会の独特の被害の様相が出てきているわけです。

新潟県中越地震では、震災関連死を入れますと、現在67名の方が亡くなっていて、44名が65歳以上の高齢者です。平成16年の風水害では、日本人が200名亡くなっています。そのうちの120名が高齢者で60%を占めます。平成17年の台風14号で69%、平成18年の豪雪では151人亡くなって、そのうちの98人が65歳以上の高齢者となっています。平成18年の梅雨前線豪雨でも50%を超えています。我が国では、最近災害が起きると、種類に関係なく高齢犠牲者が3分の2以上を占めるような時代になってきています。

これは1983年の山陰豪雨水害、117人亡くなった島根県の山陰豪雨水害のときの市街地の状況です。三隅川の右岸側が氾濫して、市街地に氾濫水が流入し、2階建ての家が商店街を流されました。

これは、2004年の刈谷田川、あるいはその1年前の九州北部水害の福岡県の飯塚の内水氾濫の雨の状況を示しています。1日に大体300mmから400mm降り、1時間では60mmから80mm降りました。しかもこの河川は、100年に1回の雨に耐えられるように実は堤防が整備されてきました。あるいは、遠賀川も穂波川でも20年を25年に1回の雨に耐えられるように計画を改定してやってきましたが、両者とも氾濫を起こしました。
先ほども申し上げましたように、滋賀県の河川は、今は河川整備率が55%で、1時間の雨量が50mm対応、すなわち10年に1回の雨に耐えられる整備が進められています。ですから、こんな雨が降ると、滋賀県の川はどの河川もたないということ、河川整備が100%に至ってもそうなんだということも、理解していただく必要があります。

外水氾濫と内水氾濫という専門用語があります。外水氾濫では、川の水が堤防をあふれ、あるいはそれによって破堤し、大量の高速氾濫流が市街地に流入して住宅被害が短時間に起こり、泥が堆積します。2004年7月12日の新潟の水害、18日の福井の水害は、外水氾濫によるものです。あるいは内水氾濫の場合、市街地に降った雨が雨水処理能力を超えます。1時間に50mm降りますと、大津でも草津でもどこでも氾濫が発生します。川もいっぱいだと、市街地であふれた雨水をポンプで川に捨てられません。

これは新潟の水害の様子です。五十嵐川と刈谷田川という信濃川に流れ込む一級河川ですが、新潟県土木部が県管理としてマネジメントしています。

これは刈谷田川の堤防の破堤の様子です。堤防の高さは8mありますが、8mの堤防が切れる前です(上の写真)。ここで破堤し、1602年建立の妙栄寺というお寺の本堂が濁流に流され、残ったのは墓地だけでした。問題は、こんな氾濫が起こるところの木造の本堂を避難所に指定していたことです。中之島町長は記者会見で、「避難勧告を出すのが遅れてよかった」と発言していました。破堤する10分前に避難勧告を出したわけです。だれも逃げていなかったからよかったということです。そんなんじゃないんです。危険な箇所の木造の本堂を避難所に指定している方が間違っています。町のトップでも、そのレベルなんです。ですから、やはり自分の命は自分で守る、町の安全はみんなで守ることが大切です。

そして、2階建てに住んでいた人たちが家ごと流されて3人亡くなりました。それから、破堤個所から400m離れた町立の保育所が1.9m水没しました。園児66名と職員11名の計77名が孤立し、7時間かかってヘリコプターで救助されました。
この滋賀県でも、保育所がどんどんできていると思います。一番困るのは、保育所に預けられているお子さんのご両親の多くは共稼ぎで地元にいません。例えば、大阪とか京都に働きに行かれています。保育所には、若い保育師さんと一緒にいます。そこが地震、あるいは水害にやられます。要援護者といったときにすぐに高齢者が浮かびますが、小さな子供さんをどうするのかということについては、実はほとんど対策が進んでいないのが現実です。

しかも少子化で、中学校や小学校の統廃合が全国的に進んでいます。そうすると、田んぼの中に新しい学校がつくられます。教育委員会は、基本的に防災のことは頭になく、コストしか頭にありませんから、こういう田んぼと同じ面の地盤高さに学校をつくってしまいます。水害が起こると水没するわけです。避難所になるべきところが避難できないことになります。ここでも、およそ260名の中学生が帰れなくなって、一晩先生とここに缶詰になりました。台風23号でも、豊岡の小学校で、そういうことが起きました。
安易に広い土地を求めてこういうところに学校をつくりますと、そういうことが起こります。単に1m盛り土をしてつくれば浸水が防げるわけですが、教育委員会はそういうことに思いをはせない。安全安心という非常に貴重なキーワードが無視されている。ですけれども、最終的に学校をつくるときに、この中之島町では町長がハンコを押している。あるいは、豊岡では市長がハンコを押しているわけです。すなわち、行政のトップの責任というのは大変大きいのです。

実は、堤防が破堤してから浸水が起こって避難勧告が出て、健常者5名の方が屋外で亡くなっています。すなわち、水が市街地に出た段階で避難するというのは、大変危険だということです。どこに深いところがあるかわかりません。あるいは、下水が逆流してマンホールの蓋が外れます。落ちたら助かりません。東海豪雨水害では、名古屋市内だけで88枚のマンホールの蓋が飛びました。一たん外れてしまいますと、そこが落とし穴のようになっていて、下で水が流れています。ですから、もう道路に水が出ている段階で避難勧告が出たからといって、小さなお子さんと手をつないで逃げるのは危ないのです。そういう慎重さが要るわけです。基本は、水が出る前に避難勧告を出し、逃げていただくということです。

信越線より西には2時間後に水が来ました。水深は1mか1平方メートル0cm、胸ぐらいまで来ました。ここで、4人の寝たきりの高齢者の方が犠牲になりました。水が出てから避難勧告が出ますと、みんな慌ててしまって、家族のことしか考えずに逃げてしまいます。そして避難所に行ってから、隣の寝たきりのおじいちゃん、おばあちゃんのことを思い出すわけです。あるいは、ご夫妻で住んでいても、2階建てのうちに住んでいても、おじいさんがおばあさんを抱っこして2階に上がれない、そんな体力がない場合があります。そして、おじいさんの腕の中でおぼれ死ぬ、こういうことが起こっています。
そうしますと、「情報」の問題が実は大変重要になるわけです。個人情報保護法というのがあります。この法律は、政府がトップダウンで決めたものではありません。地方分権から出てきた話です。すなわち、この個人情報保護法をどう運用するかというのは市町村の問題です。ところが、その法律ができたプロセスがほとんど理解されていません。ですから、すぐに「そんなものは出せない」と市や町は言います。そんなことはありません。この法律ができた経緯を考えてみますと、決して個人情報は防災とか福祉については、別々に出そうとしても出せないというものではなく、市や町が考えたらできるわけです。それを、いかにも普通の法律と同じように政府がトップダウンで施行しているから、それに従わなければいけないと、こういう非常に個人情報保護法の姑息な解釈が実はまかり通っているのです。これが実は、こういうハンディキャップを持っている方たちの被害の増加に対して有効に働いていないことにつながっているわけです。

そして、この刈谷田川、五十嵐川には3つの県営ダムがありました。こういうことはマスメディアは報道してくれないのですが、3つのダムでおよそ2,200万m3/sピークカットしてくれました。この黄色の部分をダムがカットしてくれました。もしダムがなければもっと被害は大きかったのですが、そういうことはマスメディアは取り上げません。ですから、基本的な論調としてダムは要らない、あるいは山は緑のダムだと、こういうことをみんなが信じるようになるわけです。情報を操作してはいけません。このようにうまくいったものはきちっと示さなければいけません。下流側で決壊していますから、もちろんこの3つのダムがパーフェクトというわけではありません。ですけれども、この3つのダムがなかったらどうなっていたのか、こういうことにもやはり思いをはせる必要があります。これがこれからの治水対策では大変重要なファクターになってきているわけです。

これは実は市街地に降った雨で浸水が起こっている状況です。穂波川が先にあふれたわけではありません。市街地に降ったおよそ300mmの雨で町がつかっています。
よくあるのは、ハザードマップで浸水深が2m以上のところでは、自動的に避難勧告が出されます。ですけれども、こんな内水氾濫では家は流されません。ましてコンクリートの護岸は、普通洪水では決壊しませんから、家の中でも安全なのです。ところが、それを市とか町の行政はわかっていないため、ハザードマップで深い浸水深になっているところは避難してください、真夜中でも停電の中でも避難してくださいと言うわけです。
残念ながら、ハザードマップをつくる過程で洪水の起こり方についての深い理解がないと、真夜中に停電している中で2階に上がれば安全なのにわざわざ小学校、中学校に避難しろというような、そういう避難勧告を自動的に出すような市町村が増えています。「ハザードマップ、ハザードマップ」とよく言われますが、このようなことも、ハザードマップの活用方法がなかなか理解されていない大きな原因になっています。

そして、これは名古屋の例ですが、昭和40年代に農地が減って宅地が増えて割合が逆転しています。

このため、同じ雨が降っても実は洪水のピークが早くなり、ピーク流量が増えます。それから、町ができるということは、道路が舗装され家ができるということです。地下水になる水が減りますから、川に出てくる流量の絶対値が増えます。しかし、川はもとの姿のままです。ですから、都市化が進めば進むほど、洪水氾濫の危険は高くなります。この滋賀県は、特に東部で人口が急増しているところがあります。こういったところの河川というのは、放っておけばどんどん危険になります。ですけれども、市町村というのは、基本的に人口が増えることは歓迎です。人口が増えることは、税金、税収がふえるということで、川は県や国がやればいいとなります。ですが、実は人口がどんどん増えるというのは大変危険だということも知っていただく必要があります。

これは飯塚の例ですが、このように湿舌といいまして、南の方から暖かくて湿った空気が入ってきて、ここで雨が降りました。

こういう川は実は全国で至るところにあります。流域の広さが集中豪雨のスケールの効果を受けやすくなっています。琵琶湖に流れ込んでいる安曇川から始まる姉川、愛知川、野洲川も同じぐらいの広さで集中豪雨に弱いのです。たまたま降っていないだけだと言えます。市街地に降った集中豪雨のはけ口は、ポンプ排水による川しかありません。ところが、川の水もあふれそうになっていると、捨てるところがないという現状が実は出てきています。つまり、河川改修の限界が既に存在していて、今後床下浸水程度とはつき合わなければいけないということです。

それで、これが台風23号による死者の発生原因ですが、洪水で亡くなった方、いわゆる洪水氾濫で亡くなった方が3分の1、土砂災害で亡くなった方が3分の1となっています。ここで事故型というのは、大雨洪水警報が出ているさなかに田畑の水が心配だからといって、かっぱ着て自転車で見に行く、あるいは、軽トラックに乗って見に行くと、側溝があふれていたり、川があふれていいて、そこに落ちたりする場合です。あるいは、暴風警報が出ているさなかに屋根がわらが心配だからといって、はしごを出して屋根に上がり、突風にあおられて落ちる場合です。また、家に早く帰らなければいけないということで道路を歩いていて風速25m以上の風が吹きますと、かわら屋根が木の葉のように飛んでまいります。それが頭に当たる、胸に当たる、看板が当たるといった場合です。こういう不注意が原因で、特に高齢男性が全国的に亡くなっているということがわかっています。事故型が大変ふえているというわけです。

そして、これが東海豪雨水害の情報ニーズです。この滋賀県にも企業がたくさん実は進出してきています。そういったところでは、どういう情報ニーズがあるのか、ここに幾つかまとめてあります。この安全に出社できるか、あるいは資材製品の輸送が可能かという情報、あるいは、広域的な状況の把握、すなわち、名神高速道路がどうなのかといった情報が必要とされています。要するに、企業活動が災害によって中断してはならないわけで、そのためにはどういう情報が要るかということは、先行しているいろんな災害でわかってきています。住民についても、自分の住む地域が大丈夫かどうかという災害予測情報、あるいは新川、これは名古屋の例ですけれども、野洲川、愛知川、姉川、高時川、あるいは安曇川がどうなっているのか、今どれぐらい雨が降っているのか、これからの雨はどうなるのか、こういうきめ細かな情報というものが住民から望まれています。

これは、実は足立区のハザードマップです。足立区には荒川という大きな一級河川が流れています。この足立区には、ハザードマップは2種類ありまして、一次避難で堤防決壊前にどこに逃げるかということが決まっています。なぜかといいますと、浸水深が5mを超えるところがあり、2階でも水に浸かるところがあります。ですから、一たん破堤氾濫したときに逃げたのでは遅く、一次避難、それから二次避難、こういう非常にきめ細かなハザードマップを用意しているところも全国にはあるのです。単に水が出たらどうなるか、ハザードマップがあるから我々のところは安全だと、こんな単純なものではありません。一体どれぐらいの深さになるか、そういったことを考えていただきますと、住民の具体的な避難を配慮して、ハザードマップの内容を変えていく、議論していく必要があるわけです。

しかしながら、危機意識は昔に比べると大変低くなっています。特に滋賀県は大きな災害が起こっていないこともあって、当然ながら低いということは間違いないと思います。昔に比べて比較的死者が少なくなっています。しかし、床上浸水被害は床下浸水被害の7倍大きい被害が出ます。床下浸水で1世帯当たり0.6m3、床上で4.6m3のごみが出ます。床上浸水になると非常に大きな被害が出るということもよく知られていません。それから、車、電化製品、家具、アルバムや思い出の品物、大事なもの、仏壇も水没します。そして、精神的な被害が大きい。

数十年に1度の洪水には現状の治水施設は耐えられません。滋賀県でも河川の整備率を高めますが、それは10年に1回の雨です。数十年に1度の雨が降ったら、川から水があふれます。このように大量のごみが出ます。このごみを処理しないと災害対応は復旧、復興にかけてうまくいかないということもわかっています。

そして、都市型水害、全国的に起こっている水害の被害様相としては、役場とかあるいは備蓄倉庫、こういったものが浸水しています。12年前の阪神大震災の後、地震防災対策は一生懸命されてきました。そして、風水害対策は、刺身のつまのように、チョロっとやったという現状です。災対本部が床上浸水になることもあります。ライフラインの耐水性欠如による生活支障、特に水害のときに真っ先にやられるのは、浄水場です。浄水場はすぐ川のそばにあります。しかも、広い面積が要りますから、必ず湿地帯にできています。洪水氾濫が起きますと、必ず最初に水道がだめになり、水が来なくなります。
滋賀県には地下鉄がありません。また大規模な地下空間を使われていませんが、全国的にはこれらの浸水、水没が起こっています。
それから、自動車が非常に大量に犠牲になっています。エンジンまで水につかりますと、オーバーホールしたら動きます。しかし、6カ月以内に廃車になります。こういう事実もほとんど知られていません。日本自動車連盟JAFという連盟がありますが、残念ながら自動車メーカーの資金が入っています。決して、ドライバーがメーンになっている組織ではありません。ですから、水没した自動車を何十万円かけて修理します。だけど、6カ月以内に全部だめになることは言わないわけです。ですから、東海豪雨水害でも、自動車のディーラーは二重にもうけています。儲かるところはずっと情報を出さないままということが起こるわけです。
ですから、この車の大量水損というのは、大変大きな問題でありますし、また道路にそれが放置されます。水に浸かり動けなくなった車をどこかへ持っていくにしても、それだけのスペースがないため放置されます。復旧作業の阻害という問題が出てきています。

また、高齢者の対応、帰宅困難者の問題が出てきています。それから、東海集中豪雨のときに愛知県では、58万人避難勧告が出たのですが、逃げたのは6万人でした。みんなたかをくくって、2階に上がったらいいと思っています。2階に上がっていい場合と悪い場合があります。土でできた堤防が破堤氾濫すると2階でもだめです。家は、鉄骨であろうと木造であろうと流されます。2階建てでも流されます。こういうことを知らないのです。だから、たかをくくって2階に上がればいいと思っているところで大きな水害が起こります。ポンプ排水も、川が水であふれかかっていると排水できないという問題があります。すなわち、抜本的解決策はないのです。ですから、洪水とつき合わざるを得ないという環境が出てきています。

治水対策の現状と課題でありますが、総合治水対策を国土交通省が中心にやっています。施設整備による対策、これは、ハードの整備を中心にしていますからコストが高い、あるいは時間がかかる、環境問題がある、あるいは密集市街地での施工が非常に難しいという問題があります。多目的遊水地とか、防災調整地、これは既存の市街地に提供が非常に難しいという問題があります。ソフト的な対策、土地利用規制、ハザードマップ、洪水情報、地域防災体制とありますが、これで助かるのは人の命だけです。私たちの財産はソフト防災では守れません。このこともしっかりと理解していただく必要があるわけです。

それから、超過洪水対策として、高規格堤防、スーパー堤防と呼んでいます。淀川でも左岸側の枚方のあたりから下流で少しずつ施工されておりますが、整備に100年、200年かかります。堤防からあふれるような洪水が発生した場合に、堤防がすぱっと短期間に切れる、こういったことを避けなければいけません。ですから、40分の1ぐらいの勾配ののり面をもつスーパー堤防が整備されつつあるわけです。
被害軽減策には、いろいろあります。多種多様で、効果の定量化が非常に難しいものです。それから、残念ながら二級河川という、都道府県知事が管理している河川では、超過洪水対策は今のところありません。あふれたらお手上げです。
阪神・淡路大震災までは、内陸直下型地震では、発生確率を議論すると地震は起こらないことになります。リスクは非常に小さい、だから無視してきたわけです。けれども、6,434人も亡くなると、被害の大きさから考えて無視はできないので、発生確率は議論しないことになっています。となると、超過洪水でも被害評価をやらなければなりません。その対策を明らかにしておく必要があるわけです。そんなことが起こったらお手上げだでは困るわけで、野洲川があふれる、あるいは愛知川があふれる、姉川があふれる、こういう前提のもとで被害をどう少なくするのか、こういうことを始めていただく必要があります。

そして、この大津もそうです、草津もそうですが、外水制御と内水制御の競合の問題、あるいは地下空間の問題、情報システムの遅れ、危険の認識の欠如、こういったものが幅広く実は私たちの周りにあります。

政府も手をこまねいているわけではありません。2004年4月に特定都市河川浸水被害対策法が施行されました。いわゆる市街化の伸展と流域と下水道の排水区域がオーバーラップしているため、川も下水も同じようにコントロールの対象にならなければいけないというわけです。けれどもこれは、言うは易し行うは難しです。横浜の鶴見川、あるいは大阪の寝屋川がこの特定都市河川に指定されて、総合治水対策をやろうとしています。市町村は今までは下水の処理だけが実は義務になっていましたが、川があふれかかって下水をポンプで排水できないという状況が出てきて、同じラウンドテーブルに市町村、都道府県、それから国、こういった関係者が座って議論する時代に来ているわけです。そういった端緒が開かれました。
そして、自助、共助努力、降った雨はすぐに側溝から川に出さないとか、被害抑止から被害軽減、すなわち少々の浸水が起こっても被害が出なくなるようにするということが言われています。例えば、今エアコンの室外機というのはほとんどの場合、コンクリートブロックの上にぽんと置いてあります。30センチの浸水が起こると水につかって使い物にならなくなります。買いかえなければいけません。50センチぐらい水につかっても大丈夫なようにちょっと型枠の上に室外機を置いていただくだけで、床下浸水が起こっても被害は出ません。こういう水害が起こるということを前提に対処していただく、こういう時代が来ているのだというわけです。

一昨日、金曜日に東京で大規模水害対策の専門調査会という中央防災会議の下の委員会が開かれました。これは、大規模水害にどう対処するかというところで出た議論の1つです。被害シナリオを踏まえた検討課題ということで、事前の予防、人的被害の軽減、適切な避難行動をとらない場合の人的被災危険性の明確化、逃げなかったら何人亡くなるか、避難判断に必要な情報や安全な避難ルートや場所がないことによる人的被災危険性の明確化、避難したくてもできない人の人的被災危険度の形成の明確化が挙げられています。物的被害についても、浸水被害の地理的分布と程度の明確化、防災拠点施設の浸水被害危険性の明確化、木造の校舎が、氾濫が起こった場合、床上浸水するというようなところが避難所に指定されていないかという課題が挙げられています。さらに、ライフライン施設の浸水被害危険性の明確化、例えば、携帯電話の中継基地が水没する危険性はないのかどうか、交通インフラ施設の浸水被害危険性の明確化という問題が出てきています。

それから、応急対策、起こったときの活動での課題です。大規模避難需要と輸送力の需給マッチングの検討、要救助者需要と救助の需給マッチングの検討。救助環境の評価、救助者等の受け入れにかかわる需給マッチングの検討、それから、生活支障の解消ということで、特に電気、ガス、水道、電話というようなライフライン支障による生活支障の程度の検討、こういったことをもろもろ含めてやっています。
そして、復旧・復興活動についても、復興、町づくりの対象エリアと人口の検討、あるいは公共インフラの復旧復興対策の検討、直接的及び間接的経済損失の明確化と、こういうことを国が中心になってやろうとしています。

滋賀県は、幸い大きな水害が過去40年以上起こっていないということもあって、こういうことを至急やらなくてもいい状況だと県民の皆さんは判断されていると思います。ですけれども、地震も含めて、滋賀県というのは決してこれまでの安全の延長上でこれからも県民生活が営まれる保証はないのだということをご理解いただきまして、この後のパネルディスカッションで県民の皆さんにどのように迎えていただくかということをご議論いただき、そして新しい災害環境のもとでの安全安心な県民生活を営んでいただきたいと思います。
時間が参っておりますので、これで私の基調講演を終わらせていただきます。
どうもご静聴ありがとうございました。

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