山内副所長が第40回日本脳卒中学会総会で発表しました。
発表日 2015-03-26 学会名 第40回日本脳卒中学会総会 開催地 広島 発表形式 優秀演題セッション、口演 演者 山内浩 共同演者 加川信也、岸辺喜彦、高橋昌章、東達也 演題 症候性アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞性疾患患者における貧困灌流、血圧と5年脳卒中再発率 要旨 【目的】症候性アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞性疾患患者で、貧困灌流を呈する患者は脳卒中再発リスクが高いが、厳格な血圧コントロールが再発リスクを低下させるかは明らかでない。本研究の目的は、1)貧困灌流を呈する患者の5年間の再発リスクを明らかにし、2)貧困灌流、経過観察中の血圧と再発リスクとの関係について検討することである。 【方法】症候性アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞性疾患患者130例を対象とし、PETを用いて脳循環動態評価を行ない、その後5年間内科的治療で経過観察した。血圧値は、イベント例ではその直前受診時のもの、イベント無し例は5年後のものを解析した。収縮期血圧値は、<130mmHg、130-149mmHg、150-169mmHg、>170mmHgの4群に分類した。 【成績】5年間の同側脳梗塞再発、および、全脳卒中発症は、貧困灌流(酸素摂取率増加かつ血流量/血液量比低下)がある群で、それぞれ、25.0% (4/16)と37.5% (6/16)であり、ない群の、3.5%(4/114)と13.1%(15/114) に比べて、有意に多かった(それぞれ、P<0.001とP<0.01)。 2年後以降、同側脳梗塞再発は著明に減少し、貧困灌流がない患者で1例発生したのみだった。血圧と脳卒中再発率との関係は灌流障害(血流量/血液量比低下)の有無で異なっていた(interaction、P<0.01)。 灌流障害のある例(貧困灌流例を含む)では血圧<130mmHgで再発リスクが高く、灌流障害のない例では、130-149mmHgで再発リスクが最も低いJ-curve関係を呈した。【結論】貧困灌流を呈する患者は5年再発リスクが高いが、5年再発リスクの大部分は2年後消失する。灌流障害のある患者(貧困灌流を含む)では、過度の降圧(<130mmHg)は再発リスクを高める可能性がある。
加川主任研究員が日本薬学会第135年会にて発表しました。
開催日 2015年3月25-28日 学会名 日本薬学会第135年会 開催地 兵庫県神戸市 共同演者 水間広、矢倉栄幸、西井龍一、東達也、山内浩、立石裕行、高橋和弘、尾上浩隆、川井恵一 演題 虚血性脳血管障害イメージング剤:Benzyl [18F]Fluoroacetate合成法の開発 要旨 我々は、これまでにAcetateをフッ素標識したPET診断薬[18F]Fluoroacetate ([18F]FACE)に着目し、一般的な合成法であるオンカラム加水分解法だけではなく、臨床応用へ向けて、より簡便で安全な合成法であるtwo-pot蒸留法や新しい固相抽出技術を利用したone-pot蒸留法を用いた合成検討を行なってきた。 さらに、ラット脳虚血-再灌流モデルにおいて[18F]FACEの取り込みとグリア細胞との関係について検討してきた。本研究では、虚血性脳血管障害の予後判定を目的とした画像診断の開発を目指し、脳への移行性を高めた[18F]FACE誘導体であるBenzyl [18F]Fluoroacetate (Benzyl [18F]FACE) 合成の基礎検討を行なった。
谷垣専門研究員が執筆した神経発生異常と統合失調症の関与に関する総説がFrontiers in Neruscience に掲載されました。
統合失調症では大脳皮質、海馬の異所性の神経細胞等の微細な神経発生異常が見られることが報告されていますが、その神経発生異常が統合失調症発症に直接関与しているかは明らかにされていません。しかし、近年、遺伝学的研究の進歩により、統合失調症発症脆弱性候補遺伝子や、染色体異常が同定されるようになってきました。当研究所では、ヒトの遺伝学的研究によって同定された遺伝子異常、染色体委譲と同型の異常を持った動物モデルを作成し、神経発生異常と神経機能異常の因果関係を証明すべく解析を行っています。谷垣健二専門研究員と村木一枝主査は、当研究所での研究成果を含めた最新の知見から考えられる神経発生異常と統合失調症の関与について総説を執筆しました。
掲載日 2015年3月24日 掲載雑誌名 Front. Neurosci., 10 March 2015 | doi:10.3389/fnins.2015.00074 著者 Muraki Kazue, Kenji Tanigaki 表題 Neuronal migration abnormalities and its possible implications forschizophrenia 要旨 Schizophrenia is a complex mental disorder that displays behavioral deficits such as decreased sensory gating, reduced social interaction and working memory deficits. The neurodevelopmental model is one of the widely accepted hypotheses of the etiology of schizophrenia. Subtle developmental abnormalities of the brain which stated long before the onset of clinical symptoms are thought to lead to the emergence of illness. Schizophrenia has strong genetic components but its underlying molecular pathogenesis is still poorly understood. Genetic linkage and association studies have identified several genes involved in neuronal migrations as candidate susceptibility genes for schizophrenia, although their effect size is small. Recent progress in copy number variation studies also has identified much higher risk loci such as 22q11. Based on these genetic findings, we are now able to utilize genetically-defined animal models. Here we summarize the results of neurodevelopmental and behavioral analysis of genetically-defined animal models. Furthermore, animal model experiments have demonstrated that embryonic and perinatal neurodevelopmental insults in neurogenesis and neuronal migrations cause neuronal functional and behavioral deficits in affected adult animals, which are similar to those of schizophrenic patients. However, these findings do not establish causative relationship. Genetically-defined animal models are a critical approach to explore the relationship between neuronal migration abnormalities and behavioral abnormalities relevant to schizophrenia.
第28回名古屋PET症例検討会にて、東総括研究員が教育講演を行いました。
第28回名古屋PET症例検討会において、東達也総括研究員が症例発表を行いました。名古屋PET症例検討会は愛知・岐阜を中心とする東海地方の核医学診断医が年3回集まり、興味あるPET症例を提示・検討する会で、核医学の振興を目的として行われている研究会です。東研究員は2008年より積極的に参加し、現在は運営委員も務めています。今回は、「腹部腫瘤の一例」と題して、腫瘍随伴多発筋炎の一例の症例提示を行いました。腫瘍に随伴して起こる原因不明の筋炎に見られた、特異な全身の筋肉へのFDG集積を紹介し、PET診断医への教育・啓蒙を行いました。
発表日 2015年3月13日 学会名 第28回名古屋PET症例検討会 開催地 安保ホール、名古屋市、愛知 発表形式 口演(教育講演) 演者 東達也総括研究員 演題 腹部腫瘤の一例 要旨 70歳代の男性、十二指腸潰瘍にて50年前幽門側胃切除後。上肢の筋力低下と食思不振を認め、採血上、CPK値の異常高値を認めたため、精査したところ、残胃に胃癌を認め、同時に腹部傍大動脈領域に多発リンパ節転移を指摘された。FDG-PET/CT上、全身の筋肉組織に腫脹や不均一な集積亢進を認め、腫瘍随伴多発筋炎が疑われた。PET診断初学者はもとより、ベテラン診断医の皆さんにも再教育として役立てていただけるように、症例提示を行った。
第122回核医学症例検討会にて、東達也総括研究員が発表を行いました。
第122回核医学症例検討会において、東達也総括研究員が発表を行いました。「長期に経過観察したPET陽性IPMCの一例」と題して行われた症例検討の発表において、 東研究員は1年以上にわたってFDG-PET/CTで経過観察し、無事切除し得た膵管拡張型膵悪性腫瘍IPMCの一例を症例報告し、詳細に病理組織像と対比することで、IPMCにおけるFDG-PET/CT診断の意義と有用性についての検討行いました。
発表日 2015年2月7日 学会名 第122回核医学症例検討会 開催地 ホテル ホップインアミング、尼崎市、兵庫県 発表形式 口演(一般演題) 演者 東達也 演題 長期に経過観察したPET陽性IPMCの一例 要旨 1年以上にわたってFDG-PET/CTで経過観察し、無事切除し得た膵管拡張型膵腫瘍IPMCの一例を経験した。手術適応を考える際にもPET陽性のみで、他の画像所見もあきらかな所見がなく主膵管の拡張のみであり、膵液細胞診でもIPMAのみであったため、手術適応の判断に苦慮した一例である。 最終的には3回目のFDG-PET/CT陽性所見が診断に大きな決め手となった。臨床経過を含めた症例報告に、膵管拡張型膵腫瘍の最近の診断ガイドラインの変化の紹介を加えて発表した。FDG-PET/CTは悪性腫瘍の診断のみならず、膵管拡張型膵腫瘍の手術適応診断に有用であると考えられた。
加川主任研究員がPET化学ワークショップ2014にて講演しました。
PET化学ワークショップにおいて、加川主任研究員が、「新規薬剤立ち上げ話」と題して、本邦初のPET製剤であるF-18標識フルオロ酢酸([18 F]FACE)を例に挙げて、新規薬剤を臨床利用する過程で必要な合成及び安全性等について滋賀県立成人病センター研究所の実状を紹介しました。自動合成装置を用いた一般的合成法や安全性試験等の詳細だけでなく、滋賀で開発した新しい固相抽出技術を用いた合成法等も紹介し、情報交換会やフリーディスカッションでは活発な意見交換がされました。
発表日 2015年2月6-8日 学会名 PET化学ワークショップ2014 開催地 舞子ビラ神戸、兵庫県神戸市 演者 加川信也 演題 新規薬剤立ち上げ話
木下専門研究員が肺がんに関する研究論文を発表しました。
がん死因のトップの座を占める肺がんがどのように生じるかはまだわかっていません。がんの初期段階でおこる遺伝子の変異が、ある一群の酵素によって引き起こされる可能性が注目されています。これらの酵素は、本来、体を健康に保つために必要なものですが、時々、がんの原因になる遺伝子を破壊してしまうことで、がんを引き起こすのではないかと言われています。その酵素の一つである AID による発がん過程を研究するために作られたモデルマウスについて、今回、詳しく調べた結果が論文となり、2月6日 PLoS ONE 誌に掲載されました。AID は本来、免疫で大切な働きをする抗体をつくるために必要な酵素です。抗体の遺伝子に集中的に突然変異を起こすことが分かっています。
このモデルマウスでは体全体で AID が作られるように遺伝子が操作されています。肺がんや肝臓がん、胃がんなどさまざまながんが起こります。肺がんが起こる前の肺を調べると、通常は見られない細胞の塊が点在していて、粘液を作っていることが分かりました。月齢とともに増加し9ヶ月齢の肺全体で1000個近くになります。この段階ではがんではなく、生じては1ヶ月ほどで消えてしまいます。この細胞は傷ついた肺組織が再生するときに見られる細胞の性質をもっていました。また肺の死細胞の数が普通のマウスよりわずかに増えており、異常な量のAID が遺伝子に傷をつけた結果、細胞が死ぬのではないかと考えられました。これらのことから、肺がんに先立って組織の破壊と再生が続く時期があり、組織再生中の細胞で AID が作用すると遺伝子変異が蓄積し、肺がんが発生するのではないかと考えられます。他の種類のがんでも同様かもしれません。慢性的な炎症刺激ががんを引き起こす現象とも関連があると思われます。AID は炎症刺激を受けた細胞が作る酵素であるからです。
がんを予防するためには組織の破壊を極力避けることが大切です。喫煙や過度の日焼け、度数の高いお酒、熱すぎる食事には気をつけてください。
Chronic lung injury by constitutive expression of activation-induced cytidine deaminase leads to focal mucous cell metaplasia and cancer
(AIDの恒常的発現による慢性肺障害が引き起こす巣状粘液細胞化生と肺癌)
喜夛村次郎1,2, 植村宗弘3,黒住眞史3, 園部誠1, 真鍋俊明3, 日合弘4, 伊達洋至1, 木下和生3
(1京都大学医学部呼吸器外科、2市立長浜病院呼吸器外科、3 滋賀県立成人病センター研究所、4 京都大学大学院医学研究科)
PLoS ONE 10(2): e0117986
図AID を過剰に作るマウスの肺の顕微鏡像。矢印が組織再生と関連があると思われる、粘液産生細胞。HE染色。
「病理技術向上講座」の再度開催を希望される声にお応えし、下記要項で「第4回病理技術向上講座:病理検体の切り出し業務3」を開催致します。今回は、病理医による女性生殖器系、呼吸器系、中枢神経系臓器の切り出し法と、病理検査技師に必要な各臓器の疾患と病理組織像の講義もお願いしています。また、特別講義として検査技師による最新の免疫組織標本作製のノウハウを伝授して頂きます。
講座名 第4回病理技術向上講座:病理検体の切り出し業務3 開催日時 2015年2月1日(日)10:00〜16:50 開催場所 栗東芸術文化会館“さきら”中ホール (栗東市綣2丁目1−28) 定員 200名(細胞検査士クレジット取得予定) 参加費 5,000円(ハンドアウト代含む) 主催 滋賀県立成人病センター 後援 滋賀県臨床検査技師会 滋賀県臨床細胞学会 京都府臨床検査技師会 コースディレクター 真鍋 俊明(滋賀県立成人病センター研究所 所長) 講師 柳田 絵美衣(神戸大学医学部附属病院 病理部 先端組織染色センター) 古屋 周一郎(筑波大学附属病院 病理部) 三上 芳喜 (熊本大学医学部附属病院 病理部) 吉澤 明彦 (信州大学大学院医学研究科病態解析学講座) 西村 広健 (川崎医科大学附属病院 病院病理部) 座長 鈴木 悦 (NPO法人つくば臨床検査教育・研究センター) 所 嘉朗 (あいち小児保険医療総合センター 臨床検査部) 申込方法 参加をご希望の方はE-mailまたはFAXでお申し込みください。その時、タイトルを「第4回 病理技術向上講座参加申込み希望」とし、氏名、所属、連絡先住所、電話番号・FAX番号、E-mailアドレス、をお書き添えください。 確認後、詳細な案内を含む書類をお送り致します。 申込・問合せ先 〒524- 8524 滋賀県守山市守山5-4-30 滋賀県立成人病センター研究所井関知子 TEL: 077-582-6034 FAX:077-582-6041 E-mail: [email protected]
チラシ (PDF:312 KB)
第16回中国東北三省核医学学術年次総会(中国、黒竜江省、ハルビン市)にて、当研究所の東達也研究員が招待講演を行いました。
平成27年1月9日、第16回中国東北三省核医学学術年次総会がハルビン医科大学の主催にて行われ、当研究所の東研究員が下記のように招待講演を行いました。東研究員は、日本核医学会と中国の核医学会である中華医学会核医学分会との友好共同事業の一環として、中華医学会核医学分会から招待され、今回「Radioactive iodine therapy in Japan -The basics and clinical aspects-」(日本における放射性内用療法の現状と展望)と題して招待講演を行いました。招待講演では日本以外にも台湾からも2名の著明な核医学医が招かれ、100名を越える参加者があり、熱気に溢れた討議が行われました。中国における核医学の隆盛が感じられる会議でした。
また、東研究員は優れた講演を行ったとの功績を称えられ、「栄誉表彰」の表彰を受けました。
発表日 平成27年1月9日 学会名 中国東北三省 核医学学術年次総会 開催地 中国、黒竜江省、ハルビン市 発表形式 口演(招待講演) 演者 東達也(招待講演) 演題 Radioactive iodine therapy in Japan -The basics and clinical aspects- 要旨 アイソトープ治療(RI治療)は放射性同位元素を含んだ薬物を体内に投与することで、患部・腫瘍などに特異的に取り込まれた放射性同位元素が放出する放射線(おもにβ線)を用いて、身体の中から放射線治療を行う治療で、内照射や内用療法などとも言われている。分化型甲状腺癌に対する術後ヨウ素内用療法は、1940年代から行われている歴史ある治療であるが、放射線に対する教育が一般に普及しなかったことや放射線防護のために特別な入院病室が必要であるために、必ずしも一般化せず長年細々と行われてきた。 近年その有用性が再認識され、治療患者が急増しているが、病室不足のために国内の分化型甲状腺癌患者は、全国平均で半年程度の入院待ちを余儀なくされているという現状があり、大きな社会問題となっている。また、最近では東日本大震災とこれに続く東京電力福島第一発電所の事故の影響もあり、日本における放射線の医学利用にも逆風が吹いている。 これに対して、日本核医学会などの関連学会を中心として、数多くの対策が進められており、甲状腺腫瘍診療ガイドラインの出版、小中高 校への放射線教育用教科書の出版、放射線の理解を深める漫画の出版、福島における国際医療科学センターの設立構想などで、核医学や放射線の安全で価値のある利用に理解を深め、ヨウ素内用療法の診療可能な病床数の拡大を図る活動が進められている。これらの学会活動や我が国の臨床の現状などを簡単に紹介した。
東達也総括研究員が執筆の一部を担当した甲状腺癌を専門領域とする医師向けの教科書「甲状腺癌放射性ヨウ素内用療法アトラス」(医薬ジャーナル社)が発行されます。
医薬ジャーナル社が発行する甲状腺癌を専門領域とする医師向けの教科書「甲状腺癌放射性ヨウ素内用療法アトラス」(編:金沢大学医薬保健研究域医学系核医学絹谷清剛教授)が発行され、東達也総括研究員は総説をはじめとする執筆の一部を担当しました。
この放射性ヨウ素内用療法に関しては、学会が発行する治療ガイドラインなどはあったものの、これまで教科書などがなく、実際の症例での病状や画像、治療経過などに触れる機会が限られていたため、関係する領域の医師からは、教科書や症例集の発行が望まれてきました。この「甲状腺癌放射性ヨウ素内用療法アトラス」は、甲状腺癌の放射性ヨウ素内用療法に関する国内初の教科書で、この分野で著名な、金沢大学医薬保健研究域医学系核医学絹谷清剛教授が企画・編集し、執筆も担当され、ついに実現した教科書です。東研究員は国内における第一人者の一人として、総説から症例検討まで幅広い領域を担当しました。
発行日 2014年12月15日 書名 「甲状腺癌放射性ヨウ素内用療法アトラス」ISBN978-4-7532-2709-9 C3047 出版社 医薬ジャーナル社 編者 絹谷清剛 著者 東達也、小倉健吾、板坂聡、野口靖志、中駄邦博、絹谷清剛 内容 甲状腺癌は癌のなかでは頻度が少なく、一般に予後のよい癌として知られていますが、遠隔転移した場合には通常の抗がん剤が効かず、放射線しか治療法がありませんでした。放射性ヨウ素内用療法は分化型甲状腺癌に集積する放射性ヨウ素を経口投与して、身体の中から治療をする「内照射」と呼ばれる放射線治療の一種で、特に甲状腺癌の肺転移では唯一の治療法として使われてきました。 60年以上の歴史を持ち、安全で有効な治療である一方で、国内では治療可能な施設が限られているため、一般の医師の間でも治療の実際が十分に知られておらず、被ばくの問題などから敬遠されるケースもありました。また、専門の入院施設が不足しているため、遠隔転移患者の治療待ち時間が長期化するなど、地域格差や施設間格差なども含めた大きな社会問題となっています。 2010年には甲状腺腫瘍診療ガイドラインが出版され、国内でも甲状腺癌に対する治療体系は放射性ヨウ素内用療法も含めて再構築され、大きく変貌を遂げつつあります。今年、分子標的薬の一種「ソラフェニブ」が承認され、放射性ヨウ素治療抵抗性の根治切除不能な分化型甲状腺癌の転移病巣を対象として治療可能となり、治療法の選択肢が広がりました。 本アトラスは、甲状腺癌診療に携わる内分泌外科医、甲状腺外科医、耳鼻科医、腫瘍内科医、放射線治療医、核医学医らを対象に、一般にはまだまだ十分に知られていない甲状腺癌における放射性ヨウ素内用療法の実際を症例提示を中心にアトラス形式で紹介し、著効例、不応例、さらに判断の難しい例などを示し、放射性ヨウ素治療抵抗の実例から分子標的薬の適応を明確にするなど、国内の甲状腺腫瘍診療がさらに拡大・充実し、我が国がめざす「医療の均てん化」に寄与できることを目的としています。
第5回がん診療グランドセミナーで木下専門研究員が「がんの免疫療法」について講演しました。
発表日 平成26年11月27日 学会名 第5回がん診療グランドセミナー 開催地 滋賀県立成人病センター研究所 発表形式 口演 演者 木下和生専門研究員 演題 がんの免疫療法 要旨 今、がんの免疫療法が新しいがん治療の柱として注目を集めている。従来のがん細胞を標的とするがん治療薬とは異なり、がん細胞に集まるTリンパ球に作用し、患者自らが持つがんに対する免疫反応を高めることにより、がんを抑えこむ治療薬である。免疫寛容という免疫反応のブレーキ役を解き放つ効果を有する。このような抗体薬PD-1抗体が今年の7月、世界に先駆けて、切除不能な悪性黒色腫に対する治療薬として日本で認可された。PD-1は京都大学の演者が所属していた研究室で発見された分子であり、PD-1抗体は大学発の国産抗体医薬品として画期的である。本講義では免疫療法の歴史、理論、展望を概説する。
第27回名古屋PET症例検討会(安保ホール、名古屋市、愛知)にて、東総括研究員が教育講演を行いました。
第27回名古屋PET症例検討会において、東達也総括研究員が教育講演を行いました。名古屋PET症例検討会は愛知・岐阜を中心とする東海地方の核医学診断医が年3回集まり、興味あるPET症例を提示・検討する会で、核医学の振興を目的として行われている研究会です。東研究員は2008年より積極的に参加し、現在は世話人も務めています。今回は症例検討会に先立ち、「腫瘍FDG-PET 膵腫瘍性病変の読影ポイントについて」と題して、PET診断初学者の教育目的、ベテラン診断医の再教育目的の講演を行いました。膵癌を中心とする、嚢胞性膵疾患、内分泌性腫瘍、自己免疫膵炎などの、膵腫瘍性・非腫瘍性病変における、病理組織分類の変更、診療ガイドライン・ガイドブックの発刊、などの国内外の最新動向を紹介したうえで、PET診断上の注意点を挙げ、新時代に必要とされる読影診断のポイントとしてまとめて、教育・啓蒙を行いました。
発表日 平成26年11月21日 学会名 第27回名古屋PET症例検討会 開催地 安保ホール、名古屋市、愛知 発表形式 口演(教育講演) 演者 東達也総括研究員 演題 腫瘍FDG-PET 膵腫瘍性病変の読影ポイントについて 要旨 近年医学、医療の世界では、新しい疾患概念の確立、病理組織分類の変更、診断、診療の進歩に伴う診療体系の変更などを関係学会などが取りまとめた「診療ガイドライン」、「診療ガイドブック」などの刊行が国内外を問わず大変盛んになっている。これら最新の知見を遅れることなく把握し、最新の推奨される診断、診療を行うことは医師として当然の務めであるが、特に全身全ての疾患を相手にする診断医にとっては、広範な分野で日々刻々と変化する状況に追いつくことはなかなか簡単なことではない。 膵疾患の領域でも、膵癌を中心に、嚢胞性膵疾患、内分泌性腫瘍、自己免疫膵炎などの多くの疾患毎に、診療ガイドライン・ガイドブックの発刊などが相次いでおり、病理組織分類の変更も数年ご とにたびたび行われ、診断医にとっても混乱することが多くなっている。ここ3-4年に発表された膵臓疾患における最新の知見、診療ガイドライン・ガイドブックでの診断上の留意点などを改めて取り上げ、腫瘍FDG-PET における膵腫瘍性病変の読影ポイントとしてまとめたので、PET診断初学者はもとより、ベテラン診断医の皆さんにも再教育として役立てていただけるように、教育講演として発表する。
山内副所長らが執筆したアテローム硬化性脳主幹動脈閉塞性疾患の貧困灌流、血圧管理と5年再発率に関する論文がStroke誌にonline掲載されました。
掲載日 2014-11-13 掲載雑誌名 Stroke 2014; doi:10.1161/STROKEAHA.114.007134 著者 Hiroshi Yamauchi, Shinya Kagawa, Yoshihiko Kishibe, Masaaki Takahashi, and Tatsuya Higashi 表題 Misery Perfusion, Blood Pressure Control, and 5-Year Stroke Risk in Symptomatic Major Cerebral Artery Disease 要旨 【目的】症候性アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞性疾患患者で、貧困灌流を呈する患者は脳卒中再発リスクが高いが、厳格な血圧コントロールが再発リスクを低下させるかは明らかでない。本研究の目的は、1)貧困灌流を呈する患者の5年間の再発リスクを明らかにし、2)貧困灌流、経過観察中の血圧と再発リスクとの関係について検討することである。 【方法】症候性アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞性疾患患者130例を対象とし、PETを用いて脳循環動態評価を行ない、その後5年間内科的治療で経過観察した。血圧値は、イベント例ではその直前受診時のもの、イベント無し例は5年後のものを解析した。収縮期血圧値は、<130mmHg、130-149mmHg、150-169mmHg、>170mmHgの4群に分類した。 【結果】5年間の同側脳梗塞再発、および、全脳卒中発症は、貧困灌流(酸素摂取率増加かつ血流量/血液量比低下)がある群で、それぞれ、25.0% (4/16)と37.5% (6/16)であり、ない群の、3.5%(4/114)と13.1%(15/114) に比べて、有意に多かった(それぞれ、P<0.001とP<0.01)。 2年後以降、同側脳梗塞再発は著明に減少し、貧困灌流がない患者で1例発生したのみだった。血圧と脳卒中再発率との関係は灌流障害(血流量/血液量比低下)の有無で異なっていた(interaction、P<0.01)。灌流障害のある例(貧困灌流例を含む)では血圧<130mmHgで再発リスクが高く、灌流障害のない例では、130-149mmHgで再発リスクが最も低いJ-curve関係を呈した。 【結論】貧困灌流を呈する患者は5年再発リスクが高いが、5年再発リスクの大部分は2年後消失する。灌流障害のある患者(貧困灌流を含む)では、過度の降圧(<130mmHg)は再発リスクを高める可能性がある。
第54回日本核医学会学術総会において、加川信也主任研究員と東達也総括研究員をはじめとする当研究所の研究員が発表、編集会議参加等を行いました。
平成26年11月6-8日、第54回日本核医学会学術総会が行われ、当研究所の研究員が下記のように多くの発表、編集会議参加等を行いました。日本核医学会学術総会は日本核医学会の年に一度の学術総会で、核医学に関する研究・診療を行う医師が集う学会です。本年は、大阪大学の畑澤順教授が会長として大阪国際会議場にて開催となり、多くのシンポジウム、講演、ポスター展示などが行われ、また日本核医学会関連の多くの委員会活動などが行われました。
※以降は下記表記に読み替えて記載しています。
開催日 2014年11月7-9日 学会名 第54回日本核医学会学術総会 開催地 大阪国際会議場、大阪府大阪市 演題1 【シンポジウム:日本発、次世代認知症イメージング】新規アミロイドイメージング剤[18F]FPYBF-2の開発・臨床使用経験 演者 ○東達也1), 加川信也1), 山内浩1), 高橋昌章1), 岸辺喜彦1), 長濱康弘2), 小野正博3), 佐治英郎3), 石津浩一4), 西井龍一5) (1.滋賀県立成人病センター研究所, 2.滋賀成人セ老, 3.京大院薬, 4.京大人間健康, 5.宮崎大放) 要旨 [18F]標識のアミロイドイメージング製剤はすでに複数の製剤がFDA承認されたが、我々は独自製剤を用いたアミロイドイメージングの確立を目標に、ピリジルベンゾフランを母核とするF-18標識化合物5-(5-(2-(2-(2-Fluoroethoxy)ethoxy)ethoxy)benzofuran-2-yl)-N-methylpyridin-2-amine([18F]FPYBF-2)に着目し、臨床用合成装置を用いた標識合成検討を行い、品質検定、急性毒性試験、被ばく線量の推定等を経て、臨床使用に問題ないことを確認し、2013年3月薬剤委員会、倫理委員会の承認を得た。 健常ボランティア(n=72)や軽度認知障害や認知症患者(n=30)等を対象とした当センターでのfirst-in-man の臨床検討では現在のところ小脳を対照としたStandardized Uptake Value Ratio (SUVR)を用いて良好な結果を得ている。診断法としての確立を目指して、他製剤との比較検討や本薬剤独自の診断基準、自動VOI計測ソフト等の策定等も進めており、今後の臨床使用に向けて基礎的データを収集中である。 演題2 虚血性脳血管障害のイメージングを目的としたBenzyl [18F]Fluoroacetateの合成基礎検討 演者 ○加川信也1) 2), 水間広3), 西井龍一1) 4), 東達也1), 山内浩1), 長町茂樹4), 立石裕行3), 大野正裕3), 高橋和弘3), 尾上浩隆3), 川井恵一2) (1.滋賀成人セ研, 2.金沢大院, 3.理研CLST, 4.宮大医放) 要旨 我々は、これまでにAcetateをフッ素標識したPET診断薬[18F]Fluoroacetate ([18F]FACE)に着目し、臨床応用へ向けてtwo-pot蒸留法や新しい固相抽出技術を利用したone-pot蒸留法を用いた合成検討を行なってきた。さらに、ラット脳虚血-再灌流モデルにおいて[18F]FACEの取り込みとグリア細胞との関係について検討してきた。本研究では、虚血性脳血管障害の予後判定を目的とした画像診断の開発を目指し、脳への移行性を高めた[18F]FACE誘導体のBenzyl [18F]Fluoroacetate (Benzyl [18F]FACE)合成の基礎検討を行なった。 標識合成は、JFEエンジニアリング社製のカセット式多目的合成装置を用い、前駆体Benzyl Bromoacetateをアセトニトリルに溶解してK222/K[18F]Fを用いてフッ素化反応を行なった後、HPLCにて分離精製して製剤化した。目的物のBenzyl [18F]FACEは、合成時間1時間以内、収率40%以上で(10 GBq以上)得られた。また、ラット脳虚血-再灌流モデルにおける障害側へのBenzyl [18F]FACEの取り込みについて現在検討中である。 演題3 肝臓における有機アニオントランスポーター(OATP)イメージング剤[18F]PTV-F1の臨床使用に向けた合成 演者 西井龍一1) 2), ○加川信也2) 3), 東達也2), 山内浩2), 川井恵一3), 屋木祐亮4), 木村寛之4), 小野正博4), 佐治英郎4), 杉山雄一5) (1.宮大医放, 2.滋賀成人セ研, 3.金沢大医, 4.京大院薬, 5.理研イ推セ) 要旨 薬物代謝の主要部位である肝臓に存在し、肝取込みを行うトランスポーターであるOATP(organic anion transporting polypeptide)の機能は、薬物間相互作用や遺伝子多型によって個人差が生じ、その機能の解析は非常に有効と考えられる。今回、Pitavastatin(HMG-CoA還元酵素阻害薬)の誘導体であるF-18標識化合物([18F]PTV-F1)の臨床での使用に向けて、標識合成、品質評価、安全性評価を検討した。 [18F]PTV-F1の合成は、JFEエンジニアリング社製のカセット式多目的合成装置で行い、放射能:4.9±1.4 GBq、合成時間:80.2±6.2分、比放射能:197.2±49.3 GBq/μmol、収率:25.0±3.6%、放射化学的純度:98.1%以上であった。 また、放射性薬剤基準(2009年改定)を参考とした品質検定項目、さらに、急性毒性試験(有効成分、標識最終製剤)での安全性、体内分布実験からの算出被曝線量も問題ないことを確認した。現在、当センターでの薬剤委員会及び倫理委員会の承認を得て、正常ボランティアを対象として基礎検討を行っている。 演題4 自己組織化マップを用いた腫瘍患者の脳FDG画像解析の試み 演者 ○石津浩一1), 東達也2), 大石直也1), 山内浩2) (1.京大医, 2.滋賀成人病研) 要旨 筆者らは500名を超える脳FDG画像を用いて多変量解析を行いその結果を報告してきた。 【目的】今回、自己組織化マップ(SOM)の手法を導入し多数の脳FDG画像をクラスタ解析した結果を可視化することを目的とした。【 【方法】腫瘍検索目的で全身FDG-PET/CT検査を施行した症例中、脳および挙上上肢がPET画像とCT画像で位置ズレが認められない症例を選別した。複数回施行患者においては初回画像のみとすることで得られた脳FDG-PET画像521症例を対象とした。AAL法に基づき全脳を116の関心領域に分割し、各領域のFDG全脳集積比を算出した。この116個の変数を用いてSOM法で処理し、視覚的なクラスター分類を行った。 【結果】腫瘍FDG-PET患者の脳糖代謝画像を用いてSOM法による結果の2次元画像化が可能であった。提示された複数クラスタの画像的特徴および臨床的特徴に関して解析を進めたい。 演題5 自作線条体ファントムにおける至適再構成条件の決定 演者 ○藤田喜治1), 草野邦典1), 寺倉悟1), 高橋昌章2), 岸辺喜彦2), 橋本弘1) (1.滋賀県立成人病センター 放射線部, 2.滋賀県立成人病センター 研究所) 要旨 【背景および目的】現在 123I-FP-CIT における再構成条件は各施設で検討がなされており,明確な基準は示されていない。各施設,線条体ファントムを使用して画像再構成条件の検討を行っているのが現状である。 しかし,線条体ファントムを使用した場合,線条体の形状に由来する部分容積効果の影響を受け,その RI 濃度の測定に影響を与える。そのため,この効果の影響を受けないような大きさの Hot を封入した自作線条体ファントムにて至適画像再構成条件を決定することを本研究の目的とした。 【方法】線条体ファントムの外容器の中に,シリンジの外套利用した円柱状の Hot を封入し,自作線条体ファントムを作成した。作成した自作線条体ファントムを用いて SPECT 収集,減弱補正のための頭部条件による CT 撮影を行った。得られたデータを用いて散乱補正,X線 CT による減弱補正および Chang 法による減弱補正を行い,至適画像再構成条件を求めた。 【結果】散乱補正を行わずにX線 CT による減弱補正を行った場合,Hot 対 B.G 濃度比は大きく設定濃度比を下回った。また,散乱補正を行った場合においても Hot 対 B.G 濃度比は設定濃度比を下回った。均一減弱補正を使用した場合,X線CTによる減弱補正を基準とすると線減弱係数は散乱補正の有無にかかわらず μ=0.12cm-1が最適であった。
日本核医学会学術総会において、当研究所の共同研究員西井龍一先生が2014年久田賞銅賞および第一回日本核医学会リターニー奨励賞を受賞しました。
平成26年11月6-8日に行われた第54回日本核医学会学術総会にて、当研究所の共同研究員で現在宮崎大学医学部附属病院放射線科講師の西井龍一先生が2014年久田賞(Annals of Nuclear Medicine 論文賞)銅賞および第一回日本核医学会リターニー奨励賞を受賞しました。
西井龍一先生は米国留学後、2007年に帰国され、当研究所に専門研究員として2007年から2011年まで在籍され、その後宮崎大学医学部附属病院放射線科に異動されました。
今回受賞の2014年久田賞は日本核医学会の英文機関誌であるAnnals of Nuclear Medicine 誌(ANM誌)に2013年掲載された論文のうち、最も優れた3つの論文に対し授与されるもので、第3位の論文として2014年久田賞銅賞が与えられました。対象論文は西井先生が当研究所の画像研究部門に在籍中に行った新規アミノ酸系PET製剤MeAIBを用いた基礎・臨床研究をまとめたANM誌論文です。当研究所の研究員も共著者として論文作成に深く関わっており、当研究所の研究活動の高さを物語る受賞となりました。
また、日本核医学会リターニー奨励賞は日本から海外に留学し、帰国後核医学分野で活躍する若手研究者を奨励することを目的として本年度より新設された賞で、日本核医学会の活性化を図り、若手研究者の留学を推進し、帰国後の核医学の活動を推奨することを趣旨としたものです。西井先生は帰国後の当研究所および宮崎大学での優れた研究活動を認められ、栄えある初代受賞者となりました。
学会名 日本核医学会 表彰1 2014年久田賞(Annals of Nuclear Medicine 論文賞)銅賞 受賞者 西井龍一先生(現宮崎大学医学部附属病院放射線科講師) 対象論文 日本核医学会の英文機関誌 Ann Nucl Med. 2013 Nov;27(9):808-21. 著者 Nishii R, Higashi T, Kagawa S, Kishibe Y, Takahashi M, Yamauchi H, Motoyama H, Kawakami K, Nakaoku T, Nohara J, Okamura M, Watanabe T, Nakatani K, Nagamachi S, Tamura S, Kawai K, Kobayashi M. 表題 Diagnostic usefulness of an amino acid tracer, α-[N-methyl-11C]-methylaminoisobutyric acid ( 11C-MeAIB), in the PET diagnosis of chest malignancies. 要旨 新規に出現した胸部腫瘍(肺野腫瘍22例、縦隔腫瘍20例、両腫瘍17例)の良悪性鑑別を目的とした59例57患者を対象に検討した。疾患の内訳は肺癌19例、リンパ腫1例、その他の悪性腫瘍2例、サルコイドーシス15例、非特異的炎症性腫瘤18例、その他の炎症性変化4例。同一症例に対してFDGおよびMeAIBを用いたPETかPET/CTを一週間以内に一度ずつ行い、その診断能を比較対照した。 結果:MeAIBの集積は悪性疾患で良性疾患に比し有意に高かった(p<0.005)。 MeAIBの診断能は特異度73%、正診度81%と高く、FDG(特異度60%、正診度73%)よりも高かった。サルコイドーシスにおいてMeAIBは集積が低く(SUVmax平均1.8±0.7)、特異度80%と低値を示し、FDGでの高集積(SUVmax平均7.3±4.5)、特異度60%に比し、良好な診断能を示した。 結論:MeAIBを用いたPET/CTは胸部腫瘍の良悪性鑑別において有用で、高い特異度を有し良好な診断能を示した。CTやFDG-PET/CTにおいて診断に苦慮する場合、MeAIBを用いたPET/CTが診断精度を上げることが示唆された。 表彰2 第一回日本核医学会リターニー奨励賞 受賞者 西井龍一先生(現宮崎大学医学部附属病院放射線科講師) 受賞対象研究活動 I. テキサス大学MDアンダーソン癌センターで研究留学を行った。新規PET分子イメージング開発研究であり、創薬、生化学アッセイ、細胞実験、小動物実験そして前臨床試験としてサルや豚などの動物を用いたイメージング、薬物動態評価を行うトランスレーショナルリサーチに従事した。 II. 米国留学での経験を大いに生かし、新規画像診断薬開発の基礎及び臨床研究活動を行ってきた。下述する研究成果の大部分は滋賀県立成人病センター研究所にて実施したものである。 1. エピジェネティクス研究による癌および脳神経疾患分子標的PET診断法開発:科研費基盤B研究、第2回日本分子イメージング学会賞、米国核医学会優秀ポスター賞(脳神経部門2位)、日本分子イメージング学会優秀発表賞。 2.F−18 フルオロ酢酸PETの本邦初臨床応用。 3.システムAアミノ酸輸送(C-11 MeAIB)PETイメージングの基礎および本邦初の臨床応用研究:科研費挑戦的萌芽研究、科研費基盤B研究、呼吸機能イメージング研究会優秀演題賞、米国核医学会優秀ポスター賞(腫瘍診断部門1位)、日本核医学会2014久田賞銅賞。 4.その他、次世代認知症イメージング([18F]FPYBF-2)やマイクロドーズ臨床試験薬剤開発等のトランスレーショナルリサーチ/臨床研究。
東達也総括研究員が執筆の一部を担当した消化器病を専門とする医師向けの教科書「消化器病診療」(医学書院)の第2版が発行されました。
医学書院が発行する消化器病を専門とする医師向けの教科書「消化器病診療」の第2版(監修:一般財団法人日本消化器病学会、編集:消化器病診療(第2版)編集委員会)が発行され、東達也総括研究員は「III. 検査手技PET」と題した項目の執筆を担当しました。この「消化器病診療」は多忙な日常診療に携わる一般の消化器病専門医が、消化管・肝臓・膵臓・胆道系と多岐にわたり、日々進歩し広がり深まっていく消化器病疾患を網羅して、最新の知見に接することができるように創刊されたもので、一般財団法人日本消化器病学会の監修のもと刊行されています。
東研究員は消化器病の腫瘍PET診断の第一人者として、京都大学肝胆膵移植外科上本伸二教授、波多野悦朗准教授と共同で、腫瘍PET診断を中心とした消化器病疾患領域の核医学検査についての基礎と臨床、実診療上の留意点に関する項目の執筆を担当しました
発行日 2014年10月31日 書名 「消化器病診療」第2版ISBN978-4-260-02016-9 出版社 医学書院 著者 波多野悦朗、東達也、上本伸二 題名 III. 検査手技PET。 掲載ページ P294-296, 2014. 内容 フルオロデオキシグルコース(FDG)の腫瘍への集積を応用したのがPET(positron emission tomography)である。腫瘍細胞では一般に細胞膜上のグルコース輸送体であるグルコーストランスポーター(GLUT)が過剰発現し、腫瘍細胞内へのグルコースの取込みが促進し、また細胞質ではグルコースリン酸化酵素であるヘキソキナーゼが活性化しており、これに伴いグルコースの類似体であるFDG集積が腫瘍で亢進することにより、腫瘍診断画像が撮影可能となる。 肝細胞癌では大まかに高分化型はFDG集積が低く、低分化型は集積が高い傾向にある。このため、FDG集積が低いと予後が良く、集積が高いと予後が悪い傾向にあり、予後推定に用いられる。FDG-PET診断は肝外転移検出や再発診断に有用で、骨転移でも骨シンチに優先して用いられることが多い。食道癌、膵癌、大腸癌をはじめ、その他の消化器病腫瘍で有用である。
第4回地域ICT利活用連携シンポジウムを開催しました。
滋賀県では、先進医療機器と情報通信技術(ICT)の活用による広域連携事業を進めており、その一環として全県型遠隔病理診断ネットワーク事業を展開し、この度、システムの稼働を迎えたところです。
どこに住んでいても、誰もが至適な医療を受けられる社会にしていくためには、限りある医療資源を最大限に活用し、医療機関同士が連携または分担することで、無駄のない医療体制を構築する必要があります。ICT技術はこれを円滑に促進し得る手段となります。
地域医療の現場、遠隔病理診断の第一線でご活躍されています先生方の貴重な講演を聞く絶好の機会ですので是非ご参加ください。
タイトル 第4回地域ICT利活用連携シンポジウム 開催日時 平成26年10月18日(土)10時~17時15分 開催場所 コラボしが21(大会議室) (滋賀県大津市打出浜2-1) 参加費 無料 申込・問合せ先 〒524- 8524 滋賀県守山市守山5-4-30 滋賀県立成人病センター研究所井関知子 TEL: 077-582-6034 FAX:077-582-6041 E-mail: [email protected] 主催 滋賀県立成人病センター プログラム 第一部:シンポジウム『ICT利活用による地域医療の連携』10:00~ (1)「地域を支えつなぐ医療専門職等育成事業の現状とICT利活用の可能性」 滋賀県立成人病センター 山本 孝吉 先生 (2)「長浜におけるEHRを用いたコホート研究の促進(仮題)」 京都大学大学院情報学研究科 粂 直人 先生 (3)「人の輪をじっくり育むためのびわこメディカルネットの育て方」 滋賀医科大学医療情報部 永田 啓 先生 特別講演「遠隔病理診断に関わるプライバシー保護について(仮題)」 13:15〜 厚生労働省政策統括官付情報政策担当参事官室 中安 幸 様 第二部:シンポジウム『遠隔病理診断ネットワークの現状』 14:30~ (1)「新しい遠隔病理診断ネットワーク構築について(仮題)」 東北大学病院病理部 渡辺 みか 先生 (2)「三重県に於ける(遠隔)病理診断ネットワークの取り組みとその将来像(仮題)」 三重大学医学系研究科腫瘍病理学講座 白石 泰三 先生 (3)「東大病院遠隔病理診断室の現状とネットワーク構築構想」 佐々木 毅 先生 (4)「一般病院の立場からの滋賀県のさざなみ病理ネット」 済生会滋賀県病院 加藤 元一 先生
チラシ (PDF:567 KB)
日本生物学的精神医学会にて、谷垣健二研究室(神経病態研究部門)の鳥塚通弘先生(現所属奈良県立医科大学精神医学講座)が日本生物学的精神医学会学術賞と奈良医師会奨励賞をダブル受賞しました。
日本生物学的精神医学会は、統合失調症・気分障害・不安障害を初めとした精神疾患の、画期的な診断・治療法や発症・再発の予防法を開発することを目指して、病因・病態を生物学的方法で解明するため設立された学会です。今回、谷垣健二研究室(神経病態研究部門)の鳥塚通弘先生が日本生物学的精神医学会学術賞と奈良医師会奨励賞をダブル受賞しました。
対象論文は2013年にPNAS誌に掲載された下記の論文で、精神医学領域の発展に貢献する研究成果であることを称えられ、今回表彰を受けました。谷垣専門研究員が医学的貢献度の高い論文を執筆したことの証であり、大変名誉ある賞です。
学会名 日本生物学的精神医学会 表彰 日本生物学的精神医学会学術賞・奈良医師会奨励賞 受賞者 鳥塚通弘 要旨 PNAS誌に発表されたDeficits in microRNA-mediated Cxcr4/Cxcl12 signaling in neurodevelopmental deficits in a 22q11 deletion syndrome mousemodelが精神医学領域の発展に貢献する功績であることを称え表彰する。 対象論文 Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 110(43):17552-7. 表題:Deficits in microRNA-mediated Cxcr4/Cxcl12 signaling inneurodevelopmental deficits in a 22q11 deletion syndrome mouse model. 著者: Toritsuka M, Kimoto S, Muraki K, Landek-Salgado MA, Yoshida A,Yamamoto N, Horiuchi Y, Hiyama H, Tajinda K, Keni N, Illingworth E, IwamotoT, Kishimoto T, Sawa A, Tanigaki K. http://www.pnas.org/content/110/43/17552.full.pdf+html?with-ds=yes
谷垣健二専門究員が第36回日本生物学的精神医学会にてシンポジウム GABA作動性介在ニューロンの異常と総合失調症にて座長を務め、シンポジストとして参加し発表しました。
このシンポジウムは、統合失調症死後脳研究においてGABA作動性介在ニューロン異常が多く認められることを踏まえ、基礎研究と臨床研究の双方の視点から、介在ニューロンと統合失調症発症のメカニズムを考察することを目的として開催されました。
ヒトの遺伝学的解析により同定された統合失調症脆弱性遺伝子の遺伝子改変動物を用いたGABA作動性介在ニューロンの発生異常・機能異常が谷垣専門研究員、鳥塚通弘先生、田村英紀先生(先端生命科学研究センター)から報告された。また、ピッツバーグ大学の紀本創平先生らは、ヒト統合失調症死後脳研究により、転写因子Zif268によるGABA産生酵素GAD67 発現調節の可能性を、九州大学精神病態医学講座の鬼塚俊明らは脳磁図研究によってヒト統合失調症者のGABA機能に異常があることを報告しました。
遺伝学的解析だけでなく、ヒトの死後脳研究からも統合失調症解明への新たな手掛かりが提示されたこと、ヒトの統合失調症と統合失調症モデル動物で類似性の高い神経生理学的所見が認められることは非常に興味深く、活発な議論、情報交換が行われました。
発表日 2014年10月1日 学会名 第36回日本生物学的精神医学会 開催地 奈良 発表形式 シンポジウム口演 演者 谷垣健二 演題 Comt-mediated regulation of GABAergic system in a 22q11 deletion syndrome model mice. 要旨 22q11.2 microdeletion is one of the highest genetic risk factors for schizophrenia. It is not well understood which interactions of deleted genes in 22q11.2 regions are responsible for the pathogenesis of schizophrenia, but catechol-O-methytransferase (COMT) is amongst the candidates. Df1/+ mice, which are 22q11.2 deletion syndrome (22q11DS) model mice with a hemizygous deletion of 18 genes in the 22q11-related region. Df1/+ mice showed enhanced response to the dopamine D1 agonist, SKF38393, and the NMDA antagonist, MK801, which can be normalized by a GABAA receptor agonist, bretazenile or a GABAA alpha2/3 receptor agonist, SL651498. Here, we demonstrated the curing effects of virus-mediated-reintroduction of Comt, to the prefrontal cortex (PFC) in Df1/+ mice. In contrast, both Comt overexpression and Comt inhibition caused an abnormal responsiveness to Bretazenile, a GABAA receptor agonist in control mice. Comt overexpression increased MK801-induced interneuronal activation and GABA release in the PFC. Our data suggest that Comt-mediated regulation of GABAergic system might be involved in the behavioral pathogenesis of Df1/+ mice.
東達也総括研究員が執筆の一部を担当した肝臓病を専門とする医師向けの教科書『HEPATOLOGY PRACTICEシリーズ第5巻「肝癌の診療を極める―基本から最前線まで―」』(文光堂)が発行されました
文光堂が発行する肝臓病を専門とする医師向けの教科書「HEPATOLOGY PRACTICEシリーズ」の第5巻「肝癌の診療を極める―基本から最前線まで―」が発行され、東達也総括研究員は「II. 診断編核医学検査」と題した項目の執筆を担当しました。この「HEPATOLOGY PRACTICEシリーズ」は医学の進歩により転換期を迎えた肝臓病診療と研究の現状を整理し、今後の動向を展望する目的で創刊されたもので、大阪大学竹原徹郎教授、埼玉医科大学持田智教授を常任編集として、シリーズ化し刊行されています。
東研究員は肝胆膵領域の腫瘍PET診断の第一人者として、京都大学肝胆膵移植外科波多野悦朗准教授と共同で、腫瘍PET診断を中心とした肝癌の核医学検査についての基礎と臨床、実診療上の留意点や最新研究に関する項目の執筆を担当しました。
書名 HEPATOLOGY PRACTICEシリーズ第5巻「肝癌の診療を極める―基本から最前線まで―」ISBN978-4-8306-1894-9 出版社 文光堂 著者 東達也、波多野悦朗 題名 II. 診断編核医学検査 掲載ページ P75-78, 2014. 内容 腫瘍細胞でのグルコース代謝を司るグルコース輸送体、グルコースリン酸化酵素、脱リン酸化酵素などの理解がFDG集積を評価する上で重要である。肝細胞癌では大まかに高分化型はFDG集積が低く、低分化型は集積が高い傾向にある。このため、FDG集積が低いと予後が良く、集積が高いと予後が悪い傾向にあり、予後推定に用いられる。FDG-PET診断は肝外転移検出や再発診断に有用で、骨転移でも骨シンチに優先して用いられることが多い。FDG-PET診断はCT等でも診断困難な経動脈的化学塞栓療法後や分子標的薬治療後の腫瘍評価にも有用である。
日本核医学会の英文機関誌であるAnnals of Nuclear Medicine 誌にて、東達也総括研究員が2013年最多被引用論文賞を受賞しました。
日本核医学会の英文機関誌であるAnnals of Nuclear Medicine 誌(ANM誌)は、国内の臨床医学会の機関誌としては数少ない1点を超えるインパクトファクター(IF: 1.507)を有する英文機関誌で、国内を代表する放射線医学雑誌です。今回、東総括研究員はANM誌掲載論文として、2013年最多被引用論文賞を受賞しました。対象論文は2003年にANM誌に掲載された下記のreview論文で、これまで過去10年間にわたり高い評価を受けてきましたが、今回2013年も世界の医学雑誌に数多く引用され、その一年間の被引用回数が過去に掲載された全てのANM誌掲載論文のうち最多であることを称えられ、今回表彰を受けました。東総括研究員が医学的貢献度の高い論文を執筆したことの証であり、大変名誉ある賞です。
学会名 日本核医学会 表彰 Annals of Nuclear Medicine 誌、2013年最多被引用論文賞 受賞者 東達也 要旨 ANM誌掲載論文において、2013年世界の医学雑誌に数多く引用され、一年間の被引用回数が過去に掲載された全てのANM誌掲載論文のうち最多であったことを評し、ANM誌の発展と核医学の進歩に貢献した功績を称え表彰する。 対象論文 Ann Nucl Med. 2003 Jun;17(4):261-79. 表題: Diagnosis of pancreatic cancer using fluorine-18 fluorodeoxyglucose positron emission tomography (FDG PET) --usefulness and limitations in ”clinical reality”. 著者: Higashi T, Saga T, Nakamoto Y, Ishimori T, Fujimoto K, Doi R, Imamura M, Konishi J. http://www.jsnm.org/files/paper/anm/ams174/ANM17-4-01.pdf
山内副所長が第33回The Mt.Fuji Workshop on CVDで発表しました。
開催日 2014年8月30日 学会名 第33回The Mt.Fuji Workshop on CVD 開催地 盛岡 発表形式 ランチョンセミナー 口演 演者 山内浩 演題 脳循環障害重症度評価の有効性 - COSSの結果を受けて- 要旨 アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞症患者の脳梗塞再発リスクは,脳循環障害重症度を,PETにより貧困灌流を,あるいは,SPECTにより血流量低下かつ血管拡張能低下を検出することで評価できる.この脳循環障害評価の有効性は,脳循環障害重症度に基づいた治療方針決定が,予後を改善することを示すことで,証明される必要がある. そこで,高度脳循環障害患者を選別し,バイパス手術の脳梗塞再発予防効果を評価するランダム化比較試験が,本邦と米国で開始された.本邦でのSPECTを用いた研究 (JET study)は2004年に終了し,バイパス手術の脳梗塞再発予防効果が証明された.この結果をふまえて,本邦では,脳循環障害評価に基づいてバイパス手術が選択されている. そんな中,2010年6月,米国でのPETを用いた研究{Carotid Occlusion Surgery Study (COSS)}が,バイパス手術の脳梗塞再発予防効果を証明できず,早期中止された.周術期再発が,COSSでは多く,JET studyでは無いことが,異なった結果をもたらした.脳循環障害評価の有効性は,熟達した脳外科医による周術期合併症のない手術によってのみ保証される. 一方で,内科治療の進歩した近年でも,高度脳循環障害は再発リスクとして重要であり,治療のターゲットとなることも明らかとなった.COSSの付随研究として,内科治療に比べ,バイパス手術が認知機能を改善するかを検討するランダム化比較試験 (RECON trial)が行なわれたが,やはり,手術の有効性は証明されなかった.さらに,COSS内科群の検討から,貧困灌流患者でも経過観察中の血圧値が低いと再発が少ないという結果も報告され,議論を呼んでいる.本講演では,脳循環障害重症度評価の有効性について,COSSの結果をふまえて考察したい.
加川主任研究員がPETサマーセミナー2014にて講演しました。
PETサマーセミナー2014の『これからの臨床PET薬剤~ケミストからの提案~』というセッションにおいて、加川主任研究員が「[N -methyl-11 C]MeAIBを用いたアミノ酸イメージング」と題して、本邦初のPET製剤である[11 C]MeAIBの基礎実験、合成、臨床及び現在行なっている18 F標識したMeAIBの合成等について、滋賀県立成人病センター研究所の現状を紹介しました。いかに科学的かつ効率的にPET薬剤の臨床展開を進めるかをキーワードにPET薬剤合成の基礎を紹介した講演で、聴講された方々からも「大変勉強になりました」との評価を戴きました。
※以降は下記表記に読み替えて記載しています。
開催日 2014年8月29日~31日 学会名 PETサマーセミナー2014 開催地 北海道小樽市 演題 [N-methyl-11C]MeAIBを用いたアミノ酸イメージング 演者 加川信也
山内副所長が第5回日本血管性認知障害研究会で発表しました。
開催日 2014年8月23日 学会名 第5回日本血管性認知障害研究会 開催地 京都 発表形式 コーヒーブレイクセミナー 口演 演者 山内浩 演題 脳主幹動脈閉塞性疾患における血行力学的脳虚血と認知機能障害 要旨 脳主幹動脈(内頸または中大脳動脈)閉塞性疾患では、脳梗塞による局所脳機能障害以外に、低灌流が原因となり認知機能障害が生じる。 その機序として、1)脳組織障害を生じるよりも軽度の脳虚血によりおこる脳代謝障害、2)脳組織すべてが壊死に陥る脳梗塞が生じるよりも軽度の脳虚血によりおこる神経細胞に選択的な障害、の2つが考えられる。その直接評価はMRI等の形態画像では困難であったが、近年、脳循環動態評価法が普及し、また、大脳皮質神経細胞表面に存在する中枢性benzodiazepine受容体密度測定による神経細胞障害の定量的評価も可能になった。 その結果、脳循環動態や大脳皮質神経細胞障害と認知機能障害の定量的検討がなされつつある。本講演では、低灌流そのもの、および、その結果として生じる大脳皮質神経細胞障害と認知機能障害との関連について述べ、血行再建術による認知機能障害の治療や予防の可能性について議論する。
第2回ベトナム放射線技師会総会学術大会にて高橋専門員が講演を行いました。
平成26年8月22日、第2回ベトナム放射線技師会総会学術大会(2nd Annual Vietnam Conference of Radiological Technologists)が開催され高橋専門員が講演を行いました。
2005年よりJICA草の根協力事業を滋賀県放射線技師会と締結し、ベトナムにおける放射線技術の技術協力を行っており、その一環として、技術レベルの底上げを目的に学術大会が開催され、今回第2回学術大会においてPETを中心とした核医学の現状についての講演を行いました。本学会には、ベトナム国内をはじめマレーシア、カンボジアなど東南アジア諸国からの参加者もあり、また、ベトナム医学放射線学会との合同開催でもあり、数百人の参加者があり熱気に溢れた討論が行われた。
発表日 2015年8月22日 学会名 第2回ベトナム放射線技師会総会学術大会 開催地 ベトナムブンタウ市(Vung Tau City) 発表形式 口演(指名講演) 演題 Highlight and new topics in PET-CT in Japan - Pitfalls in the FDG imaging - 演者 高橋昌章 要旨 日本におけるPET-CT検査の実情などについて述べた。画像診断機器のなかでのPET-CT装置の長所や短所、技術的なピットフォールとそれを克服する新しい技術について紹介し、また核医学画像の定量化を行う上で機器の調整の重要性、被ばく低減に努めていかなければならないことなどについて述べた。
第121回核医学症例検討会にて、東達也総括研究員が発表しました。
第121回核医学症例検討会において、東達也総括研究員が「末梢骨に骨転移が疑われた1症例」と題して症例検討の発表を行いました。核医学症例検討会は、核医学検査の教育、啓蒙、発展などを目的とした、関西地区を中心とする核医学施設が合同で年二回開催する症例検討会です。東研究員は今回も症例提示の依頼を受け、発表を行いました。
開催日 2014年8月9日 学会名 第121回核医学症例検討会 開催地 ホテル ホップインアミング、尼崎市、兵庫県 演題 末梢骨に骨転移が疑われた1症例 演者 東達也 要旨 末梢骨に骨融解を伴う病変を認め、単発性の骨転移が疑われた症例の全身腫瘍FDG-PET/CT像を提示した。骨融解を伴う病変の鑑別診断を行い、代謝性疾患や腫瘍性疾患を網羅して、検討を行った。
加川主任研究員が第4回フッ素化学会にて講演しました。
第4回フッ素化学若手の会において、加川主任研究員が、「F-18放射性フッ素を用いた新規PET薬剤の開発」と題して、本邦初のPET製剤である酢酸をフッ素標識した[18 F]FACEの合成や臨床等について、滋賀県立成人病センター研究所の現状を紹介しました。フッ素化学の基礎とも言えるフルオロ酢酸とPETの基礎を紹介した講演で、フッ素化学者の方々から大きな反響がありました。
開催日 2014年8月7日 学会名 第4回フッ素化学若手の会 開催地 静岡県浜松市 演題 F-18放射性フッ素を用いた新規PET薬剤の開発 演者 加川信也
第49回滋賀県立成人病センター研究所セミナーを開催しました。
タイトル 第49回滋賀県立成人病センター研究所セミナー 開催日時 2014年7月25日(金)18時00分~19時00分 開催場所 滋賀県立成人病センター研究所会議室 演題 麻疹ウイルスの持続感染メカニズムの解明 演者 土井 知光 先生(東京大学医科学研究所 実験動物研究施設特任助教) 要旨 急性感染症である麻疹を起こす麻疹ウイルスは中枢神経系での持続感染の末に亜急性硬化性全脳炎を発症させることがある。また麻疹ウイルスの持続感染は、麻疹発症後の免疫抑制状態や麻疹に対する終生免疫への関与も示唆されている。しかし、麻疹ウイルスの持続感染機構は不明な点が多い。試験管内での麻疹ウイルス持続感染モデルを用いた持続感染と自然免疫応答回避機構の解析を紹介する。 連絡先 木下 和生
第61回米国核医学会総会において、加川信也主任研究員と東達也総括研究員をはじめとするPET画像研究部門グループが発表しました。
2014年6月7日から11日まで開催された第61回米国核医学会総会において、加川信也主任研究員と東達也総括研究員をはじめとするPET画像研究部門グループが発表を行いました。世界初のPET薬剤であるFPYBF-2(アミロイドイメージング剤)についての基礎及び臨床研究と、MeAIBの臨床研究の3演題の発表です。
開催日 2014年6月7日から6月11日 学会名 SNMMI(Society of Nuclear Medicine and Molecular Imaging;第61回米国核医学会議) 開催地 セントルイス(アメリカ) 演題1 Radiosynthesis of [18F]FPYBF-2, a Novel PET Imaging Probes for β-Amyloid Plaques in Brain. 演者1 Shinya Kagawa1, 2, Ryuichi Nishii3, Tatsuya Higashi1, Hiroshi Yamauchi1, Keiichi Kawai2, Hiroyuki Watanabe4, Hiroyuki Kimura4, Masahiro Ono4, Hideo Saji4 1) Shiga Medical Center Research Institute, 2) Graduate School of Medical Science, Kanazawa University, 3) Department of Radiology, Faculty of Medicine, University of Miyazaki, 4) Graduate School of Pharmaceutical Sciences, Kyoto University 演題2 In vivo imaging of beta-amyloid plaques in human brain using positron emission tomography and a novel 18F-labeled benzofuran derivative, FPYBF-2. A pilot study in healthy volunteers and patients with dementia. 演者2 Tatsuya Higashi1, Shinya Kagawa1, Hiroshi Yamauchi1, Masaaki Takahashi1, Yoshihiko Kishibe1, Yasuhiro Nagahama2, Masahiro Ono3, Hideo Saji3, Koichi Ishizu4, Ryuichi Nishii5 1) Shiga Medical Center Research Institute, 2) Department of Geriatrics, Shiga Medical Center, 3) Patho-Functional Bioanalysis, Graduate School of Pharmaceutical Science, Kyoto University, 4) Human Health Science, Graduate School of Medicine, Kyoto University, 5) Department of Radiology, Miyazaki University, 演題3 Evaluation of aggressiveness in prostate cancer using 11C-MeAIB PET/CT, 18F-FDG PET/CT, and MR imaging. 演者3 Maya K. Arimoto1, Tatsuya Higashi2, Ryuichi Nishii3, Shinya Kagawa2, Masaaki Takahashi2, Yoshihiko Kishibe2, Hiroshi Yamauchi2, Hiroyuki Oonishi4, Yuji Nakamoto1 1) Department of Radiology, Kyoto University, 2) Shiga Medical Center Research Institute, 3) Department of Radiology, Miyazaki University, 4) Department of Urology, Shiga Medical Center 要旨 世界初のPET薬剤である[18F]FPYBF-2の研究(京都大学との共同研究)であり、基礎から臨床応用に関わる発表2演題(標識合成及び安全性の確立、正常健常ボランティアと患者を対象にした臨床検討)と[11C]MeAIBの前立腺癌患者を対象にした臨床研究です。第1題は、自動合成装置による[18F]FPYBF-2合成法の開発で、簡便で高品位な薬剤の得ることが可能であり、品質検定・急性毒性試験(有効成分、標識最終製剤)での安全性・体内分布実験からの算出被曝線量も、臨床使用に問題ないことを確認しました。 第2題は、正常健常ボランティアとアルツハイマー病患者を対象にした検討で、新規PET薬剤[18F]FPYBF-2のヒトでの臨床使用初期経験を詳細に報告しました。第3題は、本邦初のPET薬剤[11C]MeAIBを用いた前立腺癌患者を対象にした検討であり、[18F]FDGとの比較を報告しています。これらの演題により、滋賀県立成人病センターでの[18F]FPYBF-2を用いたアミロイドイメージング研究が日本をリードしており、今後の研究成果が期待される内容でありました。
滋賀県立成人病センター第53回がん診療セミナーにて、高橋専門員、加川主任研究員、東総括研究員が教育講演を行いました。
第53回がん診療セミナーは「がん診断における核医学」をテーマとして、おもに医療関係者を中心とした教育目的の3つの講演が行われました。核医学診療の準備から実施にいたる核医学の診療の実際を紹介したうえで、放射線被ばくに関しても簡単なレクチャーも行い、がん診療に携わる医療関係者への教育・啓蒙を行いました。
開催日 2014年5月29日木曜日 学会名 滋賀県立成人病センター 第53回がん診療セミナー 開催地 成人病センター研究所講堂、守山市、滋賀 発表形式 口演(教育講演) 演者1 高橋昌章専門員 演題1 核医学検査における臨床上の注意点と被ばく 演者2 加川信也主任研究員 演題2 医療用小型サイクロトロンを用いたPET用放射性薬剤の製造 演者3 東達也総括研究員 演題3 PETを中心とした腫瘍核医学診断
山内副所長が第55回日本神経学会学術大会で発表しました。
開催日 2014年5月23日 学会名 第55回日本神経学会学術大会 開催地 福岡 発表形式 ポスター発表 演者 山内浩 共同演者 東達也、加川信也、岸辺喜彦、高橋昌章 演題 脳循環動態に基づいた症候性アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞性疾患患者の血圧管理 要旨 【目的】症候性アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞性疾患患者において、脳循環障害の重症度は脳卒中再発リスクと関連しており、治療方針も重症度に基づき決定されるべきである。本邦では、バイパス手術の適応が、重度脳循環障害の有無により決定される。しかし、脳循環動態に基づいた内科的治療方針は明らかではない。本研究では、血圧と脳卒中リスクの関係が、脳循環障害の有無により異なるか観察研究し、脳循環動態に基づいた血圧管理法を探索した。 【方法】症候性アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞性疾患患者で、PETを用いた脳循環動態評価を行ない内科的治療で経過観察した130例を対象とした。灌流障害(血流量/血液量比低下)の有無、経過観察中の外来診察室血圧値と、2年間の脳卒中再発率との関係をCox比例ハザードモデルを用いて解析した。血圧値は、イベント例ではその直前受診時のもの、イベントが無かった例は2年後のものを解析した。 収縮期血圧値は、<130mmHg、130-149mmHg、150-169mmHg、>170mmHgの4群に分類した。 【結果】病変血管支配域の再発は、収縮期血圧値と負相関し、その他の領域の再発は、血圧値と正相関した。血圧<130mmHg群は、>130mmHg群に比べて血管支配域脳梗塞再発リスクが有意に高く、灌流障害あり群でも、なし群に比べてリスクが高かった。多変量解析では、血圧<130mmHgと灌流障害ありが、独立した血管支配領域脳梗塞再発の予測因子であった。 全脳卒中再発と収縮期血圧の関係は、灌流障害あり群では負相関,なし群では正相関し、有意に異なっていた。その結果、全症例では、130-149mmHgで脳卒中リスクが最も低いJ-curve関係を呈した。 【結論】経過観察中の血圧と脳卒中再発の関係は、灌流障害の有無で異なっていた。灌流障害のある例では血圧低値で再発リスクが高く、過度の降圧は避ける必要がある。灌流障害の有無の正確な評価が、脳主幹動脈閉塞性疾患患者の血圧管理に必須である。
加川主任研究員が第9回日本分子イメージング学会総会にて発表しました。
開催日 2014年5月22日 学会名 第9回日本分子イメージング学会総会 開催地 豊中市 演者 加川信也1) 2)、矢倉栄幸3)、西井龍一4)、東達也1)、山内浩1)、入野保5)、川井恵一2)、屋木祐亮6)、木村寛之6)、前田和哉7)、楠原洋之7)、小野正博6)、佐治英郎6)、杉山雄一8) 1)滋賀県立成人病センター研究所、2)金沢大学大学院医学研究科、3)住重加速器サービス、4)宮崎大学医学部放射線科、5)滋賀県立成人病センター、6)京都大学大学院薬学研究科、7)東京大学大学院薬学系研究科、8)理化学研究所・イノベーション推進センター 演題 肝臓における有機アニオントランスポーター(OATP)イメージング剤[18F]PTV-F1合成法の検討 要旨 薬物代謝の主要部位である肝臓に存在し、肝取込みを行うトランスポーターであるOATP(organic anion transporting polypeptide)の機能は、薬物間相互作用や遺伝子多型によって個人差が生じる。従って、PETによるその機能の定量解析は非常に有効と考えられる。 本検討では、Pitavastatinの誘導体である(3R,5S,6E)-7-[2-cyclopropyl-4-(4-(2-[18F]fluoroethoxy)phenyl)quinolin-3-yl]-3,5-dihydroxyhept-6-enoic acid([18F]PTV-F1)の臨床使用に向けた標識合成を行ったので報告する。
第48回滋賀県立成人病センター研究所セミナーを開催しました。
タイトル 第48回滋賀県立成人病センター研究所セミナー 開催日時 2014年4月18日(金)18時00分~19時00分 場所 滋賀県立成人病センター研究所会議室 演題 神経細胞の恒常性維持機構と精神疾患 演者 友田利文先生(京都大学医学研究科メディカルイノベーションセンターCNS制御薬研究ラボTKプロジェクト) 要旨 神経細胞の正常な機能発現のためには、細胞内小胞輸送を介して、神経伝達物質やその受容体が時間空間的に適切に配置されることが必要である。近年、軸索輸送のメカニズムの研究から、この輸送制御に関わる分子群に精神神経疾患に関与することが明らかとなっているタンパクが複数同定されている。 我々は軸索輸送制御の障害が精神疾患の病態生理の一部を説明できるのではないかという仮説に基づき、特に、神経細胞の恒常性維持に大切なオートファジー(自食)という現象に着目して、新たな精神疾患治療の可能性を探っている。ショウジョウバエやマウスのモデル動物の特徴を生かし、薬理学、行動学を組み合わせた精神疾患研究への我々の取り組みを今回紹介させていただく。 連絡先 谷垣 健二