加川主任研究員が日本薬学会第134年会にて発表しました。
開催日 2014年3月27-30日 学会名 日本薬学会第134年会 開催地 熊本県熊本市 演題 固相抽出法による製剤化技術を用いた新規アミロイドイメージング剤[18F]FPYBF-2の合成検討 演者 加川信也 共同演者 加川信也、矢倉栄幸、西井龍一、東達也、山内浩、川井恵一、渡邊裕之、木村寛之、小野正博、佐治英郎 要旨 【目的】これまで、我々は様々なアミロイドイメージング剤の候補化合物を検討し、その中でもピリジルベンゾフランを母核とするF-18標識化合物([18F]FPYBF-2)のアミロイドイメージング剤としての有用性を報告してきた(Ono et al., J Med Chem, 54, 2971-9 2011)。そこで、今回[18F]FPYBF-2の臨床での使用に向けて、固相抽出法による製剤化技術を用いた合成、品質評価、安全性評価を検討した。 【方法】[18F]FPYBF-2の合成は、JFEテクノス社製のキット式多目的合成装置で、合成前駆体2-(2-(2-((2-(6-((tert-butoxycarbonyl)(methyl)amino)pyridin-3-yl)benzofuran-5-yl)oxy)ethoxy)ethoxy)ethyl methanesulfonateを用いて行った。フッ素化反応後、塩酸にて加水分解を行い、HPLCを用いて精製した。 最終製剤化工程では、固相抽出によって得られた[18F]FPYBF-2を含むエタノールを生理食塩水で希釈する方法によって合成した。さらに、放射性薬剤基準を参考とした品質検定項目(放射化学的純度・比放射能・残留有機溶媒等)、安全性試験、被曝線量評価等も行った。 【結果・考察】固相抽出法による製剤化技術を用いた[18F]FPYBF-2の合成は、従来のロータリーエバポレーターを用いて溶媒を蒸発乾固させる方法より合成の準備・後片付けが非常に簡便化される利点があり、放射能:13.9±1.7 GBq、合成時間:61.2±0.4分、比放射能:338.7±50.9 GBq/µmol、収率:48.6±3.7%、放射化学的純度:99.6%以上であった。また、放射性薬剤基準を参考として、[18F]FPYBF-2の品質検定を行った結果、特に問題を認めなかった。 さらに、急性毒性試験(有効成分、標識最終製剤)および被曝線量も、臨床使用に問題ないレベルであった。当センターでは、薬剤委員会及び倫理委員会の承認をすでに得て[18F]FPYBF-2の健常ボランティア試験を終えており、認知症患者を対象にした検討を行っている。
顕微鏡とレーザーを使って切除した微小組織から遺伝子を取り出す方法についての特許を取得しました。
木下和生専門研究員はレーザーマイクロダイセクション(顕微鏡で観察しながらレーザー光線で切り取った組織から遺伝子を回収する方法)についての新規技術を開発し、特許を取得しました。
動物の組織は様々な種類の細胞で構成されています。医学生物学研究の分野では、顕微鏡を用いて初めて観察することができるほどの微小な構造を他の構造から切り分け、そこに含まれる遺伝子を解析するためのレーザーマイクロダイセクションという方法が既に開発されていました。従来の方法では、組織を回収するという目的のため、通常の顕微鏡観察に不可欠なカバーガラスを使用することができません。そのため、色合いや細胞内部の詳細を観察することができず、目的とする構造が見つけにくいという問題がありました。木下専門研究員は肺がんの研究を行う中、この問題に直面し、レーザーで切断できるカバーガラス代替品(油性封入剤)を開発しました。その結果、細胞形態の観察と組織回収を両立させることができるようになりました。油性封入剤には組織を観察しやすくするだけでなく、含まれる分子を分解から保護するという作用もあることがわかりました。
本技術は医学生物学研究だけでなく、癌の遺伝子診断にも応用可能な技術です。この技術を世の中で広く役立ててもらうため、平成23年3月30日特許を申請し、平成26年2月7日特許庁に登録されました。
【特許出願公開番号】特開2012-205572
【発明の名称 】レーザーマイクロダイセクション法およびその利用、並びに、油性封入剤
【出願人】滋賀県
【発明者】木下和生(滋賀県立成人病センター研究所)
山内副所長が第39回日本脳卒中学会総会でシンポジストとして発表しました。
シンポジウム「画像診断・解析に基づいた脳卒中医療」において、PET診断にもとづいて 血圧管理法を個別化する必要性について、私たちの研究を中心に発表しました。
開催日 2014年3月15日 学会名 第39回日本脳卒中学会総会 開催地 大阪 発表形式 シンポジウム口演 演者 山内浩 演題 脳循環障害の重症度評価に基づいたアテローム硬化性脳主幹動脈閉塞性疾患患者の血圧管理 要旨 【目的】PETで脳循環障害の程度を評価し、その後の脳卒中発症リスクと血圧の関係が、脳循環障害の有無により異なるか検討した。 【方法】症候性アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞性疾患患者で、PETを用いた脳循環動態評価を行ない内科的治療で経過観察した130例を対象とした。灌流障害(血流量/血液量比低下)の有無、経過観察中の外来診察室血圧値と、2年間の脳卒中再発率との関係をCox比例ハザードモデルを用いて解析した。 血圧値は、イベント例ではその直前受診時のもの、イベントが無かった例は2年後のものを解析した。収縮期血圧値は、<130mmHg、130-149mmHg、150-169mmHg、>170mmHgの4群に分類した。 【成績】病変血管支配域の再発は、収縮期血圧値と負相関し、その他の領域の再発は、血圧値と正相関した。血圧<130mmHg群は、>130mmHg群に比べて血管支配域脳梗塞再発リスクが有意に高く、灌流障害あり群でも、なし群に比べてリスクが高かった。多変量解析では、血圧<130mmHgと灌流障害ありが、独立した血管支配領域脳梗塞再発の予測因子であった。 全脳卒中再発と収縮期血圧の関係は、灌流障害あり群では負相関,なし群では正相関し、有意に異なっていた。その結果、全症例では、130-149mmHgで脳卒中リスクが最も低いJ-curve関係を呈した。 【結論】脳主幹動脈閉塞性疾患では、経過観察中の血圧と脳卒中再発の関係は、灌流障害の有無で異なっていた。灌流障害のある例では血圧低値で再発リスクが高く、灌流障害のない例では血圧高値で再発リスクが高い可能性がある。血圧管理に関して、灌流障害のある例では、灌流障害のない例とは異なった治療が必要であり、灌流障害の有無の正確な評価が、血圧管理に必須である(Yamauchi et al.,JNNP 2013)。
「正しい病理診断なくして、正しい治療はできない。正しい病理診断を行うための第一歩は、適切な肉眼検索と適切な切り出しから始まる。」を合い言葉に病理技術向上講座を昨年に開催したところ、再度開講してほしいとの要望があり、そこで病理検査 技師を対象とした「第3回 病理技術向上講座:病理検体の切り出し業務2」を開講する事と致しました。今回は全て講義形式で行い、臓器や組織の肉眼所見の取り方、検体の処理法,切り出し法を系統的に学びます。
講座名 第3回病理技術向上講座:外科材料の切り出し業務2 開催日 2014年3月1日(土) 13時25分〜17時30分、3月2日(日) 9時00分〜12時20分 ※(1日目終了後、懇親会を行います) 開催場所 滋賀県立県民交流センター“ピアザ淡海(おうみ)”大会議室(大津市) 定員 150名(細胞検査士クレジット申請中) 参加費 無料(但し、ハンドアウト代 6,000円) 申込・問合せ先 〒524- 8524 滋賀県守山市守山5-4-30 滋賀県立成人病センター研究所横江朋子 TEL077-582-6034 FAX:077-582-6041 E-mail:[email protected]
チラシ (PDF:347 KB)
第47回滋賀県立成人病センター研究所セミナーを開催しました。
開催日時 2014年2月28日(金)17時30分~18時30分 開催場所 滋賀県立成人病センター研究所会議室 演題 患者由来iPS細胞を用いたVHL病の病態解明 演者 中村 英二郎先生(京都大学医学研究科メディカルイノベーションセンターDSKプロジェクト 特定准教授) 要旨 Von-Hippel-Lindau disease (VHL病)は常染色体優性遺伝形式をとる家族性腫瘍症候群であり、腎細胞癌、血管芽腫、褐色細胞腫、膵内分泌腫瘍を高率に発症する。VHL遺伝子変異に起因するが同ノックアウトマウスではヒトの表現系が全く再現されないため、患者由来iPS細胞を用いた新規病態モデルの構築を試みている。また、ボストンでの医学研究の合間に垣間見た米国医療の実情に関してもお示ししたい。 世話人 木下 和生
滋賀県立成人病センター第50回がん診療セミナーにて、東総括研究員が教育講演を行いました。
第50回がん診療セミナーにおいて、東達也総括研究員が教育講演を行いました。第50回がん診療セミナーは「甲状腺がん」を対象としたプログラムで行われ、センター耳鼻いんこう科藤野清大科長、センター検査部西尾久明主任主査に続き、東研究員は「甲状腺癌術後ヨウ素内用療法」と題して行われた教育講演において、甲状腺癌に対する放射線治療の一種である術後ヨウ素内用療法を紹介したうえで、放射線被ばくに関しても簡単なレクチャーを行い、がん診療に携わる医療関係者への教育・啓蒙を行いました。
開催日 2014年2月20日 学会名 滋賀県立成人病センター第50回がん診療セミナー 開催地 成人病センター研究所講堂、守山市、滋賀 発表形式 口演(教育講演) 演者 東達也 演題 甲状腺癌術後ヨウ素内用療法 要旨 アイソトープ治療(RI治療)は放射性同位元素を含んだ薬物を体内に投与することで、患部・腫瘍などに特異的に取り込まれた放射性同位元素が放出する放射線(おもにβ線)を用いて、身体の中から放射線治療を行う治療で、内照射や内用療法などとも言われている。 我が国では、1.バセドウ病、分化型甲状腺癌に対する放射性ヨウ素内用療法、2.ストロンチウム-89を用いた転移性骨腫瘍の疼痛緩和療法、3.イットリウム-90を用いた低悪性度B細胞性リンパ腫に対する放射免疫療法の3つが保険適応となっており、近年盛んとなってきている。1.の分化型甲状腺癌に対する術後ヨウ素内用療法は、1940年代から行われている歴史ある治療であるが、放射線に対する教育が一般に普及しなかったことや放射線防護のために特別な入院病室が必要であるために、必ずしも一般化せず長年細々と行われてきた。 近年その有用性が再認識され、治療患者が急増しているが、病室不足のために国内の分化型甲状腺癌患者は、全国平均で半年程度の入院待ちを余儀なくされているという現状があり、大きな社会問題となっている。術後ヨウ素内用療法の基礎と臨床を示し、ガイドラインの出版など学会活動や我が国の臨床の現状も簡単に紹介した。
加川主任研究員がPET化学ワークショップ2013にて講演しました。
PET化学ワークショップにおいて、加川主任研究員が、「薬剤製造の現場から」と題して、本邦初のPET製剤である[11 C]MeAIBと[18 F]FACE、世界初のPET製剤である[18 F]FPYBF-2と[18 F]PTV-F1の合成等について、滋賀県立成人病センター研究所の現状を紹介しました。自動合成装置を用いた安定的合成法や安全性試験等の詳細だけでなく、最近開発した新しい固相抽出技術を用いた合成法等も紹介しました。
開催日 2014年2月7-9日 学会名 PET化学ワークショップ2013 開催地 舞子ビラ神戸、兵庫県神戸市 演者 加川信也 演題 薬剤製造の現場から
東総括研究員が執筆の一部を担当した座談会記事「甲状腺癌治療の現状と将来展望」が医学雑誌「診療と新薬」(医事出版社)にて発行されました。
医事出版社が発行する医学雑誌「診療と新薬」の最新号が発行され、今月の特集として、東達也総括研究員が執筆の一部を担当した「甲状腺癌治療の現状と将来展望」と題する座談会記事が掲載されました。この座談会は平成25年9月27日、名古屋にて行われた第46回日本甲状腺外科学会に併せて名古屋で行われたもので、東京女子医科大学内分泌外科岡本高宏教授を司会に、招待出席者として高名なイタリア・ピサ大学ロッセラ・エリセイ教授ら、国内外のこの分野の第一人者を迎えて行われました。東研究員は甲状腺分化癌に対する放射性ヨード内用療法(アイソトープ治療)の国内における第一人者として、甲状腺分化癌に対するアイソトープ治療についての臨床的意義と実際、アイソトープ治療の不応例とその定義、国内の治療環境の問題点などを討議しました。
発行日 2014年1月28日 雑誌名 診療と新薬第51巻1号、(2014; 51(1): 19-30.) 出版社 医事出版社 著者 岡本高宏、ロッセラ・エリセイ、絹谷清剛、東達也、杉谷巌、伊藤康弘 題名 甲状腺癌治療の現状と将来展望 内容 甲状腺癌の多くを占める乳頭癌は予後良好であるが、RAI治療に対し難治性の症例も少なくなく、分化癌を対象とした分子標的薬の開発が進んでいる。本座談会では、我が国と欧州における甲状腺乳頭癌治療の現状、RAI治療の実際、RAI「不応」の定義とチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の適応等について、国内外の専門医により議論を交わしていただいた。
第46回滋賀県立成人病センター研究所セミナーを開催しました。
開催日 2014年1月27日(月)17時30分~18時30分 開催場所 滋賀県立成人病センター研究所会議室 演題 腫瘍全身FDG-PETデータを用いた脳糖代謝ビッグデータ解析の試み 演者 石津 浩一先生(京都大学医学部人間健康学科 近未来型人間健康科学融合ユニット 准教授) 要旨 多数のがん患者の脳FDG-PET画像に対してSPMによる統計学的検討を加えることで、脳内の糖代謝と、年齢、性別、身長、体重、FDG投与量、検査時血糖値との間の相関のある部位を検出し、特徴的な傾向がないかを検討した。がん患者の大脳皮質の糖代謝が広範に体重と正の相関を示したが、これは全身状態不良と関連した体重低下が大脳機能の低下を引き起こした可能性を示唆するものとして興味深い。過去の報告と合わせ考察を加えるとともに、今後の研究方針に関して討議したい。 世話人 東 達也
第45回滋賀県立成人病センター研究所セミナーを開催しました。
開催日 2014年1月20日(月)18時00分~19時00分 開催場所 滋賀県立成人病センター研究所講堂 演題 原発事故と医療人の役割 演者 遠藤 啓吾先生(京都医療科学大学 学長) 要旨 福島原発事故による社会的混乱の一因は、医療人、国民が放射線教育を全く受けていなかったことである。全ての医療人は、放射線が健康に与える影響を理解し、科学的根拠に基づいて国民の健康を守らなければならない。 本講演では、放射線の基礎とともに、放射線による健康リスク、食品の安全性や福島県民健康調査結果について分かりやすく述べる。本講演を通じて、センター職員が放射線リスクを理解し、県民の不安に寄り添うことを希望する。 世話人 東 達也
山内副所長が分担執筆した虚血性神経細胞障害の総説がJOURNAL OF CEREBRAL BLOOD FLOW AND METABOLISM誌にONLINE掲載されました。
掲載日 2013年11月6日 掲載雑誌名 J Cereb Blood Flow Metab. 2013 Nov 6. doi: 10.1038/jcbfm.2013.188. 著者 Baron JC, Yamauchi H, Fujioka M, Endres M. 表題 SELECTIVE NEURONAL LOSS IN ISCHEMIC STROKE AND CEREBROVASCULAR DISEASE コメント 軽度の虚血により神経細胞のみが障害される選択性神経細胞障害は、動物実験ではその存在が証明されているものの、ヒト生体での評価は困難でした。しかし、近年、11C-Flumazenil-PETを用いてヒト生体での検出が可能になりました。 当研究所は、アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞性疾患の11C-Flumazenil-PET研究を、世界で最も多数例行っている施設です。山内副所長は、この総説論文の中で、アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞性疾患における慢性脳虚血による選択性神経細胞障害の部分を担当し、当研究所での研究成果を含めた現状について執筆しました。 要旨 As a sequel of brain ischemia, selective neuronal loss (SNL)-as opposed to pannecrosis (i.e. infarction)-is attracting growing interest, particularly because it is now detectable in vivo. In acute stroke, SNL may affect the salvaged penumbra and hamper functional recovery following reperfusion. Rodent occlusion models can generate SNL predominantly in the striatum or cortex, showing that it can affect behavior for weeks despite normal magnetic resonance imaging. In humans, SNL in the salvaged penumbra has been documented in vivo mainly using positron emission tomography and 11C-flumazenil, a neuronal tracer validated against immunohistochemistry in rodent stroke models. Cortical SNL has also been documented using this approach in chronic carotid disease in association with misery perfusion and behavioral deficits, suggesting that it can result from chronic or unstable hemodynamic compromise. Given these consequences, SNL may constitute a novel therapeutic target. Selective neuronal loss may also develop at sites remote from infarcts, representing secondary ’exofocal’ phenomena akin to degeneration, potentially related to poststroke behavioral or mood impairments again amenable to therapy. Further work should aim to better characterize the time course, behavioral consequences-including the impact on neurological recovery and contribution to vascular cognitive impairment-association with possible causal processes such as microglial activation, and preventability of SNL. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24192635
加川主任研究員が第53回日本核医学会学術総会にて二演題発表しました。
開催日 2013年11月8-10日 学会名 第53回日本核医学会学術総会 開催地 福岡国際会議場、福岡県博多市 演題1 臨床使用に向けた新規アミロイドイメージング剤[18F]FPYBF-2の合成 演者1 加川信也1) 2)、西井龍一1) 3)、東達也1)、岸辺喜彦1)、高橋昌章1)、山内浩1)、川井恵一2)、渡邊裕之4)、木村寛之4)、小野正博4)、佐治英郎4) 1) 滋賀県立成人病センター研究所、2) 金沢大学大学院医薬保健学総合研究科、3) 宮崎大学医学部放射線科、4)京都大学大学院薬学研究科 要旨1 これまで、我々は様々なアミロイドイメージング剤の候補化合物を検討し、その中でもピリジルベンゾフランを母核とするF-18標識化合物([18F]FPYBF-2)のアミロイドイメージング剤としての有用性を報告してきた(Ono et al., J Med Chem, 54, 2971-9 2011)。そこで、今回[18F]FPYBF-2の臨床での使用に向けて標識合成、品質評価、安全性評価を検討した。 [18F]FPYBF-2の合成は、JFEテクノス社製のキット式多目的合成装置で行い、放射能:13.9±1.7 GBq、合成時間:61.2±0.4分、比放射能:338.7±50.9 GBq/µmol、収率:48.6±3.7%、放射化学的純度:98.6%以上であった。 また、放射性薬剤基準(2009年改定)を参考として、[18F]FPYBF-2の品質検定を行った結果、問題のないことを確認した。さらに、急性毒性試験(有効成分、標識最終製剤)での安全性、体内分布実験からの算出被曝線量も問題ないことを確認した。現在、当センターでの薬剤委員会及び倫理委員会の承認を得て、正常ボランティアを対象として基礎検討を行っている。 演題2 新しい固相抽出技術を用いた[18F]Fluoroacetate ([18F]FACE)合成法の検討 演者2 加川信也1) 2)、西井龍一1) 3)、東達也1)、山内浩1)、高橋和弘4)、水間広4)、尾上浩隆4)、竹本研史5)、波多野悦郎5)、川井恵一2) 1) 滋賀県立成人病センター研究所、2) 金沢大学大学院医学研究科、3) 宮崎大学医学部放射線科、4) 理研ライフサイエンス技術基盤研究センター、5) 京都大学大学院・肝胆膵・移植外科 要旨2 我々は、[18F]Fluoroacetate ([18F]FACE)標識合成において、オンカラム加水分解法やtwo-pot蒸留法の合成基礎検討を行ってきた。本研究では、新しい固相抽出技術を用いたone-pot蒸留法による合成検討を行った。 one-pot蒸留法による合成は、フッ素化後、得られた[18F]Ethyl fluoroacetate ([18F]EFA) を減圧下で蒸留した。 SEP-PAK C18等のカートリッジ上で[18F]EFAをトラップした後、NaOHで加水分解をおこなうオンカラム加水分解法とは異なり、one-pot蒸留法の合成は、1. [18F]EFAの加水分解、2. [18F]FACEのトラップ、3. 蒸留水洗浄、4. NaClによる[18F]FACEの溶出の4つの操作をイオン交換カラム上でおこなった。 その結果、one-pot蒸留法の合成は、オンカラム加水分解法やtwo-pot蒸留法に比べて、最終での中和工程を省略し高品位な薬剤を合成できた。また、合成装置部品が約7割程度と簡便に合成可能であり、今後、普及が望まれる新たな固相抽出法であることが明らかとなった。
第53回日本核医学会学術総会にて、東総括研究員が発表、編集会議参加等を行いました。
平成25年11月8-10日、第53回日本核医学会学術総会において、東達也総括研究員が核医学治療に関する発表を2題行いました。核医学治療に関するセッションの中で、核医学治療の一つであるストロンチウム89を用いた転移性骨腫瘍疼痛緩和療法に関するこれまでの当センターでの治療成績を、またイットリウム90ゼヴァリンを用いた低悪性度B細胞性悪性リンパ腫に対する放射免疫療法のこれまでの当センターでの治療成績を、それぞれ集計し、その臨床的な意義について詳細に報告しました。リンパ腫治療では治療前のFDG-PET/CT検査の有用性を報告し、大きな反響がありました。
また、東研究員は、日本核医学会編集委員会会議に参加し、今後の編集活動に関する討議を行いました。東研究員は2005年より日本核医学会編集委員会の編集委員として「核医学」(日本核医学会誌)(和文誌)およびAnnals of Nuclear Medicine (英文誌)の編集に携わっており、今年で8年目です。日本核医学会会員への教育・啓蒙を目的とした国内誌である「核医学」での学会活動・広報活動に加え、英文誌である「Annals of Nuclear Medicine」でも編集活動の中心を担っています。「Annals of Nuclear Medicine」は、世界各国からの医学論文の投稿を受けて、編集活動を行い、多くの重要な核医学領域の医学論文を掲載を通じて、核医学の幅広い普及・発展を目指しており、日本国内の医学会が創刊した医学誌としては、国際的な評価が最も高い医学雑誌の一つとされています。
開催日 2013年11月8日 学会名 第53回日本核医学会学術総会 開催地 福岡国際会議場、博多、福岡県 演題1 当院におけるY-90標識ibritumomab tiuxetan治療経験 演者1 東達也(総括研究員) 共同演者1 滋賀県立成人病センター血液・腫瘍内科岡諭、浅越康助、内海貴彦、鈴木孝世 滋賀県立成人病センター化学療法部森正和 滋賀県立成人病センター放射線部草野邦典、藤田喜治 宮崎大学放射線科西井龍一 発表形式1 口演(教育講演) 要旨1 【目的】低悪性度B細胞性リンパ腫に対するY-90標識イブリツモマブチウキセタンによる放射免疫療法の当院施行19症例における臨床的意義を検討した。 【方法】対象は62+/-11歳、男性9例、女性10例の濾胞性リンパ腫19例。治療前の病期分類ではStage I: n=5, II: n=4, III: n=5, IV: n=5。前治療のレジメン数は1回: n=4, 2-3回: n=13, 4回以上: n=2。標準プロトコルに従い、血小板低値の4例を除き、14.8MBq/kgを投与した。 【成績】CR症例は17例、PR症例は1例、未評価1例。CR17例のうち、7例で再燃した。CR維持例の平均観察期間は614日、再燃例の再燃確認時期は403日。CR維持群と再燃+PR群では前治療のレジメン数は1.8+/-1.0 vs 3.0+/-2.5と再燃+PR群で多かったが、年齢や病期分類には差がなかった。治療前のPET/CTにて3cm以上のLNの多発例4例および5cm以上の腫瘍残存例は全例が再燃ないしPR例であった。 【結論】既報の通り、再燃リスク因子としてbulky mass等や前治療レジメン数が当院でも確認された。治療前のPET/CTの有用性が示唆された。 演題2 当院におけるS-89骨転移疼痛緩和治療の経験 演者2 東達也(総括研究員) 共同演者2 滋賀県立成人病センター研究所東達也、市川明美、池本育子 滋賀県立成人病センター放射線治療科山内智香子 掛谷理恵 滋賀県立成人病センター放射線部草野邦典、藤田喜治 発表形式2 口演(教育講演) 要旨2 【目的】骨転移に対するSr-89塩化ストロンチウムによる疼痛緩和療法例における臨床的意義を検討した。 【方法】対象は63+/-15歳、男性25例、女性16例の41症例36患者(前立腺癌PC: n=9, 肺癌LC: n=9, 乳癌BC: n=6, 胃癌GC: n=4, 結腸癌CC: n=3,その他: n=5)。5例で2回以上の治療を行った。平均観察期間は143日。疼痛評価はフェイススケール(FS)(0-5)にて治療前、治療後にわたって評価した。 【成績】有効例29 例、無効例4例、評価困難8例 。無効例に疾患別傾向はなかった。FS値は治療前3.3+/-1.0、治療後3-4ヶ月の最低値で2.0+/-1.4で、治療後のFS値低下に疾患別の差はなかった。Sr-89までの病悩期間はBCで有意に長く(3054日vs全例1404日)、PCはやや短かった(932日)。一年以上の長期生存はPC3例、BC2例、3ヶ月以内の死亡は11例(CC3例、LC3例)だった。治療後観察期間はBCで247日と有意に長く、LCで78日と有意に短かった。 【結論】既報の通り、PCでは早期に治療開始され、治療効果も良い傾向にあった。BCは病悩期間、観察期間ともに有意に長く、LCは早期死亡が多かった。
健康増進セミナー in 滋賀(ピアザ淡海、大津市、滋賀)にて、東総括研究員が学術講演を行いました。
健康増進セミナー in 滋賀において、東達也総括研究員が学術講演を行いました。「早く見つけるーがん、認知症を画像でー」と題して行われた学術講演において、 東研究員はがんと認知症に関する最新の情報、特にがんでは腫瘍FDG-PET/CTによる診断を、また認知症に関してはアルツハイマー病に関する病気のメカニズムの最新研究とそれに沿った早期診断法であるアミロイドイメージングを紹介したうえで、成人病センター研究所での最新の研究・診療と臨床研究の最先端をご紹介し、県民の皆様の健康増進の手助けを行いました。
開催日 2013年11月2日 学会名 健康増進セミナー in 滋賀 演者 東達也(総括研究員) 演題 早く見つけるーがん、認知症を画像でー 要旨 高齢化社会が進み、がんの早期診断の必要性が叫ばれています。最新の腫瘍FDG-PET/CT診断は高い解像度で細かい病気を見つけ、悪性腫瘍の糖代謝を拾い上げることで、他の画像診断では見つけにくい病気を早期から発見する手助けになる検査です。皆さんも上手に利用して頂きたいと思います。 また、高齢化社会では同じく認知症の問題も重要です。認知症の大半を占めるアルツハイマー病では病気の進行の本体が徐々に明らかになってきており、アルツハイマー病ではアミロイドというゴミが脳の中にたまってしまう病気だと分かってきました。このアミロイドを光らせて見えるようにすることで、アルツハイマー病の早期発見に希望の光が見えてきています。それがアミロイドイメージングと呼ばれるPET検査です。 当研究所の腫瘍FDG-PET/CTやアミロイドイメージングに関する研究成果や臨床検査をご紹介いたします。
山内副所長が第25回日本脳循環代謝学会総会で発表しました。
発表日 2013年11月2日 学会名 第25回日本脳循環代謝学会総会 開催地 札幌 発表形式 一般口演 演者 山内浩(副所長) 共同演者 東達也、加川信也、高橋昌章、岸辺喜彦 演題 アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞性疾患患者における血圧と脳卒中再発のJカーブ関係ー脳循環動態からの考察 要旨 アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞症患者では、血圧低値では脳循環が障害され、脳梗塞リスクが増大する懸念がある。もしそうなら、血圧ー全脳卒中リスクはJカーブ関係を呈する可能性がある。本研究では、PETで脳循環障害の程度を評価し、その後の脳卒中発症リスクと血圧がJカーブ関係か検討した。 【方法】症候性アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞性疾患(頭蓋外内頸動脈閉塞症、頭蓋内内頸動脈あるいは中大脳動脈狭窄または閉塞症)患者で、慢性期に、15O gasとPETを用いた脳循環動態評価を行ない内科的治療で経過観察した130例(mRS≦2)を対象とした(内頸動脈:頭蓋外閉塞61例,頭蓋内閉塞1例,狭窄13例,中大脳動脈:閉塞24例,狭窄31例)。 エントリー時の灌流障害(PET検査上、血流量/血液量比低下)の有無、経過観察中の外来診察室血圧値と、2年間の脳卒中再発率との関係をCox比例ハザードモデルを用いて解析した。血圧値は、脳卒中発生、死亡のあった例ではその直前受診時のもの、イベントが無かったものは2年後のものを解析した。収縮期血圧値は、<130mmHg、130-149mmHg、150-169mmHg、≧170mmHgの4群に分類した。 【成績】全脳卒中再発は灌流障害あり群では18%(7/39例)に、なし群では7%(6/91例)に生じた。全脳卒中再発と収縮期血圧の関係は、灌流障害あり群では負相関,なし群では正相関し、両群で有意に異なっていた。その結果、全症例では、130-149mmHgで脳卒中リスクが最も低いJカーブの関係を呈した。 【結論】アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞性疾患では、経過観察中の血圧と全脳卒中再発は、Jカーブ関係を呈した。その原因は、灌流障害のある例では血圧低値で再発リスクが高く、灌流障害のない例では血圧高値で再発リスクが高いことの総合的結果であるとわかった。
第42回断層映像研究会において、東達也総括研究員が教育講演を行いました。
第42回断層映像研究会において、東達也総括研究員が教育講演を行いました。「甲状腺核医学トリビアの泉」と題して行われた教育講演において、 東研究員は甲状腺核医学に関する興味深い「トリビア」を紹介したうえで、甲状腺核医学の基礎と現状について講演し、若手の先生方が核医学に興味をもってもらえるようなユーモア溢れる講義を行いました。
開催日 2013年11月1日 学会名 第42回断層映像研究会 開催地 MRT micc ダイヤモンドホール、宮崎市、宮崎県 発表形式 口演(教育講演) 演者 東達也(総括研究員) 演題 甲状腺核医学トリビアの泉 要旨 甲状腺核医学は歴史ある診療分野であるが、長年99mTc、131I、123Iが中心のままであった。近年「甲状腺腫瘍診療ガイドライン」等が刊行、ヒトリコンビナントTSHを用いた甲状腺癌に対する外来アブレーションも導入され、甲状腺疾患の診療は変革期にある。本公演では日本における現状・問題点、「トリビア」問題を交えて提示した上で、核医学を専門としない若手の先生方を対象として楽しく学べる講演にしたいと思う。
東総括研究員が環境省の課題研究の「地域特性を生かしたリスクコミュニケーターによる放射線健康不安対策の推進」研究の第一回会議に参加いたしました。
環境省が主導する課題研究「放射線の健康影響に係る研究調査事業」に採択された「地域特性を生かしたリスクコミュニケーターによる放射線健康不安対策の推進」は、放射線健康不安対策について討議し、京都や滋賀などの寺社を訪問し、教育活動、グループワーク等を行い、「リスクコミュニケーター」として活動してもらうことを目標とする活動です。
昨年度は、グループワークの一環として、京都市内の寺院にて行われた僧侶の皆様を対象とした「放射線に関する講話」などを行い、積極的に市民への教育活動を行いました。今回は第二年度に当たる今年の第一回会議に当たります。今年度の新規の活動について討議を行いました。
この課題研究は、昨年の東京電力福島第一発電所事故を受けて、幅広く国民に放射線や放射線影響に関する正確な知識を与え、正しい教育を行うこと、 また人々の生の声、不安、専門家に取り組んで欲しい希望を聞き取ることを目指して活動する「リスクコミュニケーター」を養成し、グループワーク等を行い、 国民の間に大きく拡がった放射線に対する不安を和らげる目的とした研究です。
地域ICT利活用連携シンポジウム -情報通信技術の地域医療への活用ーを開催しました。
滋賀県では、先進医療機器と情報通信技術(ICT)の活用による広域連携事業を進めており、その一環として全県型遠隔病理診断ネットワーク事業を展開し、この度、システムの稼働を迎えたところです。
どこに住んでいても、誰もが至適な医療を受けられる社会にしていくためには、限りある医療資源を最大限に活用し、医療機関同士が連携または分担することで、無駄のない医療体制を構築する必要があります。 ICT技術はこれを円滑に促進し得る手段となります。
この度、事業の普及と稼働を記念して、地域ICT利活用連携の現状と他府県の取り組みをともに学ぶシンポジウムを開催することとなりました。
地域医療の現場、遠隔病理診断の第一線でご活躍されています先生方の貴重な講演を聞く絶好の機会ですので、県内の医療関係者、健康に興味のある県民の方はふるってご参加ください。
タイトル 地域ICT利活用連携シンポジウム -情報通信技術の地域医療への活用ー 開催日時 平成25年10月26日(土) 10時~16時30分 開催場所 コラボしが21(大会議室) 滋賀県大津市打出浜2-1 プログラム ・基調講演 『ICT利活用による地域活性化への取り組み』 総務省近畿総合通信局 情報通信振興課長 松山 和馬 様 ・第一部:シンポジウム『ICT利活用による地域医療の連携』 1.かがわ遠隔医療ネットワーク(K-MIX)の紹介 研究推進機構瀬戸内圏研究センター 特任教授 原 量宏 先生 2.医療と介護を繋ぐヘルスケア・ソーシャル・ネットワーク「Net4U」 山形県鶴岡地区医師会 会長 三原 一郎 先生 3.滋賀県ICT医療ネットワーク構築の進捗状況と今後の課題 NTTデータ経営研究所 マネージャー 中林 裕詞 様 ・第二部:シンポジウム『遠隔病理診断ネットワークの現状』 1.滋賀県の現状 滋賀県立成人病センター研究所 所長 真鍋 俊明 先生 2.長野県での遠隔病理診断の現状 信州大学医学部 講師 吉澤 明彦 先生 3.遠隔病理診断医療機関間連携の活用と今後のがん診療国策最前線 東京大学医学部 准教授 佐々木 毅 先生 4.大阪地区における病理診断の現状と遠隔診断ネットワークの必要性 大阪大学医学部 教授 森井 英一 先生 5.米国のデジタルパソロジーの現状と遠隔病理診断 マサチューセッツ総合病院PICTセンターを訪問して 自治医科大学 教授 福嶋 敬宜 先生 6.総合討論 参加費 無料 申込方法 電話、FAX、メールのいずれかで、氏名、電話番号を下記連絡先へご連絡ください。 申込・お問合せ先 滋賀県立成人病センター研究所 TEL 077-582-6034(直通) FAX 077-582-6041 e-mail: [email protected] 主催 滋賀県、滋賀県立成人病センター その他 ◦日本医師会生涯教育制度指定講習会として承認(5単位) ◦日本医療情報学会 医療情報技師育成部会 医療情報技師更新ポイント申請中(1ポイント)
山内副所長が第36回日本高血圧学会総会で発表しました。
開催日 2013年10月24日 学会名 第36回日本高血圧学会総会 開催地 大阪 発表形式 一般口演 演者 山内浩 演題 症候性アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞性疾患患者では経過観察中血圧と脳卒中再発 の関係は灌流圧低下の有無により異なる 要旨 症候性アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞症患者では、血圧を下げることで脳循環が障害され、脳梗塞リスクが増大する懸念がある。本研究では、PETで脳循環障害の程度を評価し、その後の脳卒中発症リスクと血圧との関係が、脳循環障害の有無により異なっているか検討した。 【方法】症候性アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞性疾患(頭蓋外内頸動脈閉塞症、頭蓋内内頸動脈あるいは中大脳動脈狭窄または閉塞症)患者で、慢性期に、15O gasとPETを用いた脳循環動態評価を行ない内科的治療で経過観察した130例(mRS≦2)のデータを後方視的に解析した(内頸動脈:頭蓋外閉塞61例,頭蓋内閉塞1例,狭窄13例,中大脳動脈:閉塞24例,狭窄31例)。 エントリー時の灌流障害(PET検査上、血流量/血液量比低下)の有無、経過観察中の外来診察室血圧値と、2年間の脳卒中再発率との関係をCox比例ハザードモデルを用いて解析した。血圧値は、脳卒中発生、死亡のあった例ではその直前受診時のもの、イベントが無かったものは2年後のものを解析した。収縮期血圧値は、<130mmHg、130-149mmHg、150-169mmHg、>170mmHgの4群に分類した。 【成績】単変量解析では、病変血管支配領域の再発は、経過観察中の収縮期血圧値と 負相関し、その他の領域の再発は、血圧値と正相関した。経過観察中の収縮期血圧<130mmHg群は,>130mmHg群に比べて、血管支配領域脳梗塞再発リスクが有意に高く、灌流障害あり群でも,なし群に比べて、リスクが高かった。多変量解析では、血圧<130mmHgと灌流障害ありが、独立した有意な血管支配領域脳梗塞再発の予測因子であった。 全脳卒中再発と収縮期血圧の関係は、灌流障害あり群では負相関,なし群では正相関し、両群で有意に異なっていた。その結果、全症例では、130-149mmHgで脳卒中リスクが最も低いJ-curveの関係を呈した。 【結論】後方視的解析、少ないイベント発生、一点の診察室血圧値の解析、等のlimitationsがある研究ではあるが、アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞性疾患では、経過観察中の血圧と脳卒中再発の関係は、灌流障害の有無で異なっていた。灌流障害のある例では血圧低値で再発リスクが高く、灌流障害のない例では血圧高値で再発リスクが高い可能性がある。血圧コントロールに関して、灌流障害のある例では、灌流障害のない例とは異なった治療が必要であり、灌流障害の有無の正確な評価が、血圧のコントロールに必須である。
欧州核医学会総会2013において、東総括研究員らPET画像研究部門グループが発表しました。
2013年10月19日から23日まで開催された欧州核医学会開催の欧州核医学会総会2013において、東達也総括研究員が口演を行いました。東研究員は本邦初のPET薬剤であるFACE(フルオロ酢酸)についての臨床研究の演題の発表を行いました。正常健常ボランティアを対象にした検討では、FACEのヒトでの体内動態を詳細に報告し、さらにFACEを用いた肝癌患者を対象にした検討ではFDGとの比較を報告しています。滋賀県立成人病センターでのFACEを用いた研究が世界をリードしており、大変な注目を集めました。今後の研究成果が期待されています。
※以降は下記表記に読み替えて記載しています。
開催日 2013年10月19日 学会名 EUNM2013(European Association of Nuclear Medicine;欧州核医学会総会2013) 開催地 リヨン(フランス) 発表形式 口演(ポスターつき口演) 演者 東達也(総括研究員) 演題 Oncologic diagnosis of liver tumors using [18F]-fluoroacetate PET/CT as compared to [18F]-fluorodeoxyglucose PET/CT. Initial experience. 要旨 【目的】本検討では肝腫瘍症例におけるF-18 Fluoroacetate (F-18 FACE)の体内動態分布の観察と腫瘍への集積を含む臨床試験を行ったので報告する. 【方法】臨床検討は倫理委員会承認プロトコールに沿って実施.肝腫瘍症例6例(肝細胞癌4例,胆管細胞癌1例,膵島細胞癌肝転移1例)を対象に,自施設で合成したFACE (平均268.9MBq)を静脈投与し,PET-CT装置にてダイナミック画像と2-3回のスタティック全身像を撮影し,F-18 FDGとの集積比較検討をした.腫瘍集積はSUVmaxとTumor-to-Normal liver tissue Ratio (TNR)を用いて測定した. 【結果】肝腫瘍6例のうち,FDGは強陽性3例,弱陽性2例,陰性1例を示し,SUVmax=6.1+/-3.9, TNR=2.4+/-1.5であった.FACEは強陽性1例,弱陽性2例,陰性3例で、SUVmax=2.6+/-0.6, TNR=1.4+/-0.4であった.FACE集積はFDGに比し弱い傾向にあったが,FDGとほぼ相関する集積パターンを呈した. 【結論】本検討ではFDGとFACE集積が相反する症例はなく,代謝系の違いによるFACE-PET/CT独自の特徴は認められなかった.今後もさらなる検討を要する.
第66回滋放技・核医学研究会にて、東総括研究員が教育講演を行いました。
滋賀県放射線診療技師学会核医学研究会開催の第66回滋放技・核医学研究会において、東達也総括研究員が講演を行いました。「腫瘍PET検査 ---アップデート---」と題して行われた教育講演において、 東研究員は腫瘍PET診断の最新動向と将来展望についての講演を行いました。我が国や米国での腫瘍PET診断の現状と方向性、問題点を検討し、最近注目されているtheranosticsと呼ばれる「画像と治療の融合」という医学分野の進歩やがん幹細胞に関する最新研究の紹介など、これらに関連した核医学分野のあるべき将来像を展望した講演で、大きな反響がありました。
開催日 2013年10月16日 学会名 第66回滋放技・核医学研究会 開催地 滋賀県立成人病センター職員会館、滋賀県守山市 発表形式 口演(教育講演) 演者 東達也(総括研究員) 演題 腫瘍PET検査 ―アップデート― 要旨 我が国の核医学領域は大きな変革期にある。2010年にはFDG-PET、FDG-PET/CTが腫瘍診断として基本的に全ての悪性腫瘍に対して保険収載され、核医学診断は術前診断など日常臨床の上でもますます重要性を増している。PET/CT の全国的な普及に加え、SPECT/CTも多くの施設に導入されつつあり、撮影技術・画像の進歩は著しい。しかし、糖代謝を利用したFDGはすでにその欠点もあきらかになってきており、生理的集積の強い脳や泌尿器領域などや、炎症性疾患での偽陽性などを克服する必要がある。 FDGの次に来るPET製剤、すなわちpost-FDGが世界的にも注目されており、アミノ酸系製剤、核酸系製剤、酢酸系製剤、その他多くの新規PET核種、製剤が研究されており、国内でも2種類のアミノ酸系製剤が近い将来臨床に導入されるものと期待されている。また、最近ナノテクノロジーの進歩とともに、theranosticsと呼ばれる「画像と治療の融合」という概念が注目されており、この名を冠した医学雑誌も創刊され、核医学を越えた幅広い医学分野での科学の進歩を牽引しつつある。 本公演では、これらの新規PET製剤を用いた腫瘍PET診断について概要を示し、日本における現状・問題点を提示した上で、当研究所の取り組んでいる新規PET薬剤についてのご紹介、さらtheranosticsと呼ばれる「画像と治療の融合」や、がん幹細胞に関する最新研究の紹介などについてもお話ししたい。
統合失調症の新たなバイオマーカーを発見しました(論文発表)
滋賀県立成人病センター研究所の谷垣健二専門研究員らは、イタリアのInstitute of Genetics and Biophysics(遺伝学・生物物理学研究所)のElizabethIllingworth 教授、アメリカのJohns Hopkins 大学の澤明教授、奈良県立医科大学精神医学講座の岸本年史教授らとの共同研究によって、統合失調症発症に関与する新たなバイオマーカーを見出し、統合失調症にサブタイプが存在する可能性を示し、 米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences of theUnited States of America) に報告しました。統合失調症は、遺伝学的素因が80%以上を占める多因子遺伝病ですが、その遺伝性の複雑さから、発症のメカニズム、発症に関与する遺伝子群は未だよくわかっておりません。最近のゲノム医学の進歩により、非常に小さな染色体領域の欠損が統合失調症に関与することがわかり、統合失調症の発症メカニズムの解明につながるのではと注目を集めています。
22q11.2 欠損症候群は22番染色体長腕の微小欠損によって生じる染色体異常による疾患症候群ですが、22q11.2 欠損症候群の患者さんは3人から4人に1人は統合失調症を発症することが知られています。今回、谷垣専門研究員らは、22q11.2欠損症候群のモデルマウスを用い、中枢神経系を発生学的に詳細に解析することによって海馬歯状回と抑制性介在神経細胞の発生異常を見出し、この発生異常が、神経細胞の移動を制御するケモカインCXCL12 (SDF1) シグナルの異常によって生じることを明らかにしました(下図)。さらにヒトの統合失調症患者さんの嗅上皮でCXCL12 の発現が減少していることを共同研究者の澤教授らの協力で見出しました。
今回の22q11 欠損症候群で認められる統合失調症との発症の分子機構の研究より、統合失調症にはCXCL12/CXCR4 シグナルが障害されているサブタイプが存在する可能性が示唆され、CXCL12/CXCR4が新たな統合失調症のバイオマーカーとなることが明らかになりました。
ヒトの統合失調症は発症原因が異なる疾患群の総称であると考えられています。そのため、統合失調症の治療法の開発は非常に難しくなっており、発症原因を示すバイオマーカーの発見が期待されていました。今回の我々の研究により、22q11欠損症候群で認められる統合失調症と発症メカニズムが類似する統合失調症のサブタイプが存在する可能性が示唆されました。将来的には、統合失調症の個別化療法の開発に貢献できるのではと期待されます。
”Deficits in microRNA-mediated Cxcr4/Cxcl12 signaling in neurodevelopmentaldeficits in a 22q11 deletion syndrome mouse model”
Michihiro Toritsuka, Sohei Kimoto, Kazue Muraki, Melissa A. Landek-Salgado,Atsuhiro Yoshida, Norio Yamamoto, Yasue Horiuchi, Hideki Hiyama, KatsunoriTajinda, Ni Keni, Elizabeth Illingworth, Takashi Iwamoto, ToshifumiKishimoto, Akira Sawa, and Kenji Tanigaki
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States ofAmerica, published ahead of print October 7, 2013, doi:10.1073/pnas.1312661110
第49回日本医学放射線学会秋季臨床大会にて、東達也総括研究員が教育講演を行いました。
第49回日本医学放射線学会秋季臨床大会において、東達也総括研究員が教育講演を行いました。「甲状腺の内用療法」と題して行われた教育講演において、 東研究員は核医学治療の一つであるI-131を用いた放射性ヨード内用療法の基礎と現状について講演し、内用療法の有用性と内用療法を取り巻く国内の医療環境、とくに治療施設不足に伴う核医学診療の窮状について報告しました。
開催日 2013年10月13日 学会名 第49回日本医学放射線学会秋季臨床大会 開催地 名古屋国際会議場、名古屋市、愛知県 発表形式 口演(教育講演) 演題 甲状腺の内用療法 要旨 甲状腺の内用療法・radioisotope therapy (RIT)は1940年代より開始され、日本でもBasedow病や甲状腺分化癌に対し保険診療として行われてきた。正常甲状腺細胞は甲状腺ホルモン合成 のためヨードを取り込む性質を有し、Basedow病ではさらに亢進している。分化癌も同様の性質を有し、ヨードの有効な集積が約2/3程度に見られる。RITとは経口投与した放射性ヨードI-131が甲状腺組織や癌の転移巣等に選択的に取り込まれ、内部被ばくにより組織破壊を起こさせる治療法である。 組織選択性が高いため無駄な被ばくが少なく、I-131の放出するβ線(606 keV)は生体内飛程が2mm程度と短いため近傍組織への悪影響なく安全に治療が出来る。同時に放出されるγ線(364 keV)はシンチにて集積を確認できる反面、周囲への被ばくが大きく、13.5mCiを超える投与量、すなわち甲状腺癌では隔離病室での入院が必要である。Basedow病においては欧米ではRITは第一選択であるが、日本では依然割合は少ない。基本的に外来治療となる。 近年RITを巡る治療環境は大きく変化している。近年ガイドライン等が整備され、治療数が増加傾向にある反面、RITは保険診療上単なる内服薬扱いで、DPCシステムの導入以来RITの 採算は悪化、高額な管理運営費の必要な隔離病室の廃止・減少傾向が続いている。高リスク分化癌では転移巣がなくても術後のアブレーション(残存甲状腺破壊)を推奨する世界的な潮流を反映し、分化癌に対する治療方針は国内でも全摘+アブレーションへ大きく傾いている。患者の増加に伴う隔離病室の稼働率上昇から、入院待ち半年以上という施設も増えつつある。 2010年より一部症例で30mCiで外来でのアブレーションが認められ、現在癌に対するRITの約 20%が外来アブレーションとなった。また放射線治療病室管理加算や放射性同位元素内用療法管理料も導入され、2012年にはリコンビナントヒトTSHもアブレーション準備での保険適応が認められ、QOLの高いRITが可能となった。RITを取り巻く医療環境は十分でないが、この治療を必要とする患者に速やかに安全な治療が提供できるように環境整備を進めて行くことが我々の使命である。
谷垣専門研究員がNotch Meeting VIIにて発表しました。
開催日 2013年10月7日 学会名 Notch Meeting VII 開催地 Athene (Greece) 発表形式 ポスター発表 演者 谷垣健二 演題 RBP-J 神経特異的KO マウスの行動学的解析 要旨 遺伝子改変マウスを用いた実験でRBP-Jがドーパミン反応性に影響を及ぼす ことを証明しました。
開催日 2013年10月4日 学会名 第72回日本癌学会学術総会 開催地 横浜 発表形式 ポスター発表 演者 木下和生 演題 AID は紫外線非依存的に皮膚扁平上皮癌の発生を促進する 要旨 遺伝子改変マウスを用いた実験で AID が皮膚腫瘍の促進因子であることを証明しました。
木下専門研究員がp63/p73国際ワークショップにて発表しました。
p63/p73国際ワークショップは有名ながん抑制遺伝子であるp53に近縁のタンパク質 p63 と p73 を扱う研究者が世界各地から集まるワークショップで2年に1回開催されます。6回目の今回は日本で初めて開催されました。p63 遺伝子を発見した千葉県がんセンター長の中川原章先生を会頭として木更津市のかずさアカデミアパークで開かれました。p63 と p73 はがんだけでなく正常な細胞の分化や増殖制御等さまざまな機能に関わるタンパクです。p53, p63, p73 のうち最も祖先型に近いと考えられている p63 はヒトとマウスでアミノ酸配列が 99% 同じという高い一致率を見せることから大変重要な働きをするタンパクであると考えられています。また一つの遺伝子から10種類の異なるタンパクが作られる複雑な構造になっています。
開催日 2013年9月15日 学会名 p63/p73国際ワークショップ(第6回) 開催地 千葉県木更津市かずさアカデミアホール 発表形式 一般口演 演者 木下和生 演題 AIDトランスジェニックマウスに見られる肺胞病変は p63 を発現する 要旨 遺伝子変異誘導酵素 AID を過剰に作らせるように遺伝子を操作したマウスでは特殊な肺胞病変と肺腫瘍を発症します。この肺胞病変で肺胞の再生に関与する p63 の発現が認められたことから、肺胞病変が再生病変である可能性を報告しました。再生病変からがんが発生する可能性を議論しました。
木下専門研究員が当院の疾病・介護予防県民公開講座「がんを知って予防する」で発表しました。
超高齢化に伴い増え続けるがんを予防するため今できることを県民の皆様に紹介するため、公開講座が企画され大津市の県立県民交流センターピアザ淡海(ピアザホール)にて行なわれました。基調講演に京都大学大学院医学研究科 千葉 勉 教授(消化器内科)をお招きし、日本人のがんの大多数を占める消化器癌の最新の予防法について分かりやすく解説していただきました。嶋村清志氏(滋賀県健康福祉部健康長寿課 課長)、樋口壽宏医師(当院婦人科科長)、水田和彦医師(当院院長補佐、疾病・介護予防推進室長)、当研究所の木下がパネルディスカッションに参加しました。
木下は「遺伝子とがん」のテーマで発表しました。がんを進化する病気と捉えることで有効な治療法が開発できること、ヒトはがんになる宿命を背負っているもののヒトの体は40歳まではあまりがんにかからないようにできていること、つい最近解明された30年も長生きするハダカデバネズミががんにならない理由(長いヒアルロン酸)ががんの予防に役立つ可能性があることを紹介しました。
加川主任研究員がPETサマーセミナー2013にて講演しました。
PETサマーセミナー2013において、加川主任研究員が、「[18 F]Fluoroacetate ([18 F]FACE)臨床研究に向けて」と題して、本邦初のPET製剤である酢酸をフッ素標識した[18 F]FACEの合成についての講演を行いました。自動合成装置を用いた安定的合成法や安全性試験等の詳細だけでなく、最近開発した新しい固相抽出技術を用いた[18 F]FACE合成法も紹介した講演で、大きな反響がありました。
※以降は下記表記に読み替えて記載しています。
開催日 2013年8月23日 学会名 PETサマーセミナー2013 開催地 ホテル日航金沢、石川県金沢市 演者 加川信也 演題 [18F]Fluoroacetate ([18F]FACE)臨床研究に向けて 要旨 本邦初の薬剤であり、酢酸のF-18標識PET製剤[18F]FACEの安定合成法が、キット式多目的自動合成装置を用いて確立されました。[18F]FACEは、心筋細胞や腫瘍細胞で亢進するクエン酸代謝/膜代謝回路の活性の指標となる薬剤で、従来の[18F]FDGを用いた糖代謝PET検査の欠点を補い、糖代謝PETのFDGやアミノ酸代謝PETのメチオニン等との併用等により総合的な分子イメージングPET法を確立するというものです。 薬剤品質検定、急性毒性試験、被曝線量試験等の厳しい安全性試験などを経て臨床使用に問題ないことを確認し、短寿命放射性薬剤臨床利用委員会及び倫理委員会で承認され、正常ボランティア検査を実施してきました。最近では、肝癌や前立腺癌患者を対象とした研究検査を積極的に行っています。 本講演では、この新規PET製剤[18F]FACEの合成基礎検討についての紹介し、さらに最近開発した新しい固相抽出技術を用いた[18F]FACE合成法や第8回日本分子イメージング学会総会(平成25年5月)にて最優秀発表賞を受賞した理研CLSTとの共同研究「脳虚血における[18F]FACEの取り込み」等の最新研究についてもお話ししました。
脳卒中患者の血圧管理法は脳循環障害の有無により変える必要があることをPET研究により解明(論文発表)
滋賀県立成人病センター研究所の山内副所長らは、脳卒中患者の血圧管理法は脳循環障害の有無により変える必要があることをPET研究により明らかにし、2013年8月9日、「Journal of Neurology, Neuro surgery, and Psychiatry」誌に報告しました(オンライン掲載)。
脳卒中患者は高率に再発しますが、再発の最大のリスク因子は高血圧です。一般的には、血圧は低ければ低いほど再発が少ないと考えられています。しかし、脳の太い血管に狭窄や閉塞がある人(脳梗塞患者の4割弱)は、血圧を下げることで脳循環が障害され、脳梗塞再発が増える懸念があります。治療ガイドラインにも、「下げすぎに注意」との但し書きがありますが、患者ごとの血圧管理法ははっきりしていませんでした。
山内副所長らは、脳内の太い血管に狭窄や閉塞がある脳卒中患者を、15 O gas PET検査により正確に脳循環障害(灌流障害)の有無を調べた後、経過観察しました。経過観察中の血圧と脳卒中再発率を灌流障害の有無で比較検討すると(図)、灌流障害のある群では収縮期血圧が低いほど(特に130mmHg 未満で)再発リスクが高く(図の赤線)、灌流障害のない群では血圧高値で再発リスクが高い(図の緑線)ことがわかりました。この結果は、脳卒中再発を減らすためには、灌流障害の有無を評価し、血圧管理法を変えることが必要であることを示しています。
本研究により、脳内の太い血管に狭窄や閉塞がある脳卒中患者の高血圧をどのように管理したらよいかが、初めて明らかになりました。
説明:灌流障害のある群(赤)では収縮期血圧が低いほど再発が多く、灌流障害のない群(緑)では血圧が高いほど再発が多い。全症例(黒)では、血圧-再発率関係は、J型となっており、血圧が高くても低くても再発が多いことがわかる。
Yamauchi H, Higashi T, Kagawa S, Kishibe Y, Takahashi M. Impaired perfusion modifies the relationship between blood pressure and stroke risk in major cerebral arteru disease. Journal of Neurology, Neuro surgery, and Psychiatry Published online before print August 9, 2013, doi: 10.1136/jnnp-2013-305159
東総括研究員が横浜市立大学放射線診断科・群馬大学放射線診断核医学科共同開催の第2回YG Conferenceにて講演しました。
横浜市立大学放射線診断科・群馬大学放射線診断核医学科共同開催の第2回YG Conferenceにおいて、東達也総括研究員が講演を行いました。「腫瘍PET診断 ---post-FDGの将来展望---」と題して行われた特別講演において、 東研究員は腫瘍PET診断の最新動向と将来展望についての講演を行いました。我が国や米国での腫瘍PET診断の現状と方向性、問題点を総括し、最近注目されているtheranosticsと呼ばれる「画像と治療の融合」という医学分野の進歩と、これに関連した核医学分野のあるべき将来像を展望した講演で、大きな反響がありました。
開催日 2013年8月3日 学会名 第2回YG Conference 開催地 ホテルサンピア、群馬県高崎市 発表形式 口演(特別講演) 演者 東達也 演題 腫瘍PET診断 ---post-FDGの将来展望--- 要旨 我が国の核医学領域は大きな変革期にある。PET/CT の全国的な普及に加え、SPECT/CTも多くの施設に導入されつつあり、撮影技術・画像の進歩は著しく、まさに隔世の感がある。また2010年にはFDG-PET、FDG-PET/CTが腫瘍診断として基本的に全ての悪性腫瘍に対して保険収載され、核医学診断は術前診断など日常臨床の上でもますます重要性を増している。 しかし、糖代謝を利用したFDGはすでにその欠点もあきらかになってきており、生理的集積の強い脳や泌尿器領域などや、炎症性疾患での偽陽性などを克服する必要がある。FDGの次に来るPET製剤、すなわちpost-FDGが世界的にも注目されており、アミノ酸系製剤、核酸系製剤、酢酸系製剤、その他多くの新規PET核種、製剤が研究されており、国内でも2種類のアミノ酸系製剤が近い将来臨床に導入されるものと期待されている。 また、最近ナノテクノロジーの進歩とともに、theranosticsと呼ばれる「画像と治療の融合」という概念が注目されており、この名を冠した医学雑誌も創刊され、核医学を越えた幅広い医学分野での科学の進歩を牽引しつつある。 本公演では、これらの新規PET製剤を用いた腫瘍PET診断について概要を示し、日本における現状・問題点を提示した上で、当研究所の取り組んでいる新規PET薬剤についてのご紹介、さらtheranosticsと呼ばれる「画像と治療の融合」についてもお話しし、この分野の臨床での最先端の研究・臨床領域をご紹介し、post-FDG についての議論を深めたいと思う。
画像研究部門の開発した日本初のアミノ酸系PET製剤MeAIBの臨床診断に関する論文がAnnals of Nuclear Medicineにonline掲載されました。
日本核医学会が発行する英文医学誌・Annals of Nuclear Medicineの最新号がonline出版され、西井龍一元研究員(現宮崎大学)や東達也総括研究員を始めとする当センター画像研究部門が執筆した論文が掲載されました。国内で腫瘍診断に用いられているPET製剤は糖代謝を用いたFDGのみが保険収載されていますが、胸部腫瘍の領域では炎症性疾患などで偽陽性などが見られることも多く、post FDGのPET製剤が求められています。MeAIBは当研究所の加川研究員が中心となり我が国で初めて薬剤合成に成功したアミノ酸系PET製剤で、炎症性疾患への集積少なく、FDG-PETやFDG-PET/CTで診断に苦慮する症例で良悪性鑑別に威力を発揮する人工アミノ酸PET製剤です。今回、診断に苦慮した胸部腫瘍を中心に良悪性鑑別診断を行い、特にサルコイドーシスと悪性腫瘍の鑑別に高い診断能を示したことが評価され、掲載が決まりました。(なお、この論文はopen access出版の形をとっておりますので、どなたでも無料で自由にダウンロード出来ます。Annals of Nuclear Medicineのホームページからダウンロードしてください。
○ ダウンロード先:リンク
発行日 2013年7月9日 雑誌名 Annals of Nuclear Medicine. 2013 Jul 4. [Epub ahead of print] PMID: 23824782 出版元 日本核医学会 著者 Nishii R, Higashi T, Kagawa S, Kishibe Y, Takahashi M, Yamauchi H, Motoyama H, Kawakami K, Nakaoku T, Nohara J, Okamura M, Watanabe T, Nakatani K, Nagamachi S, Tamura S, Kawai K, Kobayashi M. 題名 Diagnostic Usefulness of an Amino Acid Tracer, α-[N-methyl-11C]-methylaminoisobutyric acid (11C-MeAIB), in the PET Diagnosis of Chest Malignancies. 内容 新規に出現した胸部腫瘍(肺野腫瘍22例、縦隔腫瘍20例、両腫瘍17例)の良悪性鑑別を目的とした59例57患者を対象に検討した。疾患の内訳は肺癌19例、リンパ腫1例、その他の悪性腫瘍2例、サルコイドーシス15例、非特異的炎症性腫瘤18例、その他の炎症性変化4例。同一症例に対してFDGおよびMeAIBを用いたPETかPET/CTを一週間以内に一度づつ行い、その診断能を比較対照した。 結果:MeAIBの集積は悪性疾患で良性疾患に比し有意に高かった(p<0.005)。 MeAIBの診断能は特異度73%、正診度81%と高く、FDG(特異度60%、正診度73%)よりも高かった。サルコイドーシスにおいてMeAIBは集積が低く(SUVmax平均1.8±0.7)、特異度80%と低値を示し、FDGでの高集積(SUVmax平均7.3±4.5)、特異度60%に比し、良好な診断能を示した。 【結論】:MeAIBを用いたPET/CTは胸部腫瘍の良悪性鑑別において有用で、高い特異度を有し良好な診断能を示した。CTやFDG-PET/CTにおいて診断に苦慮する場合、MeAIBを用いたPET/CTが診断精度を上げることが示唆された。
東総括研究員が執筆した日本内分泌・甲状腺学会雑誌の原著論文「内用療法環境の現状と問題点」が発行されました。
日本内分泌・甲状腺学会が発行する機関誌・日本内分泌・甲状腺学会雑誌の最新号が発行され、今月の特集「甲状腺癌内用療法の現状と将来に向けて」の一論文として、東達也総括研究員が執筆した論文が掲載されました。東研究員は甲状腺分化癌に対する放射性ヨード内用療法(アイソトープ治療)の国内における第一人者として、アイソトープ治療の研究を進めており、今回「内用療法環境の現状と問題点」と題した論文を執筆し、甲状腺分化癌に対するアイソトープ治療についての国内の問題点を、内分泌・甲状腺疾患に携わる国内の医師に提供しました。
発行日 2013年6月20日 雑誌名 日本内分泌・甲状腺学会会誌第30巻2号、(2013; 30(2): 127-129.) 出版元 日本内分泌・甲状腺学会 著者 東達也 題名 甲状腺分化癌アイソトープ治療後の予後因子について 内容 2010年版甲状腺腫瘍診療ガイドラインが出版され、甲状腺癌内用療法はアブレーションでも遠隔転移例でも推奨されているが、近年の急激な甲状腺癌の増加や内用療法施設の実稼働ベッド数の減少などから、入院治療施設の不足が進行しており、その治療環境の現状は我が国がめざす「医療の均てん化」とはほど遠い状況にある。本稿では社会背景や医療経済的考察も交えて、我が国における内用療法環境の現状と問題点に関して報告し、内用療法先進国であるドイツの現状と比較する。
第60回米国核医学会総会にて加川主任研究員と東総括研究員が発表しました。
2013年6月8日から12日まで開催された第60回米国核医学会総会において、加川信也主任研究員と東達也総括研究員をはじめとするPET画像研究部門グループが発表を行いました。本邦初のPET薬剤であるFACE(フルオロ酢酸)についての基礎及び臨床研究の4演題の発表です。
※以降は下記表記に読み替えて記載しています。
開催日 2013年6月8日 学会名 SNMMI(Society of Nuclear Medicine and Molecular Imaging;第60回米国核医学会議) 開催地 バンクーバー(カナダ) 演者 加川信也(主任研究員)、東達也(総括研究員) 演題1 2-[18F]fluoroacetate, as a metabolic maker of neural dysfunction at early stage of cerebral ischemia. Hiroshi Mizuma1, Shinya Kagawa2), Masahiro Ohno1, Takayuki Ose1, Takuya Hayashi1, Akiko Tachibana1, Kazuhiro Takahashi1, Tatsuya Higashi2), Ryuichi Nishii3, Hirotaka Onoe1 1) RIKEN Center for Molecular Imaging Science, Kobe, Japan, 2) Division of PET Imaging, Shiga Medical Center Research Institute, Moriyama, Japan, 3) Department of Radiology, Miyazaki University School of Medicine, Miyazaki, Japan. 演題2 Novel approach for solid-phase radiosynthesis of 18F-Fluoroacetate: Comparison between one-pot and two-pot distillation procedure. Shinya Kagawa12, Ryuichi Nishii3, Tatsuya Higashi1, Hiroshi Yamauchi1, Kenji Takemoto4, Akiko Tachibana5, Kazuhiro Takahashi5, Hiroshi Mizuma5, Hirotaka Onoe5, Keiichi Kawai2 1) Division of PET Imaging, Shiga Medical Center Research Institute, Shiga, Japan, 2) Graduate School of Medical Science, Kanazawa University, Kanazawa, Japan, 3) Department of Radiology, Faculty of Medicine, University of Miyazaki, Miyazaki, Japan, 4) Department of Surgery, Graduate School of Medical Science, Kyoto University, Kyoto, Japan, 5) RIKEN Center for Molecular Imaging Science, Kobe, Japan. 演題3 F-18 fluoroacetate PET imaging in normal volunteers - Phase I clinical trial study. Ryuichi Nishii1, Tatsuya Higashi2, Shinya Kagawa2, Hiroshi Yamauchi2, Kenji Takemoto3, Hiroshi Mizuma4, Hirotaka Onoe4, Shigeki Nagamachi1, Youichi Mizutani1, Shozo Tamura1 1) Radiology, Faculty of Medicine, University of Miyazaki, Miyazaki, Japan, 2) PET Imaging, Shiga Medical Center Research Institute, Shiga, Japan, 3) Surgery, Kyoto University, Kyoto, Japan, 4) RIKEN Center for Molecular Imaging Science, Kobe, Japan. 演題4 Assessment of [18F]-Fluoroacetate PET/CT as a tumor-imaging modality: Comparison with [18F]-FDG in patients with liver tumor and in healthy volunteers. Tatsuya Higashi1, Ryuichi Nishii2, Shinya Kagawa1, Masaaki Takahashi1, Yoshihiko Kishibe1, Hiroshi Yamauchi1, Kazuyoshi Matsumura3, Masazumi Zaima4, Kenji Takemoto5, Etsuro Hatano5 1) Shiga Medical Center Research Institute, Moriyama, Japan, 2) Radiology, Miyazaki University, Miyazaki, Japan, 3) Gastroenterology, Shiga Medical Center, Moriyama, Japan, 4) Surgery, Shiga Medical Center, Moriyama, Japan, 5) Graduate School of Medicine, Kyoto University, Kyoto, Japan. 要旨 本邦初のPET薬剤である[18F]FACEの理研と宮崎大学による共同研究であり、基礎から臨床応用に関わる発表4演題です(基礎実験、新規合成法の開発、正常健常ボランティアと肝癌患者を対象にした臨床検討)。第1題は、ラット脳梗塞灌流モデルを用いた基礎実験であり、[18F]FACEは脳梗塞発症期において有益な診断マーカーであり脳梗塞領域を予見することが可能であるという結果です。 第2題は、新しい固相抽出技術を用いた[18F]FACE合成法の開発であり、従来法よりも簡便で高品位な薬剤の得ることが可能でした。 第3題は、正常健常ボランティアを対象にした検討で、新規PET薬剤[18F]FACEのヒトでの体内動態を詳細に報告しました。 第4題は、[18F]FACEを用いた肝癌患者を対象にした検討であり、[18F]FDGとの比較を報告しています。これらの4演題により、滋賀県立成人病センターでの[18F]FACEを用いた研究が世界をリードしており、今後の研究成果が期待される内容でありました。
理研CLSTとの共同研究の発表が最優秀発表賞を受賞しました。
開催日 2013年5月31日 学会名 第8回日本分子イメージング学会総会 開催地 横浜市 演者 水間広1)、加川信也2)、大野正裕1)、合瀬恭幸1)、林拓也1)、立花晃子1)、高橋和弘1)、東達也2)、西井龍一3)、尾上浩隆1) 1)理化学研究所・分子イメージング科学研究センター、2)滋賀県立成人病センター研究所・画像診断部門、3)宮崎大学医学部放射線科 演題 脳虚血-再灌流モデルおける2-[18F]fluoroacetateの脳内取り込みについて 要旨 第8回日本分子イメージング学会総会にて、県立成人病センター研究所・画像研究部門と理研CLSTとの共同研究の発表が最優秀発表賞を受賞しました。 理研CLSTとの共同研究の発表が最優秀発表賞を受賞したのは、同研究所が数年前から基礎及び臨床研究を進めている「新規PET薬剤フルオロ酢酸([18F]FACE)に関する研究」が国内で高く評価されたものです。 脳梗塞発症24時間以降の虚血部において、酢酸をフッ素標識した[18F]Fluoroacetate ([18F]FACE)の取り込みは、グリア細胞代謝の変化に起因して増加すると報告されているが、その詳細な集積機序は明らかにされていません。今回、ラット脳虚血-再灌流モデルにおいて、[18F]FACEの取り込みとグリア細胞との関係について虚血後経過時間による違いを検討し報告しました。
加川主任研究員が第8回日本分子イメージング学会総会にて発表しました。
開催日 2013年5月31日 学会名 第8回日本分子イメージング学会総会 開催地 横浜市 演者 加川信也1) 2)、矢倉栄幸3)、西井龍一4)、東達也1)、山内浩1)、川井恵一2)、渡邊裕之5)、木村寛之5)、小野正博5)、佐治英郎5) 1)滋賀県立成人病センター研究所・画像研究部門、2)金沢大学大学院・保健学科、3)住重加速器サービス、4)宮崎大学医学部放射線科、5)京都大学大学院薬学研究科 演題 新規アミロイドイメージング剤[18F]FPYBF-2合成法の検討 要旨 アルツハイマー病の主な特徴的病理学的変化である老人斑の沈着は、アルツハイマー病発症の最も初期段階より始まることから、脳内でβシート構造をとったアミロイドβタンパク質(Aβ)を主成分とする老人斑の検出は、アルツハイマー病の早期診断につながると考えられる。 これまで、我々は様々な候補化合物を検討し、その中で5-(5-(2-(2-(2-Fluoroethoxy)ethoxy)ethoxy) benzofuran-2-yl)-N-methylpyridin-2-amine(FPYBF-2)のAβイメージング剤としての有用性を報告してきた(Ono et al., J Med Chem, 54, 2971-9 2011)。本検討では、[18F]FPYBF-2の臨床使用に向けた標識合成を行ったので報告する。
山内副所長が第54回日本神経学会学術大会で発表しました。
開催日 2013年5月29日 学会名 第54回日本神経学会学術大会 開催地 東京 発表形式 ポスター発表 演者 山内浩 共同演者 東達也、加川信也、岸辺喜彦、高橋昌章 演題 アテローム硬化性頭蓋内脳主幹動脈閉塞性疾患における貧困灌流と脳卒中発生の関連 要旨 【目的】アテローム硬化性頭蓋外内頸動脈閉塞症患者においては、脳循環障害と脳卒中発生との関連は多くの研究で明らかにされている。しかし、アテローム硬化性頭蓋内脳主幹動脈閉塞性疾患患者における脳循環障害と脳卒中発生との関係については明らかではない。本研究の目的は、アテローム硬化性頭蓋内脳主幹動脈閉塞性疾患患者において、PET検査上貧困灌流がある患者は、ない患者に比べて、脳卒中発生率が高いかどうか検討することである。 【方法】アテローム硬化性頭蓋内脳主幹動脈閉塞性疾患(頭蓋内内頸動脈あるいは中大脳動脈狭窄または閉塞症)患者で、慢性期に、15O gasとPETを用いた脳循環動態評価を行った、無症候性患者51例(うち閉塞9例)と症候性患者88例(うち閉塞34例)(mRS≦2の例)を対象とした。病変側半球大脳皮質の酸素摂取率、脳血流量および血流量/血液量比の値に基づき、貧困灌流あり群となし群に分類し、2年間の脳卒中発生率を比較検討した。治療方針は、主治医がそれぞれの患者で決定した。 【結果】無症候性患者における貧困灌流の頻度(1/51)は症候性患者(12/88)に比べて有意に低かった(P < 0.05)。バイパス手術は無症候性患者2例(うち貧困灌流あり1例)と症候性患者19例(うち貧困灌流あり8例)に行われた。 2年間に、無症候性患者では同側脳梗塞の発生はなかったが、症候性患者5例が同側脳梗塞を再発した(内訳は、内科治療群で貧困灌流あり2例、内科治療群で貧困灌流なし2例、外科治療群で貧困灌流なし1例)。Cox比例ハザードモデルを用いて、内科治療群118例を対象とした多変量解析の結果、貧困灌流のみが同側脳梗塞発生の予測因子であることが判明した(P < 0.001)。症候の有無は有意な予測因子ではなかった。 【結論】アテローム硬化性頭蓋内脳主幹動脈閉塞性疾患患者においても、貧困灌流は同側脳梗塞発生の危険因子である。無症候性患者では貧困灌流の頻度が低い。
山内副所長が第26回国際脳循環代謝学会に座長、シンポジストとして参加し、発表しました。
発表日 2013年5月22日 学会名 第26回国際脳循環代謝学会 開催地 中国、上海 発表形式 シンポジウム口演 演者 山内浩 演題 Selective neuronal loss in chronic obstructive disease of the major cerebral arteries: A PET study 要旨 Background: In patients with atherosclerotic internal carotid artery (ICA) or middle cerebral artery (MCA) occlusive disease, hemodynamic cerebral ischemia may cause not only cerebral infarction but also minor tissue damage in the cerebral cortex that is not detectable as infarction on CT or MRI. Imaging of the central type benzodiazepine receptors (BZRs), which are expressed by most cortical neurons, has made it possible to visualize the neuronal alterations induced by ischemia in vivo in humans. Recognizing selective neuronal damage is important for understanding the pathophysiology of hemodynamic cerebral ischemia in atherosclerotic major cerebral artery disease. Observations: Chronic hemodynamic compromise causes selective neuronal damage. Using PET and 11C-Flumazenil, we showed that selective neuronal damage demonstrated as a decrease in BZR in the normal-appearing cerebral cortex was associated with increased oxygen extraction fraction (OEF) (misery perfusion) in patients with atherosclerotic ICA or MCA occlusive disease in the chronic stage. Follow-up examinations of the patients without ischemic episode showed that a decrease of BZR was associated with an increase of OEF (hemodynamic deterioration). Hemodynamic mechanism was also supported by the correlation of cortical neuronal damage with low-flow infarcts. In ICA or MCA occlusive disease, selective neuronal damage demonstrated as decreased cortical BZR was associated with the presence of borderzone infarcts, suggesting that hemodynamic ischemia leading to borderzone infarcts may cause selective neuronal damage beyond the regions of infarcts in the chronic stage. Selective neuronal damage has considerable impact on the functional outcomes of patients with ICA or MCA disease. Cortical neuronal damage demonstrated as decreased BZR was associated with a decrease in cortical oxygen metabolism, suggesting that the decreased BZR is accompanied by cortical dysfunction. Furthermore, a decrease in BZRs in the non-infarcted cerebral cortex was associated with executive dysfunction. Imaging of BZRs is useful as an objective measure of cognitive impairments. Conclusion: In atherosclerotic major cerebral artery disease, chronic hemodynamic cerebral ischemia causes selective neuronal damage demonstrated as decreased BZRs. Therapeutic strategies for preventing neuronal damage, including vascular reconstruction surgery and neuro-protective agents, is needed, especially when hemodynamic measurements detect chronic hemodynamic compromise. References: 1. Yamauchi H, Kudoh T, Kishibe Y, Iwasaki J,Kagawa S. (2005) Selective neuronal damage and borderzone infarction in carotid artery occlusive disease: a 11C-flumazenil PET study. J Nucl Med 46:1973-1979. 2. Yamauchi H, Kudoh T, Kishibe Y, Iwasaki J,Kagawa S. (2007) Selective neuronal damage and chronic hemodynamic cerebral ischemia. Ann Neurol 61: 454-465. 3. Yamauchi H, Nishii R, Higashi T, Kagawa S, Fukuyama H. (2009) Hemodynamic compromise as a cause of internal border-zone infarction and cortical neuronal damage in atherosclerotic middle cerebral artery disease. Stroke 40: 3730-3735. 4. Yamauchi H, Nishii R, Higashi T, Kagawa S, Fukuyama H. (2011) Silent cortical neuronal damage in atherosclerotic disease of the major cerebral arteries. J Cereb Blood Flow Metab 31:953-961 5. Yamauchi H, Nishii R, Higashi T, Kagawa S, Fukuyama H. (2011) Selective neuronal damage and Wisconsin Card Sorting Test performance in atherosclerotic occlusive disease of the major cerebral artery. J Neuro Neurosurg Psychiatry 82:150-156. コメント 当研究所は、アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞性疾患の11C-Flumazenil-PET研究を、世界で最も多数例行っている施設です。山内副所長は、これまで論文でも報告している研究成果を脳循環代謝の国際学会でアピールしました。
第2回 病理技術向上講座「病理解剖における検索法とその介助」を開催しました。
病理技術向上講座の第2弾です。病理解剖の概観と基礎から最新の知見までを講義形式で解説します。講師には、ハンガリーからSemmelweis University のGlasz 先生と天理医療大学の戸田好信先生を迎え、さらにコースディレクターの真鍋俊明先生が加わり、病理解剖の基礎的知識と手技・技術そして病理医と介助者の役割について学びます。病理担当の臨床検査技師にとっては、病理解剖介助業務を系統立てて学べる貴重な機会ですので、是非ご参加下さい。配布するハンドアウトは講演内容と同一の全日本語版です。
タイトル 第2回 病理技術向上講座「病理解剖における検索法とその介助」 開催日時 2013年5月11日(土)13:00 ~ 17:30 会場 栗東芸術文化会館 ”さきら” 中ホール 滋賀県栗東市へそ二丁目1-28 (地図) ※参加希望者多数のため会場が滋賀県立成人病センター講堂から上記に変更となっています。ご注意ください。 対象者 臨床検査技師及び医師 定員 200名(要申込・先着順) 参加費 無料(ハンドアウト付き) コースディレクター 真鍋俊明(滋賀県立成人病センター研究所 所長) 講師 真鍋俊明 (滋賀県立成人病センター研究所 所長) 戸田好信 (天理医療大学医療学部・臨床検査科 准教授) Tibor Glasz (Associate professor,2nd Department of Pathology Semmelweis University, Hungary) 申込方法 参加をご希望の方は下記までE-mailまたはFAXでお申し込みください。そのとき、タイトルを「病理技術向上講座参加申し込み希望」とし、氏名、所属、連絡先住所、電話番号・FAX 番号、E-mail アドレスをお書き添えください。 申込み・問合せ先 滋賀県立成人病センター研究所 横江 朋子 〒524-8524 滋賀県守山市守山5‐4‐30 TEL:077-582-6034 FAX:077-582-6041 E-mail:[email protected]
加川主任研究員を主体とするPET画像部門のメンバーが世界初となる新規PET薬剤の自動合成装置での製造に成功しました。
加川主任研究員を主体とするPET画像部門のメンバーが、京都大学と共同で開発した新規PET薬剤である[18 F]FPYBF-2(アミロイドイメージング剤)と[18 F]PTV-F1(肝臓における有機アニオントランスポーターイメージング剤)の自動合成装置での安定的な製造に成功しました(2月28日の短寿命放射性薬剤臨床利用委員会において、薬剤の安全性とその臨床利用の安全確保等において審議の上、承認済み)。今後、具体的な臨床応用については、別途研究プロトコールを計画し成人病センターで定める倫理委員会の審査に基づいて実施していく予定です。
「新規アミノ酸ポジトロン製剤を用いたテーラーメード癌分子標的診断法の開発」が「文部科学省科学研究費補助金、がん研究分野の特性等を踏まえた支援活動、研究報告集録」に掲載・発行されました。
平成23年「がん研究分野の特性等を踏まえた研究支援活動」研究班が発行する研究報告集録「文部科学省科学研究費補助金、がん研究分野の特性等を踏まえた支援活動、研究報告集録」が発行され、平成23年度がん研究支援対象の研究として、東達也総括研究員が執筆した「新規アミノ酸ポジトロン製剤を用いたテーラーメード癌分子標的診断法の開発」の研究報告が掲載されました。この「がん研究分野の特性等を踏まえた研究支援活動」は日本国内のがん研究分野の支援を目的として、各種の支援事業を行っており、その一事業として、研究成果の公開促進としての出版活動を行っています。今回の「文部科学省科学研究費補助金、がん研究分野の特性等を踏まえた支援活動、研究報告集録」はその一環として出版され、国内の大学、研究機関や図書館などに配布されます。東研究員は昨年度に文部科学省科学研究費補助金に採択された基盤研究Bである「新規アミノ酸ポジトロン製剤を用いたテーラーメード癌分子標的診断法の開発」に関して、その初年度の活動報告を執筆、掲載しました。
発行日 2013年4月1日 雑誌名 文部科学省科学研究費補助金、がん研究分野の特性等を踏まえた支援活動、研究報告集録 出版者 平成23年「がん研究分野の特性等を踏まえた研究支援活動」研究班 著者 東達也 題名 新規アミノ酸ポジトロン製剤を用いたテーラーメード癌分子標的診断法の開発 内容 フッ素標識人工アミノ酸等によるポジトロンエミッション断層撮影(PET)診断薬の安定的な合成法を確立、これらを用いたがん細胞のアミノ酸代謝を半定量化する非侵襲的なPET検査法を開発し、従来の18Fフルオロデオキシグルコース(FDG)を用いた糖代謝PET検査の欠点を補い、糖代謝PETや酢酸代謝PET等との併用等により総合的な糖・酢酸・アミノ酸代謝分子イメージングPET法を確立するという試みである。 対象疾患としては肝臓腫瘍、前立腺腫瘍などを考えている。予算交付が年度の後半であったため、まずは迅速な予算執行を心がけ、PET薬剤の新規合成装置の購入を予定、実際に購入、セッティングを行った。 年度内になんとか実際の合成検討が開始でき、まずは2-Amino-2-methyl-3-hydroxy-propanoic acid(α-MeSer)を出発原料として、様々な合成を行い前駆体の合成検討を開始した。前駆体合成条件の確立・最適化においては、有機合成に十分実績を有する大桃善朗准教授(大阪薬科大学大学院)との研究協力の体制作りが必須であり、現在体制作りのための協議を行っている。現在、試験的な分離・精製方法に関する検討を繰り返している。 並行して、類似PET薬剤であるフルオロ酢酸の合成検討が行われた。こちらは当施設に既存のPET薬剤合成装置が使用できるため、上記セッティング中も研究は継続可能であった。非常に進捗よく、すでに合成法が十分に確立された。動物実験なども含めた安全性試験などを終了の上、平成24年3月22日に当センター倫理委員会の承認を受け、健常ボランティアへの投与が認められた。健常ボランティアを募集し、平成24年度にはボランティア試験を進めて行く予定である。