山内副所長が第38回日本脳卒中学会総会で発表しました。
開催日 2013-03-21 学会名 第38回日本脳卒中学会総会 開催地 東京 発表形式 一般口演 演者 山内浩 演題 症候性アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞性疾患患者では経過観察中血圧と脳卒中再発の関係は灌流圧低下の有無により異なる 要旨 症候性アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞症患者では、血圧を下げることで脳循環が障害され、脳梗塞リスクが増大する懸念がある。本研究では、PETで脳循環障害の程度を評価し、その後の脳卒中発症リスクと血圧との関係が、脳循環障害の有無により異なっているか検討した。 [方法]症候性アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞性疾患(頭蓋外内頸動脈閉塞症、頭蓋内内頸動脈あるいは中大脳動脈狭窄または閉塞症)患者で、慢性期に、15O gasとPETを用いた脳循環動態評価を行ない内科的治療で経過観察した130例(mRS≦2)を対象とした(内頸動脈:頭蓋外閉塞61例,頭蓋内閉塞1例,狭窄13例,中大脳動脈:閉塞24例,狭窄31例)。経過観察中の血圧値、灌流障害(血流量/血液量比低下)の有無と、2年間の脳卒中再発率との関係をCox比例ハザードモデルを用いて解析した。 [成績]単変量解析では、病変血管支配領域の再発は、経過観察中の収縮期血圧値と 負相関し、その他の領域の再発は、血圧値と正相関した。経過観察中の血圧<130mmHg群は,>130mmHg群に比べて、血管支配領域脳梗塞再発リスクが有意に高く、灌流障害あり群でも,なし群に比べて、リスクが高かった。 多変量解析では、血圧130mmHgと灌流障害ありが、独立した有意な血管支配領域脳梗塞再発の予測因子であった。全脳卒中再発と収縮期血圧の関係は、灌流障害あり群では負相関,なし群では正相関し、両群で有意に異なっていた。その結果、全症例では、130-149mmHgで脳卒中リスクが最も低いJ-curveの関係を呈した。 [結論]脳主幹動脈閉塞性疾患では、経過観察中の血圧と脳卒中再発の関係は、灌流障害の有無で異なっていた。灌流障害のある例では血圧低値で再発リスクが高く灌流障害のない例では血圧高値で再発リスクが高い可能性がある。血圧コントロールに関して、灌流障害のある例では、灌流障害のない例とは異なった治療が必要であり、灌流障害の有無の正確な評価が、血圧のコントロールに必須である。
東総括研究員が執筆した日本内分泌・甲状腺学会雑誌の原著論文「甲状腺分化癌アイソトープ治療後の予後因子について」が発行されました。
日本内分泌・甲状腺学会が発行する機関誌・日本内分泌・甲状腺学会雑誌の最新号が発行され、今月の特集「新たなるエビデンスの蓄積を」の一論文として、東達也総括研究員が執筆した論文が掲載されました。東研究員は甲状腺分化癌に対する放射性ヨード内用療法(アイソトープ治療)の国内における第一人者として、アイソトープ治療の研究を進めており、今回「甲状腺分化癌アイソトープ治療後の予後因子について」と題した論文として執筆し、甲状腺分化癌に対するアイソトープ治療についての最新情報を、内分泌・甲状腺疾患に携わる国内の医師に提供しました。
雑誌名 日本内分泌・甲状腺学会会誌第30巻、(2013; 30: 23-25.) 出版社名 日本内分泌・甲状腺学会 著者 東達也 題名 甲状腺分化癌アイソトープ治療後の予後因子について 内容 甲状腺分化癌に対するアイソトープ治療の有用性はすでに確立され、予後因子としての解析も数多く報告されている。我が国でも2010年版甲状腺腫瘍診療ガイドラインが出版されたが、直前の2009年に米国甲状腺協会(American Thyroid Association/ ATA)の甲状腺癌診療ガイドライン改訂版も出版され、我が国のガイドラインには反映されていない新知見が掲載されている。 本稿では甲状腺分化癌アイソトープ治療後の予後において、アブレーション関連する予後因子、転移癌に関する予後因子、FDG-PETに関する予後因子の解析などを取りまとめて、2009年以降を中心とする文献的な検索結果として報告する。
東総括研究員が神戸薬科大学特別研究セミナー講演会にて教育講演を行いました。
兵庫県にある神戸薬科大学での特別研究セミナー講演会(第35回放射線取扱いに関する安全教育訓練(再教育)を兼ねる)において、東達也総括研究員が教育講演を行いました。「核医学診断・治療の臨床現状と展望」と題して行われた招待教育講演において、 東研究員は、我が国における核医学診断・治療の現状と今後の将来展望についての発表を行いました。あわせて福島原発事故以降クローズアップされた、公衆被ばくや医療被ばくへの憂慮や一部に見られた放射線やこれに関わる科学者などへの不信などについても討議し、これからの医療を支えていくであろう薬大の学生さんたちと貴重な意見の交換を行いました。講演後のディスカッションも含めて、活発な議論が交わされ、大変有意義な会となりました。
講演日 2013年3月7日 講演会名 神戸薬科大学 特別研究セミナー講演会(第35回 放射線取扱いに関する安全教育訓練(再教育)を兼ねる) 開催地 神戸薬科大学、兵庫県 発表形式 口演(招待講演) 演者 東達也 演題 核医学診断・治療の臨床現状と展望 要旨 核医学は放射性同位元素を含んだ薬物を体内に投与することで、患部・腫瘍などに特異的に取り込まれた放射性同位元素が放出する放射線(おもにγ線やβ線)を用いて、診断や放射線治療を行う医療分野で、国内でも戦後すぐから始まり、副作用の少ない一種の分子標的治療として最近再び注目されている。診断では旧来のシンチグラフィー以外に、SPECT/CT検査やPET/CT検査なども登場し、その診断能の向上が日常診療にはなくてはならないものとなっている。 治療は内照射や内用療法などとも言われ、我が国では、(1)バセドウ病、分化型甲状腺癌に対する放射性ヨウ素内用療法、(2)ストロンチウム-89を用いた転移性骨腫瘍の疼痛緩和療法、(3)イットリウム-90を用いた低悪性度B細胞性リンパ腫に対する放射免疫療法の3つが保険適応となっており、その有用性から近年盛んとなってきている。 しかし、内用療法の専用病室の不足が社会問題化するなど、数多くの問題を抱えている。核医学が放射線を用いた診断、治療である以上、被ばくの問題も避けては通れない。福島原発事故以降クローズアップされた、公衆被ばくや医療被ばくへの憂慮や一部に見られた放射線やこれに関わる科学者などへの不信などへの対応・対策についても討議を行った。
脳15 O gas PETは無症候性脳血管病変の脳梗塞発症予測に有用である -(論文発表)
MRIや脳ドックの普及により、偶然、無症候性脳主幹動脈閉塞性病変が発見されるようになりましたが、放置してよいのか、積極的に治療すべきなのか、はっきりしません。滋賀県立成人病センター研究所の山内副所長らは、15 O gas PETにより正確に脳の血流不足の程度を評価することで、どのような患者が脳梗塞を発症しやすいか判別できることを明らかにしました。無症候性の脳主幹動脈閉塞性病変例でも、PETで脳の血流不足(貧困灌流)を認める例では、脳梗塞発症リスクが高く、積極的な治療が必要です。研究成果は、2013年3月7日、米国神経放射線学会誌「AmericanJournal of Neuroradiology」にオンライン掲載されました。
Yamauchi H, Higashi T, Kagawa S, Kishibe Y, Takahashi M. Chronic HemodynamicCompromise and Cerebral Ischemic Events in Asymptomatic or RemoteSymptomatic Large-Artery Intracranial Occlusive Disease. AJNR AmericanJournal of Neuroradiology Published online before print March 7, 2013, doi:10.3174/ajnr.A3491
木下専門研究員が当院の疾病・介護予防シンポジウム「先制医療の一翼を担う『0次予防』とは」で発表しました。
「0次予防」とは発症を防ぐ1次予防(生活習慣改善やワクチン)、重症化を防ぐ2次予防(がん健診)、社会復帰をめざすの3次予防(リハビリ)と対比させ、1次予防よりもっと根元に近い部分、つまり体質(遺伝子)を知った上で積極的に病気を予防する医療(先制医療)を意味する表現としてながはま0次予防コホート事業が作った言葉です。ながはま0次予防コホート事業とは、長浜市と京大医学研究科が連携して実施する「市民の健康づくりの推進」と「医学の発展への貢献」を掲げた事業です。超高齢化社会を見据えて滋賀県立成人病センターに設置された疾病・介護予防センターの旗揚げを記念する本シンポジウムは、ながはま0次予防コホート事業に当初から参加されている京都大学大学院医学研究科 中山 健夫 教授(健康情報学)を基調講演にお招きしました。黒橋真奈美氏(滋賀県健康長寿課健康づくり担当主幹)、水田和彦医師(当院院長補佐・検診指導部長)、当研究所の木下がシンポジストとして参加しました。
木下は「遺伝子からみた病気の予防」のテーマで発表しました。ヒトゲノム解読完了から10年経った現在、予防に役立つ情報はいまだ得られていないが、健康な人を数万人規模で10年以上長期追跡するコホート事業と遺伝子解析の新技術によって、真に予防に役立つ情報が得られることが期待されている事を解説しました。これまでの遺伝子研究が役に立たなかった訳ではなく、古来言われている養生訓(食事・運動・規則的生活)に科学的な根拠を与えている事も解説しました。
ベセスダシステム婦人科細胞診研修会を開催しました。
タイトル ベセスダシステム婦人科細胞診研修会 開催日時 2013年2月23日(土)10:00~17:00 会場 滋賀医科大学医学部附属病院 検査部カンファレンス室 〒520-2192 滋賀県大津市瀬田月ノ輪町 講師 松並平晋氏(細胞検査士・ホロジックジャパン株式会社) 対象者 滋賀県在住の細胞検査士 細胞検査士クレジット有り 定員 20名(要申込・先着順) 参加費 無料 申込方法 E-mailもしくはFAXにて、氏名、所属、連絡先(住所、TEL、FAX、E-mail)、懇親会参加の有無を記入の上、下記までご連絡下さい。定員になり次第、締め切ります。 ※研修会終了後、松並氏を囲む懇親会(有料)を予定しています。参加希望の方は、懇親会参加とご記入下さい。 申込・問合せ先 滋賀県立成人病センター研究所 病理診断・教育支援機構 黒住 眞史 〒524-8524 滋賀県守山市守山5-4-30 TEL: 077-582-5034(直) FAX: 077-582-6041 E-mail: [email protected] 主催 滋賀県立成人病センター 後援 滋賀県臨床検査技師会 日本臨床細胞学会滋賀県支部
加川主任研究員がPET化学ワークショップ2013(第22回)にて発表しました
PET化学ワークショップ2013(第22回)において、加川主任研究員が発表を行いました。「フルオロ酢酸」と題して行われた発表において、加川主任研究員は昨年度より臨床応用されている本邦初のPET薬剤であるF-18標識フルオロ酢酸の有用性を報告し、滋賀県立成人病センター研究所におけるF-18標識フルオロ酢酸の合成方法について討議を行いました。
開催日 2013年2月9日 学会名 PET化学ワークショップ2013(第22回) 開催地 大分県 演者 加川信也 演題 フルオロ酢酸 要旨 我々は、[18F]2-fluoro-2-deoxy-D-glucose ([18F]FDG)とは異なる機能画像としてAcetateをフッ素標識したPET診断薬[18F]Fluoroacetate ([18F]FACE)に着目し、臨床応用へ向けた合成方法を確立させ、昨年度よりヒトへの臨床試験を開始したところである。 Fluoroacetateは、細胞内TCA回路にFluoroacetyl-CoAとして取り込まれ、citrate synthaseにてFluorocitrateに代謝された後、以降のaconitaseによる酵素反応を受けず、Fluorocitrateとして回路内にとどまる化合物として想定されている。今回は、Fluoroacetateの基礎と[18F]FACEの臨床使用に向けた標識合成について、過去の[18F]FACE合成法と比較して報告する。
東総括研究員が第118回核医学症例検討会にて発表しました
第118回核医学症例検討会において、東達也総括研究員が発表を行いました。「大血管壁にFDG集積亢進を認めた一症例」と題して行われた症例検討の発表において、 東研究員は特異なFDG-PET/CT画像を呈した血管炎の一例を症例報告し、血管炎診断でのFDG-PET/CTの留意点と有用性についての討議行いました。
開催日 2013年2月9日 学会名 第118回核医学症例検討会 開催地 ホテル ホップインアミング、尼崎市、兵庫県 発表形式 口演(一般演題) 演者 東 達也 演題 大血管壁にFDG集積亢進を認めた一症例 要旨 大血管壁にFDG集積亢進を認めた一症例を経験した。体重減少と易疲労感という非特異的な症状のみで、検査所見も貧血と血小板増多、炎症反応亢進のみであり、悪性腫瘍関連症状との鑑別診断に苦慮した一例で、FDG-PET/CTが診断に大きな決め手となった症例である。臨床経過を含めた症例報告に、血管炎の臨床概念の紹介を加えて発表した。FDG-PET/CTは悪性腫瘍の診断のみならず、血管炎の診断に有用であると考えられた。
木下専門研究員がワークショップ「個体レベルの がん研究による相乗効果」にて発表しました
ワークショップ「個体レベルの がん研究による相乗効果」は文部科学省科学研究費補助金新学術領域研究 「がん研究分野の特性等を踏まえた支援活動」によって、動物モデルをもちいたがん研究者間の交流を促進するために開催される学会です。木下専門研究員は京都大学医学研究科との共同で行なっている発がん機構に関する演題を2つ発表しました。
開催日 2013年2月7日 学会名 ワークショップ「個体レベルの がん研究による相乗効果」(第3回) 開催地 滋賀県大津琵琶湖ホテル 演者1 喜夛村次郎(京都大学医学研究科呼吸器外科学) 演題1 遺伝子変異誘導酵素AIDによる慢性肺障害後の肺組織再生と肺発癌 要旨1 肺がんの発生に遺伝子を変異させる作用を持つ酵素AIDが関与する可能性をマウスモデルを用いた実験で示し、がんの発生に組織の障害とその修復再生過程が関わる事を提唱しました。 演者2 野中太一郎(京都大学医学研究科免疫細胞生物学) 演題2 遺伝子変異誘導酵素AIDは紫外線非依存的な皮膚扁平上皮癌の発症を促進する 要旨2 皮膚がんの発生にAIDが関与する可能性をマウスモデルを用いた実験で示し、AIDによって皮膚細胞でがん関連遺伝子の変異が起こる事を発見しました。
脳梗塞後の神経機能回復を促進するメカニズムを解明~脳梗塞新規治療薬の開発に貢献する可能性~(論文発表)
滋賀県立成人病センター研究所の谷垣健二専門研究員らは、京都大学脳病態生理学講座(脳外科)高木康志准教授、宮本享教授らとの共同研究によって、脳梗塞によって生じる神経機能回復を促進するメカニズムを明らかにし、平成25年2月7日神経科学研究誌(Neuroscience Research) に報告しました。
脳梗塞などの脳血管疾患は、平成23年の時点では日本人の死亡要因の9.9% を占める重大な疾患です。脳梗塞の治療には、血管につまった血栓をとかす血栓溶解療法が主として用いられます。しかし、この治療法は、発症早期から開始することができなければ、その効果に限界があるため、新規の治療法の開発が待たれています。最近の基礎医学研究により、Notchシグナル阻害剤という分子標的薬が脳梗塞後の投与でも治療効果がある可能性が示され注目を集めていますが、その分子機構はよくわかっていませんでした。
脳梗塞は、脳血管が閉塞することによって脳血管の破綻、神経細胞死が起こることによって生じます。脳梗塞がおこった領域では、普段は神経細胞の保持のために神経細胞に栄養素の供給等をおこなっている複数のタイプのグリア細胞が増殖します(グリオーシス)。グリオーシスは、死んでしまった細胞が有害な物質を放出し、炎症を引き起こし更なる神経損傷を引き起こすのを食い止めるための防波堤の役割を果たしていますが、炎症が治まった後では、神経の再生を阻害するため、神経機能の回復を妨げるもとになってしまうと考えられています。
今回、谷垣研究員らは、マウスを対象に人工的に脳梗塞を生じさせることによって、Notchシグナル阻害剤が脳梗塞によるグリオーシスにおいて神経再生を阻害するタイプのグリア細胞(反応性アストロサイト)の増殖を減少させるが、神経再生を促進させる働きを持つ種類のグリア細胞(NG2陽性グリア細胞)の増殖には影響を与えないことを明らかにしました。この発見は、Notch シグナル阻害剤の脳梗塞の治療効果が、炎症の波及を阻止に影響が出ない程度にグリオーシスを抑制しつつ、神経再生を促進することによって生じる可能性を示唆しています。さらに、谷垣研究員は、Notchシグナル阻害剤が、Olig2 という様々な遺伝子の発現に関与している分子が細胞の核に留まって遺伝子発現を制御することを阻害することによって、反応性アストロサイト増殖を減少させることも発見しました。
このOlig2という分子は、反応性アストロサイトの分化だけでなく、脳腫瘍の形成にも関与している可能性がありますので、脳腫瘍の新たな治療法の開発にも貢献できる可能性があります。この研究成果は、グリオーシスを標的とした新規の脳梗塞治療薬の開発のために役立つと考えられます。
図: 脳梗塞によっておこるグリア細胞増殖において Notch シグナル阻害剤は反応性アストロサイトの増殖を特異的に抑制する
説明: 反応性アストロサイトは神経再生を阻害するが、NG2 陽性グリア細胞は神経再生を促進する。Notch シグナル阻害剤は反応性アストロサイトの増殖を特異的に抑制するが、NG2陽性グリア細胞には影響を与えない。
Notch signaling Regulates Nucleocytoplasmic Olig2 Translocation in Reactive Astrocytes Differentiation After Ischemic Stroke Takeshi Marumo, Yasushi Takagi, Kazue Muraki, Nobuo Hashimoto, Susumu Miyamoto, Kenji Tanigaki Neuroscience Research, DOI:10.1016/j.neures.2013.01.006
東総括研究員が共同執筆した日本核医学会雑誌の「Gamut of FDG-PET」が出版されました。
日本核医学会が発行する機関誌・日本核医学会雑誌「核医学」の最新号が発行され、東達也総括研究員がその一部を執筆担当した「Gamut of FDG-PET」が掲載されました。「Gamut」とは「全範囲」を意味する言葉で、「Gamut of FDG-PET」は一般の核医学診断医がFDG-PET(核医学検査の一つで、グルコースの類似体であるFDGを用いた陽電子断層撮影法(positron emission tomography; PET)のこと)診療に際して診断に難渋する疾患に遭遇した際に、身体の部位別にFDG集積をきたす疾患・病態を、通常見られるものから稀なものまで「Gamut(全範囲)」で網羅した、診断の助けとなる一種のガイド本です。東研究員は国内におけるFDG-PETの第一人者の一人として、他の6名の共同執筆者とともに原稿を執筆し、日常診療に役立つPETの診断のノウハウを広く国内の医師に提供しました。
雑誌名 日本核医学会雑誌「核医学」 第49巻(4):357-389, 2012 出版社 日本核医学会 著者 御前隆、石津浩一、石守崇好、工藤崇、中本裕士、東達也、細野眞 題名 Gamut of FDG-PET 内容 FDG-PETやFDG-PET/CT検査は、癌の画像診断法として急速に普及しつつある。悪性腫瘍と正常組織とのコントラストがよいことに加え、疾患の全身への拡がりの把握が容易なことが魅力であり、治療前の病期判定や治療後の再発・転移検索などにも幅広く用いられている。しかしこの検査は糖代謝の度合いを画像化するものであって、癌組織のみが特異的に描出されるわけではない。一部の良性腫瘍、活動性炎症、外傷などにも強い集積が見られることが知られており、また病変と紛らわしい生理的集積も全身のいろいろの部位に起こりうる。 そこで、部位別、臓器別に異常集積を示しやすい疾患や病態を列挙したリストを作成し、診療に役立つPETの診断の助けとなる一種のガイド本として、日本核医学会の学会員である核医学診断医の日常診療における利便性を考え、学会誌に寄稿した。この内容は日本核医学会のワーキンググループ活動「Gamut of FDG-PET作成委員会」として採用され、4年間の活動の成果を集約し、編集・編纂作業の末に完成したものである。
東総括研究員が論文「分化癌術後アイソトープ治療の予後と予後因子について」を発表しました。
日本内分泌・甲状腺学会が発行する機関誌・日本内分泌・甲状腺学会雑誌の最新号が発行され、今月の特集「再発甲状腺分化癌の治療戦略―外科治療とアイソトープ治療―」の一論文として、東達也総括研究員が執筆した論文が掲載されました。東研究員は甲状腺分化癌に対する放射性ヨード内用療法(アイソトープ治療)の国内における第一人者として、アイソトープ治療の研究を進めており、今回「分化癌術後アイソトープ治療の予後と予後因子について」と題した論文として執筆し、再発甲状腺分化癌に対するアイソトープ治療について解説し、日常診療に役立つアイソトープ治療の情報を、内分泌・甲状腺疾患に携わる国内の医師に提供しました。
雑誌名 日本内分泌・甲状腺学会会誌第29巻、(2012; 29: 275-277.) 出版社 日本内分泌・甲状腺学会 著者 東達也 題名 分化癌術後アイソトープ治療の予後と予後因子について 内容 再発甲状腺分化癌へのアイソトープ治療(RIT)の予後に関するデータは少ない。我が国のガイドラインでも局所再発・リンパ節転移例ではRITのみでの制御は難しく、外科処置を先行しRITは補助療法とすることが望ましいとされるが、同じ再発といっても初回手術時のアブレーションないしRITの有無を考慮して、対処すべきである。 アブレーション後再発では外科処置を優先し、RITはあくまで補助療法だが、RIT抵抗の可能性も念頭にFDG-PETでの集積も確認し、外照射や分子標的治療なども含めた総合治療を考慮すべきだろう。逆にRIT未治療の再発例にはRITを積極的に早期に施行すべきと考える。
谷垣専門研究員が第35回日本分子生物学会で発表しました。
開催日 2012年12月13日 学会名 第35回日本分子生物学会 開催地 博多 発表形式 谷垣健二 共同演者 鳥塚通弘1)、紀本創平1)、村木一枝2)、 岸本年史1) 1)奈良県立医科大学精神医学講座、 2)滋賀県立成人病センター研究所 演題 RBP-J conditional knockout マウスの行動学的解析 要旨 遺伝学的解析によってNotch4は統合失調症と関連すること、Notchシグナルの伝達に必須のgamma-secretase 活性が低下したラットはapomorphine への反応性が亢進していることが報告されている。これらの知見はNotch/RBP-J シグナルが統合失調症に関与する可能性を示唆している。Notch/RBP-J シグナルは胎児期の多様な発生段階を調節している。 しかしながら、成体の脳におけるその機能は未だ解明されていない。成体の中枢神経系でのNotch/RBP-J シグナルの機能を解明するため、我々は、神経系特異的RBP-J conditional knockout マウスを作製した。我々は、このマウスを用い行動学的解析を行い、ドーパミン刺激に対する反応性の検討を行い報告した。Notch/RBP-J シグナルによるドーパミン反応性の制御と統合失調症の病因との関係について議論を行った。
東総括研究員の第45回日本甲状腺外科学会での講演に関する記事が医学新聞「メディカルトリビューン」誌に掲載されました。
第45回日本甲状腺外科学会(はまぎんホール)において、東達也総括研究員が教育講演を行いましたが、これを取り上げた記事が医学新聞「メディカルトリビューン」誌に掲載されました。注目の学会発表・講演などを紹介する記事の一つとして、「集積進む甲状腺がんの予後のエビデンス」と題した記事が掲載され、平成24年10月05日開催のシンポジウム「新たなるエビデンスの蓄積を」が詳細に紹介されました。この中で、核医学治療の一つである131 Iを用いた放射性ヨード内用療法(radioiodine therapy; RIT)の第一人者として、教育講演を行った東研究員の報告が、見出し「再発早期のRITは良好な予後を示唆」として取り上げられ、東研究員が2011年に出版したJNM(北米核医学会雑誌)掲載論文の「被膜外浸潤、転移のある甲状腺がんでは甲状腺全摘の手術後、半年以内に引き続き131 Iを用いたRITを行わないと、その後の経過中の死亡率が上昇する」という内容等、甲状腺分化がんへのRITに関する生命予後などへの影響に関する報告が詳細に取り上げられています。
【掲載記事】Medical Tribune (メディカルトリビューン)2012年11月22, 29日Vol. 45, No. 47, 48、22ページ。メディカルトリビューン社のご好意により転載
木下専門研究員が金沢大学医学部で講義「がんの進化」を行ないました。
金沢大学医学部2回生の「生体分子と細胞の機能」の1コマを特別講義として5年前から担当しています。今年もがんの疫学から生物学的特性、進化的側面、ダーウィンの進化論、反復囚人のジレンマゲーム、がん細胞における協調戦略、遺伝子変異・抗がん剤耐性のメカニズムの解説などを行ないました。がんの分子標的薬を複数組合わせることによりがんが根治できる日が近づいていることを研究の世界情勢と併せて講義しました。
東総括研究員が放射性医学総合研究所で講演しました。
千葉県にある放射性医学総合研究所での理事長裁量経費創成型研究主催講演会において、東達也総括研究員が講演を行いました。「アイソトープ治療(RI治療) 我が国の現状と展望」と題して行われた招待講演において、 東研究員は、我が国におけるアイソトープ治療(RI治療)の現状と今後の将来展望についての発表を行いました。放射性医学総合研究所は放射線に関わる基礎研究、臨床研究、診断機器の開発、被ばく医療など幅広い分野で、国内の放射線関連医学をリードする研究所です。国内で始めて重粒子線治療を導入するなど放射線治療の国内拠点でもありますが、今後はアイソトープ治療の部門でも基礎部門、臨床部門を拡充していく方針となっています。我が国におけるアイソトープ治療の臨床的な見地からの現状総括と今後の将来展望に関して意見交換を行いたいということで、この分野の第一人者である東研究員が招待されました。講演後のディスカッションも含めて、2時間にわたって活発な議論が交わされ、大変有意義な会となりました。
開催日 2012年11月16日 講演会名 放射性医学総合研究所 理事長裁量経費創成型研究主催講演会 開催地 放射性医学総合研究所、千葉県 発表形式 口演(招待講演) 演者 東達也 演題 RI治療 我が国の現状と展望 要旨 アイソトープ治療(RI治療)は放射性同位元素を含んだ薬物を体内に投与することで、患部・腫瘍などに特異的に取り込まれた放射性同位元素が放出する放射線(おもにβ線)を用いて、身体の中から放射線治療を行う治療で、内照射や内用療法などとも言われている。 我が国では、(1)バセドウ病、分化型甲状腺癌に対する放射性ヨウ素内用療法、(2)ストロンチウム-89を用いた転移性骨腫瘍の疼痛緩和療法、(3)イットリウム-90を用いた低悪性度B細胞性リンパ腫に対する放射免疫療法の3つが保険適応となっており、近年盛んとなってきている。しかし、それぞれ問題点を抱えている。 1の分化型甲状腺癌に対する放射性ヨウ素内用療法は、放射線防護のために特別な入院病室が必要で、この病室不足のために国内の分化型甲状腺癌患者は、全国平均で半年程度の入院待ちを余儀なくされているという現状があり、大きな社会問題となっている。後2者の治療は現在問題なく行われているが、その認可は世界的に見てかなり遅く、いわゆる「ドラッグラグ」(世界的にすでに広く使われている医薬品の国内認可が遅れることで、国内医療が世界水準から大きく遅れてしまうこと)の典型であった。 世界的にはアイソトープ治療はさらに幅広い分野で行われており、多くの分野で良好な成績を残しているが、海外では普通に行われている治療が国内では不可能なため、海外渡航をする例や、国内承認がないものの、海外の医薬品を個人輸入して国内で治療を行うなど、大変な歪みを生んでいる。このような我が国の現状を総括し、国内のアイソトープ治療の問題点を提示し、打開策の提案などを行った。 また、近年 世界的にも注目されているα線放出核種を用いたアイソトープ治療など、世界的な動向も紹介し、これに向けての国内臨床の今後の展望をアイソトープ治療の臨床専門家として提示し、放射性医学総合研究所においてこれらの分野で基礎的研究に従事しておられる研究者の皆さんと幅広いディスカッションを行った。
東総括研究員が一部執筆を担当した日本消化器病学会雑誌の原著論文「肝内胆管癌におけるPET/CTの意義」が発行されました。
日本消化器病学会が発行する機関誌・日本消化器病学会雑誌の最新号が発行され、今月のテーマ「肝内胆管癌診療のトピックス」の一論文として、東達也総括研究員が一部執筆を担当した論文が掲載されました。東研究員は核医学検査の一つ陽電子断層撮影法(positron emission tomography; PET)の国内における第一人者として、京都大学肝胆膵移植外科の波多野悦朗講師と共同研究を進めており、その成果の一部を今回「肝内胆管癌におけるPET/CTの意義」と題した論文として執筆し、PET検査についての基礎と応用も含めて解説し、日常診療に役立つPETの情報を、消化器病に携わる国内の医師に提供しました。
雑誌名 日本消化器病学会会誌 第109巻、(2012; 109: 1878-1884.) 出版社 日本消化器病学会 著者 波多野悦朗、瀬尾智、竹本研史、北村好史、待本貴文、石井隆道、田浦康二朗、東達也、中本裕士、上本伸二 題名 肝内胆管癌におけるPET/CTの意義 内容 肝内胆管癌は、危険群の設定が困難で、無症状のまま進行し進行癌の状態で発見されることが多い。唯一の根治的治療は手術であるが、予後因子の一つとしてリンパ節転移の有無があげられる。2010年4月の診療報酬改訂により、PET/CTが肝内胆管癌においても保険適応となった。 PET/CTの意義は、術前の転移巣の検索、主腫瘍のFDGの取込みからの再発予測、リンパ節転移の診断にある。PET陽性リンパ節転移を伴う肝内胆管癌の切除後の予後は非常に不良であることから、PETは術前化学療法の適応決定に期待されている。また、肝内胆管癌術後の再発パターンは多様であることから、術後の経過観察にも有用であろう。
山内副所長が第24回日本脳循環代謝学会総会で発表しました。
開催日 2012年11月9日 学会名 第24回日本脳循環代謝学会総会 開催地 広島 発表形式 一般口演 演者 山内浩 演題 無症候性頭蓋内主幹動脈閉塞性疾患における脳循環障害と脳虚血イベント 要旨 【目的】無症候性アテローム硬化性頭蓋内主幹動脈閉塞性疾患患者では、一般的に脳虚血イベント発生リスクは低く、通常の内科治療が推奨される。しかし、一部に、より厳格な内科治療や外科的治療が必要なハイリスク患者が存在する可能性がある。本研究では、無症候性頭蓋内主幹動脈閉塞性疾患においてPET上の貧困灌流の存在が脳虚血イベントハイリスク患者を同定できるかどうか検討した。 【方法】1999年から2008年にPETを施行した、1)無症候性の頭蓋内内頸動脈あるいは中大脳動脈疾患患者51例、2)症候性脳主幹動脈閉塞性疾患に共存する無症候性の頭蓋内内頸動脈あるいは中大脳動脈疾患19例、および3)PET検査時に6ヶ月以上虚血発作の無い症候性頭蓋内内頸動脈あるいは中大脳動脈疾患患者19例、計89例を対象とした。 病変側半球大脳皮質の酸素摂取率、脳血流量、および血流量/血液量比の値すべてが、健常者の95%限界値を超えた貧困灌流あり群となし群に分類し、2年間の病変血管支配領域の脳虚血イベント(一過性脳虚血発作、TIAと脳梗塞)発生頻度を比較検討した。治療方針は、主治医がそれぞれの患者で決定した。 【成績】バイパス手術は貧困灌流がある患者5例中2例に、ない患者84例中2例に行われた。2年間の病変血管支配領域の脳虚血イベントは3例で発生し、TIA2例と脳梗塞1例であった。イベント発生率は、貧困灌流がある群で、40% (2/5)、ない群で、1.2%(1/84)であり、バイパス時を打ち切りとしたKaplan-Meier分析で有意差が認められた(log-rank test、P<0.0001)。貧困灌流の相対危険度は、83.1(95%信頼区間6.8-1017.4、 P<0.001)であった。血流量/血液量比低下あり群(2/9)となし群(1/80)の間にも発生率に差が認められた(P=0.0001)。 【結論】無症候性頭蓋内主幹動脈閉塞性疾患において、脳循環障害、特に貧困灌流を有する場合は脳虚血イベント発生リスクが高く、厳格な治療が必要である。
第44回滋賀県立成人病センター研究所セミナーを開催しました。
タイトル 第44回滋賀県立成人病センター研究所セミナー 開催日時 2012年11月6日(火)17時30分~18時30分 場所 滋賀県立成人病センター研究所会議室 演題 セマフォリンによるナビゲーションシステム 演者 生沼泉助教(京都大学大学院生命科学研究科生体システム学分野) 要旨 学習や記憶など、複雑な脳機能を可能とする基本要素は、神経細胞が神経突起を伸長し、お互いに接着することにより形成される複雑な神経回路であり、セマフォリンは元来、発達期の神経軸索のナビゲータ、「軸索ガイダンス因子」として同定された分子である。我々は、その受容体であるプレキシンがRasファミリー低分子量Gタンパク質、R-Rasに対する直接の不活性化因子GAPとして働き、R-Rasの働きにブレーキをかけるという、新規な情報伝達機構を明らかにした。 以来、その情報伝達機構が神経軸索に限らず、幅広い細胞の細胞運動や形態の制御において普遍的に用いられているシステムであるこが明らかになってきた。また、転移能が高い前立腺ガン細胞では、Plexinの細胞内領域に点変異が入っている変異型受容体が高発現しており、そのブレーキシステムの破綻が起こっていることがわかってきている。本セミナーでは、セマフォリンによるナビゲーションシステムの分子基盤、およびその働きについて概説したい。 参考文献 Science 305:862-865, 2004 Journal of Neuroscience 24:11473-11480, 2004 Journal of Cell Biology 173: 601-613, 2006 Proc. Natl.Acad.Sci.USA.104: 19040-19045, 2007 EMBO reports 10: 614-621, 2009 Journal of Neuroscience 13: 8293-8305, 2012 世話人 谷垣 健二
加川主任研究員がEANM(ヨーロッパ核医学会)で発表しました。
開催日 2012年10月30日 学会名 EANM 2012(25th Annual Congress of the European Association of Nuclear Medicine) 開催地 ミラノ(イタリア) 演者 加川信也1) 2)、西井龍一1) 3)、東達也1)、山内浩1)、水川陽介4)、竹本研史5)、波多野悦郎5)、立花晃子6)、高橋和弘6)、水間広6)、尾上浩隆6)、長町茂樹3)、川井恵一2) 、田村正三3) 1) 滋賀県立成人病センター研究所・画像研究部門、2) 金沢大学大学院・保健学科、3) 宮崎大学・放射線科、4)JFEテクノス、5) 京都大学大学院・肝胆膵・移植外科、6) 理化学研究所・分子イメージング科学研究センター 演題 Radiosynthesis of [18F]Fluoroacetate: Comparison between on-column hydrolysis and two-pot distillation procedure using a cassette-type multipurpose automatic synthesizer module 要旨 【目的】我々は、[18F]FDGとは異なる機能画像としてAcetateをフッ素標識したPET診断薬[18F]Fluoroacetate ([18F]FACE)に着目し、臨床応用へ向けた合成方法を確立させ、ヒトへの臨床試験を開始したところである。 Fluoroacetateは、細胞内TCA回路にFluoroacetyl-CoAとして取り込まれ、citrate synthaseにてFluorocitrateに代謝された後、以降のaconitaseによる酵素反応を受けず、Fluorocitrateとして回路内にとどまる化合物として知られている。本検討では、[18F]FACEの合成において、オンカラム加水分解法とtwo-pot蒸留法を比較検討したので報告する。 【方法】[18F]FACEの合成の初期過程は両法とも、前駆体Ethyl (p-tosyloxy)acetateを用いてフッ素化反応を行い、中間体を得た。その後、オンカラム加水分解法では、逆相カラムに中間体をトラップさせた後、カラム上でNaOHを用いて加水分解を行った。一方、two-pot蒸留法では、中間体を蒸留しNaOHにバブリングさせて加水分解をおこなった後、イオン交換カラムで精製して[18F]FACEを得た。 【結果・考察】両法とも、合成時間45分以内、放射化学的純度99%以上、比放射能74 GBq/µmol以上で変わりなかったが、two-pot蒸留法による放射化学的収率は62.4%であり、オンカラム加水分解法(42.7%)よりも優れた合成方法であった。
東総括研究員ががん診療ガイドライン関係委員会全体会議に参加しました。
第50回日本癌治療学会学術総会(パシフィコ横浜)会期中に行われた日本癌治療学会のがん診療ガイドライン関係委員会全体会議に、東研究員が参加し、診療ガイドラインの改訂等について討議いたしました。
東研究員はアイソトープ治療分野の専門家として、日本内分泌外科学会、日本甲状腺外科学会が中心となって一昨年執筆・作成・刊行した「甲状腺腫瘍診療ガイドライン2010」(ISBN:978-4-307-20283-1、金原出版株式会社)の診療ガイドライン作成委員として参加・執筆し、現在も引き続き診療ガイドライン作成委員会に参加し、平成26年頃の改訂第二版の出版を目標として活動しています。
東研究員は、国内のがん診療ガイドラインの統合とレベルアップを目的に創設された「日本癌治療学会がん診療ガイドライン評価委員会」の委員も同時に務めており、今回のがん診療ガイドライン関係委員会全体会議には、甲状腺腫瘍診療ガイドライン作成委員会の代表の一人として参加しました。「がん診療ガイドライン評価委員会により行われた甲状腺腫瘍診療ガイドラインへの評価」に関する活動も行なっており、これに関する討議も今回の会議では行なわれました。
東総括研究員が執筆した日本医師会雑誌の生涯教育シリーズ「消化器疾患診療のすべて」が発行されました。
日本医師会が発行する機関誌・日本医師会雑誌においてシリーズ化発行されている「生涯教育シリーズ」の最新号が、「消化器疾患診療のすべて」として発行され、東達也総括研究員がその一部を執筆担当しました。
東研究員は核医学検査の一つ陽電子断層撮影法(positron emission tomography; PET)の国内における第一人者として、「消化管疾患の検査法:PET」と題した原稿を執筆し、一般の医師が診療に際して最新の医療を再確認するこのシリーズにおいて、PET検査についての基礎と応用などを解説し、日常診療に役立つPETの最新情報を広く国内の医師に提供しました。
雑誌名 日本医師会雑誌第141巻、特別号(2)生涯教育シリーズ「消化器疾患診療のすべて」 出版社 日本医師会 著者 東達也 題名 消化管疾患の検査法: PET 内容 PETは陽電子断層撮影(positron emission tomography)の略で、陽電子が放出する消滅放射線を検出し、体内の薬剤分布を画像化する検査で、糖代謝を反映したF-18標識フルオロデオキシグルコース(FDG)を用いたFDG-PETが一般的である。 CTと同時撮影するPET/CTが現在主流で、総合画像診断として消化器系腫瘍に限らず、多くの腫瘍でステージングや治療効果判定、再発診断などに用いられる。本稿ではPETに関する基礎と応用などを解説し、日常診療に役立つPETの最新情報を提供する。
東達也総括研究員が執筆した英文医学書籍「Treatment of Thyroid Tumor」が発刊されました。
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会が2010年に編集・刊行した「甲状腺腫瘍疾患 診療ガイドライン」の英語版が、「Treatment of Thyroid Tumor」として発行され、東達也総括研究員がその一部を執筆担当しました。甲状腺腫瘍疾患における日本での標準診療を明らかにし、将来に向けてあるべき理想の診療方法を提示することを目的とした「甲状腺腫瘍疾患 診療ガイドライン 2010年版」(東達也総括研究員が一部執筆担当)は2010年に刊行され、国内での甲状腺腫瘍診療に大きな影響を与えていました。今回国内でのコンセンサスなどを網羅したこのガイドラインを英文に直し、海外にも発信しようという目的で、「Treatment of Thyroid Tumor」と題して国際医学雑誌社であるSpringer社から発行され、東研究員は核医学治療の一つである131 Iを用いた放射性ヨード内用療法の第一人者として、「Radiation Therapy」と題した一章の原稿を執筆し、放射性ヨード内用療法についての基礎と応用などを解説し、国内の現状や世界的な医療の流れなどの最新情報を広く国内の医師に提供しました。
※以降は下記表記に読み替えて記載しています。
書籍名 Treatment of Thyroid Tumor: Japanese Clinical Guidelines. 出版社 Springer社 (ISBN 978-4-431-54048-9) 著者 Seigo Kinuya, Naoyuki Shigematsu, Yasushi Noguchi, and Tatsuya Higashi (東 達也). 担当章名 Radiation Therapy (p231-p268) 内容 甲状腺分化癌に対する内用療法・radioisotope therapy (RIT)とは経口投与した放射性ヨードI-131が甲状腺組織や癌の転移巣に選択的に取り込まれ、内部被ばくにより組織破壊を起こさせる治療法である。組織選択性が高いため無駄な被ばくが少なく、131Iの放出するβ線(606 keV)は生体内飛程が2mm程度と短いため近傍組織への悪影響なく安全に治療が出来る。 同時に放出されるγ線(364 keV)はシンチにて集積を確認できる反面、周囲への被ばくが大きく、13.5mCiを超える投与量では隔離病室での入院が必要である。 我々ガイドライン委員は、2010年までのこの分野における文献を網羅的に検索し、医学的に高い価値のある重要論文をエビデンスとして挙げ、甲状腺分化癌に対するRITにおける標準治療戦略などをクリニカルクエスチョンとして詳細・明快に提示した。 近年RITを巡る治療環境は大きく変化し、DPCシステムの導入以来RITの採算性は悪化、高額な管理運営費の必要な隔離病室の減少傾向が続いている。高リスク分化癌では転移巣がなくても術後のアブレーション(残存甲状腺破壊)を推奨する世界的な潮流を反映し、分化癌に対する治療方針は国内でも半葉切除・亜全摘+経過観察から全摘+アブレーションへ大きく傾いている。 アブレーション患者の増加は隔離病室の稼働率上昇を来たし、入院待ち半年以上という施設も増えつつある。2010年より一部症例で30mCiで外来でのアブレーションが認められた。また放射線治療病室管理加算や放射性同位元素内用療法管理料も導入され、やや採算面も緩和された。リコンビナントヒトTSHもアブレーション準備での保険適応が認められる予定である。
第2回びわ湖細胞病理テュートリアルを開催しました。
タイトル 第2回びわ湖細胞病理テュートリアル 開催日時 2012年10月13日(土)13:30~14日(日)12:00 場所 ピアザ淡海(おうみ)滋賀県立県民交流センター大会議室 大津市におの浜1丁目1番20号 対象 病理医、細胞検査士及び細胞診に興味をもつ医師、臨床検査技師 コースディレクター 真鍋俊明 (滋賀県立成人病センター研究所) コースオーガナイザー 南口早智子 (京都大学医学部附属病院病理診断科) 講師 Richard M DeMay, MD (Professor and Director, Div of Cytopathology, Department of Pathology, The University of Chicago) Rana S Hoda, MD (Professor, Cornell University Medical College) Syed A Hoda, MD (Professor, Pathology, Weill Medical College of Cornell University) 山城勝重 (北海道がんセンター臨床研究部長) 南口早智子 (京都大学医学部附属病院病理診断科) 定員 100名 会費 20,000 円(聴講、ハンドアウト。講義 CD 代を含む) 特典 病理専門医及び細胞検査士の方は資格更新のための参加クレジットが取得できます。 申込方法 参加をご希望の方は E-mail または FAX でお申し込み下さい。その時、タイトルを「第2回びわ湖細胞病理テュートリアル参加申込み希望」とし、氏名、所属、連絡先住所、電話番号・FAX 番号、E-mail アドレスをお書き添え下さい。確認後、詳細な案内を含む書類をお送り致します。 概要 細胞診の概観と最新の知見を講義形式で解説するテュートリアルの第2回目です。講師には、シカゴ大学の DeMay 教授、コーネル大学ワイル医科大学の Rana Hoda 教授、Syed Hoda 教授と北海道がんセンターの山城勝重臨床研究部長及び京都大学の南口早智子准教授を迎え、子宮頚部、リンパ節、尿の細胞病理について学びます。 今回は、“事前実習とその解説”も加え、より積極的に参加して頂けるように工夫しました。外国からの講師の講演がより良く理解できるように、テキストは講演内容と同一の日本語版としています。また、講演内容と同じ PDF 化したスライドの DVD を配布します。 連絡先 横江朋子 (TEL: 077-582-6034, FAX: 077-582-6041, E-mail: [email protected] )
加川主任研究員が第52回日本核医学会学術総会で発表しました。
開催日 2012年10月12日 学会名 第52回日本核医学会学術総会 開催地 札幌市 演者 加川信也1) 2) 共同演者 西井龍一1) 3)、東達也1)、岸辺喜彦1)、高橋昌章1)、高橋和弘4)、水間広4)、尾上浩隆4)、竹本研史5)、川井恵一2)、山内浩1) 1) 滋賀県立成人病センター研究所、2) 金沢大学大学院医学研究科、3) 宮崎大学・放射線科、4) 理化学研究所・分子イメージング科学研究センター、5) 京都大学大学院・肝胆膵・移植外科 演題 [18F]Fluoroacetateの合成法の開発:オンカラム加水分解法とtwo-pot蒸留法の比較 要旨 我々は、[18F]FDGとは異なる機能画像としてAcetateをフッ素標識したPET診断薬[18F]Fluoroacetate ([18F]FACE)に着目し、臨床応用へ向けた合成方法を確立させ、ヒトへの臨床試験を開始したところである。本検討では、[18F]FACEの合成において、オンカラム加水分解法とtwo-pot蒸留法を比較検討したので報告する。 [18F]FACEの合成の初期過程は両法とも、前駆体Ethyl (p-tosyloxy)acetateを用いてフッ素化反応を行い、中間体を得た。その後、オンカラム加水分解法では、逆相カラムに中間体をトラップさせた後、カラム上でNaOHを用いて加水分解を行った。 一方、two-pot蒸留法では、中間体を蒸留しNaOHにバブリングさせて加水分解をおこなった後、イオン交換カラムで精製して[18F]FACEを得た。両法とも、合成時間45分以内、放射化学的純度99%以上、比放射能74 GBq/µmol以上で変わりなかったが、two-pot蒸留法による放射化学的収率は62.4%であり、オンカラム加水分解法(42.7%)よりも優れた合成方法であった。
山内副所長が第52回日本核医学会学術総会で発表しました。
開催日 2012年10月12日 学会名 第52回日本核医学会学術総会 開催地 札幌市 発表形式 口演 演者 山内浩 共同演者 東達也、加川信也、高橋昌章、岸辺喜彦 演題 PETは進歩した近年の内科治療下でも症候性脳主幹動脈閉塞症における脳梗塞再発を予測できるか? 要旨 【目的】症候性脳主幹動脈閉塞症患者において、近年の進歩した内科治療下でも1990年代と同様に、PETが脳梗塞再発を予測できるか検討した。 【方法】症候性の頭蓋外内頸動脈閉塞症、又は頭蓋内内頸動脈あるいは中大脳動脈疾患患者で、1999年から2008年にPETを施行し内科治療をうけた130例を対象とした。血管病変側大脳皮質の酸素摂取率、血流量、および血流量/血液量比の値に基づき、健常者の95%限界値により、貧困灌流あり群となし群に、又、酸素摂取率により絶対値増加群正常群、および患側健側比増加群正常群に分類した。 【結果】2年間の患側脳梗塞再発率は、1)貧困灌流あり群となし群で25.0% (4/16)と2.6%(3/114) (P<0.0005)、2)酸素摂取率絶対値増加群と正常群で12.5% (4/32)と3.1%(3/98) (P<0.05)、3)酸素摂取率患側健側比増加群と正常群で9.1% (4/44) と3.5%(3/86) (P=0.17)であった。 【考察】酸素摂取率絶対値増加、および血流量低下と血流量/血液量比低下を加えた貧困灌流は、近年の内科治療下でも症候性脳主幹動脈閉塞症の脳梗塞再発予測因子である。
東総括研究員が第52回日本核医学会学術総会で教育講演を行いました。
第52回日本核医学会学術総会において、東達也総括研究員が教育講演を行いました。学会員を啓蒙しようという目的で開催される恒例の教育講演のセッションの中で、核医学治療の一つである131 Iを用いた放射性ヨード内用療法の第一人者として、教育講演を担当しました。東研究員は131 Iを用いた放射性ヨード内用療法の基礎と実際を詳細に講義しました。さらに近年話題となった、2011年出版のJNM(北米核医学会雑誌)掲載の自身の論文も紹介しました。「被膜外浸潤、転移のある甲状腺がんでは甲状腺全摘の手術後、半年以内に引き続き131 Iを用いた放射性ヨード内用療法を行わないと、その後の経過中の死亡率が上昇する」という内容に対し、今回も大きな反響がありました。
※以降は下記表記に読み替えて記載しています。
開催日 2012年10月12日 学会名 第52回日本核医学会学術総会 開催地 ロイトンホテル、札幌、北海道 発表形式 口演(教育講演) 演者 東達也 演題 内用療法の基礎と実際131I治療を中心に 要旨 甲状腺分化癌に対する内用療法・radioisotope therapy (RIT)は1940年代より開始され、日本でもBasedow病や甲状腺分化癌に対し保険診療として行われてきた。正常甲状腺細胞は甲状腺ホルモン合成のためヨードを取り込む性質を有し、Basedow病ではさらに亢進している。分化癌も同様の性質を有し、ヨードの有効な集積が約2/3程度に見られる。 RITとは経口投与した放射性ヨード131Iが甲状腺組織や癌の転移巣に選択的に取り込まれ、内部被ばくにより組織破壊を起こさせる治療法である。組織選択性が高いため無駄な被ばくが少なく、131Iの放出するβ線(606 keV)は生体内飛程が2mm程度と短いため近傍組織への悪影響なく安全に治療が出来る。同時に放出されるγ線(364 keV)はシンチにて集積を確認できる反面、周囲への被ばくが大きく、13.5mCiを超える投与量では隔離病室での入院が必要である。 近年RITを巡る治療環境は大きく変化している。DPCシステムの導入以来RITの採算性は悪化、高額な管理運営費の必要な隔離病室の減少傾向が続いている。高リスク分化癌では転移巣がなくても術後のアブレーション(残存甲状腺破壊)を推奨する世界的な潮流を反映し、分化癌に対する治療方針は国内でも半葉切除・亜全摘+経過観察から全摘+アブレーションへ大きく傾いている。 アブレーション患者の増加は隔離病室の稼働率上昇を来たし、入院待ち半年以上という施設も増えつつある。我々は転移のある分化癌術後RIT例を解析し、全摘術後の初回RITまでの期間が半年を超えるとその後死亡率が4倍以上上昇することを報告した(JNM2011;52:683-9)。ますますRITへのニーズは高まってきている。 これに対し、2010年より一部症例で30mCiで外来でのアブレーションが認められ、現在癌に対するRITの約20%が外来アブレーションとなった。また放射線治療病室管理加算や放射性同位元素内用療法管理料も導入され、やや採算面も緩和された。2012年にはリコンビナントヒトTSHもアブレーション準備での保険適応が認められ、QOLの高いRITが可能となった。RITを取り巻く医療環境は十分でないが、速やかに安全な治療が提供できるように環境整備を進めて行くことが我々の使命である。
東総括研究員が第52回日本核医学会学術総会で教育講演を行いました。
第52回日本核医学会学術総会において、東達也総括研究員が一般講演を行いました。当研究所が日本で始めて開発した新規PET製剤であるMeAIB(メチルエーアイビー)の呼吸器分野と泌尿器分野における臨床応用をそれぞれ報告いたしました。胸部領域ではFDG-PET など通常の診断が難しいサルコイドーシスなどを対象としたMeAIB-PET診断の有用性が高く評価されました。泌尿器系ではMRIでもMeAIB でもサイズが小さいものでは診断に限界があるとの発表で、今後の研究の方向性に関して討議されました。
開催日 2012年10月11日 学会名 第52回日本核医学会学術総会 開催地 ロイトンホテル、札幌、北海道
発表形式 口演(一般講演)1 演者 東達也 共同演者 加川信也、岸辺喜彦、高橋昌章、山内浩、西井龍一(宮崎大学) 演題 アミノ酸ポジトロン製剤MeAIBを用いた胸部腫瘍PET診断の経験 要旨 【目的】アミノ酸トランスポーターsystem-Aを介するC-11メチルAIB ([N-methyl-11C]a-methylaminoisobutyric acid ([C-11]-MeAIB))の胸部腫瘍PET診断における有用性を検討する。 【方法】対象は66+/-13歳、男性40例、女性24例の59患者(64検査)。基礎疾患は、肺癌25例、サルコイドーシス14例、悪性リンパ腫1例、その他の癌2例、その他の非悪性疾患22例。全例FDG-PET検査を施行後、再検討目的で紹介され、MeAIB-PETを行った。 【成績】悪性腫瘍集積の平均はSUVmaxでMeAIB: 4.2+/-2.0, FDG: 10.2+/-5.9であった。縦隔リンパ節の診断では、FDGにおいて偽陽性が大半であったのに対し、MeAIBではサルコイドーシスでMeAIB集積がほとんど見られず、FDG集積とは好対照であった。肺野・縦隔総合しての診断能は鋭敏度、特異度、正診率それぞれFDGvsMeAIBで89%,31%,56% vs 86%,75%,80%であった 。 【結論】MeAIBは胸部腫瘍診断において良悪性鑑別診断能が高く、サルコイドーシスなどの炎症性疾患との鑑別に有用であった。
発表形式 口演(一般講演)2 演者 東達也 共同演者 加川信也、岸辺喜彦、高橋昌章、山内浩、西井龍一(宮崎大学)、 成人病センター泌尿器科:石戸谷哲、植村祐一、牛田博、大西裕之 演題 アミノ酸ポジトロン製剤MeAIBによる前立腺癌PET診断 要旨 【目的】FDGによる前立腺癌PET診断は難しいとされるが、MeAIBの前立腺癌PET診断における有用性を検討する。 【方法】対象は67.2±5.8歳、男性18例。全例前立腺生検により腫瘍組織を確認後、CT等にてあきらかな転移がなく、前立腺全摘を予定している症例。FDG-PET、MeAIB-PET、MRI、骨シンチ検査を施行、前立腺全摘を受け、病理診断でも組織を確定した。PET検査は、アミノ酸PET製剤MeAIBを使用し、FDG-PET、MRIでのDWIとの比較検討を行った。 【成績】腫瘍集積の平均はSUVmaxでFDG: 4.0±2.7、MeAIB: 3.4±1.9であった。鋭敏度はFDG、MeAIB、MR/DWIそれぞれ8/18, 11/18, 11/18だった。MRは2例でMeAIB陰性例を、MeAIBは2例でDWI陰性例を指摘し、相補的であった。いずれのmodalityでもStageI-IIは診断率が低く、StageIII以上ではMeAIB、MRで高率だった。病理組織との対比ではあきらかな傾向を認めなかった。 【結論】MeAIBは前立腺癌診断においてDWIの診断能とほぼ同等で相補的、両者併用で診断能は向上した。
東達也総括研究員が第45回日本甲状腺外科学会にて講演しました。
第45回日本甲状腺外科学会において、東達也総括研究員が教育講演を行いました。近年大きな話題となった甲状腺関係の論文の著者を招いて、甲状腺診療の新しい潮流を紹介し、学会員を啓蒙しようという目的で開催されたシンポジウム「新たなるエビデンスの蓄積を」の中で、核医学治療の一つであるI-131を用いた放射性ヨード内用療法の第一人者として、教育講演に招かれました。
東研究員は131 Iを用いた放射性ヨード内用療法分野で話題となった論文の著者として、2011年に出版したJNM(北米核医学会雑誌)掲載論文を紹介しました。「被膜外浸潤、転移のある甲状腺がんでは甲状腺全摘の手術後、半年以内に引き続き131 Iを用いた放射性ヨード内用療法を行わないと、その後の経過中の死亡率が上昇する」という内容に対し、今回も大きな反響がありました。学会前には事前に医学新聞のメディカルトリビューンの取材の許可願もあり、今後本講演が記事として取り上げられるものと考えています。
※以降は下記表記に読み替えて記載しています。
開催日 2012年10月5日 学会名 第45回日本甲状腺外科学会 開催地 はまぎんホール、横浜市、神奈川県 発表形式 口演(教育講演) 演者 東達也 演題 甲状腺分化癌アイソトープ治療後の予後因子について 要旨 甲状腺分化癌に対するアイソトープ治療(RIT)の生命予後などへの影響に関してはいまだエビデンスが十分でない。 我々は被膜外浸潤、転移のある分化癌術後RIT198例を後顧的に検討した(JNM2011;52:683-9)。対象は初発手術内訳と初回RITの時期から4群に分けられた:初発時迅速全摘後RIT例82例、半切後再発に対するRIT例59例、全摘後の観察中の再発後RIT例42例、(詳細不明15例)。 これら全例を解析し、単変量解析で有意であった因子を用いて多変量解析を行い、独立の生命予後因子として、11)患者年齢、2)初回RIT時シンチでの集積状態、3)初回RIT時の遠隔転移状況、4)全摘手術後の初回RITまでの期間、が有意であった。特に4)全摘手術後の初回RITまでの期間が180日を超えた場合、その後経過中の死亡率が4倍以上上昇することを報告した。 なお、4)の全摘手術後の初回RITまでの期間は、180, 365, 1000日いずれで区切っても生命予後に相関し、180日未満での解析ではあきらかな有意差を示さなかった。また、4)の全摘手術後の初回RITまでの期間が180日を超えた場合の生命予後への影響は、45歳以上の患者、治療時のサイログロブリン値高値例、肺転移症例、骨・脳・肝転移症例のいずれのサブグループでも有意を示した。 さらに、このJNM報告例のうち初発時RIT治療例と再発後RIT治療例を分けてサブ解析を行った。RIT時の転移状況は初発例(リンパ節転移まで:25例、肺転移まで:38例、骨転移以上:19例)、半切再発例(リンパ節転移まで:6例、肺転移まで:38例、骨転移以上:15例)、全摘再発例(リンパ節転移まで:8例、肺転移まで:26例、骨転移以上:8例)。 初発例、半切再発例、全摘再発例において、RIT後の予後、および初発手術時(半切ないし全摘の早い方)からの予後には有意差がなかった。半切後再発RIT例と全摘後再発RIT例の間にもあきらかな予後の差はなかった。再発例101例の多変量解析では、RIT後の予後因子として1) 初回RIT時シンチでの集積状態、2)初回RIT時の遠隔転移状況、3)全摘手術後の初回RITまでの期間が挙げられた。 特に3)はその後の予後に大きく影響し、180日を超えるとその後経過中の死亡率が15倍以上上昇するとの結果を示した。初回手術が半切か全摘かは予後への影響が薄かった。以上、再発症例は局所治療のみでは予後の悪化する可能性も高く、再発後には速やかに(全摘・)RITを含めた集学的治療へ進むべきで、再発早期のRIT施行は比較的良好な予後につながることが示唆された。
東達也総括研究員が第48回日本医学放射線学会秋季臨床大会にて講演を行いました。
第48回日本医学放射線学会秋季臨床大会において、東達也総括研究員が教育講演を行いました。「核医学治療の基礎と現状 131 I」と題して行われた教育講演において、 東研究員は核医学治療の一つである131 Iを用いた放射性ヨード内用療法の基礎と現状について講演し、内用療法の有用性と内用療法を取り巻く国内の医療環境、とくに治療施設不足に伴う核医学診療の窮状について報告しました。
※以降は下記表記に読み替えて記載しています。
開催日 2012年9月30日 学会名 第48回日本医学放射線学会秋季臨床大会 開催地 長崎新聞文化ホール、長崎市、長崎県 発表形式 口演 演者 東達也 演題 核医学治療の基礎と現状 131I 要旨 131I 放射性ヨード内用療法は1940年代から用いられる歴史ある治療で、重篤な副作用もまれな、安全かつ効果的な「分子標的治療」である。 日本では施設数の絶対的不足等から、外科的にも「半切除+再発時の局所切除」などで対応され、これまでヨード治療はあまり盛んではなかった。 一方、世界的には「全摘+ヨード治療」が標準になりつつあり、日本国内でも内分泌・甲状腺外科学会編で「甲状腺腫瘍診療ガイドライン」が刊行され、 「全摘+アブレーション」が推奨された。 しかし、日本では甲状腺癌に対する放射性ヨード内用療法ベッド数の絶対的不足はさらに進んでおり、ヨード治療利用困難な地域も多く、遠隔転移が多数を占めるような地域と、アブレーションでどんどん早めに治療が進む地域もあり、地域格差も生まれている。 また、保険上の点数評価の低さなどから、施設の運営維持が難しく、利用可能な施設ベッドの減少がますます進んでおり、入院待ちが半年以上となる施設が半数近くにのぼり、予後にも直接関連する大きな社会問題化となっている。 この問題に対処するため、転移のない甲状腺癌術後のアブレーションに対する30mCiの外来治療が昨年より開始された。 保険点数もやや改善され、改善が期待されるが、関係者の皆さんのなお一層のご協力をお願いしたい。
東達也総括研究員が滋賀県立成人病センター第3回がん診療グランドセミナーにて講演を行いました。
開催日 2012年9月29日 学会名 滋賀県立成人病センター第3回がん診療グランドセミナー 開催地 滋賀県立成人病センター研究所講堂 発表形式 口演 演者 東達也 演題 がん診療におけるPETの現状と将来展望 要旨 •腫瘍FDG-PET, PET/CTは早期胃がんを除くすべての悪性腫瘍が保険適応の対象となり、日常のがん臨床において無くてはならないものとなった。 •PET/CTでは高速化したMD-CTを搭載しており、形態診断と代謝診断が同時に簡便に行う得る総合画像診断として、病期診断、転移・再発診断、治療効果判定として有用である。 •FDG-PETはほとんどの腫瘍で有用だが、一部例外もあるため、検査結果の評価には注意を要する。 •PETは撮影時の患者や機器の条件などでも結果が左右されることがあり、注意を要する。 •腫瘍検査におけるFDG-PETの有用性は高く、今後もPET検査の中心として用いられると思われるが、FDGの弱点を補う新しいPET薬剤の開発は世界的にも進められており、日本でも今後臨床ベースで使用開始されるものと思われる。 •当センターががん診療拠点病院として高い医療レベルを維持するには、新しいPET薬剤にも対応できる基準を満たしたサイクロトロンを整備し、高度医療・先進医療などへの応用を目指していくべきと考えている
木下専門研究員が滋賀県臨床検査技師会研修会で講演しました。
開催日 2012年9月27日 学会名 滋賀県臨床検査技師会 血液形態部門・染色体検査・細胞検査・病理検査分野 合同研修会 開催地 草津市まちづくりセンター 発表形式 口演 演者 木下和生 演題 がんの分子標的治療と遺伝子検査 要旨 がん細胞の進化が起こる時、細胞間の情報交換を基盤とする協調作用が重要であること、がんを成立させる遺伝子変化のパターンは多様であることをコンピューターシミュレーション「囚人のジレンマゲーム」によって示した。現在広く使われている分子標的薬の多くがこの細胞間の情報伝達を阻害するものであることを解説した。 がんは患者ごとに異なる個性的な疾患であるため、その個性の源泉である遺伝子変異を調べて個々の患者に適した治療薬を選択することが求められている。がんの個別化医療を押し進める原動力である次世代の塩基配列決定法の原理を解説し、日本のはるか先を行く米国の中でもさらに最先端を走るテキサス大学MDアンダーソンがんセンターによるがん撲滅の取り組み「Moon Shots」計画を紹介した。
谷垣専門研究員が第35回神経科学会で発表しました。
開催日 2012年9月20日 学会名 第35回神経科学会 開催地 名古屋 発表形式 口演 演者 谷垣健二 共同演者 紀本創平1)、 鳥塚通弘1)、村木一枝2)、 岸本年史1) 1)奈良県立医科大学精神医学講座、 2)滋賀県立成人病センタ―研究所 演題 前頭前野特異的Catechol-O-methyltransferase (COMT) 強制発現は、22q11欠損症候群モデルマウスの行動異常を補償する 要旨 22q11欠損症候群は、22q11領域の1.5Mb の欠損で起こる症候群である。 22q11 欠損症候群の患者さんは、3人ー4人に1人が統合失調症を発症することが知られているが、22q11 領域のどの遺伝子の欠損によって統合失調症の発症につながるかは、未だ明らかにされていない。 22q11領域との相同領域を欠損したマウスは、ヒトの統合失調症者と同様に、感覚情報処理の異常をきたすと同時に、MK801,methamphetamine に対する感受性が亢進する。 22q11 領域に存在する遺伝子の一つであるCatechol-O-methyltransferase (COMT)は前頭前野でドーパミン代謝に関与する酵素である。我々は、ウイルスベクターを用いて、COMTを22q11欠損症候群モデルマウスの前頭前野特異的に再発現させることによって、モデルマウスが示す行動異常が補償できることを報告した。また、このモデルマウスを用いた新規薬物療法の可能性に関しても議論を行った。
木下専門研究員が第71回日本癌学会で肺癌について発表しました。
開催日 2012年9月20日 学会名 第71回日本癌学会学術総会 開催地 札幌 発表形式 口演 演者 喜夛村次郎1) 共同演者 植村 宗弘2)、 今村 直人1)、 石川 将史1)、 菊地 柳太郎1)、 小林 正嗣1)、 園部 誠1)、日合弘3)、伊達洋至1)、木下和生2) 1)京都大学大学院医学研究科呼吸器外科学、 2)滋賀県立成人病センタ―研究所、 3)京都大学大学院医学研究科DSKプロジェクト 演題 核酸編集酵素AIDによる慢性肺障害後の肺組織再生と肺発癌 要旨 AIDは抗体の多様化に必須の酵素であり、DNAに変異を誘導したり、DNAを切断する作用があります。したがってAIDが過剰に作用すると細胞が死ぬことがあります。AIDを全身で過剰に作りだすように遺伝子を操作したマウスを作成し解析した結果、すべての個体でヒトの肺癌の初期段階に類似した病変が観察されました。 また、10%の個体は肺腫瘍を発症します。この肺癌初期段階に類似した病変を詳しく解析した結果、肺の再生病変である可能性が考えられました。AIDの作用で傷ついた組織が再生されているのではないかと推測しました。ヒトの肺癌でAIDが作られているという報告があることをふまえ、肺の再生過程で炎症によりAIDが誘導されると遺伝子変異の蓄積により癌が生じる仮説を提唱しました。 発表後の感想 演者の喜夛村さんによるとセッション終了後に聴衆の一人が駆け寄って来て「この発表が一番おもしろかった、共同研究しましょう」と言ってくれたことがとてもうれしかったとのことです。
東達也総括研究員が滋賀県立成人病センター第31回がん診療セミナー県民公開講座にて講演を行いました。
開催日 2012年9月8日 学会名 滋賀県立成人病センター第31回がん診療セミナー県民公開講座 開催地 滋賀県立成人病センター研究所講堂 発表形式 口演 演者 東達也 演題 放射線内用療法 要旨 放射線内用療法は放射性物質を注射したり、飲んでもらって行う放射線治療の一種です。適切に行えば、腫瘍など目的の部分だけに放射線が当たり、無駄な被ばくも少なく、副作用も少ない理想的な、今はやりの「分子標的治療」の一種です。不安なく治療出来るような患者さん用のパンフレットなどもあり、ほとんどは外来で治療出来ます。主治医の先生にご相談の上、治療を受けてください。
統合失調症発症の分子機構解明へ一歩前進-統合失調症発症に関与する新たなメカニズムを解明しました-(論文発表)
滋賀県立成人病センター研究所の谷垣健二専門研究員らは、イタリアのInstitute of Genetics and Biophysics(遺伝学・生物物理学研究所)のElizabethIllingworth 教授、奈良県立医科大学精神医学講座の岸本年史教授らとの共同研究によって、統合失調症発症に関与する新たな神経機能異常を見出し、その機能異常の発現に関与する遺伝子を明らかにし、 トランスレーショナル精神医学誌(Translational Psychiatry, Nature Publication Group) に報告しました。
統合失調症は、遺伝学的素因が80%以上を占める多因子遺伝病ですが、その遺伝性の複雑さから、発症のメカニズム、発症に関与する遺伝子群は未だよくわかっていません。最近のゲノム医学の進歩により、非常に小さな染色体領域の欠損が統合失調症に関与することがわかり、統合失調症の発症メカニズムの解明につながるのではと注目を集めています。
22q11.2 欠損症候群は22番染色体長腕の微小欠損によって生じる染色体異常による疾患症候群ですが、22q11.2 欠損症候群の患者さんは3人から4人に1人は統合失調症を発症することが知られています。今回、谷垣専門研究員らは、22q11.2欠損症候群では抑制性介在神経細胞の機能異常が認められ、この機能異常が染色体異常によって失われているカテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(catechol-O-methyltransferase, COMT)という遺伝子を再発現させると補償できることを明らかにしました。さらに、抑制性介在神経細胞の機能異常が統合失調症発症に関与する可能性を検討するために、22q11.2欠損症候群モデルマウスの統合失調症様行動異常に対し、介在神経細胞の機能を補償するような薬理学的処理(GABA A 受容体作動薬の投与)を行い、介在神経細胞の機能を補償すれば、治療効果があることを見出しました。
統合失調症の死後脳の病理学的解析によって、抑制性介在神経細胞の異常が示されていましたが、今回の研究成果により、22q11 欠損症候群でも抑制性介在神経細胞の機能異常が統合失調症発症に関与すること、22q11.2 領域に存在するCOMTという遺伝子が介在神経細胞の機能を調節していること、このためCOMTという遺伝子の欠損が統合失調症発症に関与する可能性があるということ、22q11.2欠損症候群の統合失調症に対しては、GABA A 受容体作動薬が治療効果を持つ可能性が明らかになりました。GABA A 受容体作動薬のBretazenil やTPA023 は、既にヒトの統合失調症に対する臨床治験が行われていますが、全ての統合失調症者に効果を発揮するわけではなかったため、統合失調症の治療には、現在では使用されておりません。多因子遺伝病であり、いくつかの異なる遺伝子異常の組み合わせで発症しうる複数の疾患からなる統合失調症の個別化療法の開発に、我々の研究成果は貢献できるのではと期待されます。
S Kimoto, K Muraki, M Toritsuka, S Mugikura, K Kajiwara, T Kishimoto, EIllingworth and K Tanigaki. Selective overexpression of Comt in prefrontalcortex rescues schizophrenia-like phenotypes in a mouse model of 22q11deletion syndrome. Translational Psychiatry (2012) 2, e146;doi:10.1038/tp.2012.70; published online 7 August 2012
東達也総括研究員が第117回核医学症例検討会にて発表しました。
第117回核医学症例検討会において、東達也総括研究員が発表を行いました。「大腸癌術後に頭蓋内圧亢進を示した一例」と題して行われた症例検討の発表において、 東研究員は診断に苦慮した脳腫瘍の一例を症例報告し、脳腫瘍診断でのFDG-PETの留意点と、当施設が日本で初めて開発した腫瘍PET製剤MeAIBの脳腫瘍診断における有用性についての討議しました。
開催日 2012年8月4日 学会名 第117回核医学症例検討会 開催地 ホテル ホップインアミング、尼崎市、兵庫県 発表形式 口演(一般演題) 演者 東達也(総括研究員) 演題 大腸癌術後に頭蓋内圧亢進を示した一例 要旨 大腸癌術後に頭蓋内圧亢進を示した脳腫瘍の一例を経験した。通常行われるFDG-PETで肺癌の脳転移との鑑別診断に苦慮した一例で、臨床経過を含めて症例報告した。この一例に加えて、通常の脳腫瘍FDG-PET, FDG-PET/CT診断でこれまで当研究所が経験した転移性脳腫瘍、膠芽腫、髄膜腫の3つの症例群を総括し、それぞれの集積パターンを解析し、集積の程度、集積の形状などを比較検討し提示した。当施設が日本で初めて開発した腫瘍PET製剤MeAIBを併用することで、術前に悪性度の診断などが可能であることが分かった。
東達也総括研究員が第45回日本核医学会近畿地方会にて発表を行いました。
第45回日本核医学会近畿地方会において、東達也総括研究員が発表を行いました。「アミノ酸ポジトロン製剤MeAIBを用いた胸部腫瘍PET診断の経験」と題して行われた一般演題の発表において、 東研究員は当施設が日本で初めて開発した腫瘍PET製剤MeAIBの胸部疾患に対する臨床経験についての講演を行いました。すでに保険診療として行われているFDG-PETの欠点を補うMeAIB の良悪性鑑別での診断精度について報告し、大きな反響がありました。
開催日 2012年7月28日 学会名 第45回日本核医学会近畿地方会 開催地 メルパルク京都、京都市、京都 発表形式 口演(一般演題) 演者 東達也(総括研究員) 演題 アミノ酸ポジトロン製剤MeAIBを用いた胸部腫瘍PET診断の経験 要旨 {背景}グルコース代謝を利用したF-18 FDG によるFDG-PETは腫瘍診断として有用で、一定の評価を得ているが、胸部領域ではサルコイドーシスや抗酸菌症や非特異的炎症性変化などで良悪性鑑別診断が困難な症例も経験する。 このようなFDGの欠点を補うアミノ酸PET薬剤としてアミノ酸トランスポーターsystem-Aを介するC-11メチルAIB ([N-methyl-11C]a-methylaminoisobutyric acid ([C-11]-MeAIB))が日本で初めて当研究所で開発に成功し、胸部領域の腫瘍診断において用いられている。 {目的}MeAIBの胸部腫瘍PET診断における有用性を検討する。 {方法}対象は66+/-13歳、男性40例、女性24例の59患者(64検査)。基礎疾患は、肺癌25例、サルコイドーシス14例、悪性リンパ腫1例、その他の癌2例、その他の非悪性疾患22例。全例FDG-PET検査を施行後、再検討目的で紹介され、MeAIB-PETを行った。 {結果}悪性腫瘍における主病変への集積はFDGでの高集積には劣るものの、MeAIBでも中等度の集積は認め、両検査で結果が食い違う症例はなかった。悪性腫瘍集積の平均はSUVmaxでMeAIB: 4.2+/-2.0, FDG: 10.2+/-5.9であった。 縦隔リンパ節の診断では、FDGにおいて偽陽性が大半であったのに対し、MeAIBではサルコイドーシスでMeAIB集積がほとんど見られず、FDG集積とは好対照であった。肺野・縦隔総合しての診断能は鋭敏度、特異度、正診率それぞれFDGvsMeAIBで89%,31%,56% vs 86%,75%,80%であった 。 {結論}MeAIBは胸部腫瘍診断において良悪性鑑別診断能が高く、サルコイドーシスなどの炎症性疾患との鑑別に有用であった。
東達也総括研究員が群馬大学放射線診断核医学科主催の第257回Open Film Conferenceにて講演を行いました。
群馬大学放射線診断核医学科主催の第257回Open Film Conferenceにおいて、東達也総括研究員が講演を行いました。「腫瘍PETと核医学治療 ---overview---」と題して行われた特別講演において、東研究員は腫瘍PETと核医学治療に関する最新動向と将来展望についての講演を行いました。我が国や米国などでの核医学の現状と問題点を総括し、超高齢化社会の到来が核医学のみならず我が国の医療全体にもたらす影響を予測、さらにあるべき将来像を展望した講演で、大きな反響がありました。
開催日 2012年7月26日(木) 学会名 第257回Open Film Conference 開催地 群馬大学医学部臨床中講堂、前橋市、群馬 発表形式 口演(特別講演) 演者 東達也(総括研究員) 演題 腫瘍PETと核医学治療 ---overview--- 要旨 我が国の核医学領域は大きな変革期にある。診断領域ではかつてunclear medicineと揶揄されたプラナー像撮影から、現在ではPET/CT の全国的な普及に加え、SPECT/CTも多くの施設に導入されつつあり、撮影技術・画像の進歩は著しく、まさに隔世の感がある。 また2010年にはFDG-PET、FDG-PET/CTが腫瘍診断として基本的に全ての悪性腫瘍に対して保険収載され、核医学診断は術前診断など日常臨床の上でもますます重要性を増している。核医学治療領域では、近年メタストロン、ゼヴァリンの保険収載が相次ぎ、患者に優しい分子標的治療の一種として脚光を浴びている。 さらに2010年甲状腺分化癌に対するI-131による1,1100MBq外来アブレーションの実施が限定的にながら認められ、さらに本年よりヒトリコンビナントTSH製剤タイロゲンの保険適応がアブレーション準備への使用にも認められた。核医学治療領域では保険診療点数上でもここ数年優遇措置が続いており、不採算診療で実施ベッド数でじり貧傾向にあったI-131による放射性ヨード内用療法も今後は盛り返すのではないかと期待される。 本公演では、これら核医学診断・治療について概要を示し、日本における現状・問題点を提示した上で、当研究所の取り組んでいる新規PET薬剤についてのご紹介、さらに医療被ばくの問題、原発での被ばく問題についてもお話しし、議論を深めたいと思う。
第43回滋賀県立成人病センター研究所セミナーを開催しました。
タイトル 第43回 滋賀県立成人病センター研究所セミナー 開催日時 2012年7月25日(水)18時~19時 場所 滋賀県立成人病センター研究所 会議室 演題 染色体異常を持つ自閉症モデルマウスの解析 演者 中谷 仁 特任助教(滋賀医科大学 MR医学総合研究センター) 要旨 自閉症は、社会性の低下、コミュニケーションの異常、繰り返し行動で定義される発達障害の一つである。先天的な障害であり、生涯治癒される事は無い。病因については諸説あるが、未だ不明である。双生児研究により、遺伝学的背景が強いという事が知られている。特に、染色体15q11-13領域の部分重複は最も多く報告されている。 我々は、この染色体異常に注目し、同じ部分重複を人工的にマウス染色体に引き起こさせ、自閉症モデルマウスを作製した。このマウスは、ヒト自閉症を彷彿させる行動異常を示した。また、神経細胞のセロトニン伝達系の異常も見いだした。この様に本研究の自閉症モデルマウスは、ヒト自閉症患者と同じ染色体異常を持った唯一のモデルであり、今後の更なる解析が期待される。 参考文献 Abnormal behavior in a chromosome-engineered mouse model for human 15q11-13 duplication seen in autism. Nakatani J, Tamada K, Hatanaka F, Ise S, Ohta H, Inoue K, Tomonaga S, Watanabe Y, Chung YJ, Banerjee R, Iwamoto K, Kato T, Okazawa M, Yamauchi K, Tanda K, Takao K, Miyakawa T, Bradley A, Takumi T. Cell. 2009 Jun 26;137(7):1235-46. 世話人 谷垣 健二
東達也総括研究員らが米国核医学会総会にてポスター発表を行いました。
2012年6月10日から14日まで開催された第59回米国核医学会総会において、東達也総括研究員をはじめとするPET検査グループがポスター発表を行いました。当研究所で開発された新規アミノ酸系PET薬剤であるMeAIB(メチル・エーアイビー)についての臨床研究の発表2題です。
開催日 2012年6月10日(日) 学会名 第59回米国核医学会総会 開催地 マイアミ(米国) 発表形式 ポスター 演者 東達也(総括研究員) 演題1 Assessment of efficacy of [11C]-MeAIB PET/CT as a biomarker of the system A amino acid transport: Comparison with [18F]-FDG and MRI in the patients with prostate cancer. (システムAアミノ酸輸送体の生物学的マーカーとしての、MeAIB-PET/CTの診断評価と有効性について――前立腺癌患者におけるFDG, MRI診断との比較検討) 演題2 Usefulness of system A amino acid transport PET imaging with 11C-MeAIB in diagnosing brain tumors: A comparison study with 11C-Methionin PET imaging. (脳腫瘍診断におけるシステムAアミノ酸輸送体のイメージングとしての、MeAIB-PET/CTの有用性について――メチオニンPETとの比較検討) 要旨 両者とも、当研究所で開発された新規アミノ酸系PET薬剤であるMeAIBの臨床応用結果に関わる発表です。第1題は従来から行われている通常の保険診療検査であるFDG-PET/CTやMRIに比較検討し、MeAIB PET/CTは有用であり、MRIとの組み合わせてより高い診断能を示すという結果で、大きな反響があり、学会期間内の優れた発表をまとめて最終日に行われるハイライトトーク(米国ジョンスホプキンス大学のリチャード・ウォール教授)において、優秀演題として取り上げられました。 第2題は、従来から高度医療として国内では一部の施設で行われているメチオニンPET に比し、MeAIB PET/CTは脳腫瘍診断において有用であるという結果で、MeAIB PET/CT検査の高度医療への発展などへの可能性も示唆される結果でした。
東達也総括研究員が第24回日本内分泌外科学会総会にて講演しました。
第24回日本内分泌外科学会総会において、東達也総括研究員が講演を行いました。「再発甲状腺分化癌に対する外科治療とアイソトープ治療」と題して行われたパネルディスカッションにおいて、 東研究員は「分化癌術後アイソトープ治療の予後と予後因子について」と題して、甲状腺分化癌に対する術後アイソトープ治療の予後と予後因子についての研究発表を行いました。甲状腺癌の治療方針に関わる発表で、アイソトープ治療の時期がその後の生命予後を大きく左右するという結果に、大きな反響がありました。
開催日 2012年6月8日(金) 学会名 第24回日本内分泌外科学会総会 開催地 名古屋国際会議場 発表形式 口演(招待講演) 演者 東達也(総括研究員) 演題 分化癌術後アイソトープ治療の予後と予後因子について 要旨 東研究員のグループは、転移のある分化癌術後RIT198例を解析し、全摘手術後の初回RITまでの期間が180日を超えるとその後経過中の死亡率が4倍以上上昇することを過去に報告している(JNM2011;52:683-9)。 今回の発表では、このJNM報告例のうち初発迅速全摘RIT例82例、半切後再発RIT例59例、全摘後再発RIT例42例、(詳細不明15例)に分けてサブ解析を行った。再発例101例の多変量解析では、RIT後の予後因子として1) 初回RIT時の集積状況、2) 初回RIT時の遠隔転移状況、3) 全摘手術後の初回RITまでの期間が挙げられた。 特に3) はその後の予後に大きく影響し、180日を超えるとその後経過中の死亡率が15倍以上上昇するとの結果を示した。初回手術が半切か全摘かは予後への影響が薄かった。再発症例でも再発後に速やかに(全摘・)RITへ治療を進めることが良好な予後につながることが示唆された。
滋賀県民の脳卒中再発予防に寄与-PET検査の効果検証-(論文発表)
発表日:2012年5月24日
滋賀県立成人病センター研究所の山内副所長らは、滋賀県立成人病センター研究所で脳PET検査をうけ治療方針を決定された脳卒中患者では、再発率が減少していることを、12年にわたる研究により明らかにした。PET検査が脳卒中患者の予後改善に役立っていることを裏付けた研究である。研究成果は、2012年5月24日英国神経学誌「Brain」にオンライン掲載された。
1999年秋に滋賀県立成人病センター研究所で15 O 標識gas を用いた脳PET検査が開始された。山内副所長らは、脳の太い血管が動脈硬化により狭窄または閉塞して脳梗塞を発症し、1999年から2008年に脳PET検査をうけ、その結果をもとに再発予防の治療をうけた滋賀県内の患者165人を経過観察し、予後を検討した。その結果、これらの患者では、その後2年間の脳卒中の再発が、1990年代に比べて、60%も減少していることが明らかになった(図1)。
15 O gas PET検査を用いると、正確に脳の血流不足の程度を評価可能である。1990年代の京都大学での山内副所長らの研究で、血流不足(貧困灌流)のある患者では脳卒中再発率が非常に高いことが明らかになった(図1、左)。つまり、脳卒中再発を減らすためには、血流不足があるかないかを正確に判定することが不可欠である。そこで、滋賀県立成人病センター研究所では、PET検査により血流不足の有無の判定を正確に行ない、最適な治療法を助言してきた。血流不足があればバイパス手術を、なければ内科治療を推奨する(図2)。血流不足があるが手術ができない患者では、より慎重に内科治療する。その結果、PET検査に基づいて治療していなかった1990年代に比べて、脳卒中再発率が減少したのである(図1)。
PET検査により、血流不足がないことが正確に判定できれば、又、バイパス手術により血流不足が改善したことが正確に判定できれば、高血圧などの治療を厳格に行うことができる。血流不足がある患者では血圧を下げすぎると脳梗塞が起こりやすいからである。その結果、最近の治療薬の進歩ともあいまって、2000年代前半に比べて後半ではさらに再発率が減少していることも明らかになった。PETは、進歩した内科治療の下で、さらに有用性が増加している。今後も正確なPET検査により、脳卒中再発がさらに減少することが期待される。
Yamauchi H, Higashi T, Kagawa S, Nishii R, Kudo T, Sugimoto K, Okazawa H, Fukuyama H. Is misery perfusion still a predictor of stroke in symptomatic major cerebral artery disease? [published online ahead of print May 24, 2012] Brain. 2012
開催日 2012年5月25日(金) 学会名 第7回日本分子イメージング学会 開催地 浜松 発表形式 ポスター 演者 加川信也(主任研究員)1)2) 矢倉栄幸3)、西井龍一4)、東達也1)、山内浩1)、水川陽介5)、竹本研史6)、波多野悦郎6)、高橋和弘7)、水間広7)、尾上浩隆7)、長町茂樹3)、川井恵一2)、田村正三3) 1)滋賀県立成人病センター研究所・画像研究部門、2)金沢大学大学院・保健学科、3)住重加速器サービス、4)宮崎大学・放射線科、5)JFEテクノス、6)京都大学大学院・肝胆膵・移植外科、7)理化学研究所・分子イメージング科学研究センター 演題 臨床使用に向けた[18F]Fluoroacetate ([18F]FACE)製造法の検討 要旨 【目的】我々は、[18F]2-fluoro-2-deoxy-D-glucose ([18F]FDG)とは異なる機能画像としてAcetateをフッ素標識したPET診断薬[18F]Fluoroacetate ([18F]FACE)に着目し、臨床応用へ向けた様々な基礎的検討を行っている。 Fluoroacetateは、細胞内TCA回路にFluoroacetyl-CoAとして取り込まれ、citrate synthaseにてFluorocitrateに代謝された後、以降のaconitaseによる酵素反応を受けず、Fluorocitrateとして回路内にとどまる化合物として想定されている。 本検討では、[18F]FACEの臨床使用に向けた標識合成の基礎検討を行ったので報告する。 【方法】[18F]FACEの合成は、JFEテクノス社製のキット式多目的合成装置で、合成前駆体Ethyl (p-tosyloxy)acetateを用いて行った。 フッ素化反応後、水酸化ナトリウムにて加水分解を行い、イオン交換カラムを用いて精製した後、[18F]FACEを高収率で合成した。さらに、ポジトロン核医学専門委員会が成熟薬剤として認定した放射性薬剤基準(2009年改定)を参考として品質検定項目(放射化学的純度・比放射能・残留有機溶媒等)、安全性試験、被曝線量評価等も行った。 【結果・考察】[18F]FACEの合成は、合成時間:36.5±1.0分、比放射能:103.0±18.8 GBq/µmol、収率:55.5±2.8%、放射化学的純度:99.9%以上であった。また、放射性薬剤基準(2009年改定)を参考として、[18F]FACEの品質検定をおこなった結果、特に問題を認めなかった。 さらに、急性毒性試験結果および被曝線量も、臨床使用に問題ないレベルであった。当センターでは、薬剤委員会及び倫理委員会の承認をすでに得ており、臨床応用の前段階として、正常ボランティアを対象とした[18F]FACE-PET検査を開始する予定である。
開催日 2012年5月24日(木) 学会名 第53回日本神経学会総会 開催地 東京 発表形式 ポスター 演者 山内浩(副所長) 共同演者 東達也、加川信也、高橋昌章、岸辺喜彦 演題 症候性脳主幹動脈閉塞症における貧困灌流と脳卒中再発の関連 要旨 【目的】症候性アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞症患者において、PET上貧困灌流を呈する患者は脳卒中再発率が高いことを1990年代に報告した。その後、もし、貧困灌流がある患者に適切にバイパス手術が施行され予後が改善しているなら、貧困灌流がある患者とない患者との脳卒中再発率の差は不明瞭になっている可能性がある。また、近年の内科治療の進歩により、脳主幹動脈閉塞症患者全体の内科治療下での脳卒中再発率が改善し,貧困灌流と再発リスクの関係に影響している可能性がある。 本研究の目的は、バイパス手術および近年の標準的内科治療下で、貧困灌流がある患者は、ない患者に比べて、現在もなお、脳卒中再発率が高いかどうか検討することである。【方法】症候性アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞性疾患(頭蓋外内頸動脈閉塞症、頭蓋内内頸動脈あるいは中大脳動脈狭窄または閉塞症)患者で、慢性期に、15O gasとPETを用いた脳循環動態評価を行った165例(mRS≦2の例)を対象とした。 病変側半球大脳皮質の酸素摂取率、脳血流量、および血流量/血液量比の値に基づき、貧困灌流あり群となし群に分類し、2年間の脳卒中再発率を比較検討した。治療方針は、主治医がそれぞれの患者で決定した。【結果】バイパス手術は貧困灌流がある患者35例中19例に、ない患者130例中16例に行われた。 2年間における、同側脳梗塞再発、および、すべての脳卒中発症は、貧困灌流がある群で、それぞれ、17.0% (6/35)と25.7% (9/35)であり、ない群の、3.1%(4/130)と9.2%(12/130) に比べて、有意に多かった(それぞれ、P<0.002とP<0.01)。 【考察】貧困灌流がある患者では、一部の患者にバイパス手術が施行され予後は以前より改善しているが、やはり貧困灌流がない患者に比べて脳卒中再発率が高い。脳主幹動脈閉塞症患者の予後の改善には、現在もなお、貧困灌流がある患者をターゲットとした厳格な管理が必須であることが示された。
キーストーンシンポジウム「発がんにおける炎症の役割」
開催日 2012年5月23日(水) 学会名 キーストーンシンポジウム「発がんにおける炎症の役割」 開催地 ダブリン(アイルランド) 発表形式 ポスター 演者 野中太一郎(学術振興会特別研究員) 共同演者 木下和生、植村宗弘ら 演題 AIDは紫外線非依存性皮膚扁平上皮癌の発症を促進する 要旨 皮膚扁平上皮癌の大部分は紫外線が誘発するDNA損傷の修復エラーによって引き起こされる。しかし、扁平上皮癌の中には紫外線に暴露しない衣服で覆われた慢性潰瘍や熱傷痕部位、または、口腔粘膜で発症するものも少なくない。これら紫外線と無関係だと思われる扁平上皮癌の発症には慢性炎症が関与していると疑われているものの、そのメカニズムは不明である。 今回、我々は抗体遺伝子DNAを変化させて多様な抗体を作るために必須の酵素AIDが皮膚扁平上皮癌の発症に関与する事をAIDを作ることができないマウスを用いた実験で証明した。AIDは炎症刺激を受けた皮膚細胞で発現が誘導されることも示した。これらのことから、慢性炎症によって皮膚細胞で作られたAIDがDNAを変化させる結果、皮膚がんが引き起こされると推測された。
開催日 2012年4月27日(金) 学会名 第37回日本脳卒中学会総会 開催地 博多 発表形式 口演 演者 山内浩(副所長) 共同演者 東達也、加川信也、高橋昌章、岸辺喜彦 演題 症候性アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞症患者における両側性無症候性基底 核ラクナ梗塞と脳卒中再発の関連 要旨 【目的】症候性脳主幹動脈閉塞症患者において貧困灌流の存在は脳卒中再発の危険因子であるが、小血管病の合併の意義は十分に検討されていない。貧困灌流がバイパス手術により治療された時、小血管病による脳卒中の予防が重要になる可能性がある。本研究では、バイパス手術および標準的内科治療下で、小血管病の合併が脳卒中再発の予測因子かどうか検討した。 【方法】症候性アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞性疾患(頭蓋外内頸動脈閉塞症、頭蓋内内頸動脈あるいは中大脳動脈狭窄または 閉塞症)患者で、慢性期に、15OgasとPETを用いた脳循環動態評価を行った165例(mRS≦2の例)を対象とした。両側性無症候性基底核ラクナ梗塞あり群となし群に分類し、2年間の脳卒中再発率を比較した。治療方針は、主治医がそれぞれの患者で決定した。 【成績】バイパス手術は両側性無症候性基底核ラクナ梗塞がある患者36例中9例に、ない患者129例中26例に行われた。2年間における、同側脳梗塞再発、および、すべての脳卒中発症は、両側性無症候性基底核ラクナ梗塞がある群で、それぞれ、16.6% (6/36)と27.7% (10/36)であり、ない群の3.1%(4/129)と8.5%(11/129) に比べて、有意に多かった(それぞれ、P<0.005とP<0.001)。 貧困灌流の存在を調整した相対危険度は、同側脳梗塞再発で6.1(95%信頼区間1.7-21.8、 P<0.01)、および、すべての脳卒中発症で5.5(2.2-13.7、P<0.005)であった。 【結論】バイパス手術および標準的内科治療下で、両側性無症候性基底核ラクナ梗塞の存在は、貧困灌流の存在とは独立した脳卒中再発予測因子である。脳循環障害の重症度評価を正確に行い、高血圧の治療を適切に行うことが脳主幹動脈閉塞症患者の予後の改善に重要と考えられる。
開催日 2012年4月26日(木) 学会名 第12回日本核医学会春季大会 開催地 東京都江戸川区タワーホール船堀 発表形式 口演(教育講演) 演者 東達也(総括研究員) 演題 1-131(1,110MBq)による残存甲状腺破壊(アブレーション)の外来治療における適正使用に関する講習会 要旨 甲状腺癌内用療法とは、放射性ヨードI-131を患者さんに投与することで、体内に取り込まれた放射性ヨードI-131が甲状腺癌に集まり、内部から放射線を出すことにより、甲状腺癌を治療するという治療法で、放射線治療の一種です。 この放射性ヨードI-131を用いた甲状腺癌治療を外来で行うにあたっては、各医療機関が守るべき安全基準などが日本核医学会を始めとする複数の医学会の規定により細かく定められており、担当者が学会主催の講習会に参加し、専門知識を習得、再確認し、修了証を得ることが義務づけられています。 東研究員はとくにこの分野の専門家として、「甲状腺癌内用療法総論」と題して、放射性ヨードI-131を用いた甲状腺癌治療の基礎に関する教育講演を行いました。 なお、この1-131(1,110MBq)による残存甲状腺破壊(アブレーション)の外来治療を行っている滋賀県内の医療施設は当センターのみです(平成24年4月現在)。
日時 2012年4月7日(土) 13時30分~18時40分 場所 滋賀県立成人病センター研究所 1階会議室 演題 ”皮下脂肪織炎”と症例検討 講師 真鍋俊明滋賀県成人病センター研究所長 参加者 25名