10名の虚血性心疾患患者において、N-13アンモニアおよびC-11酢酸によるPETを一週間以内に行った。いずれの撮影も安静時にて行った。
N-13アンモニアは約700mBqのN-13アンモニアを肘静脈より静注、静注直後から5分間のdyanamic収集を行った。収集プロトコルは5秒x12フレーム、10秒x6フレーム、20秒x3フレーム、30秒x4フレームである。C-11酢酸についても同様のプロトコルで撮影した。C-11酢酸についてはさらに引き続いて酸素代謝測定のため1分x15フレームの撮影も行っているが、本研究ではこのデータは使用していない。
撮影されたデータの左室腔内に関心領域を設定し、この関心領域のカウントを動脈入力関数とした。この動脈入力関数と、画像の各ピクセルごとのカウントの経時的変化を用いて、すべてのピクセルにおいてPatlak graphical analysisを行い、心筋のK*値のパラメトリックイメージを作成した。
各K*画像は短軸断層像に変換され全10症例併せて計2096個の関心領域を左室壁上に設定した。これをN-13アンモニアのK*画像とC-11酢酸のK*画像で繰り返すことで、同じ領域のアンモニアのK*と酢酸のK*を測定したことになる。この2096組のK*の値の相関を求めた。
アンモニアのK*と酢酸のK*を対比した。
酢酸のK*値はアンモニアのK*に比して、有意に低い値を示した(p<0.01)。しかし、酢酸のK*とアンモニアのK*の間には有意な相関が得られた。線形回帰により酢酸のK*とアンモニアのK*の回帰直線を求めたところ、酢酸のK*値はアンモニアのK*値の約75%の値であった。Y切片はほぼ0に近い値であった。
Patkak graphycal analysisによるK*値の測定の誤差は、酢酸の方がアンモニアよりも少ない誤差を示し、K*値は酢酸の方が正確に測定できる可能性があると考えた。
また、視覚的にK*画像の画質の比較を行った。酢酸のK*画像はアンモニアのK*画像と同等か、より良好な画質を示していた。
C-11酢酸のK*とN-13アンモニアのK*が良好な線形相関を示すことが証明された。アンモニアのK*は
の数式を用いることで、MBFに変換することが可能であり、C-11酢酸のK*とN-13 アンモニアのK*の相関関係を利用することで、C-11 酢酸のK*を用いて心筋血流の測定が出来る可能性が示唆された。
心筋代謝は虚血性心疾患におけるViability判定などに重要であるが、基本的に血流の情報を抜きにしては評価することが出来ない。C-11酢酸は心筋酸素代謝の評価に用いられるが、今回の検討で、N-13アンモニアと同じく、Patlak graphical analysisを用いた手法でK*が測定でき、そのK*がアンモニアのK*と線形の相関を示すことから、酢酸のK*をアンモニアのK*に変換することで、従来用いられてきたアンモニアによる血流絶対値定量の技術をそのまま用いた血流測定・血流画像作成の可能性が示された。
ただし、本研究では安静時の血流における評価のみであり、この線形相関が薬物負荷による高潔粒状対でも同様に維持されているかどうかは、今後の検討が必要と思われる。
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