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研究所報2003

3D全身PET収集におけるTransmission線源強度が画像に及ぼす影響 高橋昌章・岸辺喜彦

1.はじめに

 PET検査において、画像の定量性に影響を及ぼす要因として、収集したデータの情報量(収集時間・RI量)はもとより、その画像を再構成する段階でのパラメータの選択によっても大きく変化する。
近年、ガン検診や悪性腫瘍の転移巣の検索を目的としてFDGを用いた腫瘍全身検査が数多く行われるようになり、薬剤の合成量の影響・被曝の低減を理由として少ない投与量で検査を行うようになりつつある。少ない投与量(2MBq/kg程度)で臨床利用できる画像を得るためには、より高感度にデータを収集できる次元収集法(3D)が必要不可欠になってくる。3D収集法は従来の2D収集法と比べ、散乱線処理など定量性に僅かな問題は残っているが、短時間で検査を行わなければならないFDGを用いた全身検査の場合この3D収集法は有効な撮像方法である。
PET検査はシングルフォトン核種を使った検査(SPECT検査)と比べ、より定量的な(組織のRI量を測ることが出来る)画像が得られることが特徴であり、このためには外部線源を使った透過スキャン(Transmission Scan)が必要不可欠になる。
FDG全身検査の実際としてはFDG投与後40~60分からエミッション収集を行い、その後続いてトランスミッション収集を行う方法(Post Injection Transmission、PIT)が主流である。?我々が使用している装置をはじめ近年発売されたPET装置は、高放射能のTransmission用線源を装備しており、 3DEmission+PIT法では残留放射能の影響を無視し画像再構成を行っている。本研究ではこの3D収集法によるFDG全身検査を行う際に生じる問題点の1つであるエミッション収集後の残留放射能と経年使用によるTransmission用線源強度の関係が再構成画像に及ぼす影響について検討を行った。

2.方法

直径20cmの円筒ファントムならびに縦隔に4cmの腫瘍を模擬した胸部ファントムを使用し、68Ge-GaのTransmission用線源を新規購入時(800MBq)から経時的に収集を行った。ファントム内に封入した18Fの量は5MBq/kgの割合で投与した場合の臨床データ平均から求め、7kBq/ml(円筒ファントム)と80kBq/ml(胸部ファントム)に調整した。さらに約1/2の投与量を想定し1半減期(110分)後にも収集を行った。使用装置は、Advance(GE 社製)、断面方向の分解能は4.6~5.7mmFWHM、再構成は、当施設の臨床条件(OS-EM、Subset=12、Itration=4、Roop Filter=4.25mm,Post Filter=5mm、減弱補正はSegmented Attenuation Collection ,SACで行った。Transmission用線源の強度は新規購入時を800MBq(400MBqx2)とし、計測日時における放射能量は68Geの半減期から算出した。
評価方法は、得られた画像に関心領域(Region of Interest、ROI)を設定し、その平均カウントの変化率を求めた。
大きさは10mmで大脳皮質の白灰質部分1 sliceにつき左右20箇所、基底核レベルを中心に5 sliceを取った。

3.結果

3D収集法は、少ない投与量でS/Nの良い画像が得られるが、PITによる収集では残留放射能による影響の補正は現有の装置で不可能である。Emissionの濃度とTransmission線源強度との比率により定量性に及ぼす影響は変化するが、1年半の期間は線源の利用が可能と考えられる。また、2本の線源を1年に1回更新していくような方法も考えられる。
PET検査において減弱補正を行うことは、視覚による画像診断はもとより画像の定量性を確保するためには必要不可欠なものである。しかしながら68Ge-Gaを使ったTransmission線源を購入するには百数十万円の費用が必要になり、この線源は約9ヶ月の半減期で減衰していくため、交換に係る費用は施設にとってかなりの負担になっているのも事実である。

本研究は、第39回日本放射線技術学会秋季学術大会(秋田)において発表した。


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