心疾患における定量法・機能評価法には、左室造影、心エコー、核医学検査等による心拍出量の測定があるが、心筋血流の測定や糖代謝・酸素代謝の測定はPETでのみ可能である。これまで心筋血流の評価は、主にSPECT画像による定性的評価で行ってきたが、PETの導入により、真の定量値測定が可能となった。当センターではPTCA等による虚血性心疾患の治療が盛んであり、その治療効果判定や術後のフォローアップは重要である。また、心臓リハビリによる保存的な治療も進められており、これらの評価にPETによる定量的数値を用いることは、客観的な患者の病態把握に有用であると考えられる。 心臓疾患の予後は、心筋血流量(MBF)のみでなく、心拍出量(EF = ejection fraction)とも関連があるとの報告が近年多く見られ1)-3)、MBFとEFの同時測定は、慢性に経過する心筋梗塞や狭心症の患者のフォローアップや治療の効果判定の指標として有用と考えられる。近年SPECTの心筋機能測定として普及している心電図同期収集法によるEF測定をPETに応用し、一回のトレーサー投与で血流値と心機能の同時測定の可能性を検討した。
正常ボランティアのMBFは平均0.61±0.10 (ml/min/g)で、アンモニアによる血流値としては標準的な値が得られた。また、心疾患患者においては、虚血・梗塞部位と血流の低下・欠損部位が良く一致していた(図1)。
アンモニア心電図同期PETおよびC15OによるGBPは、心筋の動きを良好に描出し、左室容量および左室心拍出率を評価可能であった(図2)。
PETとLVGともに施行した患者20名において、LVEFを3つの解析法(LVG, GBP, pFAST)で比較すると、LVGとGBPはほぼ同様の数値を示したが、pFASTはEFを過小評価する傾向にあり、特に血流の欠損が認められる症例においてその傾向が認められた(表1)。
LVG | GBP | pFAST | |
---|---|---|---|
患者(20名) | 54±16 | 53±14 | 46±16* |
欠損なし(8) | 67±13 | 66±9 | 59±16 |
欠損あり(12) | 46±12 | 44±10 | 38±8* |
また、全40症例について、GBPとpFASTを比較すると、EF値において比較的良好な相関が認められた(y = 0.97x - 2.94, R = 0.87, P < 0.0001)。しかし、pFASTでの過小評価の傾向は同様に認められ、特に血流欠損を認める症例において顕著であった(表2)。
GBP | PFAST | |
---|---|---|
正常ボランティア(20名) | 65±5 | 63±6 |
心疾患患者(34名) | 51±14 | 46±15* |
欠損なし(15) | 60±12 | 56±13 |
欠損あり(19) | 45±11 | 39±11* |
一回のトレーサー投与で血流(MBF)と心拍出量(EF)を同時に計測する検査法を開発した。投与後5分間のダイナミック収集で得られるMBF画像は、心筋血流を定量的に評価可能であった。また、引き続き撮像された心電図同期PETで得られたEF値は、他の検査法と良好な相関を示したが、MBF画像で血流欠損を示す症例では、EFを過小評価する可能性が示された。この様な症例では、GBP-PETを追加撮像することにより、EFを正確に評価することが可能と考えられた。
本研究は、Journal of Nuclear Medicine 2002年8月号に掲載された。
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