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研究所報2002

PET画像の機能画像化に関する研究 PET薬剤を用いた自動液体注入装置の基礎実験と臨床応用 岸辺喜彦・岡沢秀彦・杉本幹治・高橋昌章

1.はじめに

 PET薬剤は、物理的半減期が長くとも110分と短い核種を使用するため標識薬剤の分注・搬入から患者への投与は迅速に行わなければならない。しかし、持続注入で投与する場合、術者が直接注入すると相当な被曝を余儀なくされ、注入速度にもばらつきが生じることがある。さらに、短半減期核種であるため投与量が一般のアイソトープ検査より多いので術者の被曝を無視することは出来ない。そこで、住友重機製の自動液体注入装置(M-110)を用いた基礎実験を元に注入速度を決定し、その装置を臨床応用することによって患者投与時での術者の被曝が軽減され、薬剤を一定速度で注入することができたので報告する。

2.基礎実験

 自動液体注入装置の模式図は図1のとおりである。装置内は図のように遮蔽されており、リモコンにより多少離れた場所から操作出来るようになっている。シリンジ内の薬剤はシールド内のチューブに一度貯められてから生理食塩水の入ったフラッシュ用シリンジにより注入される。標識薬剤の液量は装置の構造上、最大5mlになっており60秒間の持続注入を考慮して実験では上限の5mlとした。生理食塩水の入ったフラッシュ用のシリンジの液量は12mlで後押しするようにした。注入速度は3段階(0.1ml/s、0.2ml/s、0.3ml/s)に変え、注入から5秒間隔で試験管に取りその線量をキュリーメータで測定する。使用核種は18Fである。

図1. 自動液体注入装置模式図
自動液体注入装置模式図

3.臨床への応用

 薬剤合成室(ホット・ラボ)よりシリンジシールドを装着して検査室に搬入され患者投与の直前にキュリーメータで投与量を計測して自動液体注入装置に装着する。術者の操作により標識薬剤は患者の静脈を通して投与される。注入時間は心臓の検査では30秒、頭部の検査では60秒と設定する。注入速度は基礎実験結果を元に決定する。
自動液体注入装置を用いて患者に投与した薬剤は11C-メチオニン(半減期20分)、13N-アンモニア(同10分)、18F-FDG(同110分)である。投与量は370~740MBqとする。

4.結果

 実験結果は図2に示す。なお、各試験管サンプルの測定線量の和を100%とし、18Fの半減期補正は考えないものとした。システム自体の注入速度は問題なく作動し、動作の繰り返しによるサンプルの濃度のばらつきもほとんど見られなかった。
 

図2.注入速度の違いによる放射性薬剤注入率
注入速度の違いによる放射性薬剤注入率

5.まとめ

 心臓では30秒、頭部では60秒注入という設定を行っていたが、今回の実験結果によりほぼ正確に注入できていたと思われる。心臓の検査で使用している0.2ml/secの場合では注入後10秒から40秒の30秒間で85%が注入できている。また、頭部検査で使用している0.1ml/secの場合も注入後15秒から75秒の60秒間で80%が注入されていることから設定に問題はないと考えられる。さらにこの装置を使用することにより注入時の術者の被曝は格段に軽減されると予想される。

参考文献

1) 米倉義晴、石田良男、間賀田泰寛、三宅義徳、林田孝平、石津浩一、岡沢秀彦、工藤崇、東達也、玉木長良、笠木寛治、小西淳二. 酸素15水注射液合成装置を用いたPET検査の臨床的有用性. Radioisotopes 1996; 45: 689 - 695.


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