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研究所報2002

PET画像の機能画像化に関する研究 高橋昌章・岸辺喜彦・岡沢秀彦
Transmission時間がPET画像に及ぼす影響に関する研究 杉本幹治・山内 浩

1.はじめに

 PET検査において、画像の定量性に影響を及ぼす要因として、収集したデータの情報量(収集時間・RI量)はもとより、その画像を再構成する段階でのパラメータの選択によっても大きく変化する。 PET検査はシングルフォトン核種を使った検査(SPECT検査)と比べ、より定量的(組織のRI量を測ることが出来る)な画像が得られることが大きな相違点であり、このためには外部線源を使った透過スキャン(Transmission Scan)が必要不可欠になる。Transmission Scanの時間設定は、ある一定値で行っているのが現状であるが、線源の減衰等を考慮に入れた時間設定が理想的といえる。 そこで検査時間の最適化、被検者の被曝低減ならびに、線源の使用可能期間の確認を目的としてファントムによる検討を行った。

2.方法

(1) 円筒ならびに胸部ファントム(図1)を使用し、Transmission Scanを30秒~20分間行い画像の変化を調べた。Emissionデータは、臨床での集積量(20~100kBq/ml)の18-Fを封入し10分間で収集した。
(2) 脳および心臓検査において、10分間と1~5分間の収集をそれぞれ5名の患者(50例)について行い、各部位における差を比較した。

図1.胸部ファントム

図1.使用したファントム
A. 直径20cmの濃度直線性評価ファントム(均一吸収体)
B. 空気・骨等価物質を入れたファントム
C. 胸部模擬ファントム

再構成方法は、Filterd Back Projection(FBP)法・Orderd-Subsets Expectation Maximization (OS-EM) 法、吸収補正には、Measured Atte- nuation Correction(MAC)法・Segmented Attenuation Correction(SAC)法を用いた。使用装置は、Advance(GE 社製)、断面方向の分解能は4.6~5.7mmFWHMである。

3.結果

 Transmission Scanの収集カウントが400Mカウント(約20分間収集)を基準として各ROIの値の変化をみると、MAC法では100Mカウント、SAC法では50Mカウント以上の収集を行えば画素値の変化が5%以内に収まることになる。MAC法は100Mカウント以下になると値のばらつきが急に大きくなる。これは再構成時の減算処理により負の値が生じることによるストリークアーチファクトによるものと考えられる。SAC法では、MAC法の低カウント域の変化より大きくはないが100~200Mカウント付近でのばらつきが大きくなる傾向がみられた。(表1)

Transカウント数による画像の変化
表1.Transカウント数による画像の変化

 臨床において頭部ならびに胸部でのTrans-mission時間による変化をみると、いずれの部位においても100Mカウント以上の収集を行えば、10分収集と比較しても相関係数で0.9以上となった。(表2)

基準画像との相関係数(r2)の比較
表2.基準画像との相関係数(r2)の比較

4.まとめ

 10分間の設定でTransmission Scan(MAC法)を行う条件とするなら、約2年間同じ線源が使用しても100Mカウント以上のデータが収集可能である。一方、収集カウントを100Mカウント程度と設定すれば、線源購入当初は、2.5分で良質な画像を得ることが可能となる。 本研究は、第41回日本核医学会において発表した


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