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遺伝子研究部門

スタッフ

【専門研究員】

谷垣 健二(たにがき けんじ)(神経病態研究部門と兼務)

【協力研究員】

木下 和生(きのした かずお)(2020年3月末まで在籍、現静岡社会健康医学大学院大学教授)

【臨床検査技師】
植村 宗弘(うえむら むねひろ)

遺伝子研究部門の研究概要

遺伝子研究部門は遺伝病の解析、遺伝子の保存と活用、他部門の遺伝研究支援、P3施設の管理を行う部門です。

がん細胞を生む遺伝子変異が生じるメカニズムの解明を行い、がんの予防と治療に役立つ成果を目指していきます。また、臨床各科や各部門と協力して、臨床的な研究をさらに展開し、大学では行いにくい、研究所の機動力を生かした臨床研究のサポートを行っていきたいと考えています。

その一例として令和2年度から産婦人科と共同で行う卵巣癌の臨床検体を用いた新規分子標的療法の探索のため予備的な実験をスタートさせています。また、知的財産を公開し社会に貢献する取り組みも積極的に行っています。その一例として大腸癌遺伝子変異解析の実験から得られた新規技術について現在特許を申請しました。

癌における遺伝子異常の解明とその臨床への応用

(1)骨髄増殖性腫瘍(MPN)患者におけるJanus kinase 2遺伝子(JAK2)V617F変異測定の有用性

骨髄増殖性腫瘍は赤血球や血小板が増加する血液腫瘍ですが、JAK2遺伝子の変異が高頻度で認められることから、その測定が診断の上で重要になっています。研究所ではJAK2遺伝子の変異の有無だけでなく、血液中のDNAのうちどれくらいの割合で変異したDNAが存在しているかを測定する方法を独自に確立し、変異したDNAの割合が治療への反応や合併症の出現に関係しているかどうか研究しています。また、JAK2遺伝子の変異が腫瘍を導くメカニズムについての研究を行い、診断や治療法の改善を目指しています。

(2)大腸直腸癌におけるKRAS変異のレーザーマイクロダイセクションによる検出

大腸直腸癌の約4割に見つかるKRAS遺伝子の変異は抗がん剤の効果を予測する上で重要であり、平成22年度からKRAS遺伝子検査に健康保健が適応されている。研究所ではより正確な遺伝子診断を提供することを目的として、レーザーマイクロダイセクション顕微鏡を用いて、癌細胞だけを切り取り、周辺の正常細胞が混入しないやり方でKRAS遺伝子検査を行う方法と、レーザーマイクロダイセクションによらない方法を比較検討しています。

(3)卵巣癌の新規分子標的療法の開発

卵巣癌で最も頻度が高い高異型度合漿液性癌は多くが進行期で発見され、高率に再発する予後不良の疾患である。卵巣癌細胞は、腫瘍微小環境において免疫抑制系細胞と線維芽細胞と相互作用することで多くの癌治療に対し抵抗性を獲得する。そういった相互作用に関与する分子群の中で治療標的になるものに免疫チェックポイント分子のPD-1/PD-L1 ファミリーがある。現在、卵巣癌細胞と腫瘍微小環境の相互作用の新たな分子機構を見出すため、当病院産婦人科との共同研究を行っています。

疾病の遺伝的基盤の探究

(1)突然変異誘導因子AIDによる発がん機構の研究

突然変異を起こす活性を持つAIDという酵素は本来抗体の遺伝子に作用してその多様性を増す働きをもっていますが、マウスの実験で過剰に働かせるとがんを引き起こすことが分かりました。ヒトでもピロリ菌に感染した胃や肝炎ウイルスに感染した肝臓の細胞でAIDが産生され、遺伝子の変異を引き起こすことが分かり、がんの原因になっている可能性が示唆されました。新たながん治療・予防法の開発に向けて、AIDによる発がん機構の解明を目指しています。

(2)発がんに関わる染色体転座の分子機構の研究

染色体転座はある染色体と別の染色体が途中でつなぎ変る現象であり、がんの原因になることが知られていますが、どのようにして転座が生じるのかについてはよく分かっていません。転座がおこる背景として、細胞核内における遺伝子の空間的配置が重要と考えられています。ある遺伝子と別の遺伝子の距離がどれくらいはなれているかを生きた細胞で測定できる手法を開発し、染色体転座のメカニズムを解明することを目指しています。

研究業績

業績はこちらをご参照ください。


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