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優良活動団体事例:NPO法人土佐の森・救援隊

「林業はそもそも『兼業』で成り立っていた産業、自分たちの活動は『自分の山は自分で管理』という林業本来の姿に戻しているだけ」と話すNPO法人土佐の森・救援隊事務局長の中嶋建造さん。同団体は、1997年に任意団体として活動を始め、2003年にNPO法人化、その2年後には拠点をいの町に移し、主に民有林の森林整備を通じて小規模自伐林家の育成支援やセミプロ森林ボランティアの養成を行っています。
地域振興券「モリ券」の発行や、伐採材の搬出・販売などを通じて、地域振興と森林保全をする新しい方向性を持つ林業を実践しています。楽しむことが大きな目的である「森林ボランティア」活動ではなく、次世代林業のあり方を活動そのもので体現し政策提言も行う社会的NPO組織である土佐の森・救援隊。そんな、一般的な「林業家集団」でもなく、「森林ボランティア団体」でもない同NPOの活動について、中嶋さんにおうかがいしました。


Q現在、どのような活動をされていますか?


Aこの活動の一番の目的は、「自伐林業の普及」です。いわゆる「森林ボランティア活動」ではなく、「この地域の林業のあるべき姿」を提示し、社会に影響力を与えるような活動を行っています。事業としては、大きくわけるとすると3つです。まずメインである事業は、森林整備・間伐材の搬出を通じて小規模自伐林家の育成支援です。2つめは他地域も含めたセミプロ森林ボランティアの養成。これについては、私たちの「土佐の森方式」の研修を高知県内・県外のさまざまなところで行っています。そして、3つめはそれ以外のグリーンツーリズムや環境学習などの事業です。
これらの事業を、会員や参加者と行っており、会員は約200人、年間の参加者数はのべで3000人を超えます。
なお、いわゆる「森林ボランティア活動」は、当NPOから分派した「こうち森林救援隊」が行っています。


Q1つめのメインである活動「森林整備と自伐林家の育成支援」はどのような内容ですか?


A主に民有林で、人工林の森林整備を年間で約200日行っています。さまざまなところから委託を受けて森林整備を行い、伐採した木々はA材、B材、C材と分けます。市場で売れる原木がA材とB材で、これらは当法人が出荷します。不揃いで質の悪いものがC材で、これは、作業に携わった個人が出荷し、バイオマスエネルギーやパルプの原料となります。
A材、B材の出荷は市場にて現金になりますので、その対価として「モリ券」を作業された方に渡し、C材は作業代として「モリ券」を渡しますが、自由に運んで換金した分も、運んだ方がもらえるという仕組みにしています。C材の出材は手間のかかる仕事ですが、作業者には小づかい稼ぎにもなりますし、作業の帰りに積んでいくだけ。そういったちょっとしたお得感や手軽さが、継続していけるポイントだと思っています。
こういった作業をしてだんだん要領をつかまれると、自分の森をお持ちの方は「自分の森を整備する」と自立していかれる方も多くおり、まさに「自伐林家の育成」となっています。また、自伐林業家にステップアップしたい人達向けに「副業型自伐林家養成塾」を展開し、多くの方が参加して、年々自伐林業家になっていく人が増えています。さらに私たちの活動を知って、これまで所有人工林の手入れをされていなかった方も作業をされるようになるなど、森林所有者に影響を与えているのは確かですね。


Q活動の参加者はどのような方が多いですか?


A森林を所有している定年後の方が多いですが、20代〜30代前半の若者も多いです。この世代は大学卒業当時就職氷河期であったということもあり自立した生き方を希望している方が多く、新しい価値観で田舎志向の方が多いため、林業に意識が向いているのかなと思っています。もちろん全くの初心者の方もたくさんおられるので、安全教育等の研修会に参加していただき、現場で一緒に作業をしながら伐採の方法等について覚えていってもらっています。また、それぞれの作業レベルについては、森林・林業技術等認定基準を設けて、ランク1〜5まで認定しており、それぞれのレベルにあった活動をしていただいています。


Q団体運営の資金に関してはどのような工夫をされていますか?


A収入としては、国の事業の委託費、林業関連補助金や企業等のNPO助成金、これらは積極的に事務局が動いて資金を確保してきています。バイオマス関連や、「田舎で働き隊」などのソフト事業も受託しています。そして、出材をした売り上げがこれに加わります。森林整備作業に応じて地域通貨モリ券を発行していますが、出材の売り上げ内で行っていますので、赤字になることはありません。
会費も徴収していますが、年数万円ですので、収入に占める割合としては、少ないですね。


Q団体運営における人材の確保や、参加者を増やすための広報等については、どのようにされていますか?


A事務局運営の人材や参加者を増やすために、特に行っていることはないです。私たちの活動の共感していただく方が来ていただいていると思っています。人を集めるための小細工などは一切行いません。自分たちの理念や目的をしっかりと持って、「この地域の林業はどうあるべきか」をきちんとし、責任を持って活動をしていると自然と人が集まってきます。広報に関してもホームページ等もなく、ブログのページを持っているだけです。それでも、昨年は当団体の視察に30団体も来られましたし、新規会員も毎年30人くらい入ります。要は信念を持ってしっかり活動していれば、人を集める工夫などは必要ないです。


Q現在の課題と、今後の展望についてお聞かせください


A現在、林業の世界でも「大規模集約化」「機械林業」がすすめられていますが、現在の森林の状況を考えると、林業の本来の姿である「地域に根ざしたシンプルな自伐林業」に戻さないと、日本の森林はだめになると思っています。また、建築用材にも使える丸太をバイオマスに利用するという動きもありますが、そうするとC材の使い道がなくなり、材木すべての有効活用ができなくなるかもしれません。こういった、大きな課題をふまえ、わたしたちNPOとしての役割は、政策提言等も含めて「言うべきことは言い、やるべきことはやる」だと思っています。それが、「土佐の森方式」であり、この方法を推進すれば森林が良くなり50万人もの林業関連の雇用が生まれ、山村地域が活性化すると自負しています。


団体情報

(表)
団体名 NPO法人 土佐の森・救援隊
問い合わせ先 (住所)高知県いの町天王北4丁目6番地4
(電話およびFAX番号)090-8973-5752、088-891-6639
(担当者名)事務局長 中嶋健造
(E-mail)[email protected]
主な活動地 高知県いの町が中心
ホームページアドレス http://mori100s.exblog.jp/
活動内容 (整)森林整備活動 (他)その他(森林指導者の養成)
参加難易度 (初)初心者OK
団体の受入れ可否 団体の受入れ可能(30〜40人まで)
活動時期 一年中
構成人数 200名(会員)
設立年月日 2003年
活動内容等 ・森林整備のための作業イベント等に関する事業。 ・森林整備のための施業技術向上及び、研修、研究、学習に関する事業 ・その他、自然環境保全、環境教育、山村文化振興、産業の活性化等に関する事業。(スポンジ運動/エコ活動)(情報ネットワーク)(グリーンツー・地域おこし/地域づくり)(森林証券制度・地域通貨券/ファンド)(バイオマス循環システム)(地産地消運動)(自然・環境教育)(セカンドワーク・セカンドライフ、ボラバイト支援/NPV活動)(自伐林家支援)等々

(E-mail)[email protected]
ホームページアドレス:http://mori100s.exblog.jp/

林地残材の収集運搬

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用材搬出

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モリ券(複数枚)

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モリ券使用中

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お問い合わせ
琵琶湖環境部 森林政策課
電話番号:077-528-3918
FAX番号:077-528-4886
メールアドレス:[email protected]